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地味でも年商1000億円、東芝「鉄道ビジネス」の実力 車両は少ないが技術に強み、自動運転にも注力

10/18 4:31 配信

東洋経済オンライン

 日本国内における鉄道メーカーの代表的な存在といえば、車両製造では日立製作所、川崎重工業という2大メーカーに加え、JR東海系の日本車両製造、JR東日本系の総合車両製作所、近鉄グループホールディングスの関連会社でJR西日本とも縁が深い近畿車両の5社が挙げられる。信号や運行管理システムなどの分野では、日本信号、京三製作所、大同信号の3社の存在が大きい。

 一方で、三菱電機、三菱重工業、東芝といった総合電機・重電メーカーも鉄道分野における重要なプレーヤーだ。三菱重工は「ゆりかもめ」のような新交通システムに強みを持ち、三菱電機は鉄道車両用空調機器で圧倒的な存在感を誇る。

 両者に比べると東芝は一見、地味な存在だ。しかし、実際は売上高が「年間1000億円の規模感」(東芝)。1000億円といえば日本車両製造、総合車両製作所、近畿車両の鉄道事業を上回り、信号トップの日本信号の売上高に匹敵する。「直近はコロナ禍の影響を受けているが、成長する事業と考えて注力している」という。

■機関車に強み、新幹線の電源装置も

 東芝の鉄道事業は現在、東芝の子会社・東芝インフラシステムズが担当している。東芝の鉄道事業の歴史は長く、事業領域も多岐にわたる。そのスタートは1899年。翌々年の1901年には大師電気鉄道(現・京浜急行電鉄)に国産初の主電動機と台車を納入している。

 車両では機関車の製造を得意としており、近年はJR貨物向けにEH800形などの電気機関車のほか、2012年には日本初の量産ハイブリッド機関車HD300形を製造している。2015年には名古屋鉄道向けの電気機関車も製造した。

 車両以外では、東京メトロ丸ノ内線向け車両2000系に駆動システムなどを2018年に納入している。これにより消費電力を従来車両比で2割削減可能という。昨年営業運転を開始した新型新幹線N700Sの電源装置、主変換装置などにも同社の技術が用いられた。

 N700Sに搭載されたバッテリー自走システムは独自開発のリチウムイオン二次電池を用いてJR東海と共同開発したもので、長時間停電時でも乗客が退避できる場所までバッテリーによる自力走行が可能になる。全席に設置されたモバイル用コンセントにも同社の電源装置が活用されている。

 海外では台湾の高速鉄道プロジェクトにおいて、車両電機品、運行管理システム、保守管理システムなどを担当。今年5月には、変電所や駅の電機設備機器の更新事業を受注している。台湾では在来線でも通勤電車向け電機品を納入しており、「海外鉄道事業における注力市場」(東芝)という。

 日々の列車ダイヤ策定や乗務員の運用、車両の配置、検査といった輸送計画システム、列車の運行状況を監視しダイヤ乱れ時の対応も行う運行管理システムも手掛ける。2019年からはシステムにAIを導入、輸送担当者や運行管理者をサポートする。

 たとえば、輸送計画システムは事前に車両性能、作業時間、乗務員の休日などの条件を設定しておけば、最適な輸送計画をすぐに構築できる。運行管理システムは過去の運行状況とそのときの指令員が判断した内容を蓄積しておくことで、過去の状況と現在の状況を比較し、運転整理が必要かを瞬時に判断する。

 「従来はベテランが手作業で数時間、数日かけて行っていた作業が、AIなら1分から数分で完了する」と、東芝インフラシステムズ鉄道システム事業部の大辻浩司ビジネスユニットマネジャーと胸を張る。「もし結果が100点満点でないとしても、必要な部分だけ修正すればよいので、トータルの作業時間は大幅に短縮できる」。

■自動運転への取り組みも

 鉄道業界で導入の検討が進む自動運転についても東芝は開発に意欲的だ。鉄道の運転の自動化レベルは以下の段階に分けられる。

・運転士と車掌が乗車する非自動運転(レベル1)
・運転士のみのワンマン運転で、運転士は列車起動、ドア操作、緊急停止操作などを行う半自動運転(レベル2)
・運転士以外の係員が先頭車両の運転台に乗務し、緊急停止操作や避難誘導などを行う条件付き自動運転(レベル2.5)
・係員が乗車し緊急時の避難誘導を行う条件付き自動運転(レベル3)
・ゆりかもめのように完全に無人で運行する自動運転(レベル4)
 国土交通省は地方鉄道においてはレベル2.5を目指し、都市鉄道においてはレベル2.5を踏まえつつ、最終的にはレベル3またはレベル4を目指すことを目標に置いている。現時点では多くの鉄道各社やメーカーがレベル2.5の実現をにらんで開発を行っている。

 東芝インフラシステムズ鉄道システム事業部車両システム技術部の富川英朝部長は、「地方鉄道での自動運転を目指しながら、都市鉄道でも活用できるセンサー技術を中心とした開発を行っている」と話す。

 いずれのレベルにおいても列車走行上の安全確保は重要課題である。人や車など前方の障害物をできるだけ早く感知し、緊急停止など次の行動を促す必要がある。

 そこで、車載カメラを活用した前方検知装置を開発、長野電鉄の協力を得ながら性能確認試験を行ってきた。運転席の上部に2つのカメラからなるステレオカメラを設置し、2枚の画像から三角測距により距離を計測するとともに、線路を識別することにより支障物を見つけるべき空間を認識。走行上の空間に支障物があるかどうかを探索する。

 試作機を用いて昼間、夜間、あるいは晴れ、曇り、雨といった時間帯や気象条件を変えて試験を実施し、検証を行ってきた。この結果、昼間に立った状態の人物なら200m先、高さと幅がそれぞれ45cmのダンボール箱なら150m先、線路に伏せている人物なら80m先で、検出率90%以上で検知が可能という。

■AIやセンサーで存在感高まるか

 「2015年から開始し、やっと形になってきた」と富川部長は話す。ただ、「われわれが想定していた以上にさまざまな条件がある。もっと経験値を増やす必要がある」。たとえば黒色系の衣服を着た人物では、それ以外の色に対して検出率が10%程度低下するなど、衣服の色の違いによっても検出に差が出るという。

 「前方検知装置の試作機を実車両に搭載し、さまざまな環境の下でデータを蓄積、解析していく」と富川部長は今後について話す。現在は夜間に前照灯を点灯したときに運転士が目視確認できる200m先までの範囲に存在する支障物を検知する前方検知装置として開発しているが、さらなる検出距離の延長も図っていくという。

 AIを活用した運行管理システムや自動運転に寄与するセンサー技術など、最新技術を取り入れた鉄道ビジネスは鉄道業界の人材不足解消につながりそうだ。見た目でわかりやすい車両の製造が少ないため、黒子的な立ち位置にある東芝だが、その技術力で存在感をますます高めていくことは間違いない。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/18(月) 4:31

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