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みずほが「システム障害8連発」で失う3つの信頼

10/18 5:21 配信

東洋経済オンライン

 「みずほが再びお客様や社会から信頼される存在となれるよう、経営陣が率先して全力を尽くしていきます」

 8月30日、みずほフィナンシャルグループ(FG)の従業員の元には、FGの坂井辰史社長と、みずほ銀行の藤原弘治頭取の連名でこんなメールが届いた。

 今年に入ってシステム障害が相次いで発生していることを受けたもので、復旧や顧客対応に当たる行員に対する感謝や、実態解明と再発防止策策定に向けた意気込みがつづられている。しかしメールには障害の原因や責任について、一言も触れられていない。そのため「文章が長いだけで中身はなく、記憶にさえ残らないようなものだ」(みずほの中堅幹部)と行員たちの反応は冷ややかだ。

 それでなくても現場は大忙しだ。「顧客からシステムについて聞かれない日がない」(20代の法人営業担当)にもかかわらず、「会社から報道されている以上の具体的説明はない」(同)。「再発しないとは言い切れないので、とにかく謝るしかない」と行員たちは諦め顔だ。

■検査中に異例の措置に踏み切った金融庁

 実際、システム障害に関し改善の気配は見えない。8回の障害の中には、原因が把握し切れていないものもあったという体たらくだ。

 ところが、みずほの危機感は薄い。システム更改の計画には、「能動的にアクションを起こすものがあった」(金融庁幹部)。つまり、問題解決が終わっていないのに新規サービス拡充を図っていたというのだ。

 これに対し金融庁は、「少なくとも今はそういう局面ではない」(同)と怒り心頭。「改めて、気合を入れてもらう必要がある」(同)と、金融検査中にもかかわらず、業務改善命令を出した。

『週刊東洋経済』は10月18日発売号で「みずほ 解けない呪縛」を特集。出口が見えないシステム障害の原因を多角的に分析するとともに、みずほの将来について取り上げる。

 もともと、みずほへの改善命令はもっと早く出されていたはずだった。ところが、まさに命令が下ろうという8月20日、みずほが5回目の障害を起こしてしまう。これには金融庁も激怒。さらにその後も障害が相次ぐという出口の見えない状況に、金融庁は検査終了後に業務改善命令を出すという通常の処分では足りないと判断したわけだ。

 命令では、みずほが計画しているシステム更改、更新の計画を見直し、金融庁に報告することを求めている。「報告された計画や内容に対して必要な確認や検証をし、言うべき部分があれば指摘、やり取りをしていく」(金融庁)という。みずほだけに任せていては障害は止まらない、という危機感が見て取れる。

 それでなくてもみずほは発足以降、数々の業務改善命令を受けてきた。

 初めて受けた処分もシステム障害によるものだった。旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が統合され、みずほ銀行が発足した初日、それぞれのシステムをつなぐのに失敗。ATMが使えなくなる、口座振り替えが250万件も遅れるといった大規模障害を引き起こした。2011年には、再び大規模なシステム障害が発生。東日本大震災の義援金受け付けで大量の振り込みが集中したことで、100万件を超える取引に遅れが生じた。

 不祥事はシステムにとどまらない。2013年には暴力団への融資が発覚。この事件では金融庁に対して、「情報を知っていたのは担当役員までだった」と虚偽の報告を行い、一部業務停止命令まで出される事態となった。

 こうした問題が起きるたびに、金融庁は行政処分を出してきたが、あくまでみずほの自主性を尊重する形で進めてきた。しかし、今回の処分は違う。みずほ自身の計画に対して目を光らせるということは、「箸の上げ下ろしまでチェックする」ということで、一歩踏み込んだといえる。

■働き方改革進めても就活生が逃げていく

 金融庁によって追い込まれるみずほ。支店の営業担当者が、「コロナ禍における顧客対応がまずかったことに加え、相次ぐシステム障害で将来の“飯の種”である新規口座開設が減少している」(支店の営業担当者)と明かすように、一部で顧客からの信頼も失い始めている。

 みずほは人事制度改革を進める一方、「週休3日、4日制」の導入や、「兼業・副業」の解禁など、働き方の選択肢も増やしている。人事制度はほかのメガバンクも見直しに動いているが、働き方にまで踏み込んでいるのはみずほだけだ。

 これは、「優秀な人材を集めるため」(みずほ幹部)。ところが、どうやら思惑通りに事は進んでいない。「就活の学生からの人気は低下の一途」(同)というのだ。さらに現場からは「そのせいか、入ってくる新人のレベルが毎年下がり続けている。採りたい人が採れていないのではないか」(30代行員)との声まで聞こえてくる。

 近年、銀行の人気は芳しくない。将来の収益を心配するのはもちろんのこと、「コンサルティング会社や投資銀行に行けば、若いうちから稼げる」(新卒1年目の男性)と待遇面を意識した声もある。

 コンサルが20代でも年収1000万円に到達できるのに対し、銀行の場合は30代まで給料の伸びが小さい。実際、みずほに入社した行員も「4年目で昇給するまでは手取りが少なく、ギリギリの生活だった」と口をそろえる。終身雇用の意識が薄く、転職もいとわない世代には、銀行の報酬体系は魅力的に映らないのだろう。

 システム障害の影響も無視できない。みずほOBは「過去のシステム障害や暴力団融資事件の後は採用がかなり難しくなった。ほかのメガバンクに入れなかった人しか採れず、質の低下が顕著だった」と振り返り、「今後はさらに心配だ」と語る。

 みずほを去っていく行員たちも増加している。「今年2月の障害から半年で、辞める人が格段に増えた。自分が知っているだけでも片手では収まらない」(若手行員)という。

 金融庁、顧客、そして行員たちという3つの信頼を失うみずほの行く先は不透明といわざるを得ない。

『週刊東洋経済』10月23日号(10月18日発売)の特集は「みずほ 解けない呪縛」です。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/23(土) 22:01

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