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インフレ&中国発不況-スーパー・スタグフレーションが襲ってくる!

10/18 6:01 配信

マネー現代

リーマンショックの後はデフレであったが

(文 大原 浩) スタグフレーションとはごくシンプルに述べれば、「不景気なのに物価が上がる」ということである。

 不景気な時には消費意欲が落ちモノやサービスが売れないから、デフレ(物価が下がる)になるという説明はわかりやすい。日本が1990年頃のバブル崩壊後デフレから脱却できないのはモノやサービスが売れないからだと言われれば納得するであろう。

 また逆に、好景気でモノやサービスがとぶように売れるからインフレになる(物価が上がる)と言われれば腑に落ちる。

 たが、9月13日公開の「パンデミック後の世界で『ヤバいインフレ』が確実に起きるワケ」で述べたように、インフレやデフレの原因をきわめてシンプルにまとめると

1. 需要が多い

2. 需要が少ない

3. 供給が多い

4. 供給が少ない

 の4つの要素の組み合わせになる。需要と供給はそれぞれ「買い手」、「売り手」と置き換えたほうがわかりやすいかもしれない。

 そして、思い起こすべきなのは、日本の1980年代バブルである。

 この時には株式や不動産を始めとするいわゆる「投資商品」の価格が急騰し、日経平均はピーク時に4万円近くに達した。だが、実体経済の物価はさほど上がっていない(バブルに浮かれた人々が購入した一部の贅沢品は例外)。不動産価格が急騰したのにその不動産を貸し出す家賃にほとんど反映されなかったのが象徴的な例であろう。そのため、不動産投資の利回りは極限(当時の金利と比較して)まで下がった。

 1990年頃のバブル崩壊以降このような投資商品がどのようなすさまじい「デフレ(価格下落)」を経験したのかは改めて説明する必要がないと思う。さらに、不良債権処理などの重荷もあって不景気となり、実体経済においても長期にわたってデフレが続いた。

 ただし、実体経済のデフレはバブル崩壊だけによって引き起こされたのではない。

インフレで日本が勝ち組になる

 8月30日公開の「インフレ経済突入で、今度こそ日本は『勝ち組』になるかもしれない」2ページ目の「人口減少もインフレを加速する」で述べたように、2つの大きな要因が日本のデフレを加速させた。

1. IT・インターネットの発達によるコスト削減(生産性向上)効果

2. 中国を中心とする新興国による「デフレの輸出」

である。1については「実体のないDX騒ぎ」が世の中に広がっており、ITの生産性向上によるデフレ効果のピークは過ぎたと判断している。

 また、2についても10月4日公開の「中国恒大は前座! 後に控えるリーマン級危機に世界は対処できるのか」、10月2日公開の「これは習近平の経済自爆戦術か、行き着く先は巨大な北朝鮮」で述べたように、今回の危機の震源地は共産主義中国になる公算が高く、「デフレの輸出」がストップするだろう。

 そもそも、人件費は安いが資源・エネルギー効率が日本などと比較して極めて悪い中国大陸で生産することは、それらの価格が高騰する中でとても非効率・非合理になる。

 前記「インフレ経済突入で、今度こそ日本は『勝ち組』になるかもしれない」の内容は、資源・エネルギー効率を武器にして対中国においても実現されるであろう。

 これまではIT・インターネットの陰に隠れていたが、日本の強みは7月11日公開の「日本の『お家芸』製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」などで繰り返し述べているように、製造業の他国を寄せ付けない高い水準の技術にある。

 その技術は、「安物を粗製乱造して使い捨てるデフレ経済」から「良いものを長く使うインフレ経済」へ向かう中で「高品質で壊れない、メイド・イン・ジャパン」の復権につながるはずだ。

 もちろん、第1次・第2次オイルショック以来磨き続きけてきた省エネ技術も、資源・エネルギー価格高騰の中で大いなるアドバンテージである。

2大インフレ要因の中での「○○ショック」

 中国恒大問題がきっかけとなって、今回我々が経験するであろう「○○ショック」(まだ名前はない)は、1990年頃のバブル崩壊やリーマンショックなどとは全く違った環境下で起こる。

 今回のショックはまず、金融面において「リーマンショック後の超金融緩和の反動」と「パンデミックに起因するバラマキ」という、2大インフレ要因のさなかに起きるはずだ。

 財務省の矢野康治事務次官が月刊誌「文藝春秋」への寄稿で、パンデミック禍での政策論争を「バラマキ合戦」と批判したことが話題になっている。私も「バラマキ合戦」を早くやめないと、日本の財政だけではなく「通貨システム」そのものがおかしくなるという懸念を持っている。

 これは日本の財政だけの問題ではない。リーマンショック以降、世界的に超低金利の流れが続いていた上に、上記のパンデミック対策を名目にしたバラマキがグローバルに行われている。

 もちろん、冒頭の3(資金の)供給が多い、だけではインフレになりにくいことは、2018年8月13日公開「異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情」で述べたとおりだ。

 しかし、現在は4の(資源・エネルギー、さらには食糧の)供給が少ない、という要因が新たに加わっている。今のところ資源・エネルギーの高騰だけが目立っているが、食糧も含めたこれらの資源は、幅広い経済に影響を与え最終的には人件費も上昇させる。

 金融緩和・バラマキは、前述のようにデフレ経済下では極めて効果が薄いから、「やりすぎ」になることが多く、インフレ期になってからその「報い」がやってくる。

 今回は、リーマンショック後のマイナス金利を含む超金融緩和とパンデミック対策を名目にした「バラマキのダメ押し」が行われた後に、「金融危機」と「(供給の制約による)コストプッシュインフレ」に直面せざるを得ない。

 金融危機に対しては、すでに超低金利かつインフレが到来している中で「さらなる金融緩和」で救済することは難しい。

 もし、愚かにもこの状態で「危機を救うための大規模な金融緩和」や「救済を名目にしたバラマキ」を行ったら、コントロール不能のインフレを招くことはほぼ間違いがないと考える。

やりすぎた結末はどうなる?

 前述「中国恒大は前座! 後に控えるリーマン級危機に世界は対処できるのか」の5ページ目「1929年株式大暴落は当時の新興国米国から始まった」で述べたように、大恐慌クラスの危機まで私が心配するのは、これまで金融緩和やバラマキで「先送り」してきた問題がいよいよ目の前に現れているのに、政府や中央銀行に打つ手が残されていないからである。

 遡れば、1971年のニクソンショック(金ドル交換停止)によって、ドルを含む世界の通貨がいくらでも「輪転機で刷ることが可能になった時」が「歯止めが失われたとき」と言えるかもしれない。

 そのつけをもっと早く払うべきであったかもしれないのだが、「金融技術」の発展により「つけ払いがどんどんたまる」結果となっている。そしてニクソンショックから半世紀たった今、「もうこれ以上つけ払いはできないですよ!」と最後通牒を突き付けられているのが我々だといえよう。

 「昨日までバブルが崩壊しなかったから、明日もバブルは崩壊しないさ」と、数字やロジックを積み上げて主張する人々がいる。しかしそれは単なる「屁理屈」であって我々の役には立たない。

 それは、「昨日晴れたから、明日も間違いなく晴れる」という天気予報と何ら変わりはない。

 「お金って何?」という議論は長くなるので、7月6日公開の「『仮想通貨』『ドル』『金』『株』、じつは“一番安心できる”のは…? プロの『意外な答え』」3ページ目「『交換の先送り』とは?」以降を参照いただきたいが、要するに「みんながお金だと思っているからお金」であって、そう思わなくなれば単なる紙切れや電子信号にしか過ぎない。

 長い間、我々は意識していなかったが、2月8日公開の「コロナ危機で、じつは『銀行預金』より『株』が安全になりそうなワケ」の冒頭で述べたように、ドルの価値は金に対して1世紀の間におおよそ100分の1になっているのだ。1世紀ではなく、1年で同じことが起こったらどうであろうか? 

ハイパーインフレはあるのか?

 ベネズエラは10月1日、通貨ボリバル・ソベラノを100万分の1に切り下げるデノミネーションを行った。2008年に1000分の1、18年に10万分の1に切り下げるデノミを行っているのでトータルでの減少率は天文学的数字になる。

 第1次世界大戦後のドイツのハイパーインフレも有名だが、こちらは「1斤のパンを買うのに荷車1台分の札束が必要であった」とか「喫茶店でコーヒーを飲んでいる間にその値段が何倍、何十倍にも上がった」などという逸話が残っている。

 どちらのも場合も景気が良いどころか、極めて不景気な中で嵐のようなインフレが起こっているから「スーパー・スタグフレーション」と呼べるかもしれない。

 ドイツが第1次世界大戦の敗戦による巨額の賠償金に苦しめられていたのは有名だが、現在のほとんどの国々(の政府)も巨大な借金(国債などを含む)を抱えていて支払わなければならない。そして、(マネーの)流通量を考えれば、モノやサービスに対するお金の価値は極端に低下している。

 その結果、ベネズエラや第1次世界大戦後のドイツのようなハイパーインフレ(スーパー・スタグフレーション)は、特殊な現象ではなくなるかもしれない。

金融のデフレ、実体経済のインフレ

 もちろん、スーパー・スタグフレーションは「望ましくない最悪の結末」であるから、回避できるように祈っている。

 しかし、お金はモノやサービスと交換して初めて価値を持つという原則(金本位制的)が意識され、「お金がお金を生む」流れにはブレーキがかかるであろう。したがって砂上の楼閣の上に成り立っていた「金融・投資商品」は激しい価格の下落(デフレ)に見舞われるはずだ。

 逆に実体経済のインフレは、冒頭4の(商品、サービスの) 供給が少ないことと、3の(マネーの) 供給が多い(過剰が放置されてきた)ことによって急加速する。

 ただ、10月6日公開の「これが神様バフェット流、大乱でも生き残る優良企業銘柄の見分け方」で述べたように、「大恐慌でも生き残る会社」は存在するのであるから、悲観ばかりする必要はないと考える。

 ただし、大恐慌はデフレであったが、これからやってくる大乱はインフレであり、むしろ第1次世界大戦後のドイツに近いものになるであろうことには注意する必要がある。

マネー現代

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最終更新:10/18(月) 8:11

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