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ソニー復活を決定づけた「技術重視」からの大転換

10/17 9:31 配信

東洋経済オンライン

 私はこれまで大企業の経営者や投資家のアドバイザーを通じて経営や投資に触れ、自らも投資を行ってきました。皆、さまざまな悩みがあるのですが、最大の悩みは人材です。

 皆、人材が足りないと嘆いています。新たなことを始める、大きな挑戦を行う、この難局を乗り切る、競争を勝ち抜く……求められているのはその実現を可能にする人材です。

 お金についてはどうでしょう。自然資本(森林や鉱物)、人的資本(生涯にわたった所得)、生産資本(建築物やインフラ等)、対外純資産を合計した世界の富は何10京とも言われています(『The Changing Wealth of Nations 2018』参照)。

 「京」とは兆の1万倍ですからまさに桁違いです。そして、現在SDGsや社会インパクトを狙った投資資金は2000兆円を超えていると言われていますし、今後はもっと増えていくでしょう。

 社会課題の解決のために2000兆円といった途方もない金額が、本当に必要なのでしょうか。最終的には大きな投資額が必要になってくるかもしれませんが、そのきっかけを作るには決してそんな大きな額は必要にならないと考えています。

 なぜなら、最大の支援者である消費者が存在しているからです。世界のGDPの総和は約1京円と言われています。

 消費者の経済活動が持続可能な消費に向かえば、企業活動の資金源となりえます。企業活動の資金調達は外部の投資家や金融機関からの調達に限りません。

■「なぜ?」を企業価値と結び付けるソニー

拙著『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』でも詳しく解説していますが、持続可能な社会と豊かさを感じる資本主義を実現するためには、それを可能にする人材と、その企業に共感する消費者を数多く生み出すことが必要です。つまり、その人材を長期的に雇用し、消費者の共感を獲得していく力強い「ミッション」が必要なのです。

 ミッション、ビジョン、バリューを重視している代表的なスタートアップにメルカリがあります。ミッションを重視することで優秀な人材を集め、優秀な人材を事業の競争力に変換することに成功しています。

 これらのスタートアップのノウハウはグローバルでも共通しており、日本の代表的なグローバル大企業であるソニーも、近年はパーパス(存在意義)経営を強力に推進しています。

 ソニーが何のために存在しているのか、社会、従業員にとっての「なぜ?」を考えることを経営の仕事とし、存在意義をつねに言語化し発表することで、企業の価値と結び付けようとしているのです。

 ソニーの復活に向けてさまざまな解説がなされています。いろいろな要因が重なっているのは間違いないのですが、以前のソニーはテクノロジーやプロダクトとしての優位性や競争力、また財務リターンといったものにより価値を求め、それで企業価値を向上させようとしていたと思います。

 「PlayStation」は任天堂という強力なライバルがいたからこそ、それを超えるグラフィック性能やそれを可能とする半導体の性能で差別化しようとしていました。そのやり方が限界を迎え、2003年、「ソニーショック」を引き起こしました。

 その呪縛から抜け出すには長い時間が必要でしたが、近年のソニーの製品を見ると、単なるテクノロジーのアピールではなく、ユーザー視点でビジネス設計をする事業が多く出てきています。

 PlayStationのゲーム事業もそうですし、半導体、カメラ事業、コンテンツ事業、すべてが存在意義を意識した形で事業の意思決定がされているように思います。

 デジタル画像の目であるCMOSイメージセンサー(半導体回路)は、求められる市場を探し、その市場に合わせて価値を高めていこうとしています。

 ゲーム事業もプレイステーションのグラフィック能力をアピールするのではなく、ユーザーが楽しむためにはどうすればよいのか、という軸で事業設計がされるようになっています。

■最高のテクノロジーありきで勝負していない

 これは実に大きな考え方の構造転換です。最高のテクノロジーを詰め込むよりも、値付けを「ユーザーが求める価値を実現するスペック」と考え、いかにユーザー(=消費者)がこのサービスや商品に熱狂し、共感し持続的に楽しんでもらえるのかということを軸に考えるようになっているのです。

 テクノロジーはあくまでもそれを支える基盤であって、テクノロジーが最高だから消費者への提供価値が最高であるという発想は捨て去っています。

 ソニーの復活は、大きな事業構造の転換、財務的な規律を取り戻した、ゲーム事業など事業の復活、などと言われることもありますが、本質的には価値観をテクノロジーから消費者や社会に変化させるという大きなパラダイムシフトの結果だと思います。

 テクノロジーや財務戦略などはあくまでもそれを支えるためのツールでしかないのです。例を挙げるとキリがありませんが、存在意義を軸に経営の方向性を明確に打ち出し、再生した好例と言えるのではないでしょうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/17(日) 9:31

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