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新築マンションがここまで高くなった「真の理由」

10/16 14:01 配信

東洋経済オンライン

コロナ禍がきっかけとなり、人々の仕事や住まいに対する考え方、受け止め方は劇的に変化しました。社会が変わるとき、決まって劇的に変化するのが不動産の世界です。長く不動産の世界に身を置き、業界の動向に精通した第一人者・牧野知弘氏は「人とのつきあい方、仕事の価値観が変わるとき、一番先に変化が表れるのが不動産」と断言します。
新しい不動産常識について牧野氏が書き下ろした『ここまで変わる! 家の買い方 街の選び方』より、新たな家の買い方と街の選び方をご紹介します。

■通勤がなくなり、多くの日本人の生活に変化が

 コロナ禍による行動抑制は、私たちの働く基本である「通勤」という行為を制限するものになりました。多くの会社では、オフィスにやってこない社員に対し、テレワークという働き方をするように命じました。社員ひとりひとりにパソコンなどの情報通信端末を持たせ、基本的には在宅のままで、仕事をする勤務形態に移行したのです。

 緊急事態宣言が明け、通勤する人は増えつつありますが、それでも通勤客で大混雑するはずの鉄道駅も、肩を触れ合うほどのぎゅうぎゅう詰めだった電車も、かつてに比べればかなりすいています。

 通勤は、多くのワーカーにとっての「日常」であったはずです。働くためには常識であった通勤がなくなったことは実は、多くの日本人の生活に大きな変化をもたらし始めています。

 東京に勤務するワーカーの多くは、都心にある会社のオフィスまで通常片道1時間程度の通勤をしています。途中1度か2度の乗り換えをしながら。

 ところが、通勤がなくなったおかげで往復2時間の余裕が生まれました。駅まで歩かなくてよい、混んでいる電車に乗らなくてもよい、雨だろうが、風だろうが、暑さ寒さもとりあえず関係ありません。通勤がなくなったというだけで、身体にかかるストレスが大幅に軽減しました。

 通勤という行動が、いかに無駄な時間、無駄な体力消耗であったかということです。考え方を変えてもう少しポジティブにこの2時間の過ごし方をプランニングしている人もいます。ビジネス英語の取得、財務会計の勉強、各種資格試験の準備などに充当している人がいます。

 自分の趣味や見聞を広めるためにも、この2時間は貴重です。日頃読めなかった本を読む、趣味に対する知識を深める、オンラインの教養講座を受講する、などです。

 家事に目覚めた人もいます。日頃のいい加減な家事分担を改め、積極的に家事や子育ての時間を作って、家族の絆がより深まった人もいます。

 ワーカーの間で急速に進む「時間」「仕事」「場所」という3つの自由化は、日常生活に大きな影響をもたらしています。人々の生活様式、行動様式が変化することは実は不動産にとって一大変化です。なぜなら不動産は人々が社会生活を営むための重要なインフラであるからです。

 オフィスの空室率があがっていますが、具体的にどのくらいのインパクトかというと、面積にして32万4000坪に相当します。これは新宿にある55階建ての超高層オフィス、新宿三井ビルの約12.5棟分になります。1年でこれほどの面積のオフィスが空室になるというのは、かつて例のないことです。

■家に対する見方が劇的に変わった

 こうした中、住まいにも変化が起き始めています。まじめに仕事をする、つまりお金を稼ぐための空間を確保することを考えなくてはならなくなりました。

 資料を広げられるだけの幅、奥行きのあるデスク、長時間座っても疲れにくいいす、目に優しく、手元を明るく照らすスタンド、高速高性能なWi-Fi、パソコンは会社支給のものであっても、通常会社にあるような高性能なプリンターはありません。できれば液晶モニターは複数あったほうが仕事は捗ります。

 こうした機能をただでさえ狭いマンションの空間に夫婦2人分などを確保し、互いに気兼ねなくオンライン会議を行うのは至難の業といえます。

 これまでは会社に通勤するためだけに必要だった家という空間に、働くという新たな機能が付加されることで、家に対する見方が劇的に変わってきました。

■マンションの価格だけが一方的に値上がりしている

 ところが、今の生活に適した住まいを新たに探そうにも、新築マンションの価格は上がっています。2007年に4644万円だった平均価格はこの14年間で31%もの上昇を示しました。いっぽうで私たちの収入は値上がり分だけ増加したでしょうか。

 厚生労働省が発表するわが国の1世帯当たりの平均所得金額は2007年から2018年の間に556万円から552万円と、残念ながらほぼ横ばいで推移していることがわかります。つまり財布の中身はちっとも増えていないのに、買いたいマンションの価格だけが一方的に値上がりしているという構図になっているのです。

 これでは新築マンションの購入がしんどくなるのはあたりまえです。なにせ新築マンションの価格は年収の11倍、都区部ならば14倍もするのですから。この勢いのままでいけばやがて新築マンションは私たちの手の届かないところに行ってしまうのではないかと、不安に駆られる気持ちもわかります。

 新築マンションマーケットは、大相撲でいえば、土俵が3分の1に小さくなって、これまで前頭十四枚目までで競っていた力士が、小結以上で相撲を取っている状況にあるのです。よく新築マンション業界では、メジャー7(三井、住友、三菱、野村、東建、東急、大京)などと称していますが、残った彼らで小さくなったケーキを分け合っているのが実態です。

 つまり、新築マンションはよく売れているから(需要があるから)、人気で高くなっているのではなく、あんまり需要がなくなったので、デベロッパーが供給を絞って特定の顧客にだけ販売している構図が見えてくるのです。

 実は、縮小したマーケットの中で、メジャー7などのプレーヤーが相手にしている顧客は、一般庶民というよりも「お金持ち」です。

 結論を言います。最近の新築マンション価格が上昇しているのは、表面的には土地代が上がっているだとか、建物の建築費が上昇傾向にあるなどと分析、説明されますが、本質は違います。供給側が客を選んでいるのです。

 8000万円を超えるような物件を喜んで買っている顧客のプロフィールは次の4つです。①富裕層、②国内外の投資家、③高齢富裕層の相続対策、④夫婦ともが上場企業に勤務するパワーカップル、以上です。

■マンションは、中古が第一の選択肢に? 

 中古マンションの成約件数は常に新築マンションの供給戸数を上回って推移していて、いまやマンションは中古で買うのが当たり前の時代が到来しました。

 以前は中古マンションというと、安普請というイメージがあって、設備仕様が古く、建物の構造軀体にも問題が多い、というのが定説でしたが、今では中古マンションのほうが新築よりもいい仕様のものも多くなってきています。

 マンションは土地を取得してから建物竣工、引き渡しまでに1年半から2年程度かかります。分譲時の景気動向などに影響されて、設備仕様を安いものに変更する、間取りを小さくするなど商品内容は時代によってまちまちです。築30年以上経過していますが、平成初期の平成バブル仕様のマンションには、現代でも驚くほどよい仕様のマンションがあります。

 また当然ですが、中古マンションは新築に比べれば一般的には価格は安くなります。同じ立地にあるマンションで価格が1割から2割安ければ、築年があまり古くないのであれば、これはお買い得です。

 マンションも車と同じで、竣工、分譲されて引き渡されてしまえば、即中古扱いです。売れずに販売在庫となっているものでも1年以上経過したものであれば、新古物件として価格は下がっていきます。価格が安い分の一部をリニューアル費用に充当してもよいでしょう。中古でも特に水回りを重点的にリニューアルすると、住み心地は格段に向上します。たとえば浴室や洗面台、トイレなどを最新のものに替えると、費用は200万円から300万円程度ですが、まるで新築マンションに住むような気分になれるでしょう。

■マンションは賃借することがベスト

 私は、長年にわたって不動産業を生業としてきましたが、マンションは賃借することがベストであると思っています。もちろんすごく気に入ったマンションがあってどうしても買いたいという人がいます。反対はしません。

 忙しいビジネスパーソンにとって、マンションはとてもよいと思います。夫婦共働きなどであれば、1日の大半は、実際にはマンション内にはいないわけですから、セキュリティーなどを考えればマンションは適当です。しかし、ビジネスが忙しければ働く拠点が変わる。

 また家族構成が変わっていきます。今よいと思っているマンションでも自分の働くステージやステイタスが変わる可能性が高いのならば、住まいもなるべく柔軟に変えていきたいものです。

 ならば賃借するのがよいです。マンションは所有してしまうと、意外と厄介なものです。

 ローン返済額と賃借料の絶対値だけを比較して、どっちが得だといったくだらない議論がいまだに多いですが、所有するということはその物件が自身の生活にまとわりついてくることです。

 次回の記事では、それでも買いたいという方へ、新しい時代の戸建て住宅の購入のコツについてご紹介します。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/16(土) 14:01

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