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漁獲量が激減・謎の多い魚「マアナゴ」養殖に取り組む動きも

10/16 15:10 配信

THE PAGE

 すしや天ぷら、丼ものの食材として人気のマアナゴの漁獲量が近年、大阪湾などで激減しています。全国的にもほぼ減少傾向にありますが、マアナゴの研究は減少理由を特定できるところまで進んでいないのが現状です。一方、漁業関係者の中には、マアナゴの養殖に取り組む動きも出ています。

昔は夏場でも獲れていたが今は獲れず

 「マアナゴ漁の最盛期は1月から4月にかけて。昔は夏場でも獲れていたんですが今は獲れないので誰も漁に出ません」と語るのは、大阪府南部の泉南市にある岡田浦漁業協同組合の東裕史さんです。

 マアナゴは、ウナギ目アナゴ科の魚です。産卵場所とされているのは、日本の最南端である沖ノ鳥島の南方にある九州・パラオ海嶺のある海域。卵からふ化するとそこから黒潮で北に流されて、日本沿岸や朝鮮半島沿岸、東シナ海に面した東アジアの沿岸にたどりつき、成魚に成長します。

 ちなみに、ニホンウナギも南方のマリアナ諸島付近の海域でふ化した後、黒潮で東アジア沿岸に流されてきますので、マアナゴとは体型だけでなくライフサイクルも似ています。

大阪湾の漁獲量は1996年の約40分の1に

 農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、大阪府のあなご類(マアナゴ、クロアナゴ)の漁獲量は、国が統計を始めた1995年で646トン、翌1996年は743トンありました。

 ところが、その後は年々減り続けて2019年には18トンと1996年の約40分の1に激減。泉南市でも、2004年の140トンから2018年には3トンにまで落ち込んでしまいました。

 マアナゴが獲れなくなっているのは大阪湾だけではありません。日本全体でも2019年の漁獲量は1995年の約4分の1(3329トン)にまで減少しています。

全国的にも漁獲量が減少傾向

 なぜ、漁獲量が減ってしまったのか。原因は明らかではなりませんが、水産研究・教育機構水産資源研究所の横内一樹さんによると

(1)南方の産卵場所から来遊する稚魚の量が減少している

(2)日本沿岸にたどりついた後にうまく育たない

(3)海流の変化などで稚魚がたどりつく場所が変わった。

 などの理由が可能性として考えられるそうです。

 もっとも、横内さんによると「全国一律に減っているわけではありません。たとえば、伊勢・三河湾や瀬戸内海などの内湾では減少していますが、東北地方沿岸、九州の東シナ海側沿岸では横ばいです。国外では、韓国沿岸でもゆるやかに減少しています」とのことです。

「マアナゴは謎の多い魚なんです」

 減少の理由だけでなく、マアナゴ自体についてもまだ良くわかっていないことが多いのが現状です。

 たとえば、成魚になったあと、産卵のために再び南方に戻るはずですが、どの程度の大きさ・年齢になれば戻るのか不明です。

 大阪府立環境農林水産総合研究所の山中智之さんは「大阪湾で2歳以上のマアナゴの獲れる量はすごく少ないので、多分2歳になる前に紀伊水道から太平洋に出ているはずですが、現状ではまだくわしいことはわかっていません。マアナゴは謎の多い魚なんです」と話します。
 
 知見が足りないため、マアナゴの成魚の資源量、つまり東アジア沿岸各国を含めて全体でおおむねどの程度の成魚が存在するのかの推測も現状ではできていません。

 横内さんによると、水研機構やその他の研究機関では現在、酸素濃度が低い水のかたまりである「貧酸素水塊」の発生状況や、干潟の減少などによる生態系の変化にも着目して、沿岸の環境変化がマアナゴの生育に与える影響について研究が行われているそうです。

 こうした研究を通じた知見の積み重ねが、マアナゴの資源保護に欠かせません。

「浜」の活性化図るため漁協が取り組むマアナゴ養殖

 こうした中、冒頭の東さんが所属する岡田浦漁協では「浜」の活性化を図るべく、2015年から泉南市や近畿大学水産研究所の協力を得ながらマアナゴ養殖に取り組んでいます。

 毎年3月ごろに地元の漁師が獲ってきた稚魚を水槽に入れ、エサを与えながら育てます。今年は約2万匹を水槽に入れました。

 水槽の海水は井戸から汲み上げて、フィルターで不純物をろ過した上で使用。マアナゴは水温が26℃以上になると弱りはじめるため、25℃以下に保ちながら育てています。

 成魚の出荷時期は8月から年末いっぱいまで。泉南市のふるさと納税の返礼品に用いるほか、岡田浦漁協の直売所で販売。今年度は市内小中学校の給食用にも提供するそうです。

 「年々、水槽に入れた稚魚の生き残る率が上がっており、今年度は80%を超えそうです」と東さん。今後は市内の飲食店をはじめ出荷先をさらに広げるつもりです。

完全養殖技術を確立すれば天然の稚魚に頼らない養殖可能に

 採算面では現時点で厳しい状況のようですが、近畿大学水産研究所教授の家戸(かと)敬太郎さんは、「天然マアナゴの漁獲量が減って価格が上がっているので、養殖でも採算をある程度合わせることは可能。稚魚さえ確保できれば、産業として成り立つ可能性は十分あります」と見ています。

 同研究所では現在、卵から人工ふ化させたマアナゴを成魚に育て、その成魚から採った卵をまた人工ふ化させる、という完全養殖の研究にも取り組んでいます。

 完全養殖技術を確立すれば、天然の稚魚に頼らない養殖が可能になります。
(取材・文:具志堅浩二)

THE PAGE

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最終更新:10/16(土) 15:10

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