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苦境のヨーカドー再生に挑むヒューリックの秘策

10/7 6:01 配信

東洋経済オンライン

 9月23日、横浜市鶴見区に商業施設「LICOPA(リコパ)鶴見」が開業した。元々は「イトーヨーカドー鶴見店」で、約半年間の改装を経てショッピングセンターに生まれ変わった。手がけたのは不動産大手のヒューリックだ。

 電通本社ビルやティファニー銀座ビルなど高額物件の売買で鳴らすヒューリックだが、都心の大型物件だけでなく、ヨーカドーが入居する郊外の店舗も買い進めている。鶴見店は2018年にJXTGホールディングス(現ENEOSホールディングス)から取得。同時期には近隣の川崎店を、さらに今年8月には千葉県の四街道店も取得した。このほか福島県の福島店も保有する。

 不動産業界にとって、ヨーカドーのような総合スーパー(GMS)は将来性が疑問視され、投資よりも売却対象とみなされている。四街道店を売却した上場REIT(不動産投資信託)の日本都市ファンド投資法人は、「近隣競合環境の激化が予想される中で、将来的なダウンサイドリスクの可能性など総合的に勘案した」とする。

 同法人は川崎店の売り主でもあり、同店を売却した理由もやはり競争環境の激化と収益の伸びしろが限られる点だとする。

 “逆張り”にも見えるヒューリックのGMS買収だが、勝算はあるのか。

■客数1.5倍の野心的な計画

 リコパ鶴見でテナントリーシングを担当したバリューアッド事業部の後藤杏奈部長代理は「年間の来客数を400万人に引き上げる」と豪語する。ヨーカドー鶴見店時代の来店客数はコロナ禍以前でも年間約260万人であり、客数を1.5倍に伸ばす野心的な目標だ。

 まず手を付けたのが、ヨーカドーの売り場面積の縮小だ。ヨーカドー鶴見店時代には5階建ての建物をイトーヨーカドーが1棟借りしていた。1、2階の店舗区画のうち食料品を扱う1階の売り上げは堅調だったが、衣料品が中心の2階は低迷していた。

 そこでリコパ鶴見ではヨーカドーの売り場を1階フロアの半分に縮小。扱う商材も食料品に絞った。

 丸ごと空いた2階フロアにどんなテナントを誘致するか。カギを握るのは建物の形状だ。長方形の建物内に店舗が建ち並ぶショッピングモールとは異なり、リコパ鶴見はGMSで採用されることが多い正方形のフロアだ。中央の吹き抜けを囲む形で店舗が並び、来店客は中央のエスカレーターかフロア端のエレベーターで館内を移動することが想定されている。

 長方形の建物と比べ、正方形のフロアは各店舗区画の奥行きが広くなり、テナントによっては面積を使い切れない懸念があった。そこで、大型店舗を展開するテナントに照準を定めて誘致することに。2階フロアにダイソーやABCマート、ニトリの「デコホーム」などが入り、1階には500坪以上の大型店舗の出店に注力している無印良品が進出した。

■「ラゾーナ川崎」とは戦わない

 特徴的なのは、リコパ鶴見に入居するテナント計33店舗の中にアパレルブランドが見当たらないことだ。衣料品部門が苦戦したヨーカドー時代の反省を踏まえただけでなく、リコパ鶴見の立地も関係している。

 横浜市鶴見区に立地するリコパ鶴見だが、半径5㎞圏内には川崎駅があり、駅に接続する「ラゾーナ川崎」を筆頭に大型商業施設がひしめく。アパレルブランドを豊富に取り揃えた商業施設と太刀打ちをするのは難しいと判断し、商圏を半径2㎞に定めて生活必需品に品ぞろえを特化したのだ。

 商圏内の人口は約18万人で、主流は30~40代のファミリー層だ。そこで学童保育や英会話教室、体操教室など、子どもを対象とするテナントを誘致。館内に子ども向けの遊具も設置し、ファミリー層の来店を促した。ヨーカドー時代はシニア層が来店客の中心だったが、域内の主力層に照準を合わせた形だ。

 テナントの入れ替えに加えて、細かな部分でも収益を捻出できるようにした。ヨーカドー鶴見店時代は679台もの駐車区画があったが、郊外店舗とはいえ車離れが加速する中では過剰だった。そこで132台分の駐車スペースをバーベキュー場やフットサルコートとして賃貸し、23台はカーシェア用の自動車を配置した。

 このような再生策を駆使したことで、オープン後2週間の客数は想定を超えて推移しているという。ほかにも、川崎店などほかのヨーカドー店舗の改装も検討し、高収益店として生まれ変わらせようとしている。

 ヒューリックが2020年2月に発表した中長期経営計画では、不動産賃貸や売買と並んで、「バリューアッド事業」として既存物件の再生を収益柱に位置づけている。リコパ鶴見はヨーカドー店舗の再生案件としては初弾である。GMSの改装を通じて収益力を高め、賃貸物件として中長期的に保有する狙いだ。

 不動産売買に比べて時間も手間がかかるバリューアッド事業は、短期的な利益が見込みにくい。それでもヒューリックが成長事業に位置づける理由の1つは、開発メニューを多様化することにある。転売や建て替えに加えて、用途変更や増築、耐震補強といった第3の選択肢を開拓することで、取り扱う不動産の幅を広げている。

 これまではオフィスビルに傾倒していたヒューリックだが、こうして商業など新たな用途を開拓することで、オフィスとしては活用が難しい物件や土地の取り扱いを拡大させている。2019年9月に開業した商業施設「ヒューリックアンニュー吉祥寺」の建物も、元々は病院として使用されていたのを再生させたものだ。

■スターツもヨーカドー新浦安店を再生

 不動産会社がヨーカドー店舗を再生させた例は、ヒューリックにとどまらない。不動産管理のスターツグループは、2018年9月に千葉県浦安市で「ニューコースト新浦安」を開業した。これも元は「イトーヨーカドー新浦安店」で、1棟借りをしていたヨーカ堂が不採算を理由に撤退を表明していたところを、スターツが取得した。

 スターツがヨーカドーの店舗を取得した目的は、商業施設として収益を上げるためだけにとどまらない。スターツは浦安市内で総戸数170戸の分譲マンションや全88区画の戸建てを開発するほか、高齢者施設やホテルも運営している。市内で大型商業施設を運営することにより、自社物件の販売や利用の促進策になると踏んだのだ。

 
ヨーカドー退去後、スターツはスーパーマーケットのヤオコーやニトリなどを核テナントにすることで、日常使いのショッピングセンターとして見事物件を再生させた。

 ヒューリックやスターツが取得したヨーカドー店舗の売り主は、いずれもREITや一般事業会社などの長期投資家だ。集客力が落ち込み、建物も老朽化の進むGMSは、保有し続けるのに二の足を踏むケースは珍しくない。一方、店舗の改装やテナント入れ替えに長けた不動産会社は、大幅な業態変更や建て替えを視野にソロバンをはじくことができる。

 売り上げ不振が叫ばれるGMSだが、不動産会社の“再生力”次第では金脈となりそうだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/7(木) 6:01

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