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ファミマで「大規模システム障害」が判明、スタッフ数千人の給与支払いに被害

9/29 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 ファミリーマートで大規模なシステム障害が起きていることが、同社への内部取材で明らかになった。約7000店舗、数千人のアルバイトスタッフの給与支払いに影響が出て、ファミマ本社は大混乱に陥った。その中で浮かび上がってきたのは、ファミマを完全子会社化した伊藤忠商事とファミマの現場との対立構造だった。(フリージャーナリスト 赤石晋一郎)

● ファミマで大規模システム障害 約7000店、数千人の給与支払いに影響

 ファミリーマートで大規模なシステム障害が起きていることが、同社への内部取材で明らかになった。

 トラブルが起きたのはファミマ店舗の人事給与システムで、東日本エリアの加盟店の多くがトラブルによる被害を受けたという。

 「人事給与システムにトラブルが起きたことで勤怠(出勤や退勤をはじめとした従業員の出勤状況)データや給与計算、振り込みデータがロストしてしまった。アルバイトや一部の正社員に対して給与が払われないというトラブルが続出したのです。ケースによっては、アルバイトの給与が別のアルバイトに支払われてしまった、ということもあったようです」(ファミマ社員)

 このシステム障害によってファミマ本社は大混乱に陥った。北海道から静岡県の一部にわたる東日本エリア約7000店舗、数千人のアルバイトスタッフの給与支払いに影響が出たのだ。問題は9月10日の給与支払い日までに収束しなかったという。

 「当初、ファミマ本部は店舗加盟者が勤怠データ(シフトの控え等)を確認し、立て替えで給与を支払うように要請したものの、資金的に余裕がない加盟店から猛反発が起きて断念しました。現在は本部立て替えで給与を処理中ですが、9月20日の週になっても給料が未払いになったままのスタッフもいたようです」(同前)

 東日本エリアのトラブルを受けて、西日本エリアはバージョンアップを中止し、西日本エリアへ被害が拡大することはなかったという。しかし、ファミマ本部はシステム障害については社内の一部にしか発信をしておらず、外部公表もしていない(9月27日時点)。ファミマは今年の4月に“システムセキュリティーの専門家”との評判を持つ北野隆氏をCIO(最高情報責任者)兼システム本部長に任命したばかり。同氏は伊藤忠商事からの出向者だった――。

● 伊藤忠によるファミマ完全子会社化で 経営体制は大きく刷新された

 伊藤忠商事は昨年8月、ファミマに対して株式公開買い付け(TOB)を行い完全子会社化。今年の3月には伊藤忠の“次期社長候補”ともいわれる細見研介氏をファミマの社長に送り込んだ。ファミマ前社長の澤田貴司氏は代表権を持つ副会長に就くなど、経営体制も刷新された。

 細見社長は就任時会見において「『稼ぐ・削る・防ぐ』の三つの観点で今後の施策を整理し明確化する」と述べ、成長路線へのかじ取りに期待が集まった。

 子会社化から約1年、ファミマの売り上げは好調に推移しているという報道も出るようになった。会社設立40周年ということもあり、3月から「40のいいこと!?」というキャンペーンをはじめ、新企画やCM出稿など販促費をふんだんに使ったPRを行ってきたことも好影響した、と分析されている。ファミマの既存店の月次売上高(前年同月比)は、直近の8月こそ0.7%減と微減したが、4月9.1%増、5月7.4%増、6月3.3%増、7月6.5%増と、セブン-イレブンやローソンと比較しても圧倒的な伸びを見せているのだ。

 だが、「実態は真逆で、かなり苦戦中」と語るのは、別のファミマ社員である。

 「前年対比の数字にはカラクリがあります。昨年はコロナ禍でファミマは独り負け状態だったので、対前年で比べれば今年度の数値はV字回復したように見えるだけ。むしろ問題は、外部から大物CMO(最高マーケティング責任者)を招聘して大々的にキャンペーンを打っているものの、まだ2019年度のコロナ前の数字に戻せていないことにあります」

 ファミマの21年の売上高を19年同月比の数字(下表参照。20年前年同月比×21年前年同月比による推計)で見てみると、決して好調とはいえないことが分かる。

 3月92.4%(7.6%減)、4月93.0%(7.0%減)、5月95.6%(4.4%減)、6月94.8%(5.2%減)、7月94.8%(5.2%減)、8月91.7%(8.3%減)という数字となり、推計ではあるが証言通りの状況だといえそうだ。

 一方でセブン-イレブンの同19年同月比を見てみると、3月99.8%(1.2%減)、4月99.8%(1.2%減)、5月96.1%(3.9%減)、6月100.7%(0.7%増)、7月97.5%(2.5%減)、8月96.9%(3.1%減)という結果だった。ファミマと比較すると回復基調にあるといえるだろう。

 ファミマは昨年、元日本マクドナルドの足立光氏という大物マーケッターをCMOに招聘したものの、まだV字回復というべき成果は出せていないのが現実のようだ。

● 伊藤忠のファミマ完全子会社化で目立ってきた 「加盟店軽視」の象徴的エピソード

 ファミマが伊藤忠の完全子会社になってから、より目立つようになったのが、「加盟店軽視」の流れだ。例えば前述のシステム障害においても「ファミマ本部が当初、店舗に給与立て替えを依頼したのは、お店のキャッシュフローを考慮しないあまりにむちゃな話だった。フランチャイズシステムを提供する会社としてはあり得ない」」(同前)という。

 システム障害が起きたときの本部の対応は「加盟店軽視」だったといえる象徴的なエピソードだ。

 “次期社長候補”と前評判が高い細見氏がファミマ社長に就任した直後のことである。伊藤忠ではアパレルビジネスで名を馳せ、スタイリッシュないでたちで商社マン然としている細見社長だが、コンビニビジネスのトップとしてはまだ新任だった。

 元社長の澤田氏は細見氏に対して「加盟店の重要度」について懇々と諭したというのだ。

 ファミマ本部の中堅社員が振り返る。

 「澤田さんは前例のない改革プランを強行したことでいろいろ批判も受けましたけが、『加盟店ファースト』を掲げ、現場や加盟店を大事にしていたトップであったことは事実です。コンビニビジネスの“肝”は加盟店にあると考え、加盟店とLINEで直接やりとりをするほどコミュニケーションを重要視していた。ところが伊藤忠支配が強まる中で細見氏が新社長になり、ほとんど現場感がなくなってしまったのは残念なことです」

 「伊藤忠からもバンバン執行役員クラスの社員が出向してくるようになった。いまでは伊藤忠内部で重要なことは決めて、決定事項としてファミマ社員に落とされてくるということが日常になった。トップダウンで施策が決められて現場に下りてくる。いずれも机上の空論のようなプランばかりで、何も知らされていない現場はそのたびに混乱するという事例が多くなりました」

 細見社長が「顧客に対して新しい購買体験を提供できる」と語り、鳴り物入りで始まったのがサイネージ(電子看板)事業だ。サイネージ事業は全国のファミマ店内に複数台の大画面サイネージを設置し、エンタメ情報やアート、ニュース等、映像コンテンツを配信するビジネスである。広告収益による増収が期待されており、ファミマは22年春までに3000店舗にサイネージを展開する予定だとしている。

 「サイネージ事業は伊藤忠主導のプロジェクトで、やはりファミマ社員には何も知らされないまま下りてきたと聞きました。大画面サイネージを安全に設置するためには、店舗の躯体をいじる必要があります。そのためには家主の許可が必要となるので準備には一定の時間がかかる。それなのに来春には3000店舗という数字だけが一方的に発表され、建設部隊など現場が大慌てで対応に追われているという状況なのです。こんな状態なので、来春に3000店舗にサイネージが設置できるとは誰も思っていません」(加盟店関係者)

 また、伊藤忠主導によるサイネージ事業には別の形でも異論の声が上がっているという。前出のファミマ社員は、システム障害も「塚本氏(直吉・取締役専務執行役員)がシステム本部長を離れた途端に起きた」トラブルなのだと指摘し、こう続ける。

 「システム本部長から新たに商品本部長に就任した塚本取締役もサイネージ事業には難色を示しているとうわさされています。サイネージ広告ではいろいろな企業広告を配信するはずですが当然、営業がしやすいファミマの取引先メーカーもターゲットとなる。すると商品のメーカーからは『サイネージに広告を出したのだから販売促進キャンペーンを控えさせてほしい』と要求されるケースが出てくる可能性がある。本来、加盟店の利益になるはずの販売促進などのメーカー協力金が、サイネージの売り上げに回されて伊藤忠に吸い上げられてしまうことを塚本氏らは悩んでいるのではないかと想像します」

 塚本氏はサークルKサンクス出身で、取締役に残り続ける数少ない現場派幹部であり、プロパー社員からの信任も厚いという。つまりファミマ社内では、サイネージによって「伊藤忠vsファミマ」という形の利益を巡る暗闘が始まりつつあると予想されているのだ。

 しかし、伊藤忠サイドも必ずしも一枚岩ではない。伊藤忠関係者が声を潜めて語る。

 「サイネージ事業を進めているのが細見さんの出身母体である第8カンパニーです。ここはかなりの異色部署で、細見さんを本体社長にするためには手段を選ばない“過激派”と伊藤忠の社内では揶揄されています。サイネージのような打ち上げ花火を上げて、細見さんの加点につなげようとしているのは明白です。責任と後始末はファミマの現場に押し付ける。商社としてあんなやり方が許されるのか、と伊藤忠内部での疑問の声は根強くある」

 過激化する細見派(伊藤忠・第8カンパニー)によるファミマ侵攻と、水面下で抵抗を画策するファミマプロパー派の対立。こうした図式が生まれる背景にはお互いの価値観の相違がある。

 伊藤忠サイドは、細見社長が自ら語っているようにコンビニ事業は頭打ちと見て「新規事業」に活路を見いだそうという考えだ。サイネージだけではなく、24年までに1000店舗導入を計画している無人店舗(無人決済コンビニ)もその一つといえる。細見派としてはファミマでデジタルトランスフォーメーション(DX)の先鞭をつけ、「本体社長就任への花道を飾りたい」(前出・伊藤忠関係者)という思惑があるとされる。

 一方でファミマプロパー派の人間はファミマ自体に「まだ手堅い伸びしろ」があると考えている。言い換えるとファミマはコンビニビジネスを“まだ、やり切れていない”と見ているのだ。

 前出のファミマ本部の中堅社員はこう語る。

 「ファミマは店舗数が多くポテンシャルは高い。セブン-イレブンに少しでも肩を並べるためにも、彼らに負けないような商品開発を行い、オペレーションを磨き上げていけば、まだまだ成長余力はあると考える現場社員は多くいます。その意味で商品本部を預かる塚本さんに期待を寄せている社員は多い」

 「だが実際には、足元を固めることができていないのに、伊藤忠主導の新規事業がバンバン発表される。無人店舗にしても既存店舗とどう共存していくのか、というアナウンスのないまま1000店舗という数字だけが発表されました。ファミマのビジネスが直営店モデルであれば自己責任で好き勝手やればいい。しかし、現行のファミマは加盟店との『相互発展の精神』で成り立つフランチャイズモデルなのです。利益のほぼ全部を加盟店からのフィーで得ている。加盟店軽視の経営方針は、加盟店への裏切りであり、ともすればフランチャイズ契約にある本部の責務を果たしていないと言わざるを得ない」

 「いまのファミマが加盟店軽視になっているのはシステム障害の対応にも象徴的に表れています。コンビニビジネスにおいて『システム』と『商品』は二つの心臓です。加盟店に負担をかける結果になっているのに、問題を公表しようとしない姿勢はあきれるばかりです。人事給与システムすら満足に動かせないのに、はるかに高度な技術が要求される無人店舗を運営できるのか、と社内からは冷ややかな声も出始めています」

 システム障害や加盟店軽視の状況について質問をぶつけたところ、ファミマ広報はこう答えた。

 ◇

 ――システム障害が起こったと聞いた。

 「8月から一部店舗に導入した給与計算のシステムが、9月上旬になってデータ処理が集中したためにトラブルを起こしてしまったのは事実です。一部エリアに影響が出ましたが、具体的な内容や被害については回答を差し控えたい」

 ――アルバイト代などが支払われなかったのか?

 「対策は講じています。加盟店には丁寧に説明をし、対処させていただいている」

 ――細見新社長となり、加盟店軽視が続いているという指摘がある。

 「社長は現場を大事にしている。コロナで店舗には行けていないが、緊急事態宣言が明ければいつでも現場に行きたいという認識でいる」

 ――業績好調とされているが、コロナ前の水準には戻っていないと聞く。

 「コロナ前の水準にはもう一つ(戻っていない)。クリスピーチキンやコンビニウェアなどのヒット商品がお客さまに受けているので回復に向かっている」

 ――サイネージ3000店舗という目標や、無人店舗1000店舗といった新規事業構想が加盟店を混乱させているのではないか。

 「サイネージの設置に手間がかかるのは事実であり、説明を尽くしていく。無人店舗は(従来店舗が)出店できないエリアに、加盟店と相談の上で出す計画であり、加盟店と商圏が重なることはない。新規事業については加盟店に対して丁寧に説明していきたい」

 ◇

 この9月に創業40周年を迎えたファミマ、彼らに突き付けられた課題は多い。

ダイヤモンド・オンライン

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最終更新:9/29(水) 18:11

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