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日経平均株価が一時急落したのは本当に中国の恒大集団のせいなのか?

9/27 7:31 配信

東洋経済オンライン

前回のコラム「『日経平均3万円超』で、今すぐに株を買うべきか」(9月13日配信)では、日経平均株価について、急騰したが年末の予想値である日経平均の高値メド3万1000円は変える必要がないと述べた。さらに、今後も日経平均が上がり続けるとは考えておらず、むしろ短期は下振れ(3万円を割れて、場合によっては2万9000円も割る)し、そこから「年末までに本格的な3万円超えを再度達成する」という見通しを示した。

 短期的に株価指数が下振れすると見込んでいたのは、主に以下の2つの見方による。

(1)国内の政治動向は日本株の売り材料ではないが、とくに大きく買い上げる材料にもならない
(2)これまでの日本株の急騰は、海外長期投資家が本格的に日本株を買っているわけではなく、先物の買い戻しやプログラム売買による機械的な買いがまず先導し、その後に株価上振れに泡を食った一部投資家が慌てて買ったことによるもので、こうした買いは長続きしないだろう

 というものだ。

 また、海外市場の動向として、「多くの内外投資家の目が日本株の急伸に奪われているところ、アメリカの株価指数の頭が極めて重くなってきたことのほうが、筆者は気にかかる」とも指摘した。

■なぜ日本株は一時的な調整に入ったのか

 実際の相場を振り返ると、日経平均は9月14日までは何とか単なる勢いで年初来高値を更新した。だがその後は調整に入り、いったん3万円を割れた。先週末の24日は3万円を再奪回して引けているが、今週以降また下値探りに向かうものと考えている。

 「気にかかる」と述べたアメリカの株価も、8月半ばには3万5600ドルを超えたニューヨークダウ平均は、一時3万4000ドルを割れ、そこから反発はしているものの、3万5000ドルに届いていない。

 とくに日本株がどうして調整に入ったかといえば、「日本の政治情勢の変化が大きく株価を押し上げている」「海外の長期投資家が本格的に買っている」「日本株は大相場に入った」という言説がすべて誤りであったため、その誤りが訂正されているだけだろう。

 「日本株の割安さが根本的に見直されている」との声もあるが、日本株が今割安だとすれば、1カ月前も2カ月前も割安であったはずだ。最近までちっとも割安だと考えなかった投資家たちが、ある朝起きてみたら突然割安だと思い直した、などといったことはありえない。

 ただ、「誤りが訂正されつつあることが株価調整の主因である」ということは、別の言い方をすれば、株価が一段と下落しても、政治情勢や景気や企業業績などに何かとても悪いことが起こっているわけではない。

 さらに、日経平均が2万9000円を割れるかもしれないとは言ったものの、2万9000円という水準は14日の終値3万0670円からわずか5%強下でしかない。「これから日経平均は3万1000円、3万2000円、3万3000円と、どんどん上がるんだ~、わ~い、わ~い」とはしゃいでいた向きからすれば、2万9000円台への下押しは「すさまじい下落」と感じられるのかもしれないが、とくに騒ぐようなものではない。

 同じ意味合いで、現在の日本株やアメリカ株の水準は別にバブルではないし、この先、日米の株価が下振れしたとしても、それは別にバブル崩壊でもない。単なる“よくある株価”の上下動にすぎまい。

■日本株の下落は「中国恒大集団のせい」なのか

 筆者は、多くの方がご存じの通り、性格が「邪悪」なこともあり、しばしばご批判をいただく。このように、足元の株価調整は「誤りの訂正」だと語ると、「いや、そんなことはない。実際の株価反落は、中国恒大集団(以下、恒大)の債務問題を懸念して、アメリカの株価が反落し、それに日本株が引きずられたのだ。恒大の問題さえ噴出しなければ、日経平均はどんどん上昇したに違いない。馬渕さんの短期株価調整見通しは、まぐれ当たりしただけだ」というご意見を頂戴しそうだ。

 しかし、同社の問題は、別にここ数週間の間に突然発覚したわけではなく、だいぶ前からささやかれていたことだ。それが日米の株価を押し下げた本質であれば、例えば日経平均が14日に年初来高値を更新したことを説明できない。

 とはいっても、恒大の債務については「中国では大問題である」ことには異論がない。まず同社の債務総額そのものが2兆元弱(日本円で33兆円強)と、中国の名目GDPの2%にも相当すると報じられている。

 その債務が一部でも返済不能になると、銀行からの融資が不良債権化する、社債がデフォルト(債務不履行)に陥る、などの問題が生じよう。だが、同社向けに融資を行なっている企業が、「理財商品」と呼ばれる金融商品の形で投資家に貸し出し債権を転売しており、そうした商品への投資家も打撃を受けるだろう。恒大が直接投資家に理財商品を売って資金調達した、との報道もある。

 加えて、恒大の債務の約半分が買い掛け債務であるとのことだ。取引業者から恒大が建築資材などを購入した際に、その代金を後日支払うとしている額が買い掛け債務に相当する。もしそうした買い掛け債務までが毀損すると、一般事業会社にも直接悪影響が及ぶだろう。

■恒大は見せしめになるのか

 中国政府は、恒大そのものの救済はするまい。最近の中国政府の動きの背景には「共同富裕」があるようだ。つまり、中国の一般庶民は「IT企業やその経営者はぼろ儲けしてずるい」「株式や不動産への投資家は濡れ手で粟とばかりに儲けてずるい」「お金持ちで子供を高級な塾に入れ、高学歴を得させる家庭はずるい」といった怨嗟を抱いている。

 政府はそれに応えて、さまざまな産業を規制し叩こうとしている。すると、恒大だけではなく、ほかの不動産企業も巨額の負債を抱えているが、それで破綻しても“見せしめ”とし、庶民の留飲を下げることを優先するだろう。

 23日には恒大が中国元建て社債の利払いを行なったと報じられたこともあり、24日にかけて主要国の株価は持ち直した。だが、同日に期限が来たアメリカのドル建て社債の利払いは行われていないようだ。そもそも、そうした目先の利払いを乗り切っても、これから次々と利払いや償還の期限を迎えるため、安堵するのは早計すぎる。

 しかしながら、中国経済全体が混乱することは、中国政府も望んではいまい。このため、必要であれば中国人民銀行が流動性(現金)を潤沢に供給するなど、マクロ的な景気対策は打ち出されるだろう。

 つまり、中国政府は産業規制を次々と打ち出しても、経済全体は何とか支えられるという自信を持っているようだ。ただ、それこそが「自信過剰」であって、経済運営に失敗するリスクは否定できない。

 恒大を含めた中国全体の債務問題がリーマンショックの再来となる、との言説もよく聞く。実際、BIS(国際決済銀行)によれば、中国の民間非金融部門の債務(銀行、証券、保険を除く企業と家計の債務合計)は、今年3月時点で経済規模(名目GDP)の2.2倍を超えている。

 アメリカでリーマンショック直前に最も民間非金融部門の債務が膨らんだ時点でも、同国の名目GDPの1.5倍に達していなかった。中国の現状の深刻さがうかがえる。

■「日本株浮上のカギ」は何か

 しかし、リーマンショックがまた来るかのように騒ぐのは、いきすぎだろう。まず、アメリカの金融市場が広く世界に開かれ、同国の金融の動揺が世界に伝播したのとは対照的に、中国の金融市場はかなり閉鎖的で、世界的な負の連鎖は起こりにくい。

 またリーマンショックの本質は、住宅ローン債務の劣化であるが、当時は同ローンの中で質が悪いサブプライムローンが証券化され、投資家に転売されていた。それだけでなく、証券化ローンをほかの証券とまとめて証券化したCDO(債務担保証券)が販売され、さらにCDOを組み入れたCDO、さらにそれを組み入れたCDOと、金融商品が複雑化した。

 その結果として、もともとのサブプライムローンが多く劣化した際に、その損失を複数のCDOを経由して最終的にどこの誰が負担するかがわからなくなり、突然どこかの投資家(金融機関を含む)が破綻するかもしれない、との恐怖が伝播して、市場がパニックに陥った。

 それに対して今の中国では、確かに「理財商品」として一度は融資が転売はされていたようだが、とくに中国以外に金融商品という形で転売が広がっているとは考えにくい。

 とすれば、恒大を含む債務問題は中国にとっては大きな問題だが、それ以外の国にとっては限定的な影響を受けるにとどまりそうだ(ただし過度に楽観視するのは危険)。

 このため、日本を含む諸国(中国を除く)の経済や企業収益、株価については、中国の経済が大きく混乱するのかどうか、その影響が他国にどの程度間接的に及ぶのかを、見極めていくことになるだろう。

 残念ながら、中国と地理的に近く経済的な関係も深い日本の株式が、世界の投資家から欧米株などを上回る買いを集めるとは期待しがたい。日本株の浮上のカギは「脱中国」だろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

東洋経済オンライン

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最終更新:9/27(月) 10:23

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