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高田明の声はなぜ高い?本人が教える話術の秘密

9/27 4:31 配信

東洋経済オンライン

コロナ時代の長期化で、企業のリーダー層は部下に自分の意思をどう伝えたらよいのか腐心する。営業の最前線に立つビジネスパーソンは顧客、取引先とのコミュニケーションの方法で日々悩む毎日だろう。ビジネスシーンにおけるコミュニケーションは今、企業の大きな経営課題になったのである。
『週刊東洋経済』9月27発売号では「無敵の話し方」を特集した。スピーチ、プレゼンテーション、営業など12の「話し方」スキルを徹底的に解説している。今回、ジャパネットたかたの創業者で、独特の話術で知られる高田明氏にビジネスで成功する話し方のポイントを聞いた。

■価値を感じる提案ができれば、1億円の土地でも売れる

 ──これまで話し方や伝え方について、心がけてきたことは? 

 このコロナ禍で、伝えること、コミュニケーションの大事さが改めて認識された。国際紛争に社会の分断、すべての事象は伝わったか、伝わっていないかということに根本的な原因があるように思える。

 人間はつねに誰かと一緒に生きていかなきゃいけない動物でしょ。夫婦や親子であっても、あるいは上司と部下、国と国であっても、対立の中に見え隠れするのはコミュニケーション不足や伝え方の問題と考える。

 私が重要だと考えるのは、伝えたということと、伝わったということとの違い。政治の世界や企業の世界でもそう。国民や消費者に自分たちの考えが伝わったかどうか、確認もせずに伝えたつもりになっているように感じる。

 ラジオ・テレビ通販の30年の経験上、伝えたつもりでは売り上げも利益も出ない。伝わったという事実があって初めて、お客様が買うか買わないかの選択をされる。伝えたつもりでは、その選択までいかない。だから私は、伝わったかどうかをつねに自分自身に問い続けていた。

 ラジオ通販では、1万円でも売れなかったものもあるが、30万円もするパソコンを何千台と売ったこともある。お客様に商品の価値を感じてもらうためには、自分の思いをどう伝えていけばよいのか。自分なりに一生懸命、考え抜いてきた。今は、音声だけでも価値を感じてもらえる提案ができれば、100万円の商品でも、1億円以上の土地でも売れると思う。

 ──テレビはどうでしょうか。

 テレビは言葉だけではない。自分の立ち居振る舞いや表情も要素に加わってくる。

 皆さんがテレビで俳優さんを見て、「ああ、優しそうだな。優しい話し方をするな」と思う場合、それは作った優しさではなく、その人の本質がにじみ出ているためだと思う。テレビは言葉も加えて、自分のすべてをさらけ出していく世界だ。

 実はラジオも「見えている」というのが私の持論である。「見えるって何?」と思われるだろうが、リスナーは心の目で聴いている、見ている。

 ラジオ番組の人気パーソナリティーは言葉の発し方、言葉遣い、相手を思いやる言葉などに気を配っており、それをリスナーがきちんと感じ取る。パーソナリティーの心の動きを想像しながら、楽しんでいる。

 ラジオでそうやって完璧に聴くということは、もう見えることと同じ。リスナーは全部お見通しなのだと思う。本質的にはテレビもラジオも同じ。テクニックだけでは通じない。

■声が高いのは「自分の言葉で伝えたい」気持ちから

 ──聞き手の気持ちになって、その頭の中に絵を描くように話す「お絵描き話法」で評価されています。

 伝えるということは、相手がいてこそ成り立つ。相手の気持ちや人の心を感じる力が自分にないといけない。今のコロナ禍において、疲弊している、商売ができない人たちがたくさんいる。そんな人たちの心情を置いてきぼりにしては、本当に伝えたいことは伝わらない。

 たとえ話し方がうまくてもダメだと思う。これは商売でもどんな世界でも同じ。伝えるというのは、親が子どもと向き合うのと同じように、相手を感じる心を持っていなければいけない。

 私は声のトーンがとても高いと言われてきた。何で高かったのか、自分の七不思議の1つなのだが、結局は一生懸命伝えたい、自分の言葉で伝えたいという気持ちが勝っていたのだと思う。

 相手を感じる心を持ち、何を伝えるかということを自分が理解しておかないと、伝えることはできない。私たちの通販では、商品の性能、使い方を徹底的に知り尽くす。そのうえで何を選択するかが勝負だ。生半可な知識では絶対に伝えられないので、インプットにものすごく時間をかける。

 ──社員には商品の提案方法をどのように伝えていますか。

 とにかく自分で商品を手に取って、できるだけ触って使ってみたら。すると、何がポイントなのかが実感できるよ、と。インプットの量と質によって、アウトプットの精度が変わってくるのだ。

 もう1つ大事なのは、何を利点として伝えるかである。その商品がお客様の生活にどんな変化をもたらすのか、より具体的に伝えなければならない。仮に衝動買いであっても、値段以上の価値を感じたら、お客様は固定化していく。

 自分たちが伝えているもの、売っているものは最高のものであると信じて提案している。だから、ジャパネットでは商品選択が非常に重要なテーマなのである。売れば利益が出るとわかっていても、売りたくない商品は売らない。

 スマートフォンでも、LINEの機能があればいい、インターネット検索、天気予報があればいいという人もいる。お客様にとって情報は100も200も必要ではないので、生活の中の重要なシーンで役立つ情報を選択して提案する。それにはインプットの量と質が大いに関わってくる。

■通販の本質は「いかに優しい言葉として伝えるか」

 ──具体的なテクニックは? 

 最優先すべきなのは、わかりやすく伝えること。難しい言葉をわかりやすく言い換えて、初めて相手から共感を得られる。マスを相手にする場合はとくにそう感じる。

 作家の井上ひさしさんがテレビで「先生はどんな気持ちで小説を書いていらっしゃいますか?」と聞かれたとき、「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに」と答えていた。通販の本質も同じであり、いかにやさしい言葉として伝えていくかだ。

 あとは声のトーンは高いほうがいい。「Yes, we can change」を連呼したオバマ元米大統領のように繰り返すことも大事だ。さらに間を取って話す。同じトーンで10分間、話を続けても相手には何も残らない。しゃべったときに3秒、5秒の間を置いて、相手に考える時間を与える。この間は「次の有を生み出す無」ということになる。

 「〇〇はこういう商品です。値段は2万9800円」。数秒置いて、「安いと思いませんか!」。次の瞬間、視聴者は「あ、確かに言われてみたら本当に安いわ」と感じるはずだ。すかさず「フリーダイヤル〇〇〇番!」。この流れで売り上げはまるで違ってくる。

 でも、私の話し方は本当に我流。跡を継いだMC(司会者)は十数人いるが、話し方の教育をしたことは、ほとんどない。私を見て感じたことを彼らなりに学んで、表現してくれている。

 誠実さや謙虚さはつねに持っていてほしい。番組では8~9割は価格や機能について話していると思われがちだが、本当はその商品のどういう部分がお客様を楽にしたり幸せにしたりするかという話が大半だ。それを誠実かつ謙虚に伝えることを忘れてはいけない。

 「カメラはその人の歴史を、家族の歴史を残していくんです。だから使っていない人は、自分の今生きている瞬間を本当にどこかに置き忘れていますよ」と言えば、やっぱり使ってみようかなと思っていただけるのだ。

『週刊東洋経済』10月2日号(9月27日発売)の特集は「無敵の話し方」です

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最終更新:9/27(月) 4:31

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