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大手退職し「半年仕事・半年育児」のライフスタイルを実践する43歳のスゴい生き方

9/27 6:01 配信

東洋経済オンライン

 「半年仕事・半年育児」――。

 そんな無謀ともいえるライフスタイルを実践しているのは、フリーランスのビジネスコンサルタント・村上アシシさん(43)だ。かつて外資系コンサルティング大手のアクセンチュアに勤めていたが、2006年に退職して独立。以降、「半年だけ働く」というワークスタイルを確立している。

 常識的に考えれば、半年間も働かないと収入面が不安になるだろう。しかしアシシさんは、アクセンチュア時代と同等以上の年収をキープし続けている。いったいどのように収入を確保しているのだろう。そもそもなぜ彼は、いまのような働き方にたどり着いたのか。

■半年間で会社員時代の年収を稼ぐ

 まずはアシシさんの仕事について説明しておきたい。彼は、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)という専門領域のビジネスコンサルタントだ。組織内でプロジェクトの進捗管理やシステムの一元化などを行いながら、PM(プロジェクトマネジャー)のサポートをしている。

 独立後の仕事はすべて、コンサル業界専門のエージェント経由で受注しているそうだ。ここに、アシシさんのワークスタイルの秘密が隠されている。

 アクセンチュア時代は、コンサルの対価として顧客に数百万円を請求しても、給与として自分の手元に入ってくるお金は大きく減ってしまう。

 一方フリーランスになってからは、中抜きされる金額が20%前後のエージェント手数料のみ。エージェントに紹介されるプロジェクト単価の高さも相まって、会社員時代の2~3倍の報酬を手に入れられるようになった。

 報酬が2~3倍増えたことで、半年間で会社員時代の年収を稼ぎ、残りの半年間を自由時間にあてている。だから彼は、「半年だけ働く」ワークスタイルを実現できるのだ。

 さらに2016年からは、1年単位で労働期間と自由期間を区切るのではなく、週単位での”切り分け”を行っている。

 「自分の稼働率を60%に下げるかわりに、アクセンチュア時代の後輩をサポートに付けて、2人で合計120%の稼働率を確保することをクライアントに提案しました。その提案が承認されてからは、『週3日仕事・週4日自由』の働き方になっています」

 アシシさんはもともと、独立志向があったわけではない。2000年、新卒でアクセンチュアに入社した彼は、会社で生き残るために必死で働いていた。会社員時代は、徹夜もいとわないような働き方をしていたのだ。

 しかし、2005年に転機が訪れる。長期休暇を取得してヨーロッパを旅行したことが、アシシさんの価値観に変化をもたらした。旅行中にドイツで行われたサッカーの各大陸選手権「コンフェデレーションズカップ」を観て、サッカー観戦に対する熱が高まった。

 「初めてひとりでヨーロッパを旅行して、サッカーを観に行ったんです。そこでの開放感や高揚感がとても新鮮に感じられて。ぼくが本当に好きなものは『サッカーと旅』だと悟りました」

 自分が熱中できるものを海外で見つけ、それに時間を注ぎたいという思いが強くなったのだ。

 また、会社での年次が上がるにつれて先述した顧客が払うコンサル料と自分の手元に入る給料の差に気づき始める。すると、アクセンチュアで会社員として働き続けることにメリットを感じられなくなった。

 「コンサルティング業界は『自分の思考』が商品になるんですよね。だから独立してもひとりで仕事ができる。中抜きの金額が少なくなるので、収入も上げられる。そして自由を手に入れられる。会社員でいる必要性を感じなくなりました」

 加えて、アクセンチュアの企業風土も彼の独立を後押しした。

 「アクセンチュアは退職した人の出戻りを歓迎しているんです。『いつでも戻ってこい』といまでも当時の先輩に言われています。だからぼくにとっての独立は、『ノーリスク・ハイリターン』。会社を辞めることへの不安はゼロでしたね」

 アシシさんは、2006年のドイツワールドカップ現地観戦後に辞表を提出。送別会では、上司や先輩から「好き勝手にやってこい」と送り出された。

■働くことが”目的”から”手段”へ

 「フリーランスになってからは、いかに効率よく仕事を終わらせて、プライベートを充実させるかという点を重要視するようになりました。ぼくの場合、半年の自由期間に海外でサッカー観戦をしたかったので、その軍資金を稼ぐために仕事をしていました」

 アシシさんの会社員時代は、働くことが”目的”になっていたという。もちろんそれを否定しているわけではなく、彼自身は「がむしゃらに働いたからこそ、自分の能力やスキルを伸ばすことができた」と感じている。

 しかしフリーランスになってからは、働くことが自由を謳歌するための”手段”に変化していった。会社員時代と比べて働き方への意識が180度変わったのだ。

 そして2019年に子どもが生まれたことで、今度はベクトルが”自分”から”家族”に方向転換した。

 「30代までは自分の欲求に忠実に生きていました。でも家族ができたことで、いまは妻や子どもと一緒に過ごす時間がいちばん大切です。そこの優先順位は自分の中でガラッと変わりました」

 これまでは仕事以外の時間をサッカー観戦や旅に使っていたが、最近は家事や育児に時間を割いている。それが「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにつながっている。

 「サッカーの応援って、いくら頑張っても報われないんですよね。それに対して子育ては、頑張れば頑張るほど報われる要素が大きい。子どもが生まれてからこの差を痛感するようになって、いまは育児中心の人生にシフトしてきています。子育てって理不尽なことも多いけど、毎日楽しんでいますよ」

 アシシさんのように自分の自由時間を得られるのは、フリーランスの醍醐味といえる。が、フリーランスは景気や社会情勢によって収入が不安定になるデメリットもある。

 クラウドソーシング大手のクラウドワークスが2020年4月に発表した調査によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって収入が減ったフリーランスは、約7割にも及んだという。

 独立から15年が経過しているアシシさんは、今回のコロナショックはもちろん、リーマンショックの荒波も経験している。そうした苦境下でフリーランスが生き残るためには、「複数のポートフォリオを組んでリスクヘッジをする」ことがひとつの手段だと話す。

 アシシさんはコンサル以外に、ふたつの仕事を掛け持ちしている。ひとつは、「研修講師」。外部講師として企業に招かれて、プロジェクトマネジメントやビジネススキルを教えている。

 もうひとつは、「プロサポーター」としての仕事だ。彼がこれまで培ってきたサッカー観戦のノウハウを活かし、オンラインサロンを開いたり書籍を出版したりしながら収益をあげている。

 このように複数の収益源を確保しておけば、コロナショックのような不測の事態が起きてもリスクを分散できるのだ。実際、アシシさんはコロナ禍でプロサポーターの収益が激減したが、コンサルや研修講師の仕事があったおかげで大きな痛手にはならなかった。

■得意領域に好きをかけ合わせる

 では、どうやって複数のポートフォリオを持てばいいのだろうか? 

 「自分の得意領域と好きな領域をかけ合わせることですね。最近は『好きを仕事に』という言葉をよく耳にしますが、正直、”好き”だけで成功するのは難しい。コロナ禍のような不況が来たらなおさらリスクが高まる。だからまずは自分の得意領域を伸ばして、そこに”好き”をかけ合わせたほうが再現性があると思います」

 これは、フリーランスに限った話ではない。終身雇用制度が崩壊しつつある現代社会では、会社員にも通じることだ。

 「これからの『人生100年時代』を生き抜くためには、会社員も複数の軸をつくり、それを掛け算していくべきです。会社に入って『1万時間の法則』(ある分野で一流として成功するのに必要な訓練時間)で1人前になれたら、別の業界に行って自分のできることを増やしたほうがいいと思います」

 アクセンチュアでファーストキャリアを築き、フリーコンサルとしてセカンドキャリアを謳歌しながら、複数のポートフォリオをつくり上げてきたアシシさん。現在はそのポートフォリオを活かしたサードキャリアを模索している。

 「40代になって仕事の捉え方も変わってきました。コンサルはぼくにとって『ライスワーク(生活するための仕事)』でしたが、いまは他者貢献や社会貢献にやりがいや生きがいを感じられるので、それを『ライフワーク』にしたいと思っています」

 誰かに何かを教えることで、その人が新しい気づきを発見したり成長したりする姿を見られるのが幸せだという。これまで副業にしていた研修講師やプロサポーターの仕事では、その幸福感を得られるのだ。

 だから今後はそのふたつのマネタイズに注力し、これまで本業だったコンサルの仕事は「いまのプロジェクトが終わったら辞める」考えも持っている。

 「これからは一歩引いた立場で、若い世代に継承したり貢献したりしていきたいです。研修講師もプロサポーターも、そういう部分で楽しくやらせてもらっています。いまのところ、すぐに現役を引退して働かないという考えはないですね」

 20代は自分を高めるためにひたすら努力し、30代は労働時間を減らして自分の時間を楽しんだ。迎えた40代、アシシさんのキャリアは新たなステージに突入する。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/27(月) 6:01

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