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「時短勤務」を極力避けるべきこれだけの理由

9/26 7:01 配信

東洋経済オンライン

育休明けで職場復帰となったとき、短時間勤務(時短勤務)を選択する人が一定数いますが、「時短は最後の手段にすべき」と3000以上の家計を診断してきたFP(ファイナンシャル・プランナー)の内藤眞弓氏は言い切ります。
なぜ、「時短勤務」は極力避けるべきものなのでしょうか?  内藤眞弓氏が共働き夫婦からの家計相談を受ける中で、よくある「お悩み」を類型化して再構成し、解決策を示した『3000以上の家計を診断した人気FPが教える お金・仕事・家事の不安がなくなる 共働き夫婦 最強の教科書』から一部、抜粋・編集のうえ、お届けします。

■いまだ性差別のある日本企業

 日本企業では一般的に女性は不利な状況に置かれています。

 企業による採用・配置・訓練・昇進などにおける性差別は、平均的に女性は離職率が高い、時間外労働をさせにくい、責任ある仕事を任せにくいなどといった事情によるものです。これは、企業が利潤追求を優先するゆえに生じる統計的差別と考えられます。

 統計的差別とは、男性よりも女性の離職率が平均的には高いため、企業側が女性への投資に慎重になることを指します。

 その背景には、女性が男性より多くの時間と精力を家事・育児に費やすことを当然視していることがあります。

 このような状況下で、夫婦が仕事と家庭の両立をはかろうとすれば、将来夫のほうが昇進する可能性が高いと判断し、妻のほうが短時間勤務(以下、時短勤務)を選択することになります。

 そうすると、家計全体の収入減少につながりますから、男性は長時間労働から降りられません。結果として、男性は家庭領域での役割を果たすことができなくなります。

■時短勤務で仕事量は変わらないのに収入は激減

 第1子出産後、産休・育休を経て職場復帰をしたHさんは、先輩や同僚で子育てをしている人がいなかったため、育児と仕事の両立に対して不安が大きく、ひとまず時短勤務を選択しました。

 いざ始めてみると、時短勤務といっても仕事量が減るわけではありません。勤務時間内で終わらなかった仕事を、自宅に持ち帰ることもあります。ところが給料明細を見て、予想以上の収入減という事実に愕然とします。

 単純に考えると、出産前に8時間働いていた場合、1時間の時短で給料は8分の7、2時間の時短で8分の6になるはずです。しかし、以前はついていた残業代がなくなったり、ボーナスが減少したりするなど、実際の減少幅はもっと大きくなります。

 フルタイムで約314万円だった年収が、時短勤務にすると約178万円になるという試算もあります(※1)。家計収入から140万円近い金額が消えてしまうのです。当然、将来の厚生年金にも影響が及びます。

 いずれフルタイムに戻ってキャリアを取り戻せる展望があるならよいのですが、「時短の人」と周囲から見られてしまい、時短勤務を契機に不本意ながらもマミートラックに乗ってしまうことが多いのです。

 「別に出世したいわけじゃない」と考えるかもしれません。しかし、収入が減る割に仕事量が減らないと、「やってられない」とばかりに、パート勤務転換への心理的ハードルがぐっと下がってしまいます。一時的な事情や感情で将来の可能性を摘みとってしまうのは慎重であるべきです。

 また、妻が時短勤務をすることによって、夫は主たる稼ぎ主の座を降りられませんから、「男は仕事、女は家庭」の役割分担は固定化される可能性が高まります。

 出産前には平等に家事を担っていた夫婦であっても、一度固定化してしまうと、もとに戻すためには相当のエネルギーを要します。

 当初はフルタイムに戻ろうと考えていたとしても、そのためには家庭と職場双方において、さまざまな交渉が必要になってきます。そのような労力をかけるくらいなら、さまざまな方法を駆使して、夫の仕事も妻の仕事も大事にしつつ、子育て期を乗り越えるほうが建設的ではないでしょうか。

 ある大手製造企業は社内保育園を社費で作っていますが、これは社会奉仕ではありません。10年かけて育てたスタッフが家事育児で力尽きて辞めてしまえば、それは大きな損失となるからです。

 社内結婚が多いその会社は、女性ばかりが育休を取ると、彼女らの職場の上司が割を食うため、イクメンを増やし、イクメン用の情報交換インフラを作っているそうです(※2)。

 これは一企業内での職場間の不公平を是正する視点でのインフラ作りですが、広く企業単位で見れば、女性を多く雇用している企業の育児支援制度に、男性を多く雇用している企業がフリーライドしていることになります(※3)。

■新たな時代に取り残されない

 しかし、世の中は少しずつ変わっています。ある日、周りを見渡したら「自分たちだけが取り残されていた」となってしまわないよう、夫婦で経済的責任を分散させて新時代の波に乗って行くほうが得策です。

 「男性だから長時間労働も厭いません」「女性だから稼ぎが少なくてもいい」といった硬直的な役割配置では、順風満帆とばかりはいかない人生を乗り切っていけません。

 「男性は一家を背負っている」という悲壮感が夫を追い込み、健康を害してしまったのではもとも子もありません。そもそも家事をしないからといって、会社での出世が保証されるわけではありません。

 セクハラやパワハラが蔓延する職場や、長時間労働が常態化する職場など、身体や精神の健康を損ねるような職場を回避し、自分の命を守ることも大切です。そのためにも、家庭内での稼ぎ力を1人に集中しないことがリスク管理になるのです。

 家族はそれぞれが取り換えの利かない大事な人材です。夫婦共通の責任事項である家事と育児を分担し、それぞれの稼ぎ力を保ち続けるために、仕事と家庭のどちらにも負荷がかかり過ぎないようにすることが家庭運営の秘訣です。

(※1)転職Hacks「給与の計算方法も紹介! ─時短勤務すると給与はどのくらい減る?」 https://ten-navi.com/hacks/article-291-25802
(※2)海老原嗣生・荻野進介(2018)『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち─「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』白桃書房
(※3)治部れんげ(2019)「夫の会社が妻の会社の育児支援にタダ乗り─カネカショックで露呈した現実」BUSINESS INSIDER、6月11日 https://www.businessinsider.jp/post-192525

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最終更新:9/26(日) 7:01

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