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半年~1年待ちも!トヨタ車の「納期」はなぜ長い? 背後にはライバルの弱体化も

9/26 9:01 配信

東洋経済オンライン

 自販連が毎月、発表している登録台数ランキングを見ると、上位のほとんどがトヨタ車で占められている。直近となる2021年8月のランキングでは、上位10車種のうち7車種がトヨタ車だった。しかも、1位から3位は、すべてトヨタ車だ。

■乗用車ブランド通称名別順位(2021年8月)
1位:トヨタ ヤリス (1万8476台)
2位:トヨタ ルーミー(1万347台)
3位:トヨタ アクア (9442台)
4位: 日産 ノート (7157台)

5位:トヨタ カローラ(7108台)
6位:トヨタ アルファード(6483台)
7位:トヨタ ライズ (5920台)
8位:ホンダ フリード(5200台)
9位:トヨタ ハリアー(4987台)
10位:ホンダ ヴェゼル(4404台)
出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会

 しかし、これだけ登録台数が多いにもかかわらず、最近のトヨタ車は全般的に納期が長い。最長は、2021年7月に登場した新型「ランドクルーザー」で、メーカーは「1年以上」と案内しているが、販売店では「納車までに少なくとも2年以上を要する」という。

 同様に9月14日に発売されたばかりの新型車、「カローラ クロス」もすでに納期は4~6カ月で、中でもハイブリッドは長めだというのだ。

 特にSグレードは、ほかのグレードに比べて納期が1~2カ月長い。グレードによって生産の開始時期に差を付けており、なおかつSグレードは、発売後半年間は定額制でクルマを使うKINTOの専用車になるからだ。

 このほか、登録台数ランキングの上位に入る車種の納期を販売店に尋ねると、「ヤリスクロスは8~9カ月、ハリアーは5~7カ月、アルファードは5~6カ月。ヤリスも3~4カ月を要する」と返答された。販売が好調なSUVを中心に、人気車の納期は半年前後に達するのだ。

■納期遅延、2つの理由

 こうした長い納期の理由を販売店に尋ねると、以下のように返答された。

 「納期が長い理由は、大きく分けて2つある。ひとつは昨今の半導体不足だ。半導体以外の部品も、海外を含めてコロナ禍の影響により滞っている。2つ目の理由は、トヨタ車の販売が好調なこと。ありがたい話だが、受注台数に対してメーカーの生産体制が追い付いていない」

 つまり、登録台数ランキングの上位を独占できたのは、“生産が追い付かないほど売れているため”といえるだろう。現在、国内で新車として売られる小型/普通車の内、トヨタ車の比率は53%(レクサスを含む)に達する。

 では、なぜトヨタ車の販売がここまで好調なのか。商品力が高いのは当然として、そのほかの理由に“ライバルメーカーの弱体化”も挙げられる。

 まずホンダでは、軽自動車の「N-BOX」が、国内で新車として売られるホンダ車の30%以上を占める。そこに「N-WGN」なども加えると、ホンダの国内販売の50%以上が軽自動車だ。日産も国内で販売される新車の30%以上を、「デイズ」や「ルークス」といった軽自動車が占める。

 今では、スズキとダイハツに加えて、ホンダや日産までが軽自動車の比率を増やしたため、国内で新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車になった。

 そうなると、販売規模の大きなメーカーで、小型/普通車に力を入れるのはトヨタだけとなる。その結果、トヨタに需要が集中したのだ。

 小型/普通車市場でトヨタが強いというよりも、ホンダや日産の売れ行きが下がった結果として、トヨタのシェアが50%以上に押し上げられたと見るべきだろう。

 また、トヨタ車が販売ランキングの上位に集中する理由として、トヨタ車の売れ行きが二極分化したことも挙げられる。販売台数ランキングの上位にはトヨタ車が並ぶが、売れ行きを下げた車種も少なくない。

 例えば、「クラウン」は2018年8月には5674台が登録されたが、2021年8月は1244台だから、売れ行きは3年前の22%に留まる。「C-HR」も3年前は6075台だったが、2021年8月は1304台と21%しか売れていない。

 さらにアルファードの姉妹車となる「ヴェルファイア」は、アルファードに人気が集中したうえにグレードを整理したこともあり、2018年8月は2907台だったのに2021年8月はわずか300台と、3年前の約10%まで激減した。「プリウス」も、7471台から3793台へ半減している。

 このようにヤリスやルーミーが好調に売れる一方で、登録台数を大幅に落とした車種もあり、人気車と不人気車の格差が拡大した。その結果、人気車種の納期遅延が起こっているのだ。

■全車全店扱いの弊害

 販売格差が拡大した背景には、2020年5月から全国的に実施されたトヨタの新しい販売体制も影響している。従来の体制では、トヨタ店/トヨペット店/カローラ店/ネッツ店の4系列が、それぞれ専門に扱う車種も用意していた。

 例えばアルファードはトヨペット店のみ、姉妹車のヴェルファイアはネッツ店のみが販売して、ほかの系列では買えなかった。そうなるとネッツ店は、専売車種となるヴェルファイアに力を入れた。

 ところが2020年5月以降は新しい販売体制の導入により、トヨタの全車をすべての店舗で買えるようになった。人気車のアルファードは、それまでアルファードやヴェルファイアを扱っていなかったトヨタ店とカローラ店でも、好調に売れ始めた。そればかりか、今までヴェルファイアに乗ってきたネッツ店の顧客も、アルファードへ乗り替えるようになった。

 その結果、ヴェルファイアの売れ行きが下がってグレードも整理され、2021年8月は、アルファードが6483台、ヴェルファイアは300台という格差に至った。このように全店が全車を扱う販売体制に移行すると、人気車は全店で売れ行きを伸ばす。逆に伸び悩む車種は、売れ行きをさらに下げてしまう。

 また、以前ならトヨタ店の顧客がクラウンからアルファードへ乗り替えようとしたとき、さまざまな好条件を提示してクラウンに留まるように説得していた。アルファードを扱うのはトヨペット店だから、乗り替えられるとトヨタ店は顧客を失うからだ。

 しかし、全店が全車を扱う今なら、トヨタ店でもクラウンからアルファードに乗り替えられる。引き止める理由もなく、単純にいえばクラウンの売れ行きが1台減ってアルファードは1台増えるから、2台分の格差が生じる。

 以前は日産やホンダにも販売系列があり、専売車種も用意していた。それが2000年から2007年頃にかけて、全店が全車を扱う体制に変わり、車種ごとの販売格差が拡大した。その結果、ホンダでは前述のように国内で売られる新車の50%以上が軽自動車になった。

 軽自動車にコンパクトサイズの「フィット」「フリード」「ヴェゼル」も加えると、国内販売全体の80%以上に達する。販売しやすい一部の車種だけが、国内市場を支えているわけだ。

 日産の売れ筋車種も、ルークスやデイズなどの軽自動車の他は、コンパクトカーの「ノート」とミニバンの「セレナ」に限られる。これらを合計すると、国内で新車として売られる日産車の約70%だ。

■販売格差が生み出すユーザーの不利益

 トヨタは販売体制を変更した直後で、軽自動車も少数のOEM車以外は扱わないから、ホンダや日産ほど売れ筋車種が偏っていない。それでも販売格差は急速に進んでいる。

 ルーミーが登録台数2位になった背景にも、販売体制の変更を受け、2020年9月のマイナーチェンジで姉妹車の「タンク」を廃止したことがある。タンクの需要もルーミーに移り、売れ行きを伸ばしたのだ。

 過去を振り返ると、2年前の2019年8月には、ルーミーが7474台、姉妹車のタンクも5967台が登録され、合計すれば1万3441台であった(2020年はコロナ禍で大きく落ち込んだ)。2021年のルーミーは1万347台だから、姉妹車を合計すると実は2年前の方が多く売れていた。

 このような販売格差は、ユーザーにさまざまな不利益をもたらす。まずは冒頭で述べた“納期の遅れ”がある。今は半導体の不足もあり、すべてのメーカーで納期遅れが生じているが、トヨタでは前述のとおり売れ筋車種の多くが半年以上と長い。

 納期2年を要する新型ランドクルーザーについては、販売が海外中心という事情も絡む。開発者によると「生産総数の50%以上が中東で販売され、オーストラリアとロシアを加えると90%に達する」という。日本国内はランドクルーザーにとって小さな市場だから、割り当て台数も限られ、納期が2年まで延びた。

 「ヤリスクロス」を含めたヤリスと「アクア」は、3車種ともにエンジンやハイブリッドシステム、プラットフォームなどを共通化している。これらの車種を次々と投入したことも、納期を延ばした理由だ。アルファードやハリアーの長い納期にも、偏りのある売れ行きが影響を与えた。

 販売格差がユーザーに及ぼす2つ目の不利益は、“車種の廃止”だ。売れ行きを激減させたヴェルファイアは、次のモデルチェンジで廃止され、アルファードに統合される見込みである。

 「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」の3姉妹車も、エアロパーツ装着車がヴォクシー、標準ボディはノアになり、エスクァイアは廃止されることが決まっている。

 先ごろ、エスクァイアのホームページに「21年12月上旬をもって生産終了いたします。長い間たくさんのお客様にご愛顧いただきました」というアナウンスが出された。

 このほか「マークX」「プレミオ&アリオン」「ポルテ&スペイド」「プリウスα」などは、販売格差による売れ行きの低下も影響してすでに廃止された。販売格差は、ユーザーの選択肢を減らしてしまう。

■新車を買うなら長い納期を覚悟して

 トヨタは全店が全車を扱う販売体制に変わり、ホンダや日産は軽自動車の販売比率を増やした。これらの影響で、販売台数ランキングの上位にはトヨタ車が並び、販売格差が拡大して納期遅延を引き起こしている。国内販売のいろいろな事柄が、互いにつながっているわけだ。

 新型コロナウイルスは、国内・海外ともに短期間では終息しないといわれる。そうなると半導体の不足も長引く。

 従来、新車の納期は1~2カ月が一般的だったが、しばらくは長めに半年程度と考えたほうがよさそうだ。

 特に昨今の新車需要は、約80%が乗り替えに基づく。現在、使っているクルマの車検満了に合わせて新車に乗り替えるので、納期が予想外に長いと、新車が納車される前に車検が満了してしまう。商談を早めに開始するなど、新車を買う時には注意が必要である。

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最終更新:9/26(日) 12:41

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