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セックス・ピストルズとの衝撃の出会いが教えてくれた創造のヒントとは

9/25 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じでしょうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」12代目経営者の細尾真孝氏です。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』が9月15日にダイヤモンド社から発売されました。「失われた30年」そして「コロナ自粛」で閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのでしょうか? 新しい時代を切り開く創造や革新のヒントはどこにあるのか? 同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けします。これからの時代を見通すヒント満載の本連載に、ぜひおつきあいください。

● セックス・ピストルズが体現していた「工芸的な姿勢」

 創造と革新を生むための第一のポイントは、「固定観念の打破」です。

 実は私は、二〇代前半の頃はプロのミュージシャンとして活動していました。音楽にのめり込むようになったきっかけは、高校生の頃に「パンクミュージック」と出会ったことでした。

 特に、イギリスのセックス・ピストルズというバンドに大きな影響を受けたのですが、今にして思えば当時、私がパンクに惹かれたのは、そこに「工芸的な姿勢」が表れていたからだと思います。

 音楽に興味が出てくると誰しも、既存のアーティストの曲を「コピー」して演奏します。でも中学生の頃の私は、他人の曲をコピーして演奏したり、コピーバンドをすることにまったく夢中になれませんでした。

 人の曲をコピーすることにモチベーションが上がらなかったのは、それが私の中で創造的活動ではなかったからです。一般的な道筋ですが、私はそこには面白さをまったく感じませんでした。

 でも、高校生の頃にセックス・ピストルズと出会って、大きな衝撃を受けました。コード進行も原始的で、演奏も決して上手くはない。

 それでも彼らは確実に、自身たちの音楽を自分たちでつくり出していました。完全にオリジナルな存在でした。その姿に、興奮を覚えたのです。

 「音楽はプロがつくるものだ」―。そういう固定観念があるから、誰しも最初はコピーバンドをやるのだと思います。

 でも、自分でギターを鳴らして好きにメロディーを付けたり、叫んだりすることのほうに喜びがある。ピストルズによって私は、「自分で音楽をつくればいいんだ」ということに気づかされたのです。

 コピーバンドをやることには、まったく興味が持てませんでしたが、「自分で曲をつくる」ことには夢中になることができました。それを生業(なりわい)にしたいと思い、ミュージシャンになろうと決意しました。

● パンクは、「プロの音楽」に対する カウンターカルチャー(対抗文化)だった

 パンクが当時の音楽シーンに一大センセーションを巻き起こしたのは、それがいわゆる上手な「プロの音楽」に対するカウンターカルチャー(対抗文化)だったからです。

 それがカウンターでありえたのは、パンクも人間の欲求から生まれているからです。それは、何かを創造したいという欲求です。

 すべては工芸の思考である「自らの手で、何かを創造したい」という欲求にある。その意味で工芸とパンクはイコールなのだと思います。パンクはよく「演奏が下手」とか言われますが、欲求を大事にしているから、演奏が上手いか下手かは関係ないわけです。

 アメリカ生まれのアート・リンゼイというミュージシャンをご存じでしょうか。

 彼は「ギターの弾けないギタリスト」として知られています。彼は一九七〇年代末から八〇年代初めにかけてニューヨークで「DNA」というバンドをやっていましたが、このバンドが面白いのは、ギターを弾くアート・リンゼイはギターを弾けず、ドラムを演奏する森郁恵はドラムを演奏したことがなかったことです。

 彼らもまたパンク・ロックに影響を受けていました。

 「楽器が弾けなくたって音楽はできる!」

 これはまさに既存のコード(規範・枠組み)の破壊です。世間一般のコードにとらわれず、既存のコードを壊して、自ら新しいコードを創造しているのです。

 これからのビジネスに求められることも、これと同じではないでしょうか。

 つまり、既存の価値観や慣習にとらわれずに、自分の中の「何かをつくりたい」という欲求に忠実に、とにかくやってみることで、世の中に新しいコードが生まれるのです。

細尾真孝(ほそお・まさたか)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。

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最終更新:9/25(土) 6:01

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