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高額でも人気、鉄道イベント「有料化」広がるか マニアックな内容でファン増やし、利益も生む

9/24 6:31 配信

東洋経済オンライン

 JR東日本横浜支社は9月2日、2つの鉄道イベントの開催を発表した。車両基地内の見学や撮影会の参加者を募集するものだったが、その内容に多くの鉄道ファンが注目した。

JRE MALL横浜支社 販売第1弾! 
「発見! 車両センターの仕事をのぞいてみよう! in鎌倉車両センター」「相模線新旧車両撮影会in国府津車両センター」を販売いたします!! 
 注目を集めたのは中身もさることながら「販売」という点だ。価格は鎌倉車両センターのイベントが1組(親子2人)1万3500円、国府津車両センターのほうは8000円と、けっこうなお値段である。

■値段は張るが人気呼び完売

 鎌倉車両センターでのイベント内容は洗浄車両への乗車体験、運転台操作・検査体験、車両ジャッキアップ見学、車両撮影会とオリジナル缶バッジの作成、パンタグラフの検査体験と盛りだくさん。対象は3歳以上12歳以下の子どもと保護者の親子2人1組で、午前の部・午後の部と分かれ、各15組が参加できる。国府津車両センターのほうは、相模線で現在運行中の205系や新車のE131系を並べるというもので、対象は18歳以上。こちらも午前の部と午後の部に分かれ、各15人を募集した。

 これらのイベントは、JR東日本のショッピングサイト「JRE MALL」で販売し、いずれも9月21日時点で完売している。

 従来、車両基地の公開や、一般向けの車両撮影会は、ファンサービスとして無料で行われることが多かったが、上記の例に限らず最近は有料の鉄道イベントを各社が開いている。なぜ、有料イベントが目立つようになったのだろうか。

 一般に、鉄道関連のイベントには子どもの来場が多い。鎌倉車両センターのイベントも親子連れが対象だ。ただ、親子ともども鉄道が好きでないと気軽に参加するにはちょっと高いかもしれない。

 JR東日本横浜支社広報部によると、今回のイベントはファン向けということでターゲットを絞るためにこのような形にしたという。その代わり、通常は立ち入れないところも案内することで参加者に満足してもらい、イベントとしての特別感を出す狙いがあるという。よりコアな層に訴求する内容にしたわけだ。

 日ごろは見られない場所や体験など、内容を充実させたツアー形式の有料イベントに力を入れているのが東武鉄道だ。昨年12月には、「SL大樹」の重連運転試乗会の体験ツアーがあり、SLの重連往復走行を体験できた。東武トップツアーズが企画、実施したツアーで、参加費は大人1万6000円から2万円だったが、「GoToトラベル」事業支援対象だったため、実際にはより安く参加できた。このほか、「りょうもう」号の200型登場30周年を記念し、同車両に乗って車両解体場などを訪ねるツアーも実施している。

 このように、私鉄の場合はグループの旅行会社が企画する形も多い。京成グループの京成トラベルサービスは、車両基地見学やミステリーツアー、日頃は運行しない車両で成田スカイアクセス線を走るツアーなどを京成電鉄の後援で企画している。9月19日と20日には「親子で電車運転シミュレータ体験プログラム」を実施した。京成の「動力車操縦者養成課程」を子ども向けにアレンジした1泊2日のツアーである。車掌区見学や講義、電車運転シミュレータ操作体験といった内容で、参加費は親子2人で10万円。このあたりのイベントとなると、プレミア感も相当なものとなる。

■「実費相当」の例も

 有料でも安価な例もある。コロナ感染拡大で中止になったものの、小田急電鉄は今年夏に「小田急グループ 親子体験イベント2021」を開催する予定だった。鉄道に限らず小田急グループの仕事を体験してもらうという内容で、その中の1つに「ファミリー鉄道教室」があった。

 これは小学生とその保護者16組32人が参加可能で、参加費は1組1000円。運転士・車掌の仕事紹介や、電車の仕組み、安全運行、乗車マナーについて学ぶほか、基地では洗車機による車両洗浄の乗車体験が予定されていた。

 これまでに紹介したイベントと比べて安いが、その理由を小田急に聞くと、「実費相当をいただいている」とのことだった。この程度なら親がそれほど鉄道に興味がなくても支払うのに躊躇はないかもしれない。ただ、小田急もグループの小田急トラベルによるツアー形式のイベントはそれなりの金額である。

 今年6月、西武鉄道は長年続く「西武・電車フェスタ2021 in 武蔵丘車両検修場」を開催した。昨年はコロナ禍で開けなかったが、今年は入場最大5000人の事前申込制として実施した。

 入場者数は絞ったものの、参加費は無料だった。西武鉄道によると、利用者や沿線住民をはじめとする人たちに電車に親しんでもらい、事業に理解を深めてもらうために無料としたとのことだ。ただ、このイベントではレストラン列車の「52席の至福」を利用したカフェや、会場に直接乗り入れるツアー列車は有料だった。

 西武はこのように申込制とすることで「密」を回避し、無料の大規模イベントを開催したが、以前から事前応募制である東京メトロの「メトロファミリーパーク in AYASE」は昨年に引き続き、今年も中止となった。これは例年開催してきた綾瀬車両基地の公開で、応募制だが従来の例でいえば参加可能人数は1万5000人と多い。それでも数倍の申込があったといい、人気は高い。

 東京メトロに今後の開催について尋ねたところ、「当社におけるイベントについては、コロナ禍における実施の在り方について現在検討を進めています」といい、「各イベントの趣旨や目的をふまえ、それぞれ開催方法や有料化について慎重に検討してまいります」とのことだった。コロナ禍の収束が見えない中、人気の高い無料イベントを継続するか、あるいは何らかの別の形にするか、鉄道各社にとっては悩みどころだろう。

■ファンサービスと利益を両立

 鉄道イベントの有料化は、コロナ禍の中で少しでも増収を図るという狙いもあるだろうが、その内容を見ると、鉄道各社が自社の持つ車両や設備などのコンテンツとしての魅力や価値を改めて認識したからと考えることができる。一般客の関心が薄くても、鉄道ファンにとっては価値が高いというものは多い。マニアックな内容の企画とすることで、イベントがファンを対象とした「商品」になりうることが証明されてきたといえるだろう。

 沿線住民や利用者サービスとしての無料イベントは、実際に取材すると鉄道会社の負担は相当なものであろうと感じる。物販などに力が入るのはそのためでもある。

 そんな中、ファンサービスとなり利益も生む有料イベントは1つの選択肢である。高いと感じられる金額の設定も、そのために動かす人や車両、設備などを考慮すれば妥当と考えられるだろう。内容を充実させて有料化するという動きは、今後も広がっていくのではないか。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/24(金) 6:31

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