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法人税減税は失敗だった? 新型コロナ下で増え続ける企業の内部留保

9/24 5:01 配信

マネー現代

格差拡大を表す数字

(文 磯山 友幸) 自民党総裁選挙に立候補した4人が、ほぼ異口同音に「格差の是正」を主張している。アベノミクスによってデフレに歯止めがかかったのものの、その恩恵を受けた層と受けられなかった層が鮮明になり、格差が拡大したというのだ。

 「分配」に問題があるというわけだが、「分配論」は伝統的に左派野党の専売特許で、共産党はもとより、旧民主党や立憲民主党などが声高に主張してきた。ところが、それを自民党が真顔で語り始めたのである。

 もちろん、総選挙を控えて、選挙民の歓心を買おうとしているだけで、本心ではなく、誰が首相になっても自民党では分配政策の強化などできるはずもない、という声もある。だが、自民党議員の多くが「格差是正」を掲げなければ、次の選挙には勝てないと思っていることの証左であると見ることもできる。

 それほど、経済格差の拡大が、日本社会を大きく揺さぶっている、ということなのだろう。

 新型コロナウイルスの蔓延で経済活動が大打撃を受けていると言われている中で、驚くべき数値が明らかになった。企業の利益が蓄積された「利益剰余金」、いわゆる「内部留保」が過去最高を更新し続けていることが明らかになったのだ。

コロナなのに内部留保過去最高

 財務省が公表した2020年度の「法人企業統計調査」によると、金融・保険を除いた全産業の「利益剰余金」は484兆3648億円と前年同期比2.0%増え、9年連続で過去最多を更新した。

 新型コロナの経済への影響は2019年度から始まった。2020年3月には行動の自粛が呼びかけられ、消費の低迷に拍車をかけた。ただ、経常利益は14.9%減少していたが、内部留保は2.6%増えていた。

 本格的に新型コロナの影響が出たのは2020年度から、緊急事態宣言での大規模店舗の休業などで経済は深刻な打撃を受けた。2020年度の経常利益は12.0%減と2年連続でマイナスになった。これだけの打撃を受ければ、企業は内部留保を積み上げることなど難しい、いや、むしろ内部留保を取り崩して、雇用の維持などに当たるだろうと見ていた。

 内部留保を増やし続けてきた企業経営者の言い分は、主として「危機に備える」ということだったから、戦後最悪と言われた新型コロナでの経済危機で内部留保を活用しなくて、いつ使うのか、ということだろう。

 にもかかわらず、である。蓋を開けてみたら、全体としては内部留保が増え続けていたのである。もちろん、業界や企業によって新型コロナの影響には差があるから、内部留保を大きく減らした企業もある。だが、全体としては増えているのだ。

 一方で、同じ統計で「人件費」をみると、2019年度1.9%減、2020年度4.7%減と大幅に減っている。金額にして、2019年度は6兆3345億円、2020年度は6兆8671億円、2年間で企業は合わせて13兆円余り人件費を減らしていたのだ。

 つまり、新型コロナで事業活動に影響を受けたのに対応して、人件費を減らしたということなのだ。意図的に給与カットしていなくてもテレワークなどで残業が減り、人件費が減った、ということなのかもしれない。

 いずれにせよ、利益の減少と共に、人件費も抑えられているのに、企業はせっせと内部留保をため込んだということになるのだ。

アベノミクス減税の結果が

 かねてより、企業が積み上げている内部留保に課税すべきだ、という意見がある。いわゆる「内部留保課税」だ。企業経営者は反対で、法人税を払った後に残ったものが利益剰余金なので、それに課税すれば二重課税になる、という。また、バランスシートの左側(貸方)に利益剰余金として載っているからと言って、余っているお金ではなく、左側(借方)は建物や設備などに使われているのだ、という反論もある。

 もちろん正論なのだが、一方で、借方に「現金・預金」が259兆円も積み上がっているのも事実なのだ。

 内部留保が過去最高を更新し始めたのは2012年度から。第2次安倍晋三内閣が発足した時である。「アベノミクス」によって企業収益が大幅に改善し始めたから、その効果とも言える。だが、最も大きかったのが、安倍政権下で実施された法人税率の引き下げだ。

 2015年度には25.5%から23.9%に引き下げられたのに続き、2016年度には23.4%、2018年度には23.2%となった。地方税を合わせた実効税率は34.62%から32.11%、29.97%、29.74%と大幅に引き下げられた。国際競争力を保つためには税率を諸外国並みにして欲しい、という経済界の要望を受け入れたものだった。

 日本企業の場合、単純な法人税率だけでなく、様々な税制上の恩典を享受しているケースが多い。いわゆる租税特別措置法と呼ばれるものだ。

 法人企業統計で、「営業純益」(営業利益ー支払利息)に占める「租税公課」の割合を計算すると、2011年度に30.7%だったものが、2017年度には16.6%にまで低下している。租税公課の額は2015年度以降、11兆円前後で推移しており、利益が増えているにもかかわらず、税負担は増えていない。

 これは財務省の税収の統計とも一致している。法人税収は2007年度と2008年度は14兆円を超えていたが、企業収益が回復しても税収はこれを更新していない。

 この間、消費税は2度にわたって引き上げられた。2020年度はバブル期を上回り過去最高の税収をあげたが、所得税の19兆1897億円を消費税の20兆9713億円が上回り、初めて消費税が最多の税収を上げる税目となった。税収総額に占める法人税の割合は2006年度の30.4%をピークに低下を続け、2020年度は18.5%だった。

給与の増加にはつながらなかった

 法人税率の引き下げは、前述の通り、日本企業の国際競争力を高め、収益性を高めることが狙いだった。

 税率を下げても税収は減っていないので、ハズレだったとまでは言えないが、安倍前首相が言い続けた「経済好循環」、つまり、企業収益の増加が給与の増加に結びつき、それが消費増となって再び企業収益を押し上げるという姿には残念ながらならなかった。特に、給与の増加に結びつかなかったのは明らかな失敗だろう。

 新型コロナに絡む経済対策で政府は雇用調整助成金の増額などに踏み切った。企業に雇用を守らせるために、法人に支給されるのが原則だ。つまり、本来は企業が負担べき人件費を国が肩代わりしていると見ることもできる。

 その額、2020年度だけで3兆1555億円に達した。法人企業統計では、企業がその2倍以上にあたる6兆8000億円を内部留保として積み上げたことを示している。

 法人税の引き下げ分の多くが、企業の貯金に回っているのでは、何のための減税だったのか分からない。

マネー現代

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最終更新:9/24(金) 5:01

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