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苦戦の鳥貴族が「トリキバーガー」で見出した活路~ファストフードであるゆえに直面した課題とは

9/23 11:01 配信

東洋経済オンライン

 かつてその安さで圧倒的な支持を集め、その目立つ黄色の看板がどこに行っても目に入るほど、店舗展開を拡大していた鳥貴族。今は居酒屋チェーンの例に漏れず、厳しい事業環境のもと、苦戦を強いられている。コロナ前(2019年7月期)に659店舗だった店舗数は2021年8月末時点で615店舗と減少。また2021年7月期の既存店売上高は前年同期比58.3%と、厳しい状況に置かれている。

 そんな鳥貴族がこのたび、コロナでも好調のファストフード業態に参入した。

■鳥貴族のDNAが感じられる店舗

 8月23日、大井町に1号店をオープンした「TORIKI BURGER」がそれだ。

 鳥貴族の強みを生かしたチキンバーガー専門店で、黄色のテーマカラーをはじめ、国産食材の使用、メニューの価格統一など、随所に鳥貴族のDNAが感じられる店舗となっている。

 8種類からなるバーガーメニューのうち、定番のトリキバーガーはカリッと揚げたチキンフィレをバンズでサンドしたもの。サクサクとした歯ごたえや、うまみのある味つけ、肉そのもののジューシーさが特徴だ。

 チキンバーガーではもちろん、同じくチキン専門のKFCがあるほか、ほかのバーガーチェーンにも必ず1品はラインナップされている。それらと比べても、トリキバーガーは新業態を代表する商品として当然とはいえ、オリジナリティーのある味わいに仕上がっている。

 そのほかのメニューも興味深い。

 つくねを使用したチーズバーガー、チキン南蛮など、居酒屋を思わせる品のほか、糖質オフダイエットで知名度を上げた「サラダチキン」を米粉のバンズで挟んだバーガーなど、思い切った商品もメニューに並ぶ。

 このたびはトリキバーガーのほかにサラダチキンの柚子胡椒マヨ味、ヤンニョムチキンを試食した。サラダチキンはレタスやキャロットラペが加わっており、サラダ感覚で食べられる。やわらかい米粉のバンズによる独特の歯触りも面白い。サラダチキンは冷めても味が変わらないので、持ち帰りにもよさそうだ。

 ヤンニョムチキンは甘辛のソースをからめた胸肉を挟んだバーガー。パンチのあるはっきりした味わいで、ビールにも合いそうだ。

 特徴としては、さまざまなバリエーションでチキンを楽しめるような品ぞろえであるということが1つ。また、やはりアルコールとの相性のよさが挙げられる。

 今回のTORIKI BURGER立ち上げの理由について、TORIKI BURGER代表取締役社長の高田哲也氏は次のように説明する。

 「鳥貴族は関東、関西、東海の3エリアで展開してきましたが、いずれはほかのエリアにも広がり、国内で飽和状態になるだろうということで、新業態の構想は数年前からありました。そこへ今回コロナ禍に見舞われてしまった。そして今後も別の感染症による同様の事態が発生する可能性もあります。そこで居酒屋事業に加えて第2の柱となる新事業創出の必要性を認識し、経営基盤の強化とさらなる成長へつなげるため、当初の計画を前倒しして立ち上げに至った次第です」(高田氏)

■ファストフードであるゆえの苦労

 冒頭にも触れたように、鳥貴族の強みはリーズナブルであることだ。全品298円(税込327円)に統一したわかりやすく、選びやすい値段設定が大きな特徴。また、低価格を実現するために、メニュー数の絞り込み、調達コストの低下、オペレーション効率化を徹底してきている。

 新業態でもそのノウハウを踏襲し、レギュラーのセットメニューはモーニングメニュー490円、デイメニュー590円で統一した。

 ただし、ファストフードであるゆえの苦労もあった。

 「おいしさと品質にこだわり、食材は国産を使用している中で、ファストフードにおけるボトム価格帯に設定するのは難しい課題でした。原価などをお教えすることはできませんが、苦労した分、コストパフォーマンスには自信があります。またファストフードとして商品をお客様に早く提供するための厨房設計にも苦労しました」(高田氏)

 今回の新業態開発に際してプロジェクトリーダーを担当してきた高田氏は、1988年に日本マクドナルドに入社、統括マネージャーや営業部長などを歴任し、2010年に現鳥貴族ホールディングスに入社した経歴の持ち主。新業態では同氏の経験が大いに物を言ったのではないだろうか。

 ただ、コロナの中でテイクアウトにも柔軟に対応できるファストフードが好調とはいえ、日本では肉ブームを背景に、牛肉100%のグルメバーガーなどがトレンドとなっている。ファストフードチェーンでも、高付加価値・高価格帯の商品展開に力を入れている。その中で、チキン専門店としてどのように勝負していくのだろうか。

 「国内でのファストフード、ハンバーガーの市場は大きく、コロナ禍でも好調を維持している点が魅力です。また、アメリカでは『Chick-fil-A』(チックフィレイ)などの専門店も業績を伸ばしています。このことからも、チキンバーガー専門店には国内市場の余地や海外展開の可能性もあると捉えています」(高田氏)

 チックフィレイは日本には進出していないものの、アメリカで非常に人気のあるチキンサンド専門店。そのほかアメリカではKFCやポパイズが有名チェーンとして挙げられる。最近ではアメリカ・マクドナルドもチキンサンドを発売するなど、チキンサンド市場が盛り上がっている様子だ。

 確かに、チキン好きという意味では日本人も負けていない。コロナの影響でテイクアウト専門の唐揚げ業態が多数出現しているのは、低コスト、小さなスペースででき、他業種からの転換がしやすいからだが、最も大きな理由は唐揚げが好きな人が多いからだ。

 北海道のザンギ、中津からあげなどさまざまなご当地メニューがあるのを見てもわかるように、鶏肉の種類や部位から衣、揚げ方、味つけなどバリエーション展開も広がりがあり、食べ比べる楽しみもある。

 そう考えると、チキンバーガーも「バーガーチェーンが一応そろえているメニュー」という位置付けから、今後大きく成長していく可能性は意外と大きいのかもしれない。

 少なくとも、TORIKI BURGERオープンの注目度は高かったようで、8月23日のオープン日も同社が想定していた以上の来店があったという。また開店後約1カ月後の現時点も一定の客足があるようだ。

 筆者が訪ねたのは平日の午後4時と、ランチやディナーの時間帯ではなかったものの、客の入りが途切れず、イートインスペースも3分の1程度が埋まっていた。

■テイクアウトが約7割

 1号店の出店地である大井町は、周辺に新旧の住宅地や商店街を抱える賑わいのある街だ。3線が接続するターミナル駅で、駅前には商業施設や商店街なども集積している。住む人、働く人、学生など客層が広く、昼夜を問わず利用人口が多い。これらのことが、大井町に出店した理由だという。

 開店間もない現時点での人気メニューはやはりトリキバーガー。次に焼鳥バーガー、つくねチーズバーガーだそう。鳥貴族による新業態の実力をはかっているというところだろう。なお、テイクアウトは約7割とのことだ。

 また、メニューの品ぞろえや味ともに、ビールなどとの相性がよさそうなのだが、今後アルコールの提供予定はないという。

 同店では今後は年4品程度の新商品投入や入れ替えを検討している。客を飽きさせず、SNSなどでの宣伝効果を高めるためにも、季節商品の展開は重要だろう。

 高田氏によれば、3年で直営店の10~20店舗体制を目指し、以降はフランチャイズ制で展開を加速させていくという。

 「海外への展開もにらみ、いずれは鳥貴族に比肩する事業に育てていきます」(高田氏)

 まずはこの3年で、チキン専門バーガーとしての存在感を確立できるかが勝負となるだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/23(木) 11:01

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