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3気筒エンジンの可能性、各メーカーの現在と未来。走りか、快適性か、自動車メーカーで異なる設計思想

9/21 8:01 配信

東洋経済オンライン

前回は、3気筒エンジンが採用されている理由や、その背景、3気筒エンジンの構造や特徴について解説した。今回は、より具体的に3気筒エンジンが見直されている理由と、各メーカーの考え方や採用車種を踏まえて解説していく。まずは、現代の3気筒エンジンの代表的なエンジンとして、フォルクスワーゲンの「新型ゴルフ」から分析していこう。

 直列3気筒エンジン車をこれまで試乗した経験も踏まえ、排気量が前型の「ゴルフ7」と比べ200cc少ない1.0Lで、どのような乗り味となるか気掛かりだった。ところがそれは杞憂で、まったく不具合を覚えることなく、いかにも直列3気筒エンジンと思わせる振動や騒音を体感することもなかった。肩透かしでも食わされたように、その仕上がりには驚くばかりだった。

 フォルクスワーゲングループジャパン広報によれば、直列3気筒エンジンの振動と騒音対策に、バランスシャフトは使っていないという。では、どのような対策が採られているのか。

■フォルクスワーゲンが行った3気筒エンジン対策

 新型ゴルフの3気筒エンジンでは、燃費を向上させるため、ミラーサイクルを実現するバルブ制御が行われている。通常のバルブ開閉時期に比べ、吸気バルブを圧縮工程になってもしばらく開けたままとすることにより圧縮比が高くなりすぎないようにし、ノッキングなどの異常燃焼を予防する。そのあとの膨張工程では、ピストンの移動距離をそのまま活かし、圧縮時と膨張時のピストン移動量が異なることを利用して仕事率を高く(入力に比べ出力を大きく)し、燃費を改善しようという策だ。

 しかしそれでは、吸気工程で筒内に入った空気を、ピストンが圧縮しているときに吸気バルブがまだ開いていることによって一部を逃がしてしまい、出力が上がらないのではないかと思うだろう。それに対し、ターボチャージャーを使って過給することにより、あらかじめ余分の吸気量を確保しておく。

 ターボチャージャーは、ミラーサイクルを採用したことから実現したとされるVTG(可変タービンジオメトリー)ターボチャージャーと呼ばれる機構が用いられている。これは、排気で回されるタービンへ排気を導入する部分に可変式の弁を設け、その開度を変更することで、エンジン回転数が低く排気量が少ない状況でも、勢いよくタービンの羽根に排気が導入され、十分な力を得てコンプレッサーを勢いよく回し、回転数を問わず吸気量を十分に確保する方法だ。身近な例でいえば、息を吐く際に口をすぼめると、少ない呼気でも勢いよく吹くことができるのと同じ発想だ。

 日本でも、タービンへの排気導入部分に可変機構を採り入れる手法は1980年代から行われてきた。だが、フォルクスワーゲンのVTGは、タービンの羽根1枚1枚により効果的に排気を導くきめ細かな機構となっている。

 ほかにカムシャフトとフライホイールにも、振動を抑える機能が盛り込まれている。カムシャフトのタイミングギアに、直列3気筒エンジンの吸排気バルブが開く時期にあわせ、120度ごとに半径が大きくなる三角おむすび型のような形状(トリオーバル形状)をつけている。これにより、バルブが開く力を必要としたとき、タイミングベルトの張力に力が増し、それによって余計な振動が起きないようにしている。フライホイールには、一部に穴をあけるなどしてわざと単体での調和を崩し、エンジンに取り付けたときに3気筒の振動を打ち消すような働きをする。

 最後に、48VのISGによるモーター駆動の補助も、振動抑制を助けているといえるのではないか。直列3気筒エンジンの振動は、低~中速回転で負荷が増えたときに顕著となるので、トルクの立ち上がりが早いモーター効果を使った低い回転でのトルク増加により、弱点を克服しているといえそうだ。

 2004年(欧州では2003年)にダウンサイジング過給の構想をフォルクスワーゲンがゴルフで採り入れてから、単に燃費を改善するだけでなく、クルマを日々快適に利用できるように考えたフォルクスワーゲンの長期的技術開発の見識には、深謀遠慮があり、感慨深い。ゴルフが世界の小型車の規範といわれ続ける背景に、そうした視野があることに気づかされる。

■3気筒+PHEVという選択をしたボルボ

 ボルボ「XC40」のPHEVも、直列3気筒エンジンを採用している。マイルドハイブリッドを含めほかのXC40は、2.0Lの直列4気筒を使うので、直列3気筒はXC40PHEVが初めてだ。このクルマも試乗をすると3気筒であることをほとんど意識させない。

 フォルクスワーゲンと違い、ボルボは直列3気筒エンジンにバランスシャフトを採用している。これによって、根本的な振動を抑えているのだろう。

 そのうえで、マイルドハイブリッドのISGと違い、PHEVとしてモーター駆動を積極的に利用することで、直列3気筒エンジンの振動の影響が出やすい低~中速域で負荷の大きい運転状況を克服しているのではないか。

 ほかのエンジン(直列4気筒)では変速機に遊星歯車を使う通常の自動変速を利用するが、PHEVではDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を使う。昨今の自動変速機もロックアップ機構を用いることで滑りの少ない、また素早い変速を実現してきているが、DCTにより、奇数段と偶数段それぞれのクラッチを用いて、遅れなしに変速することが、直列3気筒で不得意とする回転数をあまり使わない制御とするのに一役買っているので、あえてDCTを選んだのだろう。ちなみにクラッチは湿式だ。

 さらに、ボルボではディーゼルターボエンジン車の導入から、エンジン上部に騒音を抑える厚さ3cmほどのカバーを取り付けており、これがPHEVでも用いられ、騒音を客室へ届かせないことに役立っているようだ。

■国産メーカーで3気筒を取り入れたトヨタ「ヤリス」

 国産車の代表として、トヨタの「ヤリス」がある。競合車としてホンダ「フィット」があるが、こちらは直列4気筒エンジンを使う。新型の日産「ノート」は直列3気筒だが、シリーズ式ハイブリッドとして発電用に使うため、走行の動力としてもエンジンを利用するヤリスのシリーズ・パラレル式や、ゴルフ8のマイルドハイブリッド、あるいはボルボXC40PHEVとも違った利用の仕方だ。

 ヤリスの直列3気筒エンジンには、1.0Lと1.5Lの2種類があり、このうち1.0Lはダイハツが開発した登録車のコンパクトカー用である。たとえば、SUV(スポーツ多目的車)のトヨタ「ライズ」に使われているが、こちらはターボチャージャーで過給されているのに対し、ヤリスは自然吸気なので出力も低い。どちらかといえば、営業車やレンタカー向けの仕様と考えられる。

 トヨタは、ガソリンエンジンの高効率化を目指して、ダイナミックフォースエンジンと呼ぶ開発を行い、これがヤリスの1.5L直列3気筒ガソリンエンジンにも適用されている。ターボチャージャーなど過給を使う欧州のダウンサイジングとは別に、ライトサイジングとの考えから自然吸気を基本とする。

 ヤリスのガソリンエンジン車にはバランスシャフトが採用され、これで直列3気筒エンジン特有の振動や騒音を抑える対策としている。しかし、それでも全体的には直列3気筒エンジン的な振動や騒音は残り、快適性という側面において、過給機やモーター駆動を併用する他社とは異なる印象がある。また、トヨタは近年アイドリングストップをやめており、停車してもエンジンが回り続けることにより、振動や騒音に意識を向かせてしまうことも影響しているかもしれない。

 ダイナミックフォースエンジンは、燃費と動力性能を両立したエンジン本来の醍醐味を主目的としており、快適性ではやや劣るのではないだろうか。

 HV(ハイブリッド)にも、同じく直列3気筒エンジンを搭載するが、こちらはバランスシャフトを使っていないという。一方で、モーターを装備するので、その補助は得られる。しかし、トヨタのハイブリッドシステムは、エンジンとモーターの両方を併用して燃費を向上することが第一の目的であり、日産のe-POWERのような発電専用と違い、エンジンの使用回転領域が広く、振動や騒音をより感じやすい可能性がある。

 併せて、熱効率を40%以上とするため、高圧縮比や吸気の渦効果などを積極的に活用し、ミラーサイクルを利用するが、燃焼音の大きさは従来に比べ大きくなっている。この点はHV用の直列4気筒エンジンも同様で、カムリの開発責任者は前型に比べ騒音が大きくなったことを認めている。

■設計思想が異なる多彩な3気筒エンジンの未来

 トヨタにはトヨタの考えがあると思う。しかし、ガソリンエンジンの効率向上や、エンジンらしさを強調するあまり、快適性の面で行き届かないところがあるのではないかという気がする。

 一方、新開発のバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを使う「新型アクア」は、直列3気筒エンジンの振動や騒音をほとんど感じさせない。バッテリー出力を約2倍とした新バッテリーの採用により、モーター走行領域が増えたことで、あまりエンジンに頼らない走り方が快適性の向上に役立ち、ヤリスHVとは違ったアクアの存在意義を高めているといえるだろう。

 直列3気筒エンジンといっても、これほど多彩な特性を提供する。その使い道は、車両開発者がどのような商品性を目指すかによって左右されるといえそうだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/21(火) 8:01

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