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法人化は「安いから合同会社」で本当によいのか?《楽待新聞》

9/21 19:00 配信

不動産投資の楽待

大家さんが「法人化」を決めたとき、最初に迷うのが法人の種類ではないでしょうか。通常は「合同会社」か「株式会社」を選ぶと思いますが、最近は比較的手軽に設立できる合同会社を選ぶ大家さんが多いようです。

しかし、手軽さだけで決めてしまっては、あとで思わぬ事態に陥り、後悔する可能性もあります。今回は、大家さんが合同会社を設立する際のメリットと、そこに潜む落とし穴についてお話したいと思います。

■合同会社のメリットと注意点

合同会社は、2006年の「会社法」施行と同時に新設された会社の一形態です。後述する通り、手軽に設立ができるうえ経営の自由度も高いことなどから、設立件数は年々増加傾向にあります。

東京商工リサーチの調査によると、2020年に新設された法人約13万件のうち、8万6000件が株式会社、3万3000件が合同会社だそうですので、新設される法人の4社に1社が合同会社ということになります。

そんな合同会社のメリットについて、まずは順番に見ていきたいと思います。

・メリット1「設立費用が安い」

合同会社の最大のメリットは、設立費用が安いことです。会社を設立する際は登記を行わなければなりませんが、このときに支払いが必要な登録免許税は、合同会社の場合「資本金の額×0.7%(最低6万円)」です。つまり資本金が少なければ、6万円で会社が設立できるということになります(この他、定款に貼る印紙代が必要な場合もあります)。

一方、株式会社の場合は登録免許税が「資本金の額×0.7%(最低15万円)」必要になります。資本金が少なければ15万円で設立できますが、株式会社の場合、これに加えて「定款の認証」(公証人に証明してもらうこと)に約5万円の申請料が必要となるため、最低でも20万円の費用がかかります。

ちなみに定款とは、会社の名称、設立の目的など基本原則を定めたもので、会社設立時に必ず作成しなければならないものです。合同会社でも定款は必要ですが、認証は不要なため5万円の申請料もかかりません。したがって、合同会社は株式会社に比べて、約14万円安く設立できることになります。

・メリット2「役員の任期がない」

会社を設立する場合、最低1人の役員が必要です。そして株式会社の場合、役員の任期は最長10年までと決められています。任期になれば、役員に変更があってもなくても登記のやり直しを行わなければならず、登記費用がかかります。

一方、合同会社は役員の任期に期限がないため、役員が変わらなければ登記費用もかかりません(役員の変更がある場合は、登記が必要となります)。なお、役員変更登記にかかる費用は、資本金1億円以下の場合は1万円、1億円以上の場合は3万円の登録免許税に加え、司法書士手数料が2万~3万円程度となります。

・メリット3「決算公告の義務がない」

株式会社の場合は、決算内容を官報などにのせて公告(広く一般の人に知らせる)する義務があります。なお決算公告を官報に掲載する場合、1回あたり約8万円の費用がかかります。

一方、合同会社は決算公告が義務付けられていませんので、官報の掲載費用もかからない点はメリットと言えます。

■合同会社の「落とし穴」

株式会社に比べてメリットが多いように思える合同会社ですが、設立時にきちんと考えていなかったために、後になって大きな問題を引き起こすことがあります。それは定款の内容です。合同会社は定款の認証が不要で簡単に作れてしまう一方、その手軽さゆえに落とし穴もあります。

・落とし穴その1「議決権が1人1票になる」

会社の意思決定は通常、多数決で行われます。株式会社の場合、株主総会の場で決議をとり、過半数の賛成を得たうえで重要な決定を行う、といった具合です。

このときに票を入れることができる権利が「議決権」で、株式会社では通常、1株に1つの議決権があります(1株1議決権の原則)。つまりその会社の株式をたくさん持っている大株主(出資額の多い人)の発言権が強くなり、会社をコントロールできることになります。

一方、合同会社の場合、出資額にかかわらず、出資者1人につき1つの議決権です。100万円出資した人も、1万円出資した人も同じく1つの議決権を持ちます。出資額の多い少ないに関係なく、出資者同士の発言権は平等になるのです。

ここで気をつけていただきたいのが、「合同会社の役員は必ず出資者になる」という点です。節税のために家族を役員にして役員報酬を支払う、といったケースは少なくありませんが、合同会社で安易に役員を増やしてしまうと、出資者が増えることになります。その人数だけ議決権も増えることになり、議決権が分散してしまいます。

設立当初は役員が自分ひとりで問題なかった場合でも、例えば、お子さん2人とも役員にすることにした場合には、2人とも平等に議決権を持つことになります。もし将来、兄弟が不仲になってしまったら会社の方向性を決めることができず、会社運営が立ち行かなくなる恐れがあります。

そういった事態を回避するため、合同会社でもあらかじめ定款に定めることで、株式会社のように出資額に応じて議決権を付与することが可能です。このように、将来に備えた定款内容の設計が必要だと思います。

・落とし穴その2「合同会社を相続できない!?」

株式会社の場合は、株主が死亡すると株式は相続人が相続します。しかし合同会社の場合、出資者が死亡した場合は、合同会社を退社したことになり、その出資金は相続人には相続されないことになります(会社法607条)。

したがって、例えば出資者が複数おり、そのうちの一人が死亡した場合には、出資したお金は相続人に払い戻されることになります。

また、出資者が一人しかいない場合で、その方が死亡した場合には出資者が誰もいなくなるので、合同会社は解散して清算されることになります(会社法641条)。

つまり、合同会社は出資者が亡くなると相続ができず、会社の存続もできなくなってしまいます。そこで対策として、あらかじめ定款に出資金を相続できるように記載しておくことにより相続を可能にすることができます。

定款への記載方法はいろいろありますが、その一例をあげておきます。
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相続による持分の承継

第◯条

当会社の社員が死亡した場合には、当該社員の相続人は、持分を承継して社員となることができる。

死亡した当会社の社員に共同相続人が複数存在する場合は、当該社員が作成した遺言により又は共同相続人全員の合意による遺産分割により、共同相続人の一人を当該社員の持分を承継する社員と定めることができる。
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このように定めておけば、出資者が亡くなった場合には、相続人がそれを継承することができ、合同会社を存続させることができます。やはり、あらかじめ定款内容の設計をしておくことが重要です。

■合同会社設立時のよくある質問

ここまで合同会社設立にあたり気を付けていただきたいことをお話しました。ここではさらに理解を深めてもらうため、大家さんからよく聞かれる質問をQ&A形式で整理しました。

Q.合同会社には税制上のメリットはありますか?

税制上は、株式会社も合同会社も同じ法人税が課税されます。両者の取り扱いに違いはありませんので、どちらかが税制上有利になることはありません。

Q.合同会社の出資者(役員)は、会社の債務に責任を負いますか?

合同会社の出資者は、株式会社と同様に「有限責任」ですので、債務については責任を負いません。例えば会社の設立時に100万円を出資したものの、会社の経営が立ちゆかなくなって200万円の債務を負った場合、出資した100万円は返ってきませんが、200万円の債務を支払う義務は出資者には生じない、ということです(出資者が個人保証している債務は除きます)。

Q.出資すると登記簿に名前が載りますか?

まず株式会社の場合、「株主であっても役員ではない」という立場が取れます。役員でなければ登記簿に名前はのりません。出資するだけで会社経営をしないのであれば、サラリーマンの方の勤務先の副業禁止規定などには抵触しないケースも多いと思います。

一方合同会社は、原則として出資者が経営を行います。つまり、出資者であれば、原則として業務執行社員(経営を行う役員)という立場になります。業務執行社員であれば、登記簿に名前が載ります。しかし、定款に定めることによって、出資者のうちに業務執行する社員(経営を行う役員)と業務執行しない社員(経営を行わない出資者)に区分することが可能です。業務執行しない社員になれば、株式会社の株主のように登記簿に名前がのらないことになります。

Q.大家さんが、合同会社ではなく株式会社を設立すべきなのはどんなケースでしょうか?

役員がずっと1人という前提であれば合同会社で問題ありませんが、将来のライフスタイルの変化に伴い、配偶者やお子さんが役員に加わる可能性があるなど将来に不安がある場合は、株式会社を検討した方がよいと思います。

■まとめ

上記のQ&Aの内容からも、合同会社は株式会社とそれほど違いがなく運用できるということが分かると思います。ただし、そのためには定款をきちんと設計しておく必要があります。定款の内容をしっかり定めておかないと、将来、会社の方向性を決められなくなったり、会社を存続させることができない事態が生じる恐れがあります。

後になって後悔しないよう、設立前に専門家に相談したうえで定款を作成するか、そもそも株式会社を設立するかの検討が大切だと思います。設立費用が安いというだけで安易に決めないようにしましょう。

不動産投資の楽待

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最終更新:9/21(火) 19:00

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