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「高値掴み」なら融資NGも、銀行は物件価格をどうチェックする?《楽待新聞》

8/5 19:00 配信

不動産投資の楽待

アパートローンとは何なのか、どのように借りるべきなのかなど、アパートローンの基礎を振り返る本シリーズ。前回の記事では、借入をする個人について、銀行がどのような点をチェックしているのかを改めて確認しました。

今回は、アパートローンの審査に際して、銀行員が「物件価格」について具体的にどのような点をチェックしているのかを確認していきます。

■銀行にとって「物件価格」はなぜ重要?

個人向けのアパートローンにおいて、銀行が物件価格(あるいは建築価格)を気にする理由は、当然ながら「お金を貸したあとに問題が起きないか」を確認するためです。

具体的には、物件本来の価値(市場価値と言い換えられるでしょう)を踏まえたうえで、この売買価格は妥当であるのか、ということです。もちろん、本人の収入や資産背景を踏まえての判断になりますが、あまりに多額の債務を負ってしまい、破綻する可能性がないかという観点から、銀行は物件の売買価格を確認します。

これは、以前の記事でもお伝えしてきた、銀行の生き残り戦略とも整合します。つまり、「問題が起きそうな案件を入り口で断る」という考え方です。

では、銀行は実際にどのようにして物件の売買価格をチェックしているのでしょうか。大きくは以下の4つについて、その妥当性を検証するというプロセスがあります。

■Point1. 物件価格の妥当性

通常の銀行は、自前の「不動産担保評価会社」や「ローン保証会社」を子会社として持っています(ちなみに年次が高くなるとこの会社に出向・転籍することが多々あり、いわゆる銀行員の第二の職場となっています)。

「不動産担保評価会社」は、読んで字のごとく銀行が設定する不動産担保の評価を行っている会社です。法的調査、机上評価(積算価格や収益還元)、物件実査などを行っています。物件調査はかなり時間がかかるため、人件費が低い銀行の子会社が、担保評価を行っているのです。

また「ローン保証会社」は、借入人の延滞などが起きた際に銀行に代わって債権回収を行う会社です。債権回収は時間が取られるので、収益責任を負っている銀行の営業店の担当者が前向きな仕事に注力できるようにローン保証会社があると言っても良いでしょう。

アパートローンの審査においては、この不動産担保評価会社もしくはローン保証会社が物件の評価を行っています。その過程で売買価格の妥当性検証についても行っています。

この物件の評価は、通常は「担保評価額○○万円」というような形で銀行の営業店に報告されます。担保評価額が借入申込額に足りない場合には、他の担保を要求したり、借入額を少なくするように銀行員から借入人が交渉されることが一般的でしょう。

また、この担保評価額の報告の過程で、あまりにも売買価格と担保評価額との間に乖離がある際には、営業店に注意喚起がなされる銀行が多いと思われます。担保評価額は保守的に評価しているため、売買価格よりも低いことが多いのですが、例えば2~3割もズレがあるのであれば、売買価格が高値掴みになっている可能性があります。

この場合は、担保評価会社やローン保証会社、もしくは銀行の審査部から、売買価格の妥当性について営業店が説明を求められます。売買価格の妥当性に疑義がつけば、借入額の減額や、事業計画の見直し、最悪の場合には銀行が借入申込を断るというような判断をすることで、借入人に注意喚起を行う可能性があるのです(本質的には、事業計画が妥当か、資金が回るかを判断することになります)。

物件の評価手法は、単純化すれば、公示地価や路線価評価による物件評価額の算出、データベースに基づく近隣事例による物件評価額の算出、賃料収支に基づく物件評価額の算出、程度が一般的でしょう。またその他に、不動産会社に売買価格の妥当性について参考意見として聞くこともあります。

■Point2. 建築単価の妥当性

融資を受けてアパートなどのを新築する場合、銀行は建物建築価格の妥当性も検証します。

通常は、国土交通省が発表している「建築着工統計調査」にある、1平米当たりの工事費予定額を参考にして、投資家が提出してきた建設費の見積もり額と比較します。また、自前でデータベースを作成している銀行もあるでしょう。

これに建築請負会社のグレードによる補正を勘案し、その結果大幅に建築単価が高い場合には、投資家が無用なリスクを負っている可能性があるということになります。言葉を換えれば、建築会社に吹っかけられている、ぼったくられているかもしれない、ということです。

なお建築請負会社のグレードについては、大手建築会社であれば、建築単価はどうしても高くなります。理由は人件費や、設備や仕様のグレードが高いことなどが理由になるでしょう。そこで、建築請負会社が大手の場合には、住宅着工統計の工事費よりも高くても許容するということになります。小規模工務店の場合、補正をするというよりは、施工能力と工事途中で破綻しないかを見るという銀行がほとんどだと思います。

ちなみにアパート会社が建築した新築建物を購入する場合にも、基本的には上記の比較を行うことが多いと思われます。ただし、この場合は、アパート会社が建築価格に自分たちの利益を上乗せしているため、その補正は必要です。

■Point3. 賃料の妥当性

賃料の妥当性検証は、上記の物件売買価格の検証にも影響しますので非常に重要です。

賃料については、銀行が自前でデータベース化していなくとも、一般的なポータルサイトなどで賃貸情報を確認すれば、対象物件の賃料が妥当か否かが検証可能です。

ただし、築年数、床面積、間取り、立地などによって、比較対象とするべき対象物件か否かの確認がポイントになります。銀行の内部では、安易に同じような賃料の物件を選び出して根拠データとしようとする現場と、それを検証する審査部との意見相違が発生することも多い項目です。こうしたことは、銀行の営業現場は営業目標があるので貸出を行いたいと考えており、借入人が提出してきた事業計画の賃料を裏付けるような物件情報を探してしまう傾向にあるから起きることです。

また、サブリース会社による賃料提示については、周辺相場との比較による検証のみならず、サブリース会社自体の信用力などを織り込むこともあるでしょう。ただし、サブリース会社については、事業収支・事業の継続性の検証を行う際に勘案することが一般的かと思います。

■Point4. 災害リスクの物件価格への反映

この項目は、銀行業界全体で見ると今後の課題となるものでしょう。2023年以降、家屋や家財の損害を補償する火災保険の保険料で、水害リスクを反映した地域別の料金が設定される見通しとなっています。

この考え方は、当然ながらアパートローンそのものにも影響を及ぼすことになります。現在は、水害リスクが高い立地の物件については「融資を断る」という対応があるかと思いますが、今後は水害リスクを金利に反映する、などの対応も想定されます。

そして、このような対応が結局は災害リスクの物件価格への反映につながっていきます。これをどのように検証していくかは、各銀行が今後試行錯誤していくことになるものと思います。

■物件価格の妥当性検証は更に厳しくなる

銀行がアパートローン対象の物件価格について売買価格の妥当性を検証するポイントを上記で示してきました。かぼちゃの馬車事件、そしてスルガ銀行のシェアハウス融資の社会問題化以降、銀行の貸し手責任がクローズアップされるようになってきました。

スルガ銀行が発表したプレスリリース「シェアハウス関連融資債権の譲渡に関するお知らせ」(2021年3月)からは、スルガ銀行が自らの貸し手責任をどう捉えているのかを読み取ることができます。

○「シェアハウス関連融資債権の譲渡に関するお知らせ」(2021年3月)
シェアハウス関連融資は、一般の投資用不動産関連融資とは異なり、マーケットが未成熟で比較する類似物件が少ない中、非現実的な事業計画に基づき、運用実績のない新築物件に対して当社の融資が実行されておりました。その結果、お客さまが実勢価格よりも高値でシェアハウス物件を購入し、いわゆる高値掴みの損害を被られました。

当社には、シェアハウス関連融資を実行するに際し、一般の投資用不動産関連融資にはないシェアハウス特有のリスクについて十分な分析を行わず、事業計画の非現実性を看過した等の不適切な対応がありました。当社は、シェアハウス関連融資については当社に定型的に不法行為に基づく損害賠償義務が生じると裁判所の調停委員会が認定したことを踏まえ、申立人らに対し、調停勧告に基づく解決金支払債務を負うことを応諾いたしました。

このプレスリリースから分かるのは「シェアハウスのような運用実績のない新築物件には特に十分なリスク分析を行うべきであること」「お客さまが実勢価格よりも高値でシェアハウス物件を購入し、いわゆる高値掴みの損害を被ることを防止すること」などの責任を、銀行は負う可能性があるということです。

もちろん、これは裁判で決着したことではなく、スルガ銀行が発表した内容でしかありませんので、日本全体で確定した考え方にはなっていません。しかし、この意見表明は今後の裁判にも影響を与えることでしょう。

他の銀行からすると「早く問題を解決したいからと余計なことをしてくれた」と考えているのではないでしょうか。このスルガ銀行の発表は、「借入人の自己責任であったはず」の不動産投資が、銀行が貸し手責任として事業リスクの一部を負うように転換されているからです。

このような貸し手責任が一般的になると、銀行は基本的にリスクのある融資を避けるようになります。融資を行ったのに、後から責任を追及されて融資金額を棒引きされるぐらいならば、融資金利が低いだけに、融資そのものを行わない方がマシだからです。

以上のような背景・環境があるため、各銀行ともこれからは、売買価格の検証にはさらに力を割くでしょう。シェアハウスのような運用実績のない物件のみならず、一般的なアパートだとしても、借入人の高値掴みを防止に力を入れていくはずです。



今回は、物件の売買金額について触れました。銀行が売買金額をチェックする際のポイント、そして売買金額の妥当性検証が厳しくなる背景についてもご理解いただけたのではないかと思います。

銀行が売買金額の検証を厳しくするようになると、購入する側(借入人)にとっては安心な側面はあります。高値掴みを防止するのが銀行の役割だと考えて銀行が行動するのですから、その点では良いように思われます。

ところが、不動産を売却したい側(売主側)から見ると別の観点が出てきます。個人が収益アパート物件を売ろうとする時に、高値で売ろうとしていたのに、買主側から「銀行がうるさいので金額を下げてくれ」と交渉されるケースがあるということになるのです。

収益物件を購入したり建物を建築しても、経営が上手く行かなかったり、何らかの都合で現金化が必要なことはあり得ます。一度購入したら最後まで持ち続けることしか考えないのは現実的ではありません。

このように見ていくと、銀行が売買金額の検証を厳しくするという変化は、不動産の売買金額にはあまり良いインパクトを与えないかもしれません。

不動産投資の楽待

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最終更新:8/5(木) 19:00

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