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日本はローテクで英語ができない国と思ったが…外国人記者たちが語るオリンピック取材の「舞台裏」

8/4 9:31 配信

東洋経済オンライン

 2012年に、2020年のオリンピックの開催都市に東京が選ばれたとき、私の海外にいる記者仲間たちは東京に来るのが待ちきれない、と言っていた。この瞬間、東京は地球上で最も刺激的な目的地となったのだ。

 あらゆる有名なシェフ、DJ、建築家、俳優らが東京を訪れるようになった。特に、日本のライフスタイルを知りたい女性ジャーナリストたちの間で東京は人気だった。そのほとんどが男性であるスポーツジャーナリストもオリンピックの機会に合わせて日本を訪れたがっていた。

■来日前の「書類作業」が煩雑すぎた

 ところが、新型コロナウイルスが2020年の東京オリンピックに冷や水を浴びせた。国境は封鎖され、最終的に許可を得たスポーツ記者のみが来日のための準備をすることになった。日本オリンピック委員会(JOC)が無観客開催を決めると、さらに多くの記者が取材をキャンセルした。

 「フランスの地方紙がオリンピックに記者を送らなかったのはこれが初めてだ」と、2020年の東京大会が参加4度目のオリンピックとなるフリーランスジャーナリストのロイス・グラッセ氏はは話す。オリンピックには8400人の記者が訪れる予定だったが、最終的に来日したのは半分以下の4000人だ。

 無観客より外国人記者たちを「がっかり」させたのは、彼らが来日前に直面する羽目になった日本のお役所仕事だ。5月の中頃からJOCは、大会中のコロナ対策の規定に関する複雑で、長く、内容のわかりにくいメールを海外のジャーナリストたちへと送り始めた。

 記入を求められた書類のほとんどは、日本以外では使われていないような、時代遅れのフォーマットを使用していた。「日本の組織委員会はGoogle Docsの存在を知っているのか?」とあるジャーナリストはあきれる。

 また、ジャーナリストたちが質問すると、まったく返事がないか、「わかりません」という返事が返ってくるかのどちらかだったという。訪れる前の印象から言えば、日本は「ローテクで英語の通じにくい」国で、オリンピックは厄介なイベントのように思えた。

 が、いったん入国した外国人記者たちは、今回の取材体制におおむね満足しているようだ。「大会前の2週間の隔離があるため、6月15日に到着した。今回の旅で一番大変だったのはホテル初日の夜だった」と、 AFPのフランス語のスポーツ部門責任者であるエマニュエル・ピオニエ氏は言う。「それさえ終われば、特に問題はなかった」。同氏は過去に8回、オリンピック取材を経験しており、今回の取材陣の中では最大規模の陣営を率いている。

 EU諸国やアメリカの場合、入国するのは簡単だが、入国後に多くの障壁がある。例えば、民間セキュリティは日本より厳しい。しかし日本はその逆で、入国するのは大変だが、いったん入国してしまえば移動は簡単にできる。試合会場周辺警備も厳重ではない。東京の治安が非常にいいこともあるが、競技場の入場手続きも非常にスムーズだ。

■リオ大会では選手村で強盗もあった

 ロイック・グラッセ氏は、「2016年のリオ大会では、犯罪が多い街なのでスタジアム近くには軍の戦車が待機していました。選手村の中でも強盗にあった。次の開催地であるパリでは、テロや犯罪リスクがあるので、機関銃で重装備した軍人がいるだろう。東京では、警備ストレスは一切ない」と話す。

 外国人記者の間では、手荷物検査を担当する自衛隊の人気が高いという。「彼らは礼儀正しく、英語を話そうと努力している。彼らは武器を持っていないので、これが試合の雰囲気の違いにつながっている」(グラッセ氏)。

 だが、記者たちにはいくつかの不満がある。プレスセンターのある東京ビッグサイトである。国際見本市が開催される日本最大の場所として知られるが、多くの外国人記者はここで過ごす時間を快適には感じていないのだ。

 「東京ビッグサイトはスペースを貸し出すことにしか興味がないのだろう。正直何のサービスもない。東京ビッグサイトにとって、ここを使う人は顧客ではないのだろう」と海外の展示会社の幹部は説明する。「欧米ではMICEオペレーターが施設内で来場者が楽しく時間を過ごし、お金を使う雰囲気を作り上げているが、日本にはそれがない」。

 実際、プレスセンターには、アスリートのポスターなどオリンピックを感じさせるものがほとんどない。オリンピックをまるで感じない、無機質で、大きな、気持ちのこもっていないスペースで記者たちは働いている。記者専用の駐車場もなければ、Wi-Fiの接続もイマイチだとある記者は嘆く。

 食事もかなり残念な部類に入る。例えば、500mlのコカ・コーラは日本のどこでも100円か130円で買えるが、プレスセンターでは280円もする。食事のメニューは1000円から1800円まで6種類あるが、ハンバーガーだけクオリティに問題があると感じた。あくまで個人の感想だが、おいしくないハンバーガーのオリンピックがあったとしたら、プレスセンターのハンバーガーは有力な金メダル候補かもしれない。

 感染状況を鑑みると仕方ない側面はあるものの、一部の外国人記者は無観客であることに残念さを感じている。ヨーロッパでは最近、スタジアムの半分、時にはすべてが観客で埋まった状態でサッカーのユーロ大会が行われた。アメリカでもスタジアムは満員だ。日本でも、野球の試合は有観客で行われている。オリンピックだけが、空っぽの巨大なスタジアムで開催されているのだ。

 1996年以来すべてのオリンピックを取材してきた通信社、CEBOの創設者であるエチエンヌ・ボナミー氏は、「パリの郊外でイベントを取材しているような気分だ。少し悲しい」と言う。

 さらに深刻なのは、おそらく歴史上初めて、オリンピックが開催地で歓迎されていないことだろう。「北京オリンピックでは、記者を乗せてホテルから競技場へ向かうバスは警察車両にエスコートされ、ボランティアが交通整理をしてバスが先に通れるようにしてくれていた。だがここでは、オリンピックのシャトルバスが渋滞に巻き込まれても、耐えるしかない」と、 ボナミー氏は説明する。

■「パンデミックのリスク要因にされている」

 日本での報道によって、自分たちがパンデミックのリスク要因にされている、と感じる記者も少なくない。

 「プレスセンターの外で読売新聞の記者に話しかけられ、ワクチン接種状況を含むアンケートに答えるよう要請されたのは少し驚きだった。そのうちの1人は、私がここに住んでいることを伝えると見逃してくれたが、もう1人は私が忙しいと伝えるまで質問を続けた」と、AFP局長代理であるサラ・ハッサン氏はツイートした。

 記者たちは各ゲームの競技場が、新型コロナのエピセンターとみられることに懸念を示している。「40万回行われている検査で、陽性率は0.02%だ」とブルームバーグの記者、ジェロイド・レイディ氏はツイートしている。

 さまざまな不便が生じているオリンピックではあるが、結局のところ、日本で開催されるほかの国際イベント同様、今回のオリンピックの最大の強みは、日本人ボランティアの世界記録並みの親切さである。外国人記者の中には、英語での情報の少なさや、ボランティアの英語力を嘆く声もあるが、ボランティアの親切さがこうした不便を補ってくれている、という声が多い。

 例えば開会式の日、スタジアム内のWi-Fi接続がとても悪く、多くの記者がやきもきしていた。数時間後、ボランティアたちが最寄りのコンビで買ったであろう、ケーブルを手にして記者たちの間をかけめぐり、手助けしようとしていた。

 「これまで5回のオリンピックを取材してきたが、ボランティアの人たちがこんなに助けてくれる大会はなかった。英語に問題があるのも、すべて許せてしまうくらいだ」と、イタリア人カメラマンのステファノ氏は話す。「シャトルバスが使いづらいのには困っているが、個人的にはこれまでで一番のオリンピックだったと思う」。

東洋経済オンライン

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最終更新:8/4(水) 12:29

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