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日経平均株価が3万円回復にかなり手間取っている決定的な「2つの理由」

8/4 18:31 配信

東洋経済オンライン

 日経平均株価が3万円回復にかなり苦戦している。その背景には、大きく分けて2つの要因があると筆者は考える。

 まずひとつ目は、海外経済に対する期待が一服しつつあることだ。現在、驚異的なペースで回復を遂げているアメリカは、やや長い目で見れば、成長ペース鈍化が見込まれる。またコロナからの回復が早かった中国もここへ来て回復一服の兆しが散見されており、投資家の期待は徐々に縮小方向に向かっている。日本企業への追い風がやむことを懸念する投資家は少なくないはずだ。

 そしてもうひとつは、単純に日本の内需が弱いことに対する懸念だ。以下、最新のデータを踏まえ、投資家心理を読み解いていく。

■アメリカの長期金利低下は何を織り込んでいるのか? 

 海外経済への期待一服と言えば、アメリカ長期金利の低下がそれを物語っているように思えて仕方がない。年初の段階で多くの投資家が懸念していたアメリカ長期金利の急上昇は実現せず、7月下旬にアメリカ10年債金利は年初来の上昇をほぼ消した。アメリカ長期金利の低下は何を織り込んでいるのか。「需給」と「ファンダメンタルズ」に分けて考えてみたい。まず、需給面では何と言ってもFED(連銀)の国債購入が効いている。

 2022年1~3月期のテーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始がコンセンサスになっているとはいえ、現在のところ毎月800億ドル(その他にMBS=不動産担保証券=400億ドル)の国債購入は継続しており、これは債券市場の需給を強力に引き締めている。

 また短期筋のショートカバー(金利上昇を見込みアメリカ国債を空売りしていた主体が予想外の金利低下に直面し、空売りを解消すること)も強く効いているとみられる。多くの投資家が警戒していた金利上昇が一向に実現せず、そのこと自体が売り方の諦めにつながった形だ。

 そして需給要因以上に重要なのはファンダメンタルズだ。本来、景気回復期待が膨らむ局面では予想インフレ率の上昇を伴って金利上昇となるのが教科書通りだが、そうならないのは債券市場参加者が(1)高インフレが一時的であることに自信を深めた、(2)リバウンド一巡後のアメリカまたは中国の景気減速を懸念し始めた、この2点が背景にあると考えるのが自然だろう。

 まず、インフレ率とアメリカ10年債金利の関係から考えてみたい。現在の消費者物価(エネルギーを除いたベース)は前年比4%程度、10年金利は1%前半である。長期的な関係に基づくと、消費者物価が現状程度で推移するなら10年金利は6%程度になるはずだから、現在両者の関係は完全に崩壊した状態にある。

 これは「インフレ率の割に長期金利が低すぎる」というよりは「債券市場参加者(長期金利)がインフレ率低下を確信している」と読むのが自然と考えられる。インフレに関しては、やや長い目でみれば、賃金上昇を通じてパンデミック発生前よりも高い伸びが続く可能性があるものの、多くの投資家はFEDと同様、一時的現象と判断していると思われる。

 直近の高インフレは一部の品目に上昇が集中しており、それらを除くとインフレの基調はさほど強くないという事実が広く知られている。また台風の目となっている中古車については、先行指標(2~4カ月程度先行)のマンハイム中古車価格指数の上昇モメンタムが鈍化し、CPIベースの価格低下を示唆している。それに加えて7月以降はこれまでCPIの前年比上昇率を押し上げてきたベースエフェクト(比較対象となる前年の値が低かったことで当年度の前年比伸び率が高く出る)も解消に向かう。10年債金利とCPIの関係性が崩れるのは自然と言える。

■リバウンド一巡を織り込んでいる可能性も

 となると、債券市場参加者は、現在観察されている力強いリバウンドが一時的に終わり、結果としてFEDの利上げ必要性が低下するというシナリオを描いている可能性がある。足元で、将来の政策金利見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)金利が低下基調にあるのは、連続利上げシナリオに疑問を呈する投資家が増加しつつあることを映じていると考えられる。

 またここへ来て長短金利差は多くの年限間で縮小傾向にあり、例えば5年10年は足元で急激に縮小している。21年3月には80bp(ベーシスポイント=0.01%)程度(5年金利0.9%程度、10年金利1.7%程度)まで拡大した後、現在は60bp(5年金利0.7%程度、10年金利1.3%程度)まで縮小している。

 一般的に長短金利差は景気回復の初期局面で拡大し、終盤にかけて縮小する傾向があることを踏まえると、最近の縮小は景気拡大期待の一服を映じていると考えることもできる。中期ゾーンの金利(5年)が、2023年に2回とするFEDの利上げ計画(ドットチャート)を意識する一方、長期金利(10年)は利上げに伴う景気減速を織り込んでいるのではないか。

 一方、アメリカ国外の要因として中国の景気減速を織り込んでいる面もあるだろう。中国経済あるいは世界経済の先行指標として有用なクレジットインパルス(中国国内の与信伸び率と経済成長率の比)は昨年秋にピークアウトした後、急低下し景気減速を示唆している。クレジットインパルスは、中国当局の政策態度を示す指標として知られ、その低下は景気刺激策が消極化していることを示す。

 中国経済の減速とFEDの金融引き締めが重なることで、アメリカ景気減速に拍車がかかることを想定する投資家は相応に存在するだろう。こうしたシナリオが、現在の日本株にも織り込まれている可能性があるだろう。日本企業の成長ドライバーはアメリカと中国向けの輸出および現地販売であるから、アメリカ・中国の景気回復期待が一服する局面で株価が停滞するのは自明だ。

 欧米株に後れを取り、日経平均が3万円を回復できない重要な理由としては、やはり日本の内需に対する強い懸念があるだろう。そこで内需の苦境を浮き彫りにする指標として経済産業省が公表する第3次産業活動指数に注目したい。5月の活動指数は前月比マイナス2.7%であった。2015年を100とする指数は95.3へと落ち込み、2020年1月をマイナス6.7%も下回る水準に沈んだ。

 度重なる緊急事態宣言の発出、まん延防止等重点措置の長期化を受けて飲食、旅行、レクリエーション(スポーツ、音楽など)の苦境が改めて示された形だ。先行きについても、東京都における緊急事態宣言の発出によって早期の回復は見込みにくい。むしろ政府からの補償が十分でない業態(主に小規模飲食店以外)が支出を一段とカットすることで、経済全体を蝕んでいく展開が懸念される状況にある。

■サービス業PMIが示す米中欧と日本の格差

 こうした内需の弱さはアメリカ、欧州、中国と比較することでその深刻度合いがはっきりと浮かび上がる。

 各国の内需を反映するサービス業PMI(購買担当者景気指数)に目を向けると、グローバル(主に米中欧)がパンデミック発生前の水準を大幅に上回り、お祭り騒ぎとも言うべき水準に到達しているのに対し、日本は好不況の分かれ目の目安となる50すら回復できず、コロナパンデミックで発生した断層は全く埋まっていない。この格差こそが日本株の相対劣後を綺麗に説明していると筆者は考える。

 これまで日本株を牽引してきたのは半導体を中心とするIT関連財であったが、それらの銘柄が多く含まれる東証電気機器セクターの予想PER(株価収益率)はパンデミック発生前よりも高く、すでに業績拡大期待が織り込まれている状態にあり、ここから株価指数の牽引役として大きな期待はしにくい。

 となると、今後日経平均が3万円を回復するには内需関連の回復が極めて重要になってくるのだが、現在のところ回復期待は萎んだままである。今後、投資家の期待が膨らむには個人消費を直接刺激する大胆な景気対策が肝となるが、その実現にはワクチン接種が進展し、コロナ感染状況が安定化するのを待つ必要がある。ワクチン接種率の上昇が日本株再浮上のポイントになりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:8/4(水) 18:31

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