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二代目大家の投資戦略は「持って良し、売って良し」《楽待新聞》

8/3 19:00 配信

不動産投資の楽待

地主の家庭に生まれ、25年前に両親からテナントビルを相続したことをきっかけに不動産投資をスタートした「二代目大家かずみ」(以下かずみ)さん。始まりは相続だったが、その後自身でも規模を拡大し、現在は一棟物件8棟、区分マンション1戸を保有し、総投資額は約8億円だ。

「不動産投資で騙される人を少しでも減らしたい」という思いからコラムを書き始めたという。そんなかずみさんが物件を購入する基準や、管理会社選びで重視しているポイントを聞いた。

また、賃貸経営を通して積極的に社会貢献活動にも励むかずみさん。一体どのような活動をしているのだろうか。

■祖父の代から始めた大家業

―ご実家は200~300年続く地主だそうですね。賃貸物件を建てて貸し始めたのはいつ頃なのでしょうか?

祖父の代から賃貸経営を始めたらしく、大正時代から、持っていた土地に建物を建てていったと聞きました。実は、あまり細かいことはほとんど聞かされていないんです。

―おじい様の時代の物件もすべて相続されたんですか?

祖父の代で建てた建物は、どれくらいを持っていたのかはほとんど教えてくれませんでしたが、親の代で1棟を残しほとんど売却したそうです。相続税がものすごくかかるということで売ったと聞きました。

祖父が購入していた土地は、東京西部にあるのですが、それなりの広さがある上に、現在とても人気が出ている地域なので、土地値はかなり上昇していたと思います。

私が相続したのは、両親が保有していたテナントビル1棟だけです。

親から引き継いだビル経営は楽ではなかった
―子どもの頃、ご実家の賃貸業についてはどのように聞いていたのでしょうか?

あまり詳しいことは聞かされていませんでした。ただ、よく人が家に来て、魚や野菜を渡しに来て「いつもありがとうございます」と祖父や両親に言っていたのは覚えています。

数年後、少し知識がついてきたところで、「挨拶に来ていたのは入居者さんで、うちは大家さんをやっているのか」とわかるようになりました。

理解したときにはとてもありがたいことだなと思いました。入居者さんが家賃を支払ってくれているから、私がご飯を食べられているのだなとわかったので。

―ご両親が保有していたテナントビルは、どのような物件だったのでしょうか

駅近のテナントビルです。祖父が所有していた土地に建てたのだそうです。

その土地は大正時代に、祖父が近くに電車が通って駅ができるという話を聞いて購入した土地です。そこで祖父は八百屋を営んでいたのですが、数十年たって祖父が八百屋をたたんで更地にしたとき、そこに両親がテナントビルを建てました。私は20歳くらいのときでしたね。

両親からは、「この物件は、いつかあなたが継ぐものだからね」と言われていました。

そもそも私は一人娘で、物心つく頃から「家を継げ」と言われていましたので、幼いころから「大きくなったらなりたいもの」は特にありませんでしたね。

―それがかずみさんが相続されたテナントビルなんですね。

5階建て、全9室のテナントビルで、現在築35年です。自宅が併設してあります。ただ、このビル、両親は一度も満室にしたことがなかったと聞いています。

両親は入居者の選定基準がとても厳しくて、「飲食店が入居するとビルが汚れるからダメ」とか「消費者金融が入居するとビルの印象が悪くなる」とか。常に2室くらいは空室だったんじゃないかな……。

私も、物件を相続する2~3年前から運営に携わるようになり、父がガンで入院したときは、親の代わりにビルの管理をしていました。

―かずみさんがその物件を継いだのはいつ頃なのでしょうか?

25年前です。引き継いだ後、テナントビルの収支状況を確認したところ、かなり多くの資産残高があって、「ラッキー!」と喜んだのを覚えています(笑)。

ただ喜びもつかの間で、父が亡くなったときに相続税が300万円かかりました。さらに父の死後に大規模修繕も行ったので、キャッシュは税金や修繕などの支払いに消えていって、「甘い仕事ではないな……」と思いました。

現在も保有していますが、すでに築35年なので、多額のメンテナンス費用が掛かりました。例えば、外壁や屋根の塗装やエレベーターの修繕、貯水槽の交換など、1000万円くらいの大規模修繕を2回行っています。

それ以外に、トラブルもいろいろあったんですよ。

―どんなトラブルがあったんですか?

例えば、入居者さんが夜逃げしたことがありました。2000年くらいですが、とても誠実で見た目も爽やかな人でした。しかし、徐々に業績が悪くなっていって……。そのうち突然倒産して、夜逃げされてしまいました。家賃滞納やその後の原状回復費用を含めると、400万円くらい被害を受けましたね。

ちなみに、両親が運営していた時は常時2室くらい空室でしたが、私が運営してからを募集方法を変えたので、満室稼働を維持しています。駅徒歩数分の立地ですから、賃貸需要がとても高く、空室が出てもすぐに新しい入居者さんに入っていただけます。

■購入基準は「持って良し、売って良し」

―相続がきっかけの不動産投資家デビューですが、その後規模拡大をされたんですね。

これまで、テナントビルを含め一棟物件10棟と、区分マンション1室を保有しました。このうち、一棟物件2棟は売却しています。総投資額は7億~8億円くらいでしょうか。

そもそも、私が規模拡大をしようと思ったのは、「子どもたちが相続で揉めないように」という狙いがあったんです。

最初に物件を相続をした時は、このテナントビルだけを運営しておけば良いと思っていたのですが、自分に2人目の子どもが生まれたときに、「このままテナントビル一棟だけだと、子どもに相続する際に揉めてしまう」と思って。それで規模拡大をしていくことにしました。

―どのような基準で購入する物件を選んできたのでしょうか

主に2つあります。「持って良し、売って良し」で「多くの借り入れができる」です。この2つの基準を満たしている物件を購入しています。

「持って良し、売って良し」は、持ち続けても高い稼働率を保つことができ、売却したとしても残債以上で売却することができる、という物件のことを指します。

子どもたちが相続したとしても、2人が不動産に興味があるかわかりません。そのため、どのように運用したとしても得をする物件を購入するようにしているんです。

なお、長期的に入居が見込める物件を選ぶためには、主に立地と周辺環境を重視しています。駅から徒歩15分以内で、周辺環境にはスーパーやドラッグストアなど、生活必需品を購入することができる施設が近くにある場所です。

東京の西部エリアで物件を探していますが、価格や築年数、利回り物件種別、ターゲットなどは物件によって特性が異なるため、こだわっていません。

―では、残債以上で売却できるかは、どのように見極めているのでしょうか?

例えば、周辺に分譲地や新築住宅が多く建っていれば、戸建ての需要があるということですから、更地にしたとしても売却できる可能性が高い。また、都市計画や延伸計画などをインターネットで検索し調査しておけば、将来的に土地価格が上昇するとか、道路拡張計画があって、市区町村や国から買い取ってもらえるかなど、そのようなことを予測できます。

ただし、中には計画段階で中止になってしまうものもあります。市区町村や周辺の不動産会社や建築会社に連絡して、きちんと計画通りに進んでいるのか、調査することも大切です。

―長期的に入居が見込め、売却もうまくいく可能性が高い物件の場合、需要が多く販売価格が高くなりそうですが

もちろん、需要が高いので価格は高くなります。都市計画や道路拡張計画などが見込まれるエリアだとしても、高値で買ってしまえば、損してしまいます。

そのため購入時期が大切です。基本中の基本ですが、価格が安くなっているときに購入し、価格が高くなっているときに売却するのが鉄則ですよね。

経済がどのように動いているのかをニュースや新聞で日々確認して、今後の市場動向の予想したり、不動産会社と日ごろから「最近の不動産価格はどうですか?」などと情報を聞いたりと、価格の変化に気づけるようにしておくことが大切です。

―基準の2つ目の、「多くの借り入れができるか」というのは、どういうことでしょうか?

相続税対策のためです。相続税は、課税対象となる財産の評価額が高額なほど税金も高くなります。不動産などを融資を使って購入することで、負債額を増やして純資産を減らし、相続税を少なくすることができます。

そのため、できる限り多くの借入をしてもらえるように打診しています。そのために、融資打診をする際は良い物件を用意すること、実績をきちんとアピールすることをしています。

―具体的にどのようなことでしょうか?

良い物件とは、積算価格が販売価格に近く、入居率が9割以上、外観も整備がされているような物件だと思っていますから、まずはこうした物件を探すようにしています。

また、自分の実績をアピールする際には、保有物件の稼働率が常時90%以上で、返済能力が高いこと、無担保の物件があり、共同担保を用意できることなどをアピールしています。

■関係会社と協力体制を組むための方法

―賃貸経営で意識していることはありますか?

不動産投資において協力してくれる会社には、他のオーナーよりも高い費用を支払うことで、対応の優先度を上げてもらうようにしています。

例えば管理委託費用です。私のエリアでは、管理費用の相場は家賃に対して3~5%程度ですが、私はそれよりも多く支払っています。

そうすることで、トラブルが生じた時や、入居付けなど素早く動いてもらえます。そのおかげで、私はほとんど時間を使わずに、入居率は93%以上を保っています。

また、リフォームを依頼する際も、相見積もりは取りません。いかに安いところに頼むかではなく、いかに素早く対応してくれるかを判断基準にしています。

私はよほどのことがない限り、値引きの交渉は一切しません。その代わり「依頼したらすぐに動いてほしい」ことは伝えています。

―管理委託費用やリフォーム費用をできるだけ抑えたいと考える投資家も多くいます

私は、管理会社もリフォーム会社も、きちんと費用を支払った方が気持ちよく仕事を引き受けてくれ、スピードや仕事の質が向上すると考えています。仕事の質が上がれば入居者さんも満足してくれるので、結果的に私も楽をしながら高い稼働率を保つことができます。

あと、管理やリフォーム費用を抑えて、利益が増えた分税金が増えるのであれば、関係会社に気持ちよく仕事をしてもらうために、経費を増やした方が良いと思っています。

―この方法はどこから学んだのでしょうか?

両親の影響だと思います。両親から引き継いだテナントビルは、今でもビルを建築してもらった会社に修繕してもらっています。

相見積もりを取って、できるだけ安いものを選び続けることも大切かもしれません。ただ、私はそれ以上に、協力している会社との関係性を構築する方が大切だと思っています。

―今、賃貸経営でチャレンジしていきたいと考えていることはありますか?

実は、これから両親から引き継いだテナントビルを売却します。ビル沿いの道路が拡張することになり、テナントビルはその拡張エリアに入ってしまいました。そのため、行政からビルを撤去してほしいと要請されたんです。

購入当初の金額よりも高く売れますが、一族が引き継いできた土地ですから、売らない方が良いのかな……と思うこともあります。しかし、拒否を続けていても何も変わりませんし、ビルの老朽化を考えれば売却した方が良いと思いました。

■生活困窮者への支援も

―物件を引き継いだことで、さまざまな話が来るそうですね

ずっと地元に住んでいると、自治体から「行政委員になりませんか?」とよく声を掛けられます。長く住み続けていますし、ご近所付き合いもものすごく大切なことですから、そのような声がかかったときは、できる限り参加しています。

例えば、地域のお祭りやラジオ体操など、子どもたちに向けた活動を行っている育成委員や、高齢者、シングルマザー、障害者などを支援する民生委員などとして活動しています。

―そのような活動に参加しようと思ったきっかけは?

『金持ち父さん・貧乏父さん』で有名なロバート・キヨサキさんの影響を受けたからです。彼は慈善活動を積極的に行っており、「自身が恵まれた環境なのは、社会のおかげであり、それは社会に還元するべきだ」と考えている人で、私はそれに感銘を受けました。

地主の子どもとして生まれ、裕福でとてもありがたい環境に生まれたと思っています。だからこそ、私が恵まれた立場にいることを感謝して、社会に還元しなければいけないと。

そのため、自分ができる範囲で、時間やお金を投資だけに使うのではなく、社会貢献にも使おうと思っています。

―最近はどのようなことをしているのでしょうか?

住居困窮者に向けて、住居探しのサポートや入居の受け入れを行っています。

自治体の活動に参加していると、高齢の方や児童養護施設から退所した子どもは、身寄りがおらず、住居探しに困窮していることを知りました。また、これは自治体の人から聞いた話なのですが、住居困窮者に住居を提供してくれる大家が少ない状況でとても困っているそうです。

大家である私ができることは、そのような人たちの支援をすることだろうと思って。それで住居探しのサポートや、私が保有している物件で空室があれば、貸し出すようにしています。

―コラムでは、不動産会社と連携しながら生活困窮者に住居提供したと書いていました

ご縁があって、石川県金沢市にある「エリンク」という賃貸仲介会社と連携して、生活保護を受けている人や、ホームレスの人など、生活に困窮している人に住居提供をしました。生活に困窮している人に向けて賃貸物件を探している賃貸仲介会社で、私もその活動に共感しました。

何か協力できる方法がないかと連絡したところ、「中古ワンルームマンションを購入して、生活に困窮している人に向けて貸してくれないか」と言われたんです。

もちろん二つ返事で引き受けました。金沢のワンルームマンションを購入して、現在では生活保護を受けている人に住んでいただいています。

■アドバイスは「買う時から出口を考えろ」

―これから不動産投資を始めていく人に向けて、アドバイスをお願いします

購入する前から、「この物件の出口戦略はどうするのか」をきちんと考えて欲しいと思います。

例えば、最近は500万円以下で購入できるような地方の築古戸建てから不動産投資を始める人も多いと思います。賃貸経営を一から学ぶために、まずは小さく始めて徐々に学んでいくということは大変良いことだと思います。

ただ、ご存じの通り日本の人口は減っているので、20~30年後には地方の築古戸建てに住む人はどんどん減るんじゃないかなと私は考えています。そのため、地方の築古戸建てだけを買い進めるのは少し危険な気がします。

売却も検討しながら手元資金を増やしつつ、少しずつ立地の良い物件に切り替えていくことも検討した方が良いと思います。

―購入する前から出口を考えろということですね

そうですね。また、いかに売上や利益を上げるかという視点に加え、ある程度の規模になったら、「何か社会貢献ができないか」という視点を持つことも大切ではないかと考えています。「賃貸業は、大切なライフラインである『住まい』を担っているのだ」という自覚は、すべてのオーナーさんが持つべきではないでしょうか。

既に物件を保有していて、空室があるのであれば、住居探しに苦労している人に向けて、貸し出すことも検討してみるのも良いと思います。

同時に入居者がまだ行政のサポートを受けてないのであれば、行政へつなげてあげることもできます。

生活保護の申請をしていれば、家賃滞納のリスクもありませんし、空室が解消されます。事業としてもきちんと収益を上げながら社会貢献をしていくことができますからね。そして、入居者の新たな生活を応援することにもつながっていくと思います。

○プロフィール・二代目大家かずみ
1996年、両親からテナントビルを相続したことをきっかけに不動産投資をスタート。東京都西部を中心に、一棟物件8棟、区分マンション1室を所有する。2018年8月に実践大家コラムニストデビュー。コラムでは、主に海外不動産や相続対策、社会貢献活動など、自身の経験を基に定期的に発信している。

不動産投資の楽待

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最終更新:8/3(火) 19:00

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