IDでもっと便利に新規取得

ログイン

これまでの「実務成果やスキル」だけで管理職を選んでしまう日本の職場の大問題

8/2 17:01 配信

東洋経済オンライン

職場における上司の役割は一言でいえば「メンバーをまとめて職場全体で成果を挙げること」です。ところが、日本の職場では、マネジメント適性を問われて上司になった人は少なく、また昇進後も、管理職スキルを身につけるための研修を受け、アウトプットの場を与えられてきた上司は少ないのが実情です。それにもかかわらず、コロナ禍により職場をまとめる上司の重要性は増しています。そこで、これからの上司のあり方と具体的な実践すべき内容について『「職場の問題」30の解決法』の著者である大橋高広氏が紹介します。

■なぜ今、管理職を育てることが急務なのか? 

職場における管理職育成の問題は以下の3点です。

①日本の職場にはマネジメント適性のある上司が極めて少ない
②1冊本を読んだり1日研修を受けたりしても、リーダーシップはなかなか身につかない
③会社は管理職には積極的に投資しないため、管理職の成長は本人に委ねられている

以上について、具体的な失敗例を交えながら、これからの管理職育成のあり方を解説します。リーダーシップという抽象的な概念で育成するのではなく、「上司の仕事」を具体的に定義し、その仕事が遂行できるように指導することで、管理職育成はより再現性の高いものとなります。

 現在、働き方改革やコロナ禍で、職場の環境は大きく変化しています。それに伴い、生産性の向上、業務改善、技能承継などの職場の問題に着手しようという動きが加速しています。そして、その解決に向けては、職場のまとめ役である管理職が重要な役割を担っています。

 しかし、日本の職場では管理職が率先して職場の問題を解決しているという事例は、ほとんど見かけることがないというのが実情ではないでしょうか。

 その原因として「システムなどのツールや小手先の経営メソッドにばかり投資していること」と、「そもそもマネジメント適性を持った人材を管理職に昇格させているわけではない」ということが挙げられます。

 最新のツールやメソッドを取り入れるだけで職場の問題は解決する、と考えている企業は意外なことにとても多いのですが、本当に必要なのは「管理職の育成」です。

 そこで、重要なのが、「管理職は皆リーダーシップを持っている、あるいはいずれ発揮するようになる」という前提を疑ってほしいということです。

 そもそも日本の職場の管理職は、これまでの実務の成果やスキルを評価されて昇格しているケースがほとんどです。リーダーシップがあるから管理職に抜擢されたのではありません。ひどいケースでは、経営陣への忖度がうまいだけで昇格していることさえあります。

 そのうえ、管理職になってからは、職場改善や部下育成などについて教育の機会はほとんどなく、せいぜい1日ありきたりなリーダーシップ研修を受けて感想文を書くぐらいのものです。

 管理職の業務と、一般スタッフの業務は異なるはずですが、一般スタッフ向けの業務遂行に関する教育機会はあっても、管理職向けの管理職業務の遂行に関する教育機会はほとんどないため、管理職が職場で機能していないのはある意味で当たり前ともいえるのです。

■会社も部下も知らない管理職特有の悩み

 働き方改革で残業に対する規制がより厳しくなった今、管理職が頭をかかえる大きな問題があります。それは「管理職が労働時間の削減に関するしわ寄せを一手に受けている」ということです。

 本来、労働時間を削減するためには、「仕事のやり方を改善して生産性を高める」「スタッフを育成して生産性を高める」といったプロセスが必要です。しかし、現状では「早く帰れ」「残業するな」「有給休暇を消化しろ」といった声かけだけをするケースが散見されます。

 結果として、仕事ができない人を育てたり、仕事ができない人に仕事を任せたりすると、時間がかかったりミスをしたりするので、管理職や仕事のできる人に仕事が集中してしまいます。そうすることで、仕事のできない人は「本人ができる仕事」しか与えらないため、「自分は仕事ができる」のだと勘違いしているケースもあります。

 さらに、「管理職は誰よりも残業をし、休日を返上して働くのが美学」「教育指導は背中で語るものだ」といった精神論が残る職場では、マネジメントどころか管理職本人がダウンしてしまうという問題が起こりかねません。

 このような状態ですから、管理職は十分にスタッフを教育することが難しいというのが実態なのです。しかも、会社と部下の板挟みになって日々孤軍奮闘している管理職の悩みに関心を持ち助けてくれる人はいないため、管理職の中には、毎日顔色が悪かったり、職場で不満を口にしたりする人がいるというわけです。

 前述のとおり、会社は最新のツールやノウハウの導入に大きな投資をします。まるでそれらを導入するだけで、職場の問題がまるごと解決できると言わんばかりです。

 また、若手スタッフの育成にも力を入れます。入社時の研修はもちろんのこと、会社によっては入社後には1人ひとりにOJT担当の上司がついて、育成計画などをつくり進捗を確認しながら、丁寧に育成を進めていきます。

 ところが、管理職育成はというと、圧倒的に優先順位が低いのが日本の職場の実態です。しかし、日本の管理職はとても真面目なので、自分自身で書籍やセミナーなどに投資をして、学んでいる方もいらっしゃいます。ただ、そういった書籍やセミナーで勉強したことを、自身の職場で活かせている管理職はほとんどいないでしょう。

■なぜ自分の職場で活かせないのか

 その理由は2つあります。

 1つ目は書籍やセミナーのテーマが「リーダーシップの養成」に偏っていることです。さきほどもお伝えしましたが、日本の職場のほとんどの管理職は、リーダーシップを持ち合わせていません。

 そこに、リーダーシップを鍛えろというのは無理があります。人間には適性があるからです。だからこそ、リーダーシップの本を読んで、「さあ明日から管理職として成果を出せるように頑張るぞ」と意気込んだところで、実際に職場で行動に移すことが難しいのです。

 2つ目は、管理職本人が管理職の職務内容を具体的にイメージできていないということです。職場において、一般スタッフはやるべき職務内容が明確です。だからこそ、実務の研修を受けて、実務を実践していき、その繰り返しの中でスキルアップしていきます。

 ところが、管理職の職務内容は明確ではないことが多いのです。いくら書籍を読んでみても、例えば旧態依然とした「目で見て盗め」方式の育成を受けてきた上司には、きちんと部下を教育する方法を具体的にイメージすることはできません。

 こういったことが日本の職場で管理職が機能しない原因となっています。

 近年、「ジョブ型雇用」がトレンドで導入する企業が増えています。ジョブ型雇用とは、スタッフに対して職務内容を明確に定義し、与えられた職務の遂行の度合いで評価する雇用制度です。私は、一般スタッフだけではなく、管理職も「ジョブ型」を取り入れるべきであると考えています。つまり、管理職の職務内容を明確に定義し、その職務を遂行するために必要なスキルを身につけてもらうという考え方です。

 これまで、管理職の仕事とは「マネジメント」という大きなくくりで表現されることが多く、リーダーシップなどの精神論で語られることが多かったのですが、それでは、管理職育成に再現性を持たせることは極めて困難です。

 そこで、管理職の職務内容を明確にすることで、管理職育成が再現性高く機能し、管理職としての仕事の成果を評価しやすくなります。具体的には、管理職の職務として、部下育成などを明確に定義し、人事評価にきちんと反映してください。人事評価に反映されなければ、気のよい管理職が善意で部下育成をしているだけとなり、それなら管理職自らが動いて成果を出すほうが効率がいいということになってしまうからです。

■押さえておきたい管理職育成3つのポイント

 管理職育成で押さえておきたいことは3つあります。

 1つ目は、Off-JTです。これは、比較的よくある管理職の育成方法で、研修を受講したり、書籍を読んだりしてインプットします。

 2つ目は、OJTです。実は、管理職はOJTを受ける機会がほとんどありません。なので、会社が「スタッフの育成と定着のために1on1を実施するように」と伝えても、上司が1on1に関するOJTを受けたことがないとすれば、具体的な実施方法をイメージできていない可能性が高いといえます。

 この事例であれば、上司と部下の面談の際に、面談に長けた人事担当者や外部コンサルタントなど、もう一人OJT担当者がいるといいでしょう。

 3つ目は、人事による進捗管理です。管理職も人間です。一般スタッフと同様に自主管理よりも、誰かが一緒に管理してくれたほうが成果は出やすいといえます。そこで、人事担当者などが、管理職の育成について進捗管理を実施します。やり方は、上司による部下の育成管理と同様です。そうすることで、より管理職の育成の効果を上げることができます。

 アフターコロナにおける組織強化による売り上げ・利益の向上は、どの企業においても必須課題です。そのカギを握っている管理職育成について、この機会にあらためて見直されることをお勧めいたします。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:8/2(月) 17:01

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング