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新型「アクア」デザインに見る「ヤリス」との方向性の違い。1クラス上を狙った「人に寄り添う」落ち着き

8/1 9:01 配信

東洋経済オンライン

 トヨタ自動車のハイブリッド専用車としては「プリウス」に続く車種であり、一時期は登録車のベストセラーカーにもなっていた「アクア」がモデルチェンジした。

 先代が発表されたのは東日本大震災が発生した2011年だから、実に10年ぶりのモデルチェンジということになる。

 もっとも、コンパクトカーではモデルチェンジのサイクルを長めに取ることはよくある。

 同じ車両を長く作り続ければ減価償却や量産効果によりコストが抑えられ、安い価格で提供できるからだ。トヨタで言えば、2020年2月に「ヤリス」に切り替わる前の「ヴィッツ」の最終世代は2010年デビューだったので、10年間にわたり現役を務めたことになる。

■アクアをキープコンセプトにした理由

 ヴィッツからヤリスへの進化と比べると、アクアのモデルチェンジは、少なくともエクステリアデザインについてはキープコンセプトに思える。パっと見ただけでは、先代と差異を感じない人もいるだろう。

 これはアクアが新型になってもまだ2代目と歴史の浅い車種であり、ブランドイメージの確立が重要であることに加えて、先代がグローバルで約187万台を販売したヒット作となったことが大きいと考えられる。

 ボディサイズも、先代からキープされた。全長4050mm×全幅1695mmという数字は先代の後期型(前期型の全長は3995mm)とまったく同じだ。

 一方で、全高は2WDで1485mmと30mm高くなっており、ホイールベースは2600mmと50mm延長している。全高を上げたのは、主に後席の頭上空間を拡大し、居住性を向上させるためだろう。

 新型アクアは、トヨタのコンパクトカーではヤリスに続き、新世代のTNGA(GA-B)プラットフォームを採用した。でも、外寸は同一ではなく、ヤリス(2WD)は全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mmでホイールベース2550mmと、新型アクアと比べると短くて背が高い。

 2台の外寸の差は、それぞれの出自が関係している。ヤリスはその前のヴィッツの頃から、ヨーロッパをメインマーケットとして開発された。ヨーロッパでは道の狭い地域や路上駐車も多く、全長の“短さ”が重視されるのだ。

 一方のアクアは、アメリカなどで「プリウスc(c=city)」という名前で、「プリウス」シリーズの1モデルとして販売された。そのため、プリウスのイメージを継承すべく、コンパクトカーとしては伸びやかなプロポーションが与えられたと考えている。

 こうした背景を頭に入れながら、「Harmo-tech ~知性・感性を刺激する、人に寄り添う先進」をテーマとした、新型アクアのデザインをエクステリアから見ていこう。

 フロントマスクは、ワイドになったグリルと薄くなったヘッドランプで精悍な雰囲気を出しつつ、グリル周辺の金属調のアクセントラインが上質感を演出。一方で、グリルやヘッドランプのエッジに丸みがついたことで、穏やかな表情になった。「人に寄り添う先進」というキーワードを連想する部分だ。

■全高30mmアップを感じさせないサイドビュー

 サイドビューは、モノフォルムのシルエットを受け継ぎながら、サイドウインドー後端を尖らせ、リアコンビランプをサイドに回り込ませた形に。さらに、ドアパネルに勢いよく跳ね上がるキャラクターラインを入れることで、リアフェンダーの張り出しを強調する造形になった。

 全長をキープした中で全高のみアップしているが、“背高”になった印象はない。高くなったルーフを目立ちにくくすべく、サイドウインドーなどを伸びやかに仕立てたためだ。

 これは、「スマートでエモーショナルかつ動感のあるエクステリアを目指した」という作り手の考えを反映しているし、穏やかな印象も感じるフロントマスクと比べると動きを感じる造形だといえる。

 リアは、もっとも大きく変わった部分かもしれない。全幅いっぱいに張り出していた縦長のコンビランプは、リアウインドー下端あたりで絞り込まれ、サイドに続いてここでもフェンダーの膨らみをアピールしている。

 リアバンパーに入った黒い台形のアクセントラインも、踏ん張り感を強調している。フロントやサイドを“先代に似ている”と感じる人も、このリアビューで新型だと見分けることができるだろう。

 ボディカラーは新色の「クリアベージュメタリック」 をはじめ、全部で9色を設定している。 イメージカラーにベージュを起用したのは、最近の乗用車としては珍しい。ここからも「人に寄り添う」というコンセプトが伝わってくる。

 さらに9色のラインナップを詳しく見ると、目が覚めるような鮮やかな色はなく、ゴールドやレッドも落ち着いた色調であり、ヤリスとの方向性の違いがわかるし、1クラス上を狙っているような感じもする。

■インテリアは“少し上級”へ

 操作系を集約し、「シンプル・クリーンかつ上質な空間を表現した」というインテリアは、エクステリアより違いが大きいと思う人が多いだろう。

 先代アクアは、インパネの奥に運転席前から中央まで伸びる横長のデジタルメーターを置き、手前に三角形のセンターパネルを配置。助手席側はそこから伸びるソフトパッドで覆った仕立てで、モダンな印象が強かった。

 これに対して新型は、全幅にわたる台形のソフトパッドがメインとなり、メーターは運転席前に移動されている。

 先代のインパネは、プリウスとのつながりを感じさせる造形でもあったが、新型にはその面影はない。ヤリスとの比較では、躍動感を抑え、落ち着きを強調したことが伝わってくる。

 先代では、フロアから生えていたセレクターレバーが小型の電気スイッチになって、センターパネルに移動したことや、トヨタのコンパクトカーとして初めて10.5インチの大型ディスプレイオーディオを採用したことも目立つ。

 ここからも、新型アクアが少し上級のコンパクトカーを目指していることが、理解できる。そのうえで感心したのは、エアコンやオーディオのスイッチをコンパクトにまとめつつ、ダイヤルを併用したことだ。

 上級志向の証と勘違いしているのか、なんでもタッチパネルに置き換える車種が増えつつある中で、好ましい設計だと思った。ダイヤルのほうが、視線を移すことなく手探りで操作できるからだ。

 前席のシート間には、スマートフォンの充電ケーブルなどを格納できるスライド式トレイを設け、上級グレードにはコンソールボックスを用意している。災害対応もアピールポイントの1つで、インパネとセンターコンソールにつく非常時給電装置を標準装備とした。

 ただし、同クラスの輸入車であるプジョー「208」やルノー「ルーテシア」は、非接触充電も可能だ。トヨタでは「ハリアー」などですでに非接触充電器を採用しているし、多くの人にとってもっとも身近な電化製品でもあるスマートフォン対応は、もう一歩踏み込んでほしかった。

 インテリアカラーはブラックを基調としており、上級グレードではダークネイビーとの2トーンとしているものの、先代のような明るいコーディネートはない。ここでも落ち着き感をアピールしているようだ。

■EV化の中で「ハイブリッド専用」はアピールできるか? 

 新型アクアのデザインを見て感じるのは、ヤリスとの方向性の違いだ。ヤリスは、フロントもサイドも複雑な線や面が多いデザインになっているのに対し、アクアはすっきりとまとめている。おかげで落ち着いた雰囲気に見える。

 ヤリスが、何よりも“走りの楽しさ”をデザインでもアピールしたのに対し、アクアはキャビンの広さや居心地の良さなどにこだわった造形であると感じる。このあたりは、広さに定評がある日産「ノート」やホンダ「フィット」に近い。

 ノートやフィットのライバルは、今まではヤリスだったかもしれないが、これからはアクアのほうがライバルになるのではないかと思っている。

 気になるのは、グローバル戦略だ。先代がプリウスcの名前で展開していたことは前に書いたが、そのプリウスcはアメリカでは2019年、オーストラリアでは2020年に販売を終了している。

 しかも、アメリカではカリフォルニア州などで、将来ハイブリッド車の新車販売を禁止する方向に動いており、“ハイブリッド専用車”という特徴は今後、海外でアピールポイントにはなりにくくなると考えられる

 このクラスのトヨタのコンパクトカーが、これから電動化という流れの中でどういう方向に進むのかはわからないが、少なくともデザインを見る限り、アクアはプリウスの弟という位置づけから脱却し、躍動感のヤリス、落ち着きのアクアという棲み分けになっていくのではないかと思えた。

東洋経済オンライン

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最終更新:8/1(日) 9:01

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