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「愛のため」女性たちはタダ働きを強いられてきた

7/31 19:01 配信

東洋経済オンライン

「ジェンダー・ギャップ指数2021」(世界経済フォーラム)は、今回も日本は主要7カ国(G7)のなかで最下位。日本だけではありません。隣国の韓国もほとんど変わらない順位。男性優位といっても過言でない社会で、女性たちは何をすれば奪われずに生きやすくなるのでしょうか。
そのヒントを、NYタイムスでも取り上げられたフェミニズム空間「ウルフソーシャルクラブ」を運営するキム・ジナ氏が語ります。韓国で話題沸騰の彼女のはじめての著書を邦訳した『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない』から一部抜粋してお届けします。

■経済発展を下支えしているのは、女性たちの無報酬労働

 「どうしてそんなに仕事が大事なんですか?」

 就活中か仕事を始めたばかりの女性からときどき訊かれることだ。仕事は私にとってとても大事だ。こう言うと並々ならぬ仕事欲とかワーカホリックと誤解される。が、違う。自分の名前を掲げてやっている仕事だから恥ずかしくない程度にするだけで、徹夜して芸術魂を燃やすなんてことはしない。にもかかわらず私にとって仕事が大事な理由は、質問した側がソワソワするくらいシンプルだ。

 「家事が嫌いだから」

 私は、家事をしないために外で働くほうを選んだ。ここでいう家事とは、妊娠、出産、育児と続く結婚という道を選んだときに避けて通れない課題、つまり家事労働やケア労働のことを指している。

 家事が嫌で必死に外の仕事に没頭していた人間が、家事に似た労働、つまりカフェの仕事を続けられている理由は、なんといってもお金である。家事労働とは違って店の労働ではお金が稼げる。会社みたいにボーナスや年末のインセンティブもないけれど、それでも体を動かして稼いだ真っ正直なお金だ。

 家事に似た労働でお金を稼ぐ時間が長ければ長いほど、実際の家事に投入する時間は短くなる。お金にならない仕事に自分の労働力を使いたくないのだ。最近は家でノンフライヤーのボタンを押すのがせいぜい。それだって私が非婚の女性だから可能なことだろう。

 多くの食堂、病院、弁当会社、給食会社の厨房で働く既婚女性たちはそうはいかない。彼女たちには家でも休む暇がない。夫や子どもたちが口を開けて待っているから。仕事から帰るとまた別の労働が始まるだけのことだ。家の外でなら、たとえ最低賃金であっても受け取ることができるが、家の中では同じ仕事でも徹底して無報酬だ。韓国のめざましい経済発展を下支えしているのは、女性たちの無報酬労働だと思う。

 国家は男の顔をして女たちを黙らせ、自分の影となって影法師の仕事をすることを要求する。結婚はそれを可能にする最も簡単で便利なやり方だ。

 異性愛、母性愛、家族愛など、さまざまな愛の名を借りていかにもそれらしく装う。そんなふうに女性を家父長制の中に追いやって馬車馬のように働かせた結果が、2018年の世界最低出生率だ(0.97人、2018年第2四半期)。

 すでに貧しい国ではない、1人当たりのGDPが3万3000ドルに上る国での史上最低出生率というのは何を物語っているのだろうか?  その国家の経済発展が女性の搾取によってなされたこと、そして女性の人権はまったく改善されていないということだ。出産政策に関わる部署は過去13年の間に153兆ウォンを投入してもなおこの根本原因が理解できないらしいが、人口の半分を占める女たちはみんなよく知っている。女の労働を無報酬で搾取して叶えた開発と成長は、すでに過去のものなのだということを。

■『森の生活』のソローだって、食事と洗濯は母親任せ

 数日前、田舎に移住して隠居生活を送っているある大学の名誉教授が、インタビューで「ひとりぼっちの生活は怖くない!」と言っていた。記事中の、訪れた記者に「夫人お手製の飲み物をふるまった」というくだりで失笑が漏れた。ウォールデン湖のほとりに自らの手で小屋を建てて暮らしていたH・D・ソローが、実は食事と洗濯は母親にしてもらっていたというエピソードを知ったときと似た虚脱感だった。

 最近私には新しい能力が身についている。ある男の人が博士号をもらったり作品を完成させたり受賞したりすると、その人がすごいと思う前に彼の周囲にいる女たちが見えてくるのだ。つい最近まで目に留まらなかった、幽霊みたいな存在だ。

 ソローの母親のようなお母さんだろうか?  孤独死を夢見ると語る教授の夫人みたいな妻だろうか?  あるいは恋人?  男が自分のことだけに夢中になっていられるよう献立を決め、買い出しに行き、料理を作り、洗いものをし、掃いたり拭いたり洗濯したり。一日中近くでしずかに動いていたその女は誰だろう? 

 家事労働のほかに秘書としての仕事をしていた女も多いだろう。いままで歴史に記録された数多くの業績と成功も、だからこそ可能だったんじゃないか? 「見えざる手」の助けがあったから。

 偉業を残した人だけの話ではないはずだ。

 職場で私と競争する普通の既婚男性たち。結婚後こぎれいになった彼らにも、1つずつ割り当てられている魔法の手。正直、自分だってその「見えざる手」が欲しい。そんな気持ちを都会の男は「僕と結婚してくれる?」と表現するのである。1人の女性―母親の労働を無報酬で搾取するのはもうこれで十分だろう。

 自分の手で稼いだお金を誰のことも気にせずに使えるという喜びに値段は付けられない。どんな照明よりもその人を輝かせてくれる。だから、女性の労働には必ずまっとうな賃金が与えられるべきなのだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/31(土) 19:01

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