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どうなるのか?「東京五輪後」の日本の財政収支

7/27 5:31 配信

東洋経済オンライン

 東京五輪が始まった。外国人の入国を制限し、ほぼ無観客での開催のため、経済効果は極めて限定されたものとなろう。

 開会式前々日の7月21日、経済財政諮問会議で内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)を報告し、2030年度までの経済財政の見通しを示した。

■2025年度にPB黒字は達成できない

 中長期試算は、例年1月と7月に改訂版が公表される。今回は6月に菅内閣が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)との関連で、試算結果がどうなるかが注目されていた。

 骨太方針2021には「骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(2025年度の国・地方を合わせたPB(プライマリーバランス)黒字化を目指す、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す)を堅持する」という文言が記載された。PB黒字化目標は閣議決定されており、今さらそれを破棄することはない。

 さらに、「ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する」とも書かれている。

 新型コロナによって経済的打撃を受けたため、骨太方針2018で掲げた2025年度の財政健全化目標は達成できないと以前からみられていた。コロナ前に出された中長期試算でも、2025年度にPBは赤字になるとの試算結果しか示されていなかった。

 では、今回の中長期試算ではどうなったか。2020年代の名目経済成長率を3.5%前後と想定する「成長実現ケース」において、PB黒字化は2027年度に達成される。2021年1月の中長期試算では2029年度だったのが2年早まっている。

 成長実現ケースにおいて、1月試算では2025年度に7.3兆円のPB赤字(対GDP比で1.1%の赤字)だったが、7月試算では同じく2.9兆円のPB赤字(対GDP比で0.5%の赤字)となった。わずか半年で、2025年度の基礎的財政収支の赤字は半分以上減少したのだ。

 新型コロナの感染拡大が続く中、なぜそれほど財政収支が改善するのだろうか。結論から言えば、2020年度決算がほぼ固まり、それを踏まえて試算を改訂したからである。

 ただ、経済成長率の鈍化が財政収支の悪化要因になりそうだ。1月試算では、2020年度の名目成長率はマイナス4.2%、2021年度に4.4%だったが、7月試算では2020年度にマイナス3.9%と上方修正されたものの、2021年度に3.1%と下方修正された。これにより、2021年度の名目GDPは、7月試算は1月試算よりも6.5兆円少なくなると見込まれている。

■2021年度でもコロナ前には戻らない

 新型コロナの影響で、2020年度の名目GDPは大きく落ち込んだ。事前予想よりは小さかったものの、東京都では緊急事態宣言が断続的に続き、2021年度に入っても経済活動は十全に再開されていない。

 つまり、1月試算時点では、2021年度にはコロナ前の名目GDPに回復すると見込まれていたが、7月試算時点では2021年度にはコロナ前の水準まで戻らないと想定した。

 中長期試算の発射台となる2021年度の名目GDPが低くなると、そこから経済成長するとしても将来のGDPも小さくなる。7月試算の2025年度の名目GDPは、1月試算より、成長実現ケースでは17.1兆円少なく、ベースラインケース(2020年代の名目成長率が1.5%前後と想定)では3.5兆円少ない。将来の名目GDPが小さいと、それだけ税の自然増収(税率を引き上げなくても増える税収)は少なくなる。これは財政収支の悪化要因となる。

 では、新型コロナの影響がありながら、PB黒字化の達成年次が早まったのはなぜなのか。それは、2020年度の決算ベースでの税収が想定したほど落ち込まなかったからである。

 1月試算時点では、2020年度の補正後予算ベースの税収しかわかっていなかった。その時点で、国税(一般会計分)が55.1兆円、地方税が42.3兆円だった。しかし、その間に2020年度の決算が固まり、決算ベースの税収は、国税(一般会計分)が60.8兆円、地方税が43.0兆円とそれぞれ増えた。

 2020年度の税収が増えたのは、コロナ禍でも利益を増やした企業の法人税収が予想以上に多かったこと、消費税率を10%に上げた効果で消費税収が過去最高となったことが挙げられる。

 2020年度の税収が増えたことは、経済成長に伴う税の自然増収がより多くなる形でその後の経済見通しに反映される。名目経済成長率が1%高まると税収が何%増えるかを表す税収弾性値は、2020年代を通じて1.1前後となっている。中長期試算の発射台となる2020年度の税収が多いと、同程度の税収弾性値でも、それだけ税収が増える。これは財政収支の改善要因となる。

■PB改善幅の6割が税収増による

 前述のように2021年度の名目GDPが少なくなったことによる財政収支の悪化要因もあるが、両者を合わせると、財政収支の改善要因の効果が上回るとの試算結果が示された。

 その結果、7月試算における2025年度の税収(国と地方合計、成長実現ケース)は、1月試算よりも2.0兆円増加した。その他収入も加味すると、2025年度の税収等は1月試算よりも2.6兆円増加したことになる。これは7月試算における2025年度のPB改善幅(1月試算比)4.4兆円のうち、約6割が税収等の増加によるものということになる。

 7月の中長期試算では、以前と同様、追加的な歳出改革を織り込まない想定としている。したがって、2022年度以降に追加的な歳出改革を実施すれば、7月試算で示されたPBよりも収支を改善できる。

 筆者がコロナ前の中長期試算で示された歳出額の見通しの経年変化を分析したところ、恒久的な歳出改革の効果として、1年ごとに1兆円弱の追加的な歳出削減が実行されていることがうかがえる。

 2022年度に1兆円弱の追加的な歳出削減が行われると、この効果は2023年度以降も毎年度効果が継続する。2023年度には追加的に1兆円弱の歳出削減が行われると、2023年度は2021年7月試算と比べて歳出を2兆円弱少なくできる。

 こうして2025年度まで追加的な歳出改革を継続すれば、累積した歳出抑制は3兆円強となる。2025年度の歳出は、2021年7月試算と比べて3兆円強少なくできる。そうなれば、成長実現ケースで2025年度2.9兆円の赤字は解消できるメドが立つ。つまり、2025年度のPB黒字化は達成可能となる。

■4年間連続の歳出改革が不可欠に

 ただし、その達成のためには、2022年度予算編成から4年間連続して追加的な歳出改革に取り組み続けることが必要である。加えて、成長実現ケースが想定するように、名目経済成長率は3.5%を超える水準が続かないといけない。

 成長実現ケースは以前から、日本経済の見通しとして楽観的すぎると批判されていた。歳出改革と経済成長を両立させる必要がある。

 経済成長率についてより保守的な見通しであるベースラインケースは、7月試算では2025年度のPBは7.9兆円の赤字。2028年度には6.0兆円の赤字まで改善するが、2030年度までにはPB黒字を達成できない。ベースラインケースでは成長実現ケースほど税の自然増収を期待できず、その分だけ財政収支は成長実現ケースよりも悪化する見通しとなる。

 前述のように、財政健全化目標の達成年次については、東京五輪後の2021年度内に再確認することが骨太方針2021で閣議決定されている。経済成長率をどう想定するかによって税の自然増収の多寡が決まる。

 目標達成年次の再確認に際しては穏当な経済成長率に基づきつつ、歳出改革で妥協することなく、PB黒字化の達成を図っていくべきである。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/27(火) 5:31

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