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欧州大水害、国際鉄道網に与えた被害の深刻度 ドイツで600kmが被災、気候変動のリスク顕在化

7/27 4:31 配信

東洋経済オンライン

 ヨーロッパは7月中旬の記録的な大雨により、一部地域では洪水が発生するなど大きな被害に見舞われた。死者の数は約200人(7月24日時点)に達しているが、ドイツだけでも未だ150人以上が行方不明となっており、犠牲者の数は今後も増える可能性がある。

 とくに被害が大きかったのは、ドイツ西部のラインラント・プファルツ州やノルトライン・ヴェストファーレン州などで、7月13日ごろからの豪雨の影響を受けて14日から15日にかけて河川の氾濫による洪水が発生した。各地で甚大な浸水被害が発生し、中には水が2mの高さにまで達した家屋もあった。住民も「40年以上住んでいるが、こんな被害は初めて」「この状況は誰も予想すらできなかった」と口々に語った。

 ベルギーでも河川の氾濫により死者30人以上に達する被害が報告されており、とくにドイツ国境に近いナミュール州やリエージュ州の被災が深刻だ。オランダやオーストリア、チェコでも大雨による被害が発生している。

■ドイツ西部の鉄道に壊滅的被害

 この水害は、交通インフラにも大きな被害をもたらした。濁流に飲まれた多くの町や村は、道路・鉄道ともに寸断され、輸送に多大な影響が出ているだけではなく、救援活動にも支障をきたしている。

 ドイツ鉄道のインフラ部門であるDBネッツ(DB Netz AG)は、同社が管理する約3万3400kmの路線網のうち、ラインラント・プファルツ州とノルトライン・ヴェストファーレン州だけで約600kmの路線、約80カ所の駅が水害によって壊滅的な被害を受けたと述べた。全国では50カ所以上の橋梁が被災し、1000カ所以上で架線や信号機などに影響が出ているといい、現時点で被害総額は約13億ユーロ(約1690億円)に達すると推定している。

 オーストリア国境に近い南ドイツでも被害が確認され、両国国境に近いミッテンヴァルト周辺地域は道路も含めて寸断された状態となっている。

 また、チェコ国境に近いエルベ川周辺でも土砂流入などの被害が確認され、復旧作業のため複線の片側1線だけを使った交互通行を余儀なくされ、物流に大きな障害が生じている。

 ベルギーの鉄道は南部でとくに大きな被害が出ており、同国鉄道のインフラ部門インフラベル(Infrabel)は状況によっては8月まで運休となる区間もあると述べている。とくに、ドイツとの間を結ぶ幹線に位置するリエージュ―ペパンステ間は、橋梁に大きな損傷が見つかり、その修復のために少なくとも8月30日まで運行再開の見込みはないとの見解を示した。

 同路線は首都ブリュッセルとドイツの都市ケルンを結ぶ重要幹線上に位置するため、旅客・貨物輸送ともに大きな影響を受けることが予想される。

■気候変動リスクに対応できず

 オランダの鉄道は、ドイツ国境に近いマーストリヒトとベルギー国境を結ぶルートが寸断。オーストリアは前述のミッテンヴァルト―ゼーフェルト間のドイツ国境周辺地域のほか、ウィーンやインスブルックとドイツ方面を結ぶ国際幹線ルートのクーフシュタイン―ヴェルグル間も被災の影響で運行本数が削減されている。

 ドイツの専門家や政策当局者からは、今回の災害は気候変動がもたらしたものと指摘する声が出ており、高まる気候変動のリスクに対し、都市やインフラの構造面で十分な対策が採られていなかったことが被害の拡大に繋がったと指摘している。

 ヨーロッパでは、2013年にも多くの犠牲者を出す水害が発生したが、今回はそれをはるかに上回る規模となった。ドイツのゼーホーファー内相は過去に経験したことがない災害だったと述べた。実際、被災地域ではわずか3時間程度で水位が急上昇し、多くの住民が逃げる間もなく濁流に飲まれ、命を落とした。

 こうした天災に対し、鉄道インフラは脆弱だと指摘する声もある。道路の場合、多くの区間で高速道路以外に一般国道など多くの代替ルートがあることから、仮に片方が寸断されても一方は無事というケースもあり、実際にドイツでは鉄道が寸断された一部の地域で高速道路が先行して再開している。

 鉄道の場合、今回のような水害による路盤流出や軌道破壊が発生した場合、復旧には道路以上の高度な工事が要求されることから、どうしても復旧に時間がかかってしまう。また、基本的には路面を整えれば最低限の通行が可能な道路と異なり、鉄道の運行再開には信号や分岐器、駅など付帯設備の復旧が必要不可欠で、これらの再整備にも多くの時間と工費が必要になる。

 まだ詳しい被害状況は分かっていないが、ドイツ国内だけで600kmにも及ぶ不通区間の多くは、かなり深刻なダメージを負っており、復旧には相当な時間を要する可能性がある。

■気候変動抑制に寄与する鉄道だが…

 ドイツ鉄道は、とりあえず主要幹線と被害が少なかった路線から優先的に復旧し、被害の大きかった路線は調査のうえ、今後の復旧スケジュールを決めていくとの考えを示している。同社は年内に被災したインフラのうち8割の復旧を目指すとしている。

 また、同様に被害が深刻だったベルギーは、前述の通りブリュッセル―ケルン間の一部区間が少なくとも8月末まで再開できる見込みはないと言われており、当面の間旅客列車は運休、貨物列車は迂回させるといった対策を必要とするだろう。

 まずは両国とも最低限の復旧作業を進め、とりわけ都市間の幹線は単線でも運行再開させることが望まれる。

 これ以上の気候変動を抑制するために、これまでヨーロッパでは乗客1人当たり/荷物重量当たりに対する二酸化炭素排出量が、他の交通機関と比較して少ない鉄道の利用を促してきたが、その気候変動によって災害が発生し、鉄道を破壊するというのだから、何とも皮肉な話である。

 日本における台風災害にも言えるが、近年の気候変動は世界各地で我々の想像をはるかに超えるレベルで進み、過去に経験したことがないほどの集中豪雨や、それを起因とした河川の氾濫が起きやすくなっているようだ。都市やインフラの整備計画は、今後こうした突発的な気象条件に耐えられるよう、再設計を必要とする時期に来ていると言えよう。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/27(火) 4:31

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