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財務省「呪われた82年組」の素顔、事務次官によるセクハラ・国税庁長官による公文書改ざん……

7/25 13:01 配信

東洋経済オンライン

読売新聞で大蔵(財務)省などを担当したジャーナリスト・岸宣仁氏による著書『財務省の「ワル」』は、日本を牛耳ってきた財務省で出世する男たち(=ワル)を分析・活写した一冊だ。事務次官によるセクハラ、国税庁長官による公文書改ざんという不祥事の引き金はいかにして引かれたのか。著書の一部を紹介しながら見ていこう(文中敬称略)。

■「ワル=悪人」ではない

 財務省の中で「あの人はワルだから」と言った場合、いわゆる「悪人」を指しているわけではない。むしろ、「できる男」「やり手」といったニュアンスで、一種の尊称として使われてきたのだ。

 あえてビアスの『悪魔の辞典』風に説明すれば、財務省用語の「ワル」は次のように定義できるかもしれない。

 「湧き出るアイデアを手品のようにちらつかせながら、人たらしの本性そのままに清濁併せのむ泥くささをもって相手を説き伏せ、知らず知らずのうちに政策を実現させてしまうずる賢さ」

 そうした芸当ができるのは、単なる青白き学校秀才では難しい。「勉強もできるが、遊びも人並み以上にできる」タイプが求められる。

 省内に巣くうワルの文化に、外から激しい批判の嵐が吹き荒れたことがある。官々接待のあり方が厳しく問われた1979年の公費天国キャンペーン、民間金融機関からの過剰接待により112人の大量処分を出した1998年の大蔵省不祥事は、いずれも同省の屋台骨を揺るがす大事件であった。

 そして2018年、福田淳一元事務次官〔1982年入省〕のセクハラ疑惑、佐川宣寿元国税庁長官〔1982年入省〕の公文書改ざんと、同期の出世頭2人が1カ月余の間に相次いで辞職に追い込まれたのは記憶に新しい。

 それぞれの出来事が起きた年を追うと、ほぼ20年ごとにスキャンダルが勃発している。その度に組織にメスが入ってもなお、ワルの文化は隠花植物のように財務省の地下茎で根を張っていたと言っていい。

 二度あることは三度あるを地で行く、82年組の同期生が演じたワルぶりにスポットを当ててみよう。この期は、渡辺美智雄蔵相の下で採用されたが、たまたま筆者は大蔵省の記者クラブである財政研究会(略して財研)を担当しており、採用の方針や経緯などについて、ミッチー節といわれた漫談調の大臣の口から聞かされた。

 「青白きインテリばっかしじゃ、これからの大蔵省は務まらんぞ。変わった奴、面白い奴をどんどん採ったから、将来が本当に楽しみだ」

 採用された同期は27人。それまでキャリア官僚の大半を占めた東大法学部に対し、経済学部が6人も採用されたほか、一橋、京都、大阪、慶応、早稲田大学とバラエティーに富んでいた。

 大学の部活も、ボクシング、ラグビー、野球、ウインド・サーフィンなど、体育会系を意識的に採っており、当時、政界で首相候補への階段を上り始めていた、ミッチー色を前面に出した新人採用ではあった。 

 渡辺を囲んで新人全員が記念撮影に収まったり、1人ひとりのプロフィールが記者向けに発表されたり、異例ずくめのお披露目は大きな話題を呼んだ。だが、「変わった奴、面白い奴」を採用したからというわけではあるまいが、同期の多くがそのワルぶりゆえに奈落の底へと沈んでいった。

■十数年後には過剰接待で2人が去った

 第1弾は入省から十数年後、大蔵省不祥事の渦中で過剰接待を理由に、榊原隆が東京地検特捜部に収賄の疑いで逮捕された。同じく過剰接待により佐藤誠一郎が自主退職に追い込まれ、この時点で同期2人が大蔵省を去った。

 それから20年後の第2弾、82年組が演じた醜態はもはや修復不能なほどのマグニチュードで財務省を襲った。

 まず、事務次官まで上り詰めながら、民放女性記者との下品な会話が表沙汰になった福田。2018年4月、『週刊新潮』は福田の女性記者への、「胸触っていい?」「手縛っていい?」などといった飲食店でのセクハラ発言を掲載。

 当初、福田は否定したものの、その音声が公開されるに至り、辞任に追い込まれた。同じワルの文化に染まった時代を知るOBの1人は、大蔵省不祥事に揺れる1998年当時、主計局のみが出世コースであるという人事体系が頂点に達していた省内風景をこう振り返った。

 「あの頃、主計局は足して2で割る調整型が中枢を占めるようになり、清濁併せのむタイプが優秀の評価を受ける風潮が強まりました。

 そんな仕事上のワルが、いつしか生活全般のワルに変質していき、同期や後輩を夜の街で連れ回すのが“できる奴”と見られるようになって主計至上主義の人事に拍車がかかった。

 その行き着く先が、大蔵省解体論になり、大蔵省始まって以来の大量処分につながったのです」

 主計局の主流をほぼ無傷で歩んだ福田も、結果的にワルの文化から抜け出すことができず、セクハラに及んでしまった。このOBは、「一度根づいてしまった文化は、なかなか変えることができない。福田が最後のあだ花であってくれるといいんだが……」と、心なしか声のトーンを落として話した。

 もう1人、公文書改ざんの佐川。財務省の調査で、理財局長当時の佐川が改ざんを主導した事実が明らかになったのを受け、改ざんを強制されて自殺に追い込まれた近畿財務局元職員の妻が訴訟を起こし、現在進行形の不祥事として終止符が打たれる気配が見えない。

■財務省も落ちるところまで落ちた

 財務省のワルは単なる遊び人というだけでなく、にっこり笑って人を斬る、あるいはヤクザ顔負けに強面ですごんでみせる……といった側面も併せ持つ。森友学園への国有地売却問題で国会答弁に立った佐川は明らかに後者の典型であり、不遜で攻撃的な話しぶり、野党議員に対しては挑発的とも思えるやり取りが目立った。

 ある現役幹部は、「OBも含めて、佐川さんを擁護しようという声はいっさい出なかった」と断ったうえで、むしろ「停職3カ月相当」とした処分内容に強い疑問を呈し、財務省も落ちるところまで落ちたという思いを吐き出すように語った。

 「新人の頃から口を酸っぱくして教えられるように、役人が決裁文書を書き直すとなったら、それだけで一発アウトですよ。改ざんに手を染めて3カ月の停職で済むとはとても思えないし、なぜ懲戒免職にしなかったのか理由がわからない。

 組織を守るときは個人の処分をきちんとしないといけないのに、あれだけでも財務省が腐った組織であることが証明された。

 ワルの文化を一掃しようとした大蔵省不祥事に伴う大量処分の教訓がまったく生かされなかったばかりか、失われた信用はこの先10年かかっても取り戻せないでしょうね」 

 森友問題は安倍政権から菅政権に替わっても、引き続き国会で真相究明を迫られ続けている。「呪われた82年組」との陰口がいまだに省内でささやかれる今日、「財務官僚=超エリート」という通説にも完全にとどめを刺されたと見ていいのではないか。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/25(日) 13:01

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