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高校野球「米子松蔭高と境高」が起こした奇跡

7/22 13:01 配信

東洋経済オンライン

 東京オリンピックに関するネガティブなニュースがあとを絶たず、ネット上には日々さまざまな批判や怒りの声が飛び交う中、高校球児たちのさわやかな姿を見て「ツイッターはこのように使うべき」と思わされた人は多いのではないでしょうか。

 7月21日、学校関係者の新型コロナウイルス感染によって全国高校野球選手権鳥取大会への出場辞退に追い込まれながら、一転して出場が認められた米子松蔭高校の試合が行われました。試合は9回まで対戦相手の境高校に2-0とリードされ、2アウトの土壇場まで追い込まれながらも米子松蔭高校が逆転サヨナラ勝ち。不戦敗の決定からわずか4日後に奇跡の準々決勝進出を果たしたのです。

 人々の感動を誘っているのは、米子松蔭の再出場が認められるきっかけとなった経緯。同校・西村虎之助主将の「僕たちは夏の大会に向けて、甲子園目指して、必死に練習してきました。部員から陽性者は出ていません。校長先生含め学校は最後の最後まで出場できる道を探してくれました。試合もできずに、このまま終わってしまうのは、あまりにも辛いです。何とか出場する道を模索していただけませんか?」という悲痛なツイートの拡散に、境高校ナインが協力していたことが明かされ、人々の心をつかんだのです。

■在校生から市民や著名人に拡散

 出発点になったのは、米子松蔭・西村主将が「投稿する怖さはあった」と迷いながらも勇気を持ってツイッターに投稿したこと。「このチームでどうしても戦いたい」「3年間の努力を無駄にしたくない」「あきらめて後悔したくない」という強い思いが怖さに打ち勝ったことが奇跡のはじまりでした。

 次に同校の在校生たちが、そのスクリーンショットを添付して、さまざまなSNSで拡散。それに米子市民をはじめ、橋下徹元大阪市長ら著名人を含む多くの人々が反応し、大きなムーブメントになっていったのです。

 また、その中には前述したように対戦相手の境高校選手たちも含まれていました。同校野球部の井上翔太主将は中学時代のチームメートだった米子松蔭の松尾星哉選手を通じて西村主将のツイートを知り、自らSNSで発信したほか部員などにも拡散をすすめたそうです。のちに「自分たちとしても(春の県大会優勝校で第1シードの)米子松蔭に勝ったうえで甲子園を目指したかった」とも語り、高校生らしいさわやかなスポーツマンシップを感じさせました。

 ちなみに西村主将のツイートには、2.8万件超のリツイート、3300件超の引用ツイート、6.6万超のいいねがついています。ツイートは18日に投稿されたものだけに、わずか数日でこれほどの善意が集まったわけですから、これぞツイッターの素晴らしさであり、最高の活用方法と言えるのではないでしょうか。

■劇的な幕切れのあとは両校選手が涙

 一方、米子松蔭高校は18日に大会への復帰を求める嘆願書を島根県高野連に提出。翌19日、鳥取県高野連は世間の声に推されるような形で、不戦敗の取り消しを発表しました。

 それを受けた西村主将は、「皆さんのおかげで僕たちは大会に出場することが出来ました。感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。多くの方々の声援を胸に感謝の気持ちを忘れずに試合に臨みたいと思います。本当にありがとうございました」とツイート。ここでもツイッターが「感謝の気持ちをすぐに伝える」という重要な役割を果たしました。

 そして迎えた21日の試合当日。プレイボール前のチームオーダー交換時、西村主将は井上主将に「協力してくれてありがとう」と声をかけたそうです。

 試合は劇的な9回裏の攻防もあって終了後は、両チームの選手たちが涙。試合後の会見で米子松蔭の西村主将は、「出場辞退は悔しく辛いことだったが、日本全国の応援や支援のおかげでこの場にいられるので感謝しかない」と改めて謝意を示しました。

 また、最後までリードされる苦しい試合展開については、「今回のことで『あきらめない気持ちが大切だ』と思いました。その気持ちが『何とかしてやるぞ』という雰囲気になり、逆転勝ちにつながりました」などとコメント。精神的に揺さぶられたあげく、17~20日は臨時休校で十分な練習ができなかったなどのハンディを乗り越えた強さを感じさせられました。

 一方、惜しくも敗れた境の井上主将は、「自分たちが同じ立場になったら悲しいですし、松蔭のために何かできることはないかと選手間で話し合いました」「米子松蔭に協力してよかった。絶対甲子園に行ってほしい」「自分たちはやり切りました」などとコメント。清々しさを感じさせるこのコメントが人々をますます感動させたのです。

■熱量が文字量に表れた称賛コメント

 ネット上には両校の選手たちを称えるコメントが続出しました。

「本当に清々しい。気持ちよく戦いお互いを称える。これぞアマチュアスポーツの原点だと感じました」
「勝っても負けてもこれが高校野球です。これを経て選手達が成長して大人になるんです」
「素敵ですね。境の主将も選手達も、相手の気持ちになって、皆んなで相談して拡散を決めたなんて。感動して涙が出ました。子供達、キラキラしてるなぁ~」
「珍しく鳥取県の試合にこれだけ注目が集まっていた中、試合もこんな劇的な結末となり、両校の素晴らしいスポーツマンシップにも感動させられ、まさに高校野球を体現しているような試合でした」

 それ以上に多かったのが敗れた境高校をねぎらう声。ここではコメントの一部を抜粋しますが、他のニュースと比べると明らかに文字量が多く、その熱量が感動の大きさを物語っています。

「境にも拍手を! こんな世の中でも捨てたもんじゃない。素敵なこともあるんだと強く感じた」
「境の皆さんも悔しい思いがある中で、人間味溢れるナイスコメントです!」
「境の皆さんも、この夏は終わりましたが、生涯このことを誇りとしてください」

「夏の貴重な一勝以上の価値のある一敗に心からエールを送ります」
「試合に敗れたとはいえ、この試合の真の勝者はあなたたちです。ルール通りなら不戦勝の所を、米子松陰の窮地と救済措置に鑑みた再試合の打診に、快く受諾した潔さは敬服に値します」

 1つのツイートが善意によって拡散され、事態を大きく動かしました。さらに、終わったあとにそれを見た人々が余韻を語り合うところも含めて、「ネットはネガティブに使われがちだが、本来このように使っていくべきだろう」と痛感させられたのです。

■コロナ禍で求められる柔軟な対応

 両校球児たちのさわやかな姿は称えられるべきものですが、事の発端は大人たちの杓子定規な対応によるものでした。

 試合を翌朝9時に控えた16日深夜に学校関係者1人の感染が発覚。17日朝7時ごろ、学校独自に抗原検査キットで検査を行い、部員全員が陰性だったものの、「医療機関での検査でないため安全性を保てない」「朝の試合であり医療機関で証明する時間がない」という理由から出場辞退を余儀なくされました。

 しかし、部員に濃厚接触者がいなかったことに加えて、同校の嘆願書、西村主将のツイッター拡散、さらに加藤勝信内閣官房長官から出場機会の確保を要請された鳥取県高野連は不戦敗を取り消しました。

 大人たちの中に、「表面上のルールにとらわれて柔軟な対応ができない」「自分たちに責任が及ぶことを恐れて動こうとしない」「そもそも球児たちの夢や思いを重く受け止めていない」という人がいたことは間違いないでしょう。とりわけ高野連は組織としてのあり方を問われる苦境を招いてしまいました。

 コロナ禍という初めての事態が続いている以上、1つ1つのルールが正しいとは言い切れないはずであり、安全を確保するのはもちろん、きめ細かい対応が求められていることは明らかです。高校野球に限らず、私たちの仕事や生活にも当てはまりそうな事例だけに、やはりツイッターなどのネットツールを有効活用して危機を乗り越えていく、たくましさや行動力が求められているのではないでしょうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/22(木) 13:01

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