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「視聴率は低くても満足度が高い」ドラマの共通点

6/22 15:01 配信

東洋経済オンライン

 テレビドラマを評価する尺度も、近年多様になっている。ビデオリサーチによる視聴率も、世帯単位ではなく個人単位のものが加わるようになった。また「満足度ランキング」と呼ばれるような、内容に比重を置いた指標も存在する。

 さらに、SNSでの盛り上がり具合が番組の人気を示すものとして注目されることも増えた。以下では、そうしたいくつかの尺度をもとに、今期視聴者によって「選ばれたドラマ」と「選ばれなかったドラマ」、それぞれの特徴と傾向についてざっと振り返ってみたい。

■『ドラゴン桜』に見る王道パターンの強み

 世帯視聴率で見ると、今期は『半沢直樹』(TBSテレビ系)のような飛び抜けた視聴率を記録する作品はなかった。ただそのなかで、一般に合格ラインとされる、平均10%以上の視聴率をあげている作品はいくつかある。

 『ドラゴン桜』(TBSテレビ系)は、7話までの世帯視聴率の平均が13.9%(ビデオリサーチ調べ。関東地区)で、今期ドラマのトップである。人気作の第2シリーズで、さらに『半沢直樹』と同じ「日曜劇場」枠。まずは、作品としても放送枠としても固定ファンが多いということがあるだろう。

 キャストの魅力も大きい。主演の阿部寛をはじめ、長澤まさみ、江口のり子、林遣都らの豪華、かつ安定感のある出演者に加え、髙橋海人(King & Prince)、平手友梨奈、加藤清史郎、南沙良、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央多といった生徒役の面々には新鮮な魅力があり、山下智久、長澤まさみ、新垣結衣らが出演した第1シリーズのときと同様、今後の飛躍が期待される若手として注目度も高い。

 そして最大のポイントは、やはりドラマとしての明快さだろう。成績がよくなかったり、なにか事情を抱えていたりする生徒たちが東大合格を目指し猛勉強するというストーリーは、とにかくわかりやすい。さらにそのなかに、学園ドラマに欠かせない熱い友情の物語もちゃんと盛り込まれている。そうした万人向けの、ストレートなわかりやすさは、家族そろってテレビを見ていることも多い日曜夜9時台にぴったりだ。

 視聴率平均が10%を超える他のドラマにも、そうした王道パターンが目立つ。

 典型的なのは、テレビ朝日系列の刑事ものや警察ものである。小ネタや個性的な出演者も見どころの内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長 season5』、今期で4シーズン目に入った井ノ原快彦主演『特捜9 season4』、警察内部の出世競争を描く玉木宏主演『桜の塔』など、作風は多彩だが、いずれも刑事ものや警察ものの基本的なフォーマットは崩さないところに安心感がある。

 4月期の「月9」枠である竹野内豊主演『イチケイのカラス』(フジテレビ系)にも、同じようなことが言える。

 こちらは刑事ではなく裁判官が主人公だが、型破りな裁判官で自ら現場に赴き捜査をするという設定。法廷ドラマと刑事ドラマを組み合わせたような感じになっている。最初は主人公に反発しつつも、徐々に理解者となっていく黒木華演じる女性裁判官とのコンビには、かつての『HERO』の木村拓哉と松たか子のようなバディものの要素もある。ただ、ベースにあるのは、事件の謎を解くという刑事ものの王道パターンだ。

■視聴率は低くても「満足度」の高い作品の共通点

 最近は、世帯視聴率と並んで個人視聴率も取り上げられるようになった。世帯視聴率からは見えてこない、視聴者個人の顔を見えるようにしようとする流れの一環と言える。

 ドラマにおいて、そうした視聴者個人の嗜好を加味した尺度のひとつに「満足度」と呼ばれるものがある。たとえば、オリコングループが全国の視聴者を対象に調査している「ドラマ満足度ランキング」は、「視聴量」「主演」「主演以外」「内容」という4項目にTwitterのツイート量を加えた「話題性」の5項目を各1~20ポイントとし、計100ポイント満点で集計したものだ。

 その結果を見ると、『ドラゴン桜』や『イチケイのカラス』のように、満足度においても高い作品がある一方で、世帯視聴率の平均は10%に満たなくとも、満足度において高い数値を記録する作品もある。

 たとえば、『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ、フジテレビ系)は、今期におけるそのような作品の代表だ。その満足度の推移は興味深い。第1話は70ポイントにとどまった満足度が、第2話で75ポイント、第3話で83ポイント、そして第4話では88ポイントとなり、満足度1位を獲得した。回を重ねるごとに視聴者が作品の世界にハマっていったことがうかがえる。

 また、『コントが始まる』(日本テレビ系)も同様だ。初回の満足度は61ポイントだったが、第4話で81ポイントまで上昇し、満足度ランキングでも3位に入った(『オリコンニュース』2021年5月21日付記事)。

 『大豆田とわ子と三人の元夫』は、松たか子演じる主人公とその元夫3人を中心にした大人の恋愛ストーリー、『コントが始まる』は、菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀の3人が演じる売れない芸人トリオに、そのファンである有村架純らが絡む青春群像劇というように、ジャンルも内容もそれぞれ異なる。共通点があるとすれば、前者が坂元裕二、後者が金子茂樹という定評のある脚本家のオリジナルストーリーであることだ。

 つまり、両作品の満足度を上げた大きな要因は、脚本のクオリティに裏打ちされた作品としての完成度の高さということになるだろう。ともに毎回見ていないと、セリフや物語に込められた意味やメッセージを深く味わうことができないような作品である。その分、見る側にとっては集中力を要求され、気軽に眺めるというのは難しい。だが、それに見合うだけの感動が得られる。それが満足度の高さにつながる。

■原作ものは「再現度」が重要

 一方、別の理由から高い満足度を獲得した作品もある。たとえば、深夜ドラマ『ゆるキャン△2』(テレビ東京系)がそうだ(『オリコンニュース』2021年4月30日付記事)。

 女子高生仲間のユルいアウトドアライフを描いたこのドラマ、第1期では、原作漫画の再現度の高さが話題になった。第2期となる今回も、主演の福原遥らが、見た目だけでなく原作の空気感を絶妙に再現していて、それが高い満足度につながったと言える。

 ほかに『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)も、主演の中村倫也が原作漫画の主人公に似ていると話題になった。特に近年は漫画原作のドラマが増え、再現度がひとつの評価基準になる傾向が強まっている。漫画とドラマは別物という考え方もあるが、特に原作ファンにとっては、イメージを崩さないという意味で再現度が大事なポイントになってくる。そうなれば当然作り手の側も、再現度をより意識せざるをえない。

 このように満足度が重視されるようになった背景としては、SNSの発達によって視聴者の生の声が届きやすい時代になったことがあるだろう。Twitterなどを見るとドラマについてツイートするひとは多く、放送中のドラマ関連のワードがトレンドに入ることもごく普通になっている。

 そうしたドラマ関連のツイートは、大別すると2つに分けられるように思える。

 ひとつは、俳優個人のファンによるツイートである。特にジャニーズのタレントが主演するドラマなどでは、そうしたツイートが多くなる。今期も櫻井翔主演の『ネメシス』(日本テレビ系)、横山裕主演の『コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系)、有岡大貴主演の『探偵☆星鴨』(日本テレビ系)など、ジャニーズ主演のドラマがあった。もちろんジャニーズ以外でも、人気の若手俳優が出演するドラマではそうしたツイートが増え、トレンド入りするケースも珍しくない。

 もうひとつは、作品の内容についてのツイートである。

 たとえば、TBS火曜夜10時のラブコメ路線の作品では、二転三転する恋愛模様に一喜一憂する視聴者のツイートによってバズるケースは少なくない。今期の川口春奈と横浜流星が共演した『着飾る恋には理由があって』もそうだった。また、北川景子と永山瑛太によるちょっと変わったラブコメ『リコカツ』(TBSテレビ系)、石原さとみと綾野剛が共演したファンタジー系ラブコメ『恋はDeepに』(日本テレビ系)、鈴木亮平と吉岡里帆による正統派ラブコメ『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)も同様だ。ただ、そうした盛り上がりは、今期に関しては、世帯視聴率に結びついたとは言えなかった。

 また、作品の詳細な考察をするツイートも定着している。謎解きもので犯人当てや黒幕当てが盛り上がるというパターンもあるが、今期の場合は、先述の『大豆田とわ子と3人の元夫』や、松坂桃李主演の社会風刺コメディ『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)などについて、ドラマをより深く味わうための考察や解釈を披露するツイートが目立った。なかには鋭い分析もあり、そうしたツイートが拡散されることによって、ドラマの評価に一定の影響力を及ぼすようになっている面もあるだろう。

 いずれにしてもSNSは、いわば拡大版のお茶の間として、いまや「ドラマを見る」という体験をシェアするための欠かせない場になっていると言える。

 最後にここまでの話を踏まえ、7月期の新ドラマに少し目を向けてみよう。

 王道の定番シリーズは、健在だ。東山紀之主演の『刑事7人 シーズン7』、佐々木蔵之介主演の『IP~サイバー捜査班』、天海祐希主演の『緊急取調室 4th SEASON』(いずれもテレビ朝日系)、唐沢寿明主演の『ボイスII 110緊急指令室』(日本テレビ系)は、刑事もの。また次の「月9」となる波瑠主演の『Night Doctor/ナイト・ドクター』(フジテレビ系)、TBS日曜劇場の鈴木亮平主演『TOKYO MER~走る緊急救命室~』は、もうひとつの王道ジャンルである医療ドラマだ。

 ラブコメの勢いも、衰えていない。中島健人(Sexy Zone)と小芝風花が共演の『彼女はキレイだった』、比嘉愛未と渡邊圭祐による『推しの王子様』(ともにフジテレビ系)、二階堂ふみ、眞栄田郷敦、岩田剛典による『プロミス・シンデレラ』(TBSテレビ系)など。これらの作品もまた、SNSを賑わせることだろう。

■秋元康「企画・原作」ドラマも

 同じくSNSの反応が多くありそうなのが、『あなたの番です』の秋元康が企画・原作で、斎藤工が主演するミステリアスな設定の『漂着者』(テレビ朝日系)、それにおなじみの松重豊主演『孤独のグルメ Season9』(テレビ東京系)あたりだろうか。一方、ドラマ好きの関心を集めそうなのが、重岡大毅(ジャニーズWEST)主演、俳優としても知られるマギー脚本で、新たな家族のかたちを描く『#家族募集します』(TBSテレビ系)だ。

 もちろんいざ蓋を開けてみないと、結果がどうなるかはわからない。ぜひこの予想を超えるような人気作、話題作の出現を期待したい。

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最終更新:6/22(火) 15:01

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