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妻を支配する「モラハラ夫」に離婚を突き付けたら返ってきた”意外な反応”

6/20 6:01 配信

マネー現代

(文 堀井 亜生) モラハラの見えにくい実態について、男女問題に詳しい堀井亜生弁護士が解説するコラムの後編です。後編では、モラハラに悩む妻が相談に来る時の状況や、離婚を突きつけられた夫の対応について紹介します。妻によるモラハラについては、後日別の記事で解説をする予定です。

 (※前編と同様、本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。また、罵倒や叱責といったモラハラの言動について具体的に書いていますのでご注意ください)

夫の支配が相談のハードルに

 前編ではモラハラ夫の特徴や心理を解説しました。

 このようなモラハラ夫に叱責され続けた妻は、ひたすら自分を責めるようになってしまいます。夫は常に「自分が怒るのはお前が至らないからだ」という論調で妻を叱責するので、そう言われ続けた妻は「こんなに怒られるほどのことはしていない」と思うことができなくなり、夫はいつも正しい、怒られるのは自分のせいと思うようになってしまうのです。

 その結果、心身の不調に陥ってしまうケースも多く、弁護士に相談に来る前に心療内科の受診歴がある人も多いです。

 それでも、ふとしたきっかけで夫の異常性に気付くことがあります。相談に来た方で多いのは、「テレビやインターネットで取り上げられているモラハラの特徴が夫と全く同じで、夫はモラハラなのかもしれないと思った」というものです。

 「これはモラハラなのかもしれない」「夫はおかしいのかもしれない」と気付くか気付かないかはとても重要なことです。

 それでようやく周囲に相談したり、弁護士に相談の問い合わせをしたりするようになるのですが、それでもまだ思い切って踏み出すことはできません。

 実際にあった事例で、「相談に行きたいのですが、一日中掃除をしていないと帰宅した夫に怒られるので出かけられません。どうしたらいいでしょうか」と言われたことがあります。夫がおかしいと思うようにはなったものの、夫の叱責が恐ろしくて家から出ることもできなくなっているのです。

 この方には、「多少適当にやってもきっと夫にはわかりませんよ」と伝えた上で、親御さんに付き添っていただいて相談に来ていただきました。

 また、「夫は私のメールや通話履歴を全部見ていると言っているので、弁護士とメールや電話をしていることがわかると怒るかもしれない」と言って、公衆電話からしか連絡ができないという方もいました。

 モラハラ夫が妻を「俺はスマホやパソコンに詳しいからお前の行動は全部筒抜けだ」と脅している事例は頻繁にあるのですが、実際に弁護士に相談したことを突き止めて夫の方から何か反応してきたというケースは今のところありません。

 自分は家族よりあらゆる点で上であるというアピールの一つとして、「俺はパソコンに詳しい」と言っているのでしょう。

 また、インターネットでモラハラについて調べると、「モラハラは立証できない」「性格の不一致だから離婚原因にはならない」といった情報が多く見つかるので、相談に来ることを諦めてしまう方もいます。しかし、実際に証拠集めをしていくと、それをもって婚姻関係の破綻が認定されて離婚できるというケースが多いので、きちんと立証をすればモラハラで離婚することは可能です。

 こうして、ようやく相談に来た妻から、モラハラの証拠になる録音や録画、LINEのやりとりなどを見せてもらい、これは離婚原因になること、別居した場合の婚姻費用や離婚した時の養育費などの見通しを伝えます。そうすると、もう我慢しなくていいと気付き、夫の支配から抜け出す決意を固める方が多いです。

離婚を突きつけられたモラハラ夫の反応とは

 離婚を決めた妻から依頼を受けた弁護士は、離婚の代理人になります。モラハラをする夫との同居中に離婚を切り出すと、「家を出たら警察を呼ぶ」「子どもを連れ出したら誘拐で逮捕される」などと脅されてさらに激しく叱責されて、場合によっては危害を加えられるケースもあるので、先に別居をしてもらうようにしています。

 さて、妻の代理人となって「モラハラで辛い思いをしているから離婚したい」と夫に申し入れた時、どんな反応が返ってくるでしょうか。

 日常的に家族を怒鳴りつけて、場合によっては不倫もしていたような夫ですから、「妻に対して愛情はないから離婚に応じる」と言うかと思いきや、そういう人はめったにいません。

 一番多いのは、自分は絶対に離婚はしたくない、家に帰ってきてほしいと言うタイプです。中には、悪いところがあれば直すから言ってほしい、やり直すために自分は生まれ変わると宣言する夫もいます。

 妻にあてた長文の手紙を書いてくる夫もいます。ただ、そういった夫の文章は、反省の弁で始まっていても、必ずと言っていいほど、「家族のためにやっていたので悪気はない」というような言い訳や、「自分が親に厳しく育てられていたから仕方ない」「そもそも妻や子どもにも落ち度があるのでお互い様だ」という責任転嫁で終わります。

 そんな手紙を読んで帰ってこようと思う家族がいるわけはないのですが、モラハラ夫というのは相手の気持ちを考えることができなくなっている人なので、自分の正当性を伝えたい気持ちが先に立ってしまうのだと思います。

 その一方で、別居中の婚姻費用はすんなりと払いません。夫婦の収入をもとに裁判所が認める本来の算定基準があるのですが、「勝手に出て行ったから払わない」などと言って払ってこないこともあります。

 反省している、やり直したいと言いながら家族に生活費を一円も払わないのは、とてもちぐはぐな態度に見えます。

モラハラ夫が離婚を拒む心理

 モラハラ夫が頑なに離婚を拒むのはなぜでしょうか。

 彼らの共通点としてまず確実に言えるのは、離婚したくない、改善してやり直すと言いながら、改善するための具体的な行動を一切取らないことです。生まれ変わると言って長文の手紙を書いたりはしますが、モラハラについて学んだりカウンセリングを受けに行ったりするという人はめったにいません。

 一方、不倫などによる離婚の場合と比べて、生活費を払わないなど別居した家族を経済的に締め付けようとする割合が非常に高いのも、モラハラ夫の特徴です。

 これらの点からすると、モラハラ夫は、本当にやり直したいというより、自分が下に見てきた家族が意思を持って離れて行くことが許せないのだと思います。自分の言動で家族がばらばらになろうとしていることを受け入れられず、離れて行く家族を許せない気持ちから、離婚しない、生活費を払わないという行動に出ているのでしょう。

 このような心理が裏にあるため、妻の代理人に対しても、インターネットで調べた知識や自分の思い込みをもとに、あれこれと主張してきます。

 そのうち、うるさく言っていても家族は帰ってこないと気付いて自分も弁護士に依頼するので、そうなるとスムーズな話し合いができるようになり、ようやく離婚に向けて進んでいくことになります。

モラハラが増えた背景とは

 ここまではモラハラの実態について解説してきました。では、このようなモラハラが近年増えたのはなぜなのでしょうか。

 まず大きいのは、スマートフォンの普及によって誰でも簡単にモラハラの証拠を取れるようになったことです。夫に言われたことを細かくメモしている人もいますが、それよりも、叱責している場面の音声や動画が複数ある方が、度を超えた叱責が行われていることがすぐに客観的に伝わるので、動かぬ証拠になります。

 また、「モラハラ」という言葉が広く普及したことも大きな理由です。以前は、夫に執拗に叱責されても我慢している妻が多かったと思われます。モラハラという言葉が普及して、それは異常なものであると知られるようになったことで、モラハラされているから離婚しようと決意しやすくなったのです。

 そして、相談の窓口も用意されているので、相談もしやすくなりました。被害を認識しやすくなり、かつ相談もしやすくなったので、モラハラを理由にした離婚が増えたのだと思います。

被害に気づきにくいモラハラ

 モラハラの一番の問題点は、被害を受けている人や周囲が、さらにモラハラをしている人自身も、モラハラに気づきにくいことです。

 あなたが夫に怒鳴られていて、自分が悪いと思っていても、もしかしたらそれは異常なことかもしれません。夫が帰ってくると思うだけで胸が苦しくなるなど、心身の症状になって表れているかもしれません。

 「夫は怒りっぽい人だから」と我慢していても、毎日のように長時間叱責されているとしたらそれは異常ですし、その様子を録音して誰かに聞いてもらったら、それはおかしい、離れた方がいいと言われるかもしれません。適切な窓口に相談してみましょう。

 そして、もしあなた自身が家族を怒っていてそれはモラハラだと指摘されたら、まずは自分自身の言動を一度振り返ってみましょう。反省の気持ちや罪悪感よりも「家族のためだ」「自分は正しい、怒られる方が悪い」と自分を正当化したい気持ちが大きかったら、それは危険なサインかもしれません。

 家族は自分より下の存在で、どんなに怒鳴りつけても自分のもとを離れて行かないものだと信じ込んでいませんか? しかし、度を超えた叱責を受け続けて平気な人はめったにいません。

 家族を大切に思うのなら、家族が出て行ったり心身を病んだりと手遅れになってしまう前に、病院に行く、カウンセリングを受けるなど、しかるべき対策をとりましょう。

マネー現代

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最終更新:6/20(日) 7:31

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