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急進左派候補の台頭にケイコ・フジモリ氏が待った!投票から10日経っても勝者がいない「ペルー大統領選」

6/17 8:31 配信

東洋経済オンライン

 南米ペルーで6月6日に行われた次期大統領選挙が混迷を極めている。

 アルベルト・フジモリ大統領の長女で、中道派政党候補のケイコ・フジモリ氏が立候補していたことで日本でも注目されていたが、ペルーの選挙委員会は投票から9日経った15日(現地時間)は集計を終え、急進左派政党候補で教師のペドロ・カスティジョ氏の得票数が上回ったと発表。これを受け、カスティジョ氏はツイッターのプロフィールを「次期大統領」に更新し、勝利を宣言した。

 一方、選挙に不正があったと訴えていたフジモリ氏は徹底抗戦の構え。選管が勝者を確定していないこともあって、昨年のアメリカ大統領選を思わせる、先が見通せない展開となっている。

■得票差数はわずか4万票

 選挙委員会による判定が容易ではないのは、両候補者の票差がわずか4万4058票しかないからである。15日時点での得票率はカスティジョ氏が50.125%なのに対し、フジモリ氏は49.875%という結果となっている。

 今回、フジモリ陣営は開票が行われた802の開票台で不正があった、と抗議している。不正があったとされる開票台での開票数は20万票。さらに、30万票に影響する不正があったことも指摘している。

 つまり、50万票に不正の疑いがあるとしているわけだが、フジモリ陣営が強調しているのは20万票の行方である。例えば、開票作業が行われたある台では、カスティジョ氏が187票を獲得したのに対して、フジモリ氏への投票はゼロで、こうしたことが起こることは不可能だとしている。別の台ではカスティジョ氏197票に対して、フジモリ氏1票だったという。

 現地紙「インフォバエ」、および「パナム・ポスト」によると、カスティジョ氏が所属している政党「自由のペルー」の党員と思われる人物が拘束された際、カスティジョ氏のところに印がつけられていた256枚の投票用紙が摘発された。別の人物も拘束されたときに60票の投票用紙を所持していたことが発覚しているという。

 フジモリ陣営が不正の疑いがあるとしている50万票のうち、仮に2割でも選挙委員会が認めればフジモリ氏の勝利につながることから事態の判断は容易ではない。仮にそうなれば、カスティジョ氏をこれまで支持してきた支援者が暴動を起こす可能性もある。

 スペイン紙「OKディアリオ」によると、元コロンビア大統領で、現在スペインに住むアンドレス・パストラーナ氏は、カスティジョ氏を支えている政党、自由のペルーは、中南米で「フォロ・サンパウロ」と呼ばれている左派や極左政党の集まったグループに属していると指摘。その背後には、ベネズエラのマドゥロ大統領とナンバーツーのディオスダド・カベーリョ氏が資金をもって支援しており、中南米における左派政党台頭を推し進めようとしているという。

■都市部で人気のカスティジョ氏

 スペイン紙「エル・パイス」によると、今回の選挙ではカスティジョ氏は17の県で勝利し、フジモリ氏は8つの県で勝利している。フジモリ氏は勝利した県数は少ないが、リマ県を含め票田の多い3県を制覇して票を稼いでいる。また、75カ国に在住しているペルー人からの票でも62%を、フジモリ氏が獲得している。

 今年の5月時点では、決戦投票に臨んだ2人の支持率の差は20%の開きがあった。リマではフジモリ氏が優位にあった一方、地方ではカスティジョ氏の支持率が56%だったのに対し、フジモリ氏はわずか13%だった。しかも、フジモリ氏は仮釈放という身分から地方での選挙活動ができない状態であり、選挙予測に定評のある調査機関もカスティジョ氏の勝利を予想していた。

 都市部と地方で支持する候補者が異なる背景には、ペルーにおける貧富の差がある。アラン・ガルシア元大統領はかつて、ペルー経済を発展させれば、おのずとそれが地方の発展にもつながると主張していたが、実際にはそのようにはならず、地方は相変わらず貧困が続いた。一部の地方では60%が貧困者というところもある。こうした中、地方で支持を集めていったのが、社会主義的な理想を掲げるカスティジョ氏である。

 カスティジョ氏が生まれたペルー北部チョタは、南米最大級の金鉱山があるにもかかわらず、ペルーで最も貧しい地域とされる。エル・パイス紙によると、過疎地に住んでいたカスティジョ氏は、幼い頃、標高3000メートルのところにある学校に、片道2時間かけて通学していた。同氏は9人の兄弟姉妹の中で唯一学業をして小学校の教師になった。

 カスティジョ氏が政治に関心を持ったのは2002年からで、アレハンドゥロ・トレド元大統領が党首を務める政党「可能性あるペルー」に籍を置いていた。2017年に学校教師の待遇改善を求めて労働組合のリーダーになると、8カ月のストライキを敢行。このストによって同氏の名がペルー中で知られるようになった。

 その後、自由のペルーに入党。党首のウラディミル・セロン氏はキューバで医学を修め、2010年から2018年にフニン県の県知事を務めた人物だが、2020年に汚職の罪で4年8カ月の刑の判決を受けている。セロン氏はベネズエラ、ボリビア、キューバに親近感を持っており、それはカスティジョ氏にも影響している。

 カスティジョ氏が地方の労働者層から支持を得る一方で、危機感を抱いたのが、都市部の富裕層である。社会主義政権の到来を恐れた右派系の政党がこぞってフジモリ氏を支持することを決め、これがフジモリ氏の追い上げにつながっていた。

 フジモリ氏の父である、フジモリ元大統領が過去に犯した罪(汚職と人権侵害)によって、ペルーではアンチ・フジモリの動きが根強く存在していることから過去2回の大統領選挙でも支持を得られなかったフジモリ氏だが、今回はこれまでアンチだった層の一部がフジモリ派に寝返ったとみられている。

 フジモリ元大統領が大統領選挙に臨んだときの対立候補で、今もアンチ・フジモリの急先鋒の1人である、マリオ・バルガス・リョサ氏も「ケイコ・フジモリ候補が勝利することを熱烈に望んでいる」と表明。現在スペインに在住しているバルガス・リョサ氏はその後ノーベル文学賞を受賞していることから、同氏がフジモリ氏を支持することに決めたことは、ペルーのメディアでも大々的に取り上げられた。

■カスティジョ氏が就任した場合の経済政策は

 フジモリ氏の支持者や、右派政党はカスティジョ氏の背後に前述のセロン氏がいることを懸念している。カスティジョ氏は選挙戦中に基幹産業の国営化はしない、憲法の改正もしないといったことを公言していたが、それがどこまで守られるか疑問視されている。

 カスティジョ氏は選挙戦中、仮に勝利した場合の閣僚を誰にするのかということについて一切明らかにしなかったが、同氏の勝利を前にしてカスティジョ政権で経済を担当する人物が明らかにされた。

 その人物とはペドロ・フランク氏というペルーカトリック大学の教授だ。フランク氏は左派系の若い政治家ベロニカ・メンドサ氏の経済顧問を務めており、同氏が率いる政党がカスティジョ氏を支持することに決めたことからフランク氏が新たな政権の経済を担うことになったとされる。

 同氏がベネズエラの「エル・ナシオナル」紙の取材に対して、ベネズエラのマドゥロ政権とは関係がないことや、基幹産業の国営化、貨幣統制、資金の国外への流出を誘導するような言動はしない、といったことを明らかにしている。さらに、ペルー国立銀行の独立性も保ち、インフレに影響を与えないようにするとも述べている。

 しかし、この発言が就任後、どれだけ守られるのか疑問視する向きもある。同氏がインタビューで明かした政策は、右派政権とほぼ変わらないからだ。そこで、注目されているのが、セロン氏がカスティジョ政権にどこまで影響を及ぼすか、だ。何しろ、ペドロ・フランク氏がインタビューで述べたことは、セロン氏の考えとは背反するからである。

 選挙によって都市部の富裕層と地方の労働者層の分断があらわになったペルー。どちらの候補が勝っても国をまとめるのは容易ではないだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/17(木) 8:31

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