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少子化問題にそもそも「母親となる女性の数が減少」しているという「少母化」の視点が欠けている

6/16 11:31 配信

東洋経済オンライン

 「出生数が統計開始以来最少84万人」「合計特殊出生率が前年よりさらに下がって1.34」──。

 これは、6月上旬に発表された厚生労働省「2020年人口動態統計月報年計(概数)の概況」を受けて、報道各社が見出しとして使った言葉です。

■少子化は「急に発生した国難」ではない

 さて、この「少子化が止まらない」系のニュースは、月報ベースでも、速報ベースでも、今回の概数ベースでも、厚労省の発表のたびに同じ事実を繰り返し報じては、そのたびにまるで「急に発生した国難」かのごとき煽り方で、同時に政府の少子化対策の不備批判につなげる流れが、ひとつの定番となっています。

 この連載でも何度も申し上げていますが、少子化は不可避です。

そもそも、少子化自体が1974年「子どもは2人まで宣言」が出されたように、むしろ国策として奨励されたことに起因します(参照:『日本で「子どもは2人まで」宣言が出ていた衝撃』)。

 結果的に、1975年以降の出生数は下がり続けています。戦後まもなく第1次ベビーブームと1970年代前半には第2次ベビーブームがありましたが、本来到来するはずだった1990年代後半の第3次ベビーブームがなかった時点で、今後出生数が上がらないことは確定したと言えます。

 なぜなら、第3次ベビーブームで生まれるはずだった次世代の子を産む母親が誕生しなかったからです。

日本に「少子化問題」というものは存在せず、あるのは「少母化問題」です。それについては、以前、『出生数90万人割れは「少母化」が最たる原因だ』の記事でも書き、その後、「少母化」という言葉は複数のテレビなどで取り上げていただきました。

■少子化の本質的な原因は「少母化」

 生まれてくる子どもの数が少ないという見方をしてしまうと、世の女性たちが子どもを産んでいないかのような誤解を与えがちです。過去、ある政治家が「女性は産む機械」的な失言をして問題になりましたが、それもこれも「少子化は、母親が子を産まなくなったから」という間違った認識によるものです。

 母親が子どもを産んでいないから少子化なのではなく、その前提となる「母親となる女性の数が減少」しているという問題なのです。

日本は1980年代まで皆婚時代でした。皆婚時代とは、国勢調査が始まった1920年から1985年まで男女とも一貫して生涯未婚率が5%以下で推移していた時代を指します(参照:『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』)。

 以下の表は、その皆婚時代の最後となる1985年とその30年後の2015年の15~39歳における女性の有配偶人口と1人以上出産した母親の数を比較したものです。

 約1240万人いた有配偶女性人口は約650万人へと半減し、約1100万いた母親の数も約500万人と53%も減っています。子どもを産む母親の数が半減しているですから、出生数が減るのは当然です。

 一方で、結婚した有配偶女性のうち子どもを産んで母親になる比率は、1985年も2015年もそれほど大きな違いはなく、結婚すれば少なくとも8割の女性は子どもを産んでいます。

 参考として掲出している同年の出生数で比較してみても、母親の数が半減以上にもかかわらず、出生数自体は3割減にとどまっている。これは、2015年のお母さんも、1985年のお母さんと同じように出産しているという証拠です。

 このように、少子化の本質的な原因を探れば、それは少母化であり、少母化の問題をさらに突き詰めていけば、その根源的な原因は、有配偶女性人口そのものの減少、つまり、婚姻数の減少であることが明らかになります。

 戦後からの出生数と婚姻・離婚との関係をひも解くと、さらにわかりやすくなります。次のグラフは、戦後からの出生数を発生結婚数当たりで割った「発生結婚出生数」と結婚から離婚を差し引いた持続結婚数当たりで出生数を割った「持続結婚出生数」の比較です。

■有配偶率を上げないと子どもは生まれない

 ご覧の通り、戦後の第1次ベビーブーム期は、発生結婚出生・持続結婚出生ともに高いのですが、まず赤い持続結婚出生数の推移に注目してください。第2次ベビーブームを含む1971~1980年の持続結婚出生数は、直近の2011~2020年とほぼ変わりません。

これは1970年代に結婚が多く離婚の少なかった「多婚少離」の時代であり、2010年代は逆に結婚が少なく離婚の多い「少婚多離」の時代という違いによるものです(参照:『「3組に1組は離婚」は本当か? データで徹底検証』)。つまり、離婚しない夫婦単位でみれば現在も1970年代も産む子どもの数は違いません。

 このグラフからはもう1つ発見があります。離婚を考慮しない「発生結婚出生数」でみれば、1990年代以降ずっと1.5人で変わらず推移しています。つまり、婚姻数を1つ増やすということは計算上1.5人の子どもが生まれるということを意味します。

 繰り返しますが、今の出生数減は子を産む母親の数の絶対減によって起きているもので、それは婚姻数が減っていることによります。ただでさえ減り続けている15~49歳までの女性人口の有配偶率が上がらなければ、間違いなく子どもは生まれてこないのです。

 もう1つ課題があります。結婚数が増えればいいというわけではありません。昨今、未婚化と同様に晩婚化が顕著になっています。

 この晩婚化もまた出生減に大きく影響します。1985年時点、29歳までの初婚構成比は90%もありました。それが2019年には61%まで減少。同様に29歳までの出生構成比は1985年の66%から2019年には35%に下がりました。

■20代の出生率を上げる必要がある

 全体の合計特殊出生率と各年齢別の出生率との相関(1985~2020年)を見ると興味深い結果が出ました。

 合計特殊出生率と強い正の相関があるのは20代女性の出生率。他の年代は、たとえ劇的に出生率を上げたとしてもそれほど全体の出生率を押し上げる力はありません。出生率全体を上げるには、20代女性の出生率を上げる他はないということになります。

 晩婚化といっても今もなお6割以上が29歳以下で結婚しているのですから当然です。それは結局20代での結婚数が増えないといけないということです。

 乱暴に言えば、単に出生率を上げたいのであれば、「子ども産んだらいくら」という全方位的支援策より、「20代で結婚し、かつ20代で子どもを産んだらいくら」という若者限定支援政策のほうが奏功するかもしれません。

 しかし、これは実現不可能でしょう。個人的にはそもそも出産を金額換算するような政策がいいとは思えませんし、国家的見合い婚のような強制結婚が許されるわけもありません。

 かつて1980年代に女性たちは「25歳を過ぎたら売れ残り」「クリスマスケーキ」と揶揄され、「女性は20代のうちに結婚するべし」という負の結婚規が蔓延した時代がありましたが、果たして、今の女性たちはそれを再び望むのでしょうか? 

■今の若者に足りないのは安心

 結婚した人、しなかった人、したくても結婚できなかった人。いろいろな人生があります。が、そのどれが正しくて、どれが間違いということはありません。全体の出生数が減少しているとはいえ、結婚して子を産む母親は以前と変わらず子を産んでいます。

 一方で増える離婚の中で、ひとり親による子どもの貧困や十分な教育を受けられないという事態も拡大しています。「子育て支援」は出生数をあげるためだけではなく、そうした今生きている子どもたちを救うことにも活用すべきではないでしょうか。

 残念ながら少子化は解消されません。机上の空論で、今この世にいない子どもの数遊びをするより、すでにこの世に生きる子どもたちの幸せの数を増やしていくという方向に舵を切るべきときにきていると思います。親だけではなく、未婚も子無し夫婦も高齢者も含めて、子どもたちを社会が支えていく視点が求められるのではないでしょうか。

 そもそも「お金がないから結婚できない」とか「子育てには金がかかる」とか結婚・出産にまつわる話は金の話ばかりです。こういう情報は無意識に若者の脳内を侵食し、「結婚も出産もお金のことばかりでもう無理だ」という考え方を形成させてしまっています。

 今の若者に足りないのは安心です。結婚したらいくら、出産したらいくら、というような一種の成果報酬的なインセンティブの考え方ではなく、「結婚しても出産してもお金の心配はいらない」という安心を与える制度設計のほうが、結果自発的な行動につながり、結婚の増加に結び付くのではないかと思います。

 「本当は結婚したい。子どもが欲しい」と思っている若者たちには、少なくともお金を理由にその実現を諦めてしまわないように。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/16(水) 11:31

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