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「テイクアウトのサブスク需要」が伸びている、弁当を店頭に並べて販売するだけではダメなのか

6/13 11:01 配信

東洋経済オンライン

 今、音楽や動画配信サービスを中心に大幅な伸びを見せているサブスクリプションサービス(サブスク)。コロナ以前から広がり始めており、一時期、飲食店のサブスクも話題となった。例えば2017年11月1日と、飲食業界でいち早くこの手法を取り入れたのが野郎ラーメン。2019年11月に導入した牛角は好評のあまり、3カ月程度で休止することになった。このようにコストとのバランスが難しいが、逆に考えればユーザーにとって魅力があるサービスであり、集客効果は高いわけだ。

 今、そのサブスクをテイクアウトやデリバリーと組み合わせ、じわじわと伸びているのが定額制テイクアウトアプリPOTLUCK(ポットラック)だ。

 月額制で、メニューは登録店舗約300店舗・約1400種類(2021年5月末時点)の中から選ぶことができる。例えば最も割安なのが毎日2食プランで、月額2万5272円(1食あたり421円)。現在のところ渋谷、恵比寿、新宿周辺と登録店舗の範囲が限られているのが難だが、ワンコイン程度の料金でさまざまな店のメニューを楽しめる。

■テイクアウトとサブスクで単価を下げる

 運営しているRYM&CO.(リムアンドカンパニー)によると、サービスの立ち上げは2018年9月。サブスクとテイクアウトの組み合わせにチャンスを感じたという。今でこそ当たり前に行われているが、当時はまったく一般的ではなかったテイクアウトになぜ、着目したのだろうか。

 「直接的なヒントになったのがアメリカで一般的になっているサブスクリプションのテイクアウトサービスです。繁華街、オフィス街では地代が高く、従って商品単価もアップします。テイクアウトとサブスクリプションで単価を下げることで、お客様にとっては、コンビニ程度の単価で選べ、店舗開拓もできます。お店にとっては、スペース的にもオペレーション面でもランチ時間に2回転がやっとのところを、テイクアウトすることで面積に関わりなく売り上げを伸ばす、なおかつ集客機会になるというメリットがあります」(代表取締役/CEOの谷合竜馬氏)

 カラオケ店の店長を務めた経験があるという谷合氏。広告中心の集客戦略を展開しながらも、常連客とスタッフの関係も収益アップの重要な要素だと感じていた。そのため、独立しITサービスの会社を立ち上げてからも、接客の現場である店舗と顧客の関係づくりをサポートできるようなサービスをつくれないか、と考えていたという。

 こうした思いはどうサービス面に反映されているのだろうか。

 その話に入る前に、ポットラックの仕組みを見ていこう。

 ポットラックは簡単に言えば、メニューを掲載するとともに、お客と店舗の間で受発注やお金を仲介するサービスだ。ユーザーからの受注をとりまとめ、店舗にメールやLINEで連絡。店舗はそれに応じ料理を準備し、ユーザーは指定した時間に店舗で料理を受け取る。

 注文受付時間が決まっており、ランチ時間に受け取りたい場合は前日17時半~当日午前10時半、ディナー時間は当日10時半~17時半。店舗側では注文数を把握したうえで、手が空いている時間帯に余裕を持って準備できる。

■掲載費は無料で、初期費用もかからない

 料金の流れとしては、ユーザーから支払われる月々の料金のうち、販売数に応じた売り上げをポットラックが飲食店に支払う仕組み。掲載費は無料で、初期費用もかからないため、飲食店は売り上げを受け取るだけだ。

 導入にあたって店舗側の負担を極力軽くしているのは、谷合氏の“お客と店舗の関係をつくるサービス”という発想が元になっているため。また受注を確保するためのPR面も手厚くサポートする。例えばスマホなどの画面上でいかにおいしそうに見えるかが重要だが、テクニックがなく、また多忙な飲食店にとってはなかなかハードルが高い。ポットラックでは有料ではあるが、メニュー写真の撮影も手配するという。またテイクアウト用の容器も、ECショップと提携し有料で販売する。

 ポットラックが注目されるきっかけになったのがコロナだ。マスコミに取り上げられ、登録店舗数、会員数ともにコロナ前の約2倍に伸びた。サービス圏外の地域からも間違って会員登録があったほどだそうだ。そうした“未来のユーザー”を含め会員数は5月末現在で約2万4000名となっている。

 導入店舗が増えた理由としては、「テイクアウトのハードルを下げたことも大きい」と谷合氏は説明する。

 「コロナで『お弁当を始めました』という飲食店は多いと思います。ただ、お弁当を店頭に並べて販売するだけでは衛生面の問題や食中毒の危険があります。また販売数が読めず食材ロスが出る、結果として原価が上がったり、ピークタイムに注文が入ってきて、オペレーションが回らなくなるといった、さまざまな課題が出てくるのが実情です。そこにポットラックが入り、ノウハウやシステムを提供することで、お店側はスムーズなテイクアウト営業が可能になります」

 時短、アルコール販売中止など厳しい状況が続く今、飲食店はテイクアウトやデリバリーで少しでも稼ぎたい。少ない負担で機会が増えるなら、利用したいと考える店舗は多いだろう。

■実際にポットラックを活用している店舗

 実際にポットラックを活用している店舗にも話を聞いた。渋谷に店舗を構えるアボカドとチーズの店「ウサギ」だ。2019年に20年を迎える常連ファンも多い店で、人気メニューはアボカド料理や、黄味の白いブランド卵「ピュアホワイト」を使ったホワイトオムレツ。

 代表の花岡誠一氏は、実はコロナ以前からテイクアウトやデリバリーに広げたいと考えていたという。

 「渋谷で20年、来てくださったお客様にサービスを提供し対価をいただくという、いわば街に密着した商売を続けてきました。しかし街が変わるに従い商売の環境も変わります。また東日本大震災を経験し、大災害、大不況など何があるかわからない中、備えとして何かしら考えておかねばならないと考えた。そこでオリジナルグッズを開発したり、テイクアウトの可能性を探って情報を調べたりしていたわけです。いくつかの企業から話を聞いたのですが、選ぶ基準がわからず、どのサービスも決め手に欠けているように感じました」(花岡氏)

 そんな時期に、タイミング良くポットラックからの営業があったという。調べたサービスの中でも「ワンコインで提供」という安さが導入を決めた一番の理由だ。

 というのも、「テイクアウトは薄利多売の手法」と花岡氏自身が考えていたためだ。ちなみに同店の平均単価は900~950円である。

 3月中旬からテイクアウトをスタートし、月に80~100件の受注がある。ただし、店内利用も受注数も周辺企業のリモートワーク状況に呼応しているそうで、売り上げ全体としては下がっている。店内利用の客が減った分をテイクアウトが補ってプラスマイナスゼロ、といった状況だそうだ。

 「緊急事態だから仕方がないというのは、雨が降っているからお客が来ないというのと同じで、飲食業はそう言っていては始まらないんです。本来は新作を考えるなど、お客を呼び込む工夫をどんどん考えていくべき。

 ただ、売り上げが落ち込む中コストも切り詰めなければならないから、メニューもタイトにせざるをえない。悩ましい状況です。

 ポットラックはフットワーク軽く動いてもらえるのがいいですね。例えばシステムの不具合があったらすぐに来てもらえるし、割引特典や配送料無料といったプロモーションの提案もしてくれるのでありがたいです」(花岡氏)

 同店がポットラックの導入を始めた時期はたまたま店舗の移転も重なって忙しかった。そんな中、メニュー写真の撮影もしてもらえるなど、手厚くサポートがあったことも信頼感につながったようだ。

■グルメサイトの信頼性が下がっている

 話は変わるが、今、グルメサイトの信頼性が消費者、店舗ともに下がっているという調査結果もある(2021年4月テーブルチェック「グルメサイトに関する意識調査」より)。代わりに利用されているのがGoogleマップやGoogle検索だそうだ。サブスクはお金は払わなければならないが、ワンコイン程度で自分で確かめることができるので、飲食店を開拓したい、という消費者には便利なのではないだろうか。

 ポットラックの一番の弱点が、サービスの提供範囲が限られていること。さらにこのところ廃業してしまう店舗もでてきているため、登録店舗の拡大が急務となっている。サブスクサービスにとって、ユーザー評価のバロメーターとなる契約継続率も80%にとどまっており、もう少し上げて行きたいところだ。

 まずはビジネスパーソンの需要が見込まれる、品川、池袋などを開拓し、1~2年のうちに1000店舗、将来的には都内に1万店舗を目指していくというのが谷合氏のもくろみだ。

 そのための手法としては、法人向けに福利厚生の一環としてサービスを展開することを考えている。わかりやすく言えば社食の代わりだ。背景として、リモートワークの普及で社食のあり方が変わってきていることがある。

 またデリバリーにも力を入れていく。今は宅配業者全盛の時代と言っても過言ではないが、いっぽうで配送業者の路上マナー、店舗や配送先とのトラブル、苛酷な労働環境等さまざまな問題も噴出している。ポットラックでは207株式会社と提携することにより、注文をまとめ効率的に配送できるシステムを採用。定額プランに月額1058円のデリバリーパスを組み合わせることで、対象メニューの送料が平日毎日無料になるサービスも開始している。

 今回紹介した例のように、社会が困難に直面した際には助け合いの気持ちが強まり、未来につながる便利なサービスも次々に生まれてくる。ただ、飲食業界の受難はすでに長引きすぎており、まじめな経営努力、前向きな気持ちも限界を迎えようとしている。あまりに苛酷なレースを最後まで走り抜ける企業はどれだけあるのだろうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/13(日) 11:01

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