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「筋肉系」と「文系」対照的な2人が電撃婚した理由

6/13 12:01 配信

東洋経済オンライン

 昨年9月に初めて会い、翌月からは「仮交際」からの「真剣交際」を始め、年明けにはお互いの親のところに挨拶へ。4月に婚姻届を提出し、これから一緒に住む予定――。

 一般的にはスピード婚のように感じるが、結婚願望のある2人が真面目な婚活によって知り合った場合はごく普通のテンポである。

■電撃婚への道のり

 ただし、結婚はしたいけれど「無理せずに自然に任せたい」という控えめな姿勢では、複数の異性とのお見合いや仮交際を繰り返すだけで、先に進めないことが多い。

 仮交際とは結婚相談所の業界用語で、デートはしているけれど他の人とのお見合いなどはしても大丈夫な期間を指す。お互いにいろんな人と食事をしたりして相性を確かめたうえで、結婚を前提とした真剣交際に入る。このステップに入り、さらに婚約に至るのが難しいのだ。

 真剣交際や結婚をするためには、どちらかが多少強引にでも物事を進める覚悟をして、できれば周囲を巻き込んで理解とサポートを得ていくことが必要となる。そうでなければ今後の人生を共にするパートナーなどは怖くて決められない。若さという勢いがない「晩婚さん(35歳以上で結婚する人)」ほどこの傾向はあると思う。

 Zoom画面の向こう側で嬉しそうに結婚指輪を見せてくれるのは、中島貴美子さん(仮名、39歳)と健太郎さん(仮名、40歳)の新婚夫婦。取材した時点ではまだそれぞれ一人暮らしだったので、関東地方の某県に住んでいる貴美子さん宅でのデート中にパソコン画面を開いてくれた。

 「30代半ばまで、2年ほど付き合っていた彼がいました。でも、休みが合わなくてあまり会えず、なんとなく付き合い続けていた気がします。私は残業が多すぎる会社に勤めていたので、年齢的にもいろいろ考えて転職をして、彼とも別れることにしました」

 淡々とした口調で理路整然と語ってくれる貴美子さん。でも、笑うと子どものように無邪気な表情になる。やや不器用で率直な女性なのかもしれない。転職後の1年間は仕事に慣れることに集中し、37歳になったあたりで焦りを感じたと振り返る。

 「誰かと一緒にいたいな、と思って結婚相談所に入ることにしました」

 その結婚相談所は準大手であり、担当のカウンセラーとは一度も顔を合わせることはなかった。週に1回ペースで送られてくる会員情報の中から自分の判断でお見合いしたいかどうかを決めるのが基本だ。もちろん、相手から断られることもある。

 貴美子さんが条件として挙げていたのは、「年収400万円以上」「身長170センチ以上」の男性で、自分と同じ県に住んでいること。

 「私は女性にしては身長が高めなので、自分より少しでもいいので背が高い男性がいいと思っていました」

 貴美子さん自身の条件が悪くないこともあり、お見合いや仮交際はたくさんできた。しかし、お互いに様子見であることが多く、真剣交際へと進むことはできなかった。

 「カウンセラーにメールで相談したことはあります。予約をすれば電話かメールで相談できるシステムでした。そのときは5人の男性と仮交際をしていたのですが、『あなたは闇雲に活動しているように見受けられます』と一方的に言われてしまって……。私には向いていないのかもしれないと思い、半年後に退会しました」

■ゆるい婚活で「オネット」へ……

かといってマッチングアプリは怖いと感じている貴美子さんは、筆者が個人的に主催しているオネット(大宮ネットワーク)を見つけた。結婚したい筆者の読者同士を引き合わせるという、趣味の一環ではじめた社会人サークルのような活動だが、これが「ゆるい婚活」手段の1つとして、目にとまったという。

 オネットでは、相手にアプローチしてもらいたい受け身の人を「受けオネット」、自らアプローチしたい人を「攻めオネット」として分かれてもらう。前者は筆者がインタビューしてプロフィール記事を作成し、ネットで公開する。それを見て興味を持った人は、より詳細な情報を読んで、お見合いも申し込める、という仕組みだ。

 お見合いから婚約までは、婚活パーソナルトレーナーのマチコ先生が伴走してくれる。筆者とマチコ先生という見守り役がいるぶん、マッチングアプリよりは安全度が高いが、収入証明書などを提出してもらっているわけではないので、結婚相談所ほど完璧ではない。

 「自立した女性が好きだという男性の記事を読んで興味を持ちました。私は結婚しても仕事や趣味を続けたいからです。その人は他の女性と真剣交際に入ったという追記がありましたが、同じような人と会えたらいいなと思いました」

自分から相手にアプローチする「攻めオネット」を選んだ貴美子さんは、3人の男性にお見合いを申し込んだ。3人目の男性が健太郎さんだった。

 貴美子さんは結婚相談所での失敗体験を生かそうと決意していた。カウンセラーであるマチコ先生とは頻繁に連絡を取り、そのアドバイスには素直に従うことにしたのだ。

■健太郎さんとの出会い

 「そうすることで『私は結婚がしたいんだ』と自分に言い聞かせる効果もあります。その間は友だちにはあまり連絡をせずにオネットに集中することにしました。でも、健太郎さんに申し込むつもりはなかったんです(笑)。失礼ですが、大宮さんが書いた彼のプロフィール記事を見ると『オラオラ系の人なのかも』と思ったので……。それでもマチコ先生が『貴美子さんは中島さんと合うと思う!』とお勧めしてくれたので会ってみることにしました」

 仕事の傍らある芸術系の分野では教える立場にもある貴美子さん。読書や絵画も好きで、お酒もよく飲む。完全に文化系だ。

 一方の健太郎さんは、会社員をしながらパワーリフティングというスポーツで日本一を目指している。大会前は飲酒などもっての他で厳しい食事制限とトレーニングが必須だ。同じ関東地方でも長く東京に住んでいる健太郎さんと某県在住の貴美子さんとは少し距離がある。出身地は大きく異なる。年齢以外には共通点は少ない2人をなぜマチコ先生が引き合わせたかったのかは今でもよくわからない。

 「貴美子さんからはしっかりとした文章でお見合い申し込み文をもらいましたが、正直言って業界も趣味も合いません。大げさな話、僕とは見ている世界が違います。大丈夫なのかな、と不安でした」

 さきほどから話したくて仕方ない様子の健太郎さんが口を開いた。受け身のくせにおしゃべりなのは受けオネット会員の特徴である。

 健太郎さんの不安感と緊張はZoomお見合いでも露呈してしまった。貴美子さんと画面越しに顔を合わせるなり、「プロフィールからお話しください」「僕へのご質問はありますか?」と人事採用面接のようなトーンになってしまったのだ。

 これは比較的真面目な婚活の場でよく見られる現象だ。女性慣れした積極的な男性などはほとんどいないので、初対面では変なコミュニケーションになりやすい。オンラインではなおさらだろう。第一印象の「楽しさ」で判断してしまうと、健太郎さんのような男性を排除することになる。

■「百聞は一見に如かず」は本当

 ここで貴美子さんはマチコ先生とも相談し、「難しそうな人だけど、1回は直に会ってみないとわからない」との判断を下す。本人同士のLINE交換を希望したのだ。あとは慎重派の健太郎さんの気持ちを押すだけだ。

 「マチコさんからすぐに『貴美子さんは連絡先交換OKです。話していて楽しかったそうです』との連絡が来たのは意外でした。共通の話題がなかったので、面接っぽくなってしまったのですが……。でも、会ったら印象が変わるかもしれません。貴美子さんにも実際の僕を見てほしいと思いました。大宮さんに書いてもらったプロフィール記事は客観的だとは思いますが、自分としては正直『あれ?』と感じるところもあったからです」

 夫婦そろって筆者の記事をくさすのはやめてほしい。しかし、貴美子さんの住む県内のカフェで会ってみると、お互いに好印象を持ったという。やはり百聞は一見に如かずなのだ。

 「彼は身長も私と同じぐらいでなぜか黒いシャツを着ていて、外見の印象はそれほど良くはありませんでした。でも、気を張らずに話すことができたのが良かったです。昼過ぎから3時間ぐらい話したら帰ろうと思っていたのですが、話が盛り上がってしまって夜8時ぐらいまで一緒にいました」(貴美子さん)

 「会ってみて、『何この感じ。普通にいいな!』と思いました。僕自身は小柄なほうですが、身長の高い女性は以前から好きなんです。貴美子さんを見たときにスラッとした人だなと思いました。食生活がちゃんとしていなければあのスタイルは維持できません」(健太郎さん)

 人事部目線ならぬスポーツトレーナー目線になっている健太郎さんだが、意気投合したのだから言うことはない。お互いに結婚願望があるという前提なので、最初から「結婚するにあたってクリアにしておきたいところは?」という突っ込んだ話ができた。宗教や家族のことなど、かなりセンシティブな内容である。

 こうした条件が「クリア」だったことだけが重要なのではない。何でも正直に話し合える相手には好意と信頼感を持ちやすい。3回目のデートでは健太郎さんのほうから「お付き合いしましょう」と申し出て2人は真剣交際に入った。昨年10月のことだ。

 しかし、ここからは健太郎さんが受け身な本領を発揮する。結婚や同居に向けた行動は何もしないままに、年末は両親が住む関西の実家に一人で帰省する計画をしていたのだ。貴美子さんは自分がリードせずにはいられなかったと振り返る。

■貴美子さんが心を鬼にして……

 「私は本来、他人に何かを誘導したり強制したりする性格ではありません。でも、心を鬼にして言葉にしていかないと何も進まないと思いました」

 そうして貴美子さんが期間限定のリーダーシップを発揮。年明けから親への挨拶と両家の顔合わせ、婚約に結婚というスケジュールが進行した。その間、健太郎さんは何を考えていたのだろうか。

 「(結婚は初めてなので)どう進めていいのかわからないし、コロナ禍なので親からどう思われるかなー、と思っていました。最初、貴美子さんから言われて、『えーっ、そんな急に!』となりました。でも、半日も経つと彼女の意見が正しいことが理解できました」

 このタイミングでなぜか満面の笑みを浮かべる健太郎さん。ちょっと変わり者だけど憎めない人物だ。

 お見合い当初に心配をしていた「趣味が合わない」問題はどのように克服したのだろうか。貴美子さんは「20代の頃だったら無理だった」と断言する。

 「大会の応援にも行き、彼の仲間に会わせてもらいました。みなさんのストイックさにはびっくりしましたが、中途半端ではないので清々しかったです。健太郎さんは減量中も温厚で、私に当たったりはしませんでした。今でもスポーツジム通いが彼の生活の主軸です。デートはその予定に合わせています。30代になって器が大きくなった私だからこそ彼を受け入れられているんです(笑)」

 軽く揶揄されてもマイペースな健太郎さんは動じない。貴美子さんが文化系な趣味に打ち込んでいることを激賞し、「やり続けてほしい」と強調する。

 「お互いの分野を完全には理解できません。だからこそ、それぞれの時間も大事にし合えるのだと思います。それに僕、頑張っている人が好きですから」

 わずか1年前は何の接点もない他人同士だった貴美子さんと健太郎さん。今では「新たに家族になるのはこの人しかいなかった」という様子で安心しきっているように見える。結婚という行為には人間関係の不思議さと強さが凝縮されていると感じた。

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最終更新:6/13(日) 12:01

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