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「肺トレーニング」が自律神経にもがんにも認知症対策にも必要だと考える医学的理由

6/12 18:01 配信

東洋経済オンライン

自律神経研究の第一人者・小林弘幸医師。自律神経の重要性を一般に広めてきた小林氏は、日本人が今もっともケアしなければならない体の部位は「肺」だと警鐘を鳴らしています。
肺機能が衰えることによる自律神経や心身のパフォーマンスへの影響を「呼吸器研究」「循環器研究」「自律神経学」の視点から紐解いている『最高の体調を引き出す 超肺活』より一部抜粋、再編集。「今、肺トレーニングが必要とされる理由」をお伝えします。

■エクモが教えてくれる「肺」の重要性

 新型コロナウイルス感染症(COVID19)の流行によって、ECMO(エクモ)の存在が一般にも広く知られるようになりました。エクモのメカニズムを知ると、私たちの肺が普段どんな働きをしているのかよくわかります。

 エクモによる治療は、まず太ももの付け根の静脈にカニューレという太い管を挿入したあと、血液を体の外に取り出し、ポンプによって人工肺に血液を送ります。ここまでの血液は二酸化炭素を含んでいるため「暗い赤色」をしています。人工肺に送られた血液は、酸素と二酸化炭素の「ガス交換」が行われ、カニューレを通して首の血管に戻されます。このときの血液は、酸素を含んでいるため「鮮やかな赤色」をしています。

 このようにして、エクモは肺の機能を代理で行い、その間に肺の回復を待ち、通常の治療ではただちに絶命してしまいかねない患者の命を救っているのです。

 私が外科研修医時代、エクモの勉強でもっとも驚いたのが、含まれているガスが二酸化炭素か酸素かによって変わる「血液の色」についてでした。

 二酸化炭素を含んだ濁った血液が、人工肺を通過すると鮮やかで健康的な色に生まれ変わるさまを見て、「肺」がいかに健康状態に大きな影響を与えるかを思い知りました。そして、知識としてはもちろん知っていましたが、「酸素は血液に乗って全身に運ばれていく」ということを、エクモを目の当たりにして痛感したのです。

 肺が担っているもっとも重要な役割は、「呼吸(ガス交換)」です。
酸素と二酸化炭素のガス交換は、肺の中に張り巡らされた気管支の先端にある、「肺胞(はいほう)」と呼ばれる部位で行われています。肺胞の大きさはわずか0.1ミリ程度で、およそ3億から6億個あるといわれています。

 肺胞には、毛細血管が網の目のように取り巻いています。息を吸うと、酸素は3億から6億個ある肺胞の中に入り、毛細血管内の血液に溶け込んでいきます。血液は心臓に送られ、心臓から動脈を経由して全身の毛細血管に送られ、およそ1分かけて心臓に戻ってきます。心臓に戻ってきた血液は、肺胞に戻され、また酸素と二酸化炭素がガス交換されて、二酸化炭素は口から吐き出されていくわけです。

 新型コロナウイルス感染症の重症患者が、脳梗塞などの「血管系の病気」になることに疑問を抱いた人もいるでしょう。肺の機能は、心臓や血液循環とも密接に関わっているため、呼吸の質によって全身の健康状態は大きく左右されるのです。

■肺機能の低下が、心身を不健康にする

 さて、肺機能が弱まり、肺胞から酸素を十分に取り込めないと、全身の細胞が酸素不足に陥ります。全身に張り巡らされた毛細血管まで酸素が行き渡らないため、ダルさや慢性疲労を引き起こし、酸欠状態になった細胞はがん化の原因にもなります。

 また、脳に十分な酸素が届かないと、集中力が減退したり、うつなどのメンタルトラブルや認知症の一因にもなります。最近、集中力が足りないと感じている人は、肺が衰えて、必要な酸素を取り込めていないという可能性が考えられます。

 さらに、肺胞から十分に酸素を取り込めないと、血中の酸素濃度が下がり、足りない酸素を補うために呼吸の回数が増え、浅い呼吸になってしまいます。浅い呼吸は、自律神経のバランスを崩す原因です。

 自律神経のバランスが崩れると、血流や腸内環境にも不具合が生じ、血管や内臓の疾患を引き起こしたり、腸におよそ7割生息している免疫細胞の働きを悪くします。
その結果、全身の免疫力が低下する危険性があります。

 つまり、ウイルスや病気に負けない強い体をつくるには、諸悪の根源である「肺の劣化」を防ぐことが絶対に必要なのです。

 肺の機能の衰えは、自覚しにくいものです。しかし、20代から加齢とともに誰でも肺は衰え、40代になると急速に機能低下が進行することがあります。食生活や生活習慣に気を使っているのに心身がベストではない人は、肺機能の衰えを疑ってみる必要があるでしょう。

 肺の衰えは、あきらめるしかないのでしょうか。

 答えは、否です。「肺活トレーニング」をすれば、呼吸1回の換気(かんき)量を増やすことができ、血液に酸素を取り込む量を増やし、血中の酸素濃度をアップさせることができます。

 換気量とは、呼吸によって出入りする空気の量のこと。安静時の1回の呼吸では平均500ミリリットルの空気が呼吸器の中を出入りしています。このとき注目すべきは、500ミリリットルのうち、およそ150ミリリットルはガス交換に関与しない空気で、この量は「死腔(しくう)量」と呼ばれ、つねに150ミリリットルで一定しています。

 解剖学的に死腔とは、呼吸器系の中で肺胞が存在しない部分(鼻から気管支までのスペース)のことを指します。ガス交換に直接関与していない呼吸器です。つまり通常、呼吸1回で500ミリリットルの空気が出入りしても、肺胞に到達するまでに150ミリリットルが失われ、残った平均350ミリリットルの空気が肺胞でガス交換されているわけです。

■何歳になっても遅くない!  肺トレで肺を鍛えよう

 1回の換気量は、肺活トレーニングによって胸郭(きょうかく)の可動域を広げれば、誰でも増やすことができます。たとえば、1回の換気量が1000ミリリットルに増えれば、死腔量の150ミリリットルを引いて、850ミリリットルの空気がガス交換に使われることになります。

 このことが何を意味するかというと、1回の換気量さえ増やせればガス交換に使われる酸素が増え、その結果、血中の酸素濃度も高めることができるということです。

 たとえるなら、換気量を増やすこととは、パソコンのCPUを増やすことに似ています。CPUを増やせばスムーズにパソコンを動かせるように、換気量を増やすことでスムーズに肺が酸素を取り込めるようになるイメージです。多少パソコンが古いものでも、CPUが最新なら、問題なく使うことができます。

 それと同じで、肺が加齢によって多少衰えていても、換気量を増やせば、いつまでもたっぷりの酸素を体内に取り込むことができるのです。

 脳の衰えを防ぐために「脳トレ」が有効なのと同じで、肺の衰えを防ぐためには「肺トレ」が必要です。『最高の体調を引き出す 超肺活』では、医学的に効果が実証されている「肺トレ」を一般の方にもわかりやすく紹介しています。

 「肺トレ」により息を吹き返した肺は、ウイルスに負けない免疫力の獲得、質の高い血液循環への改善、そして自律神経の大幅なパフォーマンス向上に貢献してくれることでしょう。ぜひ「肺トレ」を実践し、大変な時代を生き抜く力としてください。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/12(土) 18:01

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