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ホンダ「ヴェゼル」vs日産「キックス」。両車のコンパクトSUV&電動化戦略車の違いは?

6/11 7:31 配信

東洋経済オンライン

 ホンダの新型「ヴェゼル」は、ハイブリッド車をラインナップの中心に据えたことに注目が集まっている。ガソリン車は、先代の5グレードから1グレード(G)のみに絞り、独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」搭載車を3グレード設定する(e:HEV X、e:HEV Z、e:HEVプレイ)。

 一方、同じコンパクトSUVのジャンルでは、日産自動車(以下、日産)の「キックス」もハイブリッド車のみをラインナップし、やはり同社独自のシステム「e-Power」搭載モデルを2グレード設定する(X、Xツートーンインテリアエディション)。

 グレード体系がシンプルな点や、ハイブリッドシステムに大きな特徴があるなど、共通点も多いヴェゼルとキックス。いずれも近年人気が高いSUV市場におけるホンダと日産の主軸モデルであり、両社が掲げる新型車の「電動化」に向けた戦略機種というポジションを持つ。

 ここでは、そういった「似たもの同士」ともいえる競合2モデルについて、特徴や装備などを比較することで、それぞれの魅力や優劣を浮き彫りにしてみる。

■2モデルのプロフィールを比較

 ヴェゼルは、2013年に発売された初代が、SUVクラスで4度の年間販売台数1位を獲得するなど、コンパクトSUVというジャンルを盛り上げた先駆者的モデルだ。2代目となる新型では、1.5Lガソリン車と1.5Lガソリンエンジンに走行用と充電用のモーター2つを組み合わせたハイブリッドシステム、e:HEV搭載車を投入する。前述のとおり、グレード体系はハイブリッド車の比率が高く、ホンダが2021年4月に発表した「2040年に新型車を100%電動化」という事業目標への足がかりとも思えるラインナップだ。

 対するキックスは、2020年6月30日(発表は2020年6月24日)に10年振りのブランニューモデルとして発売された。大きな特徴は、1.2Lガソリンエンジンで発電し、駆動用モーター(1基)で走行するハイブリッドシステム、先述したe-Power搭載車のみを設定している点だ。e-Powerは、従来から「ノート」や「セレナ」に採用され高い評価を受けており、EVと並び日産が「要」に据えた電動化技術である。ガソリン車を一切設定せず、その「伝家の宝刀」のみを人気が高いSUVセグメントに投入した理由は、同社が2020年5月に掲げた4カ年計画、「2030年度までに年間100万台以上の電動化技術搭載車を販売する」などの目標を具現化するためでもある。

 まずは、両車の大きな特徴である、ハイブリッドシステムから比較してみよう。ヴェゼルのe:HEVは、走行シーンに応じてモーター走行とエンジン走行をスムーズに切り替えるシステムだ。「EVモード」「ハイブリッドモード」「エンジンモード」という3つの走行モードを用意する。

 EVモードは、発進時や市街地でエンジンを停止しモーターのみで走行する。ハイブリッドモードは、登坂時などの高負荷走行やバッテリー残量が少ないときに、エンジンの力で充電用モーターを回して発電し、その電力を使い走行用モーターで駆動する。また、加速時など走行用モーターにより大きな駆動力が必要な場合は、バッテリーからの電力も供給する。エンジンモードは、高い速度で巡航する高速道路などエンジンが得意とする状況下で、クラッチが直結されてエンジンの力で走る。

 ヴェゼルの駆動方式は、ガソリン車も含め、2WD(FF)と4WDが用意されており(最上級グレードe:HEVプレイを除く)、4WD車には独自の「リアルタイムAWD」を採用する。つねに4輪の駆動力を最適に配分し、前輪の空転を抑えるなどの効果がある。とくにe:HEVとの組み合わせでは、モータードライブの特長である大トルクを、素早く最適な駆動力配分とすることで、悪路や雪道、悪天候時など、さまざまな路面環境でより安定感のある走りを実現する。

■キックスは、より電動化を進めたe-Powerを採用

 一方、シリーズハイブリッド方式を採用するキックスのe-Powerは、エンジンは発電用としてしか使わず、走行はあくまで駆動用モーターで行う点がヴェゼルとの大きな違いだ。一番の特徴は、アクセルペダルの踏み戻しで車速を調整できる「e-POWERドライブ」。「ノーマルモード」「S(スマート)モード」、「エコモード」といった3つの走行モードを用意するが、ノーマルモードではアクセルを戻した際の減速度は通常の自動車とほぼ同じだ。

 燃費を重視したエコモードや、燃費と加速感を両立したSモードでは、ノーマルモードよりも強い減速を行う。いわゆる「ワンペダル操作」と呼ばれるもので、渋滞時やカーブの多い道路など頻繁に加減速が必要なシーンで、アクセルペダルのみで車速を調整できるため、アクセルとブレーキのペダルを踏み替える回数が減り、ドライバーの疲労度などを軽減する。

 e-POWERドライブは、アクセルの戻し方をゆるやかに行うなど慣れも必要だが、慣れてしまえばペダルの踏み替えがほぼ必要なく、非常に便利な機能だ。ブレーキペダルを踏み続けなくても停車状態を維持する「オートブレーキホールド」機構と組み合わせれば、とくに渋滞路や信号待ちなどで大きな効果を発揮する。また、Sモードやエコモード時は、アクセルペダルを戻すことで回生ブレーキが働くため、より充電量が大きくなるというメリットもある。

 ほかにも発電用エンジンを動かさず走行する「EVモード」、早朝や深夜の住宅地などで静かに走りたいときに発電用エンジンの作動を極力抑える「マナーモード」なども設定。逆にバッテリーの充電量が少ない際には、エンジンを動かし充電を行う「チャージモード」も用意するなどで、さまざまな状況に対応する。

■悪路走破性ではヴェゼルが一枚上手

 キックスの駆動方式は、2WD(FF)のみの設定だ。市街地やワインディング、高速道路など、一般的な走行では2WDで十分だろう。また、日産は、雪道や滑りやすい路面でもe-POWERドライブを使うことで、強い減速力により安心感の高い走行が可能だと謳う。だが、やはり4WD仕様を用意するヴェゼルのほうが、4輪の駆動力を細かく制御する先述のリアルタイムAWDを搭載することもあり、悪路での走行安定性は高いだろう。

 さらにヴェゼルのe:HEV車では、アクセルを戻した際の減速度が上がる「Bレンジ」や、減速感を4段階で調整できる「減速セレクター」も用意する。加えて、ガソリン車も含めた全車に、ボタンひとつで約20km/hから約3km/hの低速間で設定された車速にキープする「ヒルディセントコントロール」も装備する。これら機能により、急勾配の下り坂や滑りやすい路面などで、ブレーキペダルを踏む回数が減り、ドライバーの疲労などを軽減する。キックスのe-Powerドライブとまったく同じではないが、ペダル踏み替え回数が減るという意味においては、状況によって近い効果を生むといえる。

 なお燃費は、ヴェゼルのe:HEV車がWLTCモード総合で22.0~25.0km/L、キックスがWLTCモード総合で21.6km/L。カタログ上の数値でいえば、ヴェゼルのほうが燃費性能に優れているように見えるが、実走行では大きな差が出るほどではないだろう。

 外観は、いずれもフェイスデザインが特徴的だ。ヴェゼルは、ボディとの一体感を意識した「インテグレーテッドグリルデザイン」と呼ばれるフィン形状のフロントグリル、キックスは日産車の特徴でもある「Vモーショングリル」をそれぞれ採用する。全体的なフォルムは、キックスがスポーティさを強調しているのに対し、ヴェゼルにはSUVらしい力強さとエレガントな雰囲気を両立している。

 ボディサイズは、ヴェゼルが全長4330mm×全幅1790mm×全高1580~1590mm、キックスが全長4290mm×全幅1760mm×全高1610mm。全長で40mm、全幅で30mmヴェゼルが長く、背は20~30mmキックスのほうが高い。だが、両車を見比べると、ボディにボリューム感があるためか、ヴェゼルのほうがワンクラス上のサイズに思えるほど大きく感じる。

 また、両車にはそれぞれツートーンカラーのボディ色を設定している点も同じだ。ヴェゼルでは最上級グレード「e:HEVプレイ」に設定した5色すべてに、キックスでは「X」と「Xツートーンインテリアエディション」の両グレードで全13色中4色にツートーンカラーを用意する。いずれもルーフとボディを塗りわけた仕様で、Xツートーンインテリアエディションでは、内装色も2色にすることで、より高級感とスポーティさも演出している。

■内装は、後発ヴェゼルのほうが装備も充実

 運転席からの視界は、ヴェゼルはピラーを後退させたことで、キックスはフロントウィンドウ見開き角を大きくするなどにより、いずれもかなり広く、開放感に溢れる。ハンドルには、どちらも上下調整ができるチルト機構と、前後調整ができるテレスコピック機能を備えるため、ドライバーの体格に応じたポジション設定が可能だ。

 異なるのが快適装備で、ヴェゼルのe:HEVプレイには、前後席のルーフに日差しの熱を低減するLow-Eガラスを採用した「パノラマルーフ」を装備し、オープンカーに乗るような開放感も演出する。また、ダッシュボード左右には心地よい風を送る「そよ風アウトレット」、室内灯にはランプ周辺に触れるだけで簡単に点灯する「静電タッチ式LEDルームランプ」を全車に標準装備する。後発であることもあり、ヴェゼルの室内にはさまざまな最新装備が採用されている。

 一方、キックスは、近未来感あるデザインの電制シフトノブまわりに、パワースターターやEVモード、ドライブモード切替用の各スイッチ、パーキングボタンなどが集中して配置されている点がいい。はじめて乗っても、どこに、どのスイッチがあるか一目でわかるし、走行中の操作もしやすい。

 また、運転席と助手席には、座り心地に優れた「ゼログラビティシート」を装備する。座面には適度な硬さを持つマットスプリングタイプを採用、背もたれは背骨や骨盤、腰などを連続的にサポートする形状とすることで、長時間走行時などでの疲労軽減に貢献する。さらに上級グレードのXツートーンインテリアエディションには、‪レザー/織物のコンビシート‬を採用。各部にダブルステッチを施すことで、落ち着いた雰囲気と高級感を醸し出ている。

 ヴェゼルの前席シートもホールド感があり、座り心地はいい。また、ハイブリッド車のe:HEV Zやe:HEVプレイのシートには、プライムスムースという素材とファブリックを組み合わせたコンビシートを採用する。レザーのような風合いを持つプライムスムースは、汚れやしわにも強いため、手入れをしやすいのが特徴だ。とくに、e:HEVプレイには、流行のヘアカラー「グレージュ」をイメージした配色とすることで、明るくポップなイメージも演出する。

■後席・荷室の広さはヴェゼルが有利

 ヴェゼル、キックスともに乗車定員は5名だが、後席の広さ、荷室の使い勝手はヴェゼルのほうがいい。室内サイズは、ヴェゼルが長さ2010mm×幅1445mm×高さ1225mm(パノラマルーフ装着車は1240mm)、キックスが長さ1920mm×幅1420mm×高さ1250mm。キックスのほうが高さはあるが、長さはじつに90mmも違う。ヴェゼルの室内がこれだけ広いのは、燃料タンクを一般的な車体後部ではなく前席の床下に設置する独自の「センタータンクレイアウト」によるものだ。とくに新型ヴェゼルは、先代と比べ室内長を80mm伸ばし、後席の足元スペースも35mm拡張している。

 対するキックスは、先代ノートのプラットフォームがベースだが、とくに後席の足元スペースはやや狭さを感じる。大人5名の乗車だと、後席の乗員はかなり窮屈となり、長距離ドライブなどには向かないだろう。小さな子供がいる4人家族などなら問題ないレベルだが、いずれにしろヴェゼルほどの広さはない。

 荷室はキックスも広く、大型スーツケースなら2つ程度、9インチのゴルフバッグが3つまで積載できる。後席シートは6:4分割式のため、長尺物を積んで後席に乗員を乗せることも可能だ。だが、後席をすべて前に倒してもフロアはフラットにならないため、大きな荷物を積むことはできるが、近年流行するアウトドアでの車中泊などは難しい。

 対してヴェゼルは、荷室が広いうえに、後席シートを前に倒せば完全にフラットな荷室空間となり、より大きな荷物を安定して積載できる。また、前席の背もたれも前に倒せば荷室長が約1900mmとなるため、大人が車中泊することも可能だ。後席は座面を背もたれ側に跳ね上げることもでき、鉢植えなど橫に積載できない長尺物を載せることもできる。

 さらに、e:HEV Zとe:HEVプレイには、「ハンズフリーアクセスパワーテールゲート」も標準装備する。スマートキーを携帯し、車両のリアバンパー下に足をかざすだけでテールゲートが開く機能で、両手で荷物を持っている際などに便利だ。さらに予約クローズボタンを押し車両から離れるだけでテールゲートが閉まり、自動施錠をすることも可能。荷室関連の装備についても、ヴェゼルの実用性はキックスに優る。

 安全装備について、新型ヴェゼルは「ホンダセンシング」を全車に標準装備する。広角カメラと高速画像処理チップの採用、前後に4つのソナーセンサーを搭載することで、先代モデル以上に機能が進化した。

 新機能としては、後方誤発進抑制機能や近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビームが新設定された。また、従来モデルにも装備されていたACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)には、渋滞追従機能も追加されている。さらにフロント・リア・左右ドアミラー下の各カメラの映像をもとに、上空から車両を見下ろしたような映像をナビ画面に映し駐車支援などを行う「マルチビューカメラシステム」も設定(e:HEV Zとe:HEVプレイにオプション設定)。走行中に斜め後方の車両を感知する「ブラインドスポットインフォメーション」(e:HEV Zとe:HEVプレイに標準装備)なども備えることで、より安全性を高めている。

■キックスもプロパイロット全車装備

 一方、キックスの安全装備では、高速道路での長距離運転や渋滞時でのストレスを軽減する独自の運転支援技術「プロパイロット」を全車に装備する。ミリ波レーダーにより先行車の状況を検知し車間距離をキープするほか、白線をモニターし、直線路からカーブまで、走行車線の中央を走行するようステアリングをコントロールする機能も持つ。

 また、前方の状況を監視し、車両や歩行者との衝突回避・衝突による被害軽減を支援する「インテリジェント エマージェンシー ブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」なども標準装備する。ヴェゼルと同じく、駐車中に上空から見下ろしているかのような車両の映像をナビに映す「インテリジェント アラウンドビューモニター」を全車にオプション設定する。

 先進安全装備に関しては、両車ともに高い機能を有するが、キックスでは、さらに「SOSコール」も全車に標準装備する。近年、輸入車などにも採用されている緊急時の通報機能で、交通事故や急病になった際などに、車両の位置情報やセンサーの情報を基に専⾨オペレーターが消防指令センターや警察へ自動通報する。また、前席ルーフ中央のボタンを押せば、手動で通報することも可能だ。事故や病気だけでなく、あおり運転に遭遇した場合にも使える機能だ。

 ほかにも両車は、先進のコネクティッド・サービスが充実している。スマートフォンの画面上で、離れた場所からドアの施錠やエアコン操作をリモート操作できるなど、さまざまな機能をいずれも有する。さらにヴェゼルでは、ナビの地図情報を自動更新する機能も新設。また、キックスのSOSコールと同様の機能「緊急サポートセンター」を、ヴェゼルではコネクティッド・サービスの一機能として設定する。利用するにはヴェゼルが「ホンダコネクト」、キックスは「ニッサンコネクト」に別途契約し、月額利用料が必要だ(SOSコールは別サービスで初年度登録から10年間無料)。

■価格・まとめ

 両車の価格(税込、以下同)は、ヴェゼルがハイブリッド車のe:HEVで265万8700円~329万8900円、ガソリン車のGが227万9200円~249万9200円。先述のとおり、最上級グレードe:HEVプレイを除くほぼ全グレードに2WDと4WDを設定する。一方、キックスは、やはり先述のとおり、ハイブリッド車2WDのみを設定し、Xが275万9900円、Xツートーンインテリアエディションが286万9900円だ。

 また、ヴェゼルの価格をキックスと同じハイブリッド車2WDで見てみると、e:HEV X265万8700円、e:HEV Z289万8500円、e:HEVプレイ329万8900円。価格帯はキックスのほうがやや安い。だが、ヴェゼルにはさらに安いガソリン車の設定があり、逆に車体価格はより高くなるが4WD車も選べる(ガソリン車249万9200円、ハイブリッド車287万8700円~311万8500円)。ヴェゼルのほうが、キックスに比べユーザーの選択肢が幅広く、より多様なニーズに対応しているといえる。

 キックスの新車販売台数は、2020年9月以降からほぼ毎月3000台半ばをキープし、2021年1月~3月には月4000台半ばから5000台前半と上り調子であった。だが、4月には1721台で27位へ後退した一方で、4月23日に発売したばかりのヴェゼルは前年同月比57.7%増の3716台で13位に入っている。競合車種である新型ヴェゼルの登場が、キックスの販売台数に影響を与えたという結論づけは時期尚早であるが、国内コンパクトSUV市場になんらかの変化が起きていることは間違いないだろう。今後の動向が興味深い。

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最終更新:6/11(金) 7:31

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