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野球でバッターが本気で嫌がる「変化球」の特徴

5/15 19:01 配信

東洋経済オンライン

野球には、科学的に謎の多い「送りバントの有用性」など、「なんで?」と思ってしまう不思議な疑問がたくさんあります。こんな疑問に「科学的な見地」で答えたのが『野球の科学 解剖学、力学、統計学でプレーを分析!』です。

「ピッチングを科学する」「バッティングを科学する」「統計で科学するセイバー・メトリクス」の3章で構成される本書から、今回は、「バッターが本当に嫌がる変化球の『特徴』」に迫ります。

■「変化球」とはそもそもどんな球なのか

 最近は投手が投げるボールの「回転」「回転速度」「回転軸」、そして「球の軌道」といった球質を測定するトラッキング・システムが日米のプロ野球で普及し、客観的に投球を評価できるようになりました。

 とくにボールの回転速度は、昔から何となく「キレがある」「スピンの利いた」などと、投球を評価する中で言われてきました。この回転速度を数値として表せるようになったのは画期的なことです。

 しかし、このような球質は専門家でもその評価が難しく、良しあしを述べる際は注意が必要です。詳しい理論はほかの書籍を見ていただくとして、ここでは野球指導の中で「どのように生かすべきか」を述べたいと思います。

 まずは根底にある理論を、確認しておきましょう。

 回転するボールは、マグヌス効果によって軌道が変化します。つまり曲がります。そのため、投手は「自分が曲げたい方向にボールを回転させる」ことがポイントです。

 投手が変化球を投げるときに考えることは、大きく分けると以下のような2つでしょう。

① 速度が遅くなっても大きく曲げたい
② 曲がり方は小さくても、速度が速い球を投げたい
 たとえば、代表的な変化球であるカーブの球速は遅いですが、大きく曲がります。そのために打者の目が惑わされます。

 一方、スライダーの球速は速いので、打者は「ストレートだ」と思って振りに行きます。すると途中で曲がるために打ちにくいのです。つまり、一口に変化球と言っても、その効果はさまざまで、「これが正しい」とは言えないのが難しいところです。

 また、変化球の分析でさらに難しいのは回転軸です。図3-1のように、ボールの回転は「投手側から見た視点」と「上から見た視点」が重要です。この組み合わせによって「変化が異なる」ことがわかってきました。

 まず、投手側から見た視点です。投手側から見える回転は打者にも見えます。打者は向かってくるボールを見ることで、どのように回転しているかがわかります。

 代表的な回転はバック・スピンとトップ・スピンです。バック・スピンがかかったボールは、「上に上がる」ように見える「伸びがある」ボールです。実際には重力のほうが勝っているので、「上に上がるように見える」だけですが、前述のように、無回転のボールよりは上に上がります。

 バック・スピンがかかったボールは、投手から見て水平(真横)に回転軸があります。投手が指ではじくようにリリースすると、投手から見て図3-1の中の①のbのような回転がかかります。トップ・スピンは、バック・スピンの逆です。

 投手から見て垂直(まっすぐ)に回転軸があるのがサイド・スピンです②。サイド・スピンがかかったボールは、打者から見て横に曲がります。右投手のスライダーは②のaの回転をするということを理解できるでしょうか? 

 ここまではそう難しくないのですが、投手の投球を立体的な視点で見ると、「上から見たときの回転軸」というのも大切です。これがジャイロ・スピン、ジャイロ・スピン成分と言われるものです。

■球質を評価する「回転効率(Spin efficiency)とは? 

 ここまで、球質を見るときは、投手から見たときのボールの回転軸が重要であることを述べました。しかし、球質を評価するとき、立体的に見ると、もう1つの視点があることに気がつきます。それは、投球されたボールを上から見たときの軸の傾きです。球質の評価には、この軸の傾きも考慮しなくてはなりません。

 図3-2にあるように、投球されたボールを上から見たとき、進行(投球)方向に軸が傾くことをジャイロ・スピン成分と呼びます。ジャイロ・スピン成分が進行方向に向けば向くほど、「ジャイロ・スピン成分が大きい」「ジャイロ・スピン成分が強い」といった言い方をします。進行方向に軸が傾いてジャイロ・スピン成分が強くなると、基本的には曲がりにくくなります。

 このジャイロ・スピン成分の強さは回転効率(spin efficiency)として表します。つまり、投手側から見たときの水平の回転軸で高速に回転し、きれいにバック・スピンしているボールでも、上から見たときの軸の方向が進行方向に向けば向くほど、バック・スピンは生じにくくなってしまいます。

 これは回転効率が低い状態です。ジャイロ成分が大きい(上から見たときの回転軸の方向が進行方向である)せいで、本来はホップして見えるような有効な回転なのに、このよさが打ち消されてしまうのです。このあたりが、回転を見るときの難しさと言えます。

 回転効率は、ボールを上から見たとき、進行方向に対して平行に回転軸がある場合は0%で、投球方向に対して直角に回転軸がある場合は100%であると言えます。

 ですので、投球をホップして見せたいときには、投手から見たときの水平の回転軸での回転速度を大きくして、きれいなバック・スピンをかけ、さらには回転効率を100%に近づけることが必要になるのです。最近、これらは「ラプソード(Rapsode)」と言われる、球質を測定する機器で測ることができます。

 球質は、回転速度だけでなく、回転軸、回転効率、さらに投球速度を一緒に見ないといけないため、正しく理解するのが難しいのです。

■変化球の正しい理解は難しい

 さらに、実際に野球をプレーしている人や、野球観戦を趣味としている人にはご理解いただけるかと思いますが、変化球は「曲がればいい」というわけではなく、少し変化するだけで有効な変化球もたくさんあります。また、回転を少なくすることで、重力によって鋭く落ちるように見えるフォーク・ボールのような球種もあるため、余計にわかりにくいですよね。このため、変化球の正しい理解というのはなかなか難しいのです。

 ここではこれ以上、球質について深くは触れませんが、変化球は基本的に、

① ほかの球種と区別がつきにくいために打ちにくいもの
② 見たことがない変化をするもの、軌道が希少なもの
 が、試合の現場では有効と言えます。このように変化球は大変奥が深いものです。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/15(土) 19:01

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