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苦境続くタクシー業界「配車アプリ」は救世主か

5/14 14:31 配信

東洋経済オンライン

 苦境から抜け出せないタクシー業界において、存在感を増しているのがアプリ配車だ。東京都におけるアプリ配車の導入事業者数と対応車両数のシェアをみると、その傾向は顕著になっている。

 東京ハイヤー・タクシー協会の資料によれば、2014年度のアプリ参画事業者は168社、対応車両は1万2534台で全体の45%だった。それが2017年度には203事業者に増え、対応車両も1万7320台と全体の62%まで上昇している。現在はおよそ75%に数字が及ぶという声も聞かれるなど、この5年間でアプリ配車を取り巻く市場への意識は大きく変わりつつあるのだ。

 ICT総研の需要予測によると、2020年末時点での日本国内のタクシー配車アプリの利用者数(ユニークユーザー数)は858万人と推計されている。この数字は今後も増加が見込まれ、2021年末に1110万人、2022年に1346万人、2023年末に1573万人になると予測している。

■10社以上が乱立するタクシーアプリ

 さらなる拡大が濃厚な配車アプリ市場は、タクシー界に残された数少ない成長分野であるといっても大げさではない。その反面、近年では参画事業者が増え続けており、実に10以上の配車アプリが乱立しているのも現実で、まさにタクシーアプリの戦国時代ともいえる。

 構図をみると、日本交通のグループ会社だったJapanTaxi(ジャパンタクシー)とディー・エヌ・エーが運営していたMOV(モブ)が2020年4月に統合して誕生した都心部に強い「GO」と、地方に強い「DiDi(ディディ)」の2社が上位争いをし、次いでUber Taxi(ウーバー)といった見方が妥当だろうか。増え続けたタクシーアプリも過度期を迎えており、今後は淘汰される社や生き残る企業の差が明確になると予測される。

 今後、配車アプリ市場はどう動いていくのか。10万台と提携する業界最大手のGOを運営するMobility Technologiesの中島宏社長に話を聞いた。

 ――コロナ禍における配車アプリ市場の動向をどう捉えていますか。

 GOの利用件数は、JapanTaxiとMOVを合算した利用件数の過去最高を昨年10月に上回り、以降も好調な伸びが続いています。アンケートなどの市場調査の結果、伸びている理由は2つあり、いずれも背景にはコロナ禍でユーザーの消費者行動が変化したことがあります。

 ――具体的な変化とは? 

 1つは非接触が好まれるということ。電車よりもタクシーは密集度が低く、さらにアプリだと非接触決済が可能です。

 もう1つは流しのタクシーの利用の際にも、路上での接触を減らす目的でアプリ配車の割合が増えてきたことが挙げられます。これまでの電話予約や流しの領域にアプリが食い込んできている。

 これまでの傾向から、一度アプリに流れると使い続け定着してもらえることはわかっていました。そのため各社は、初回ユーザーへのアプローチに苦心していた。それが今はユーザーから能動的にアプリに来てもらっているという状態です。

■コロナ禍でアプリによる配車が増加

 東京タクシーの売り上げの占める割合は、流しが約5割、配車が残り5割程度といわれていますが、2020年の時点でアプリ配車が売り上げ全体に占める割合は、東京のタクシー全体のわずか2%にすぎなかったんです。

 しかし、コロナ禍や外的要因を理由にその数字がこの1年間で上がっています(具体的な数字は非公表)。これはコロナ禍でタクシー業界全体の売り上げが大幅に減少したことも影響していますが、近い将来10%に近い数字に近づくとみています。

 ――とはいえ、タクシー業界にIT化をすすめるのはハード面でも心理的な部分でもハードルが高い気がします。

 いちばん苦労したのが、アプリの導入によって20年、30年と続いてきた業務フローの変化に抵抗を感じる企業が多かったことです。そこに、2013年にUberが日本に上陸する「ウーバーショック」が起きた。IT化に対応していかないと必要とされなくなってしまうんじゃないか、という危機感が企業側に生まれたのが第1弾のショックです。

 そこに第2弾のコロナショックが起こった。売り上げが減少したことにより、(その分をカバーしようと)アプリに対応した車両の導入台数が伸びていきました。とくにこれまでタクシーを利用しなかった層が、アプリをきっかけに流れてきている点はポジティブサプライズでもあった。

 この層を伸ばしていければタクシー業界全体の底上げにもつながり、そこはわれわれの使命としても重要度を高く位置づけています。

 ――アプリ会社がタクシー業界の売り上げを奪うのではなく補助していく役割を果たす、と。

 そうですね。そうあるために、さまざまな角度からトライアルを行っています。例えば(出前館と提携する)フードデリバリーなどの人を運ぶ以外の事業もそう。より効率化するためにITと結びつけるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが遅かっただけに、まだまだできることは残されていると思っています。

 ――実際にどのような方法で提携台数を増やしていったのですか。

 初めてアプリを提案する際、導入する際は、アプリなんて、と難色を示されることも多かった。それが去年の緊急事態宣言から、「アプリがあって助かった」という声をいただくことが増えてきました。乗務員さんはスマホではなくガラケーを使用されている方も多く、「アプリとは何か」というところからのスタートです。

 乗務員さんや会社の数も多いこともあり、営業担当は根気強く足を運び、乗務員の方はもちろん、運行管理の方々にも機械操作のオリエンテーション、営業所へのデモ機設置、タブレットのタッチ方法といったところまで細かいフォロー体制を敷いてきました。業界の気質的に何より大切なのは、どんな些細なことでも人を使って足を運び、根気強くサポートを続けるという姿勢だと感じています。

■カギになるのは相乗りと自動運転

 ――配車アプリは今後、どう進化していくのでしょうか。

 タクシー産業全体という視点でみると、コロナ前のような水準に戻らない可能性も高い。今の日本において、タクシーのヘビーユーザーはごく一部なんですね。月に何回かタクシーに乗るような人は実はとても少ない。ほとんどの人が乗らないか、半年に1回とかの頻度が一般的です。

 仮に8割の水準までしか戻らないとすれば、もはやタクシーというものの概念を拡張していかないといけないし、それは単体ではできない。裾野を広げようとするなら、タクシーをいくら便利にしても広がっていきません。それを考えると「相乗り」と近い将来の「タクシーの自動運転化」はキーファクターになってくる。

 ――それはどういうことでしょうか。

 これまでのタクシー利用層は、仮に相乗りが解禁されたり、自動運転タクシーが導入されたりしても、有人のタクシーを利用し続けるでしょう。それだけ日本の有人タクシーの利便性は優れているからです。

 ただ新規の利用層に目を向けると、例えば相乗りは、海外ではタクシーと同じ水準の巨大なマーケットがある。すでに日常生活の中に根付いており、利用者も多い。日本でも、値段が安くなるなら相乗りを使いたいという人はいるでしょうし、自動運転のタクシーを利用する人も出てくる。

 そうした時代が来たとき、あらためてタクシーの価値が見直されることもあるでしょう。そのときに新しい層をどう取り込んでいくか。最初のきっかけとして、アプリという入り口は機能していく可能性がある。

 また、裾野を広げる別の契機の1つとなりうるのが、決済方法や車種指定など、これまでにないサービス提供で満足度を高めることです。配車アプリは、こういったテクノロジーの側面をカバーし、タクシーの価値向上につなげることで、業界全体の裾野を拡大していく役割を担っていく必要があると考えています。

■地方における配車アプリの役割

 ――タクシー業界では、都市部と地方都市の間には埋めがたい差が生まれています。過疎化が進む地方ほど、アプリ配車が必要な場面が今後出てくるのではないかと思います。

 大前提として都市部と地方ではビジネスモデルは異なってきます。地方ではサステイナブルにさまざまな資産を、産業を越え共有し、効率化していくという視点が大切です。人口をメガシティに吸い上げられる中で街を維持し、住む人々の最低限の生活を守るためには、あらゆる産業と共に手を取り合いDX化していくことが今後求められていくはずです。

 交通面でも変化が生まれていく中、インフラの一翼を担うポジションとして、配車アプリも必要になってくるとみています。スマホ1台あれば、通院や日々の買い物からデリバリーまで利用でき、高齢者の生活を守る一因となりうる。行政、交通や飲食、不動産や宿泊などあらゆる業者が手を取り合い、その先にはじめてスマートシティが成立する。

 そのことが結果的に、タクシー乗務員の生活を守ることにもつながっていくのです。街づくりの一貫として過疎地域へアプローチしていくことは、今後業界としてかなり重要になってくるでしょう。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/14(金) 15:39

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