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企画が通らない人のひどく残念な時間の使い方

5/13 19:01 配信

東洋経済オンライン

「企画が全然通らない」「上司が聞く耳を持たない」という若いビジネスパーソンの愚痴をよく聞きます。企画が通らない人が陥りがちな時間の使い方を見直し、企画が通るようになる考え方の基本とは? 
『anan』元編集長、能勢邦子氏の著書『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』の内容を一部抜粋、再編集してお届けします。

■上司だけを見てプレゼンしていないか? 

 企画が通らないと嘆く人が陥りがちなのは、企画を通すために、いつのまにか上司だけを見たプレゼンになってしまうことです。上司の顔色を伺いながら何度も練り直すうちに、企画が骨抜きになったり、企画への「熱い思い」が薄れてしまったりといったことは、よく起こります。

 企画は、因数分解すると「コンテンツをつくる」と「コンテンツを見せる」になります。通すためだけに何度も練り直すのは後者、つまり上司にどう見せるかの努力です。そうではなくコンテンツづくりから見直すことのほうが、企画が通らないという泥沼から抜け出す近道なのです。

 通らなかった企画のコンテンツを今一度見直してみましょう。なぜ通らなかったのか。差別化が甘いのか。ニーズがないのか。

 「このコンテンツのいちばんの売りは何?」

 「誰が使う? いつ? どこで? なぜ? どんなふうに?」

 と5W1Hの自問自答を繰り返し、コンテンツ自体をブラッシュアップします。

 例えば、カレー好きでカレーに「熱い思い」を持つ人が筋トレ雑誌の企画で「カレーの美味しい店特集」を出したとします。自分が訪ねたカレーの名店リストを写真付きで徹夜で資料にまとめたとしても、まず通らない企画だと思いませんか。

 でも、諦めずに考えます。この場合のコンテンツはカレーです。そもそも自分はなぜカレーが好きなのか。カレーの魅力は何なのか。カレーのウンチクの何を伝えたいのか。カレーはいつどこで誰が食べるのか。筋トレが好きな人だってカレーを食べたいんじゃないのか。カレーは筋トレにいいのか。

 プロジェクトが走り出すと忘れがちですが、立ち返るべきはつねにコンテンツそのものです。このコンテンツの売りは何だったか。何に惹かれて「熱い思い」を持ったのか。企画が通らないときこそ、なおさらそこに立ち返るべきです。

 コンテンツの売りを確認し、売りに対する「熱い思い」を確固たるものにしたら、次はユーザーに向き合います。最も重要なのはユーザーです。上司ではありません。これはコンテンツづくりの大切な部分でもあります。まだコンテンツの見せ方を考える段階ではありません。

 筋トレ雑誌で取り上げたい、カレーというコンテンツに立ち返り、そのいちばんの売りは「カレーの薬用効果だ、だから筋トレ好きな読者にも勧めたいんだ」と「熱い思い」を明確にしたとします。そしてユーザー、つまり筋トレ雑誌の読者に向き合います。

 ユーザーに向き合うときに大切なことは、明確にした「熱い思い」をいったん脇に置くことです。筋トレ雑誌の読者にいきなりカレーの薬用効果を語り始めても見向きもされないでしょう。「熱い思い」をそのまま語ってもユーザーにとってはウザいだけ。ユーザーが求めるものは何か、思わず買いたくなるにはどうしたらいいか、ユーザーの生活をイメージしながら、ユーザーの立場で考えてみます。

■n=1のリサーチでユーザーの気持ちを見極める

 ユーザーに向き合うにはコツがあります。それは、n=1といわれるリサーチです。nは母数で、n=1万のリサーチは1万人に調査したデータのこと。n=1は1人にリサーチをすることです。つまりコンテンツを使ってほしいユーザーを1人選び、その人の深層心理やニュアンスまで調査するのです。

 調査といっても「こんなサービスがあったら使いたいですか」「このコンテンツについてどう思いますか」と直接的に聞くばかりではありません。むしろ普段から困っていることを雑談の中から引き出したり、何日かかけて観察したりしながら、その人のニーズや望みを見つけることのほうが有意義なリサーチです。ちょっとした取材力が必要ですが、恋愛になぞらえるといいでしょう。

 好きな人に「誕生日に何が欲しいですか」「どうしたら付き合ってもらえますか」と直接的に聞くより、本当に相手が欲しいものを探り当てたほうが、うまくいきやすいはずです。「映画は好き?」「これ、かわいいと思わない?」と何気なくリサーチして欲しいものを見極め、相手が話すエピソードを聞き逃さず、何を見てどう感じる人なのか感覚として捉えていきます。こうして本人さえ気づいていない潜在的な欲望に応えられたら、その恋愛が成就する可能性は一気に上がるでしょう。

 筋トレ雑誌でカレーの企画を通したければ、読者である筋トレマニアのnとカレーの話をします。イチローが朝カレーを食べていたことから始まり「カレーに筋肉に効く成分があったらいいね」というニーズや、「炭水化物が多くなっちゃいそうで……」という悩み、「カレーライスとライスカレーと何が違うんだ?」という疑問など、すべての雑談にヒントがあるはずです。

 n=1のリサーチで、ユーザーの気持ちに向き合ったら、改めて、コンテンツのどの部分をどう見せれば、そのユーザーが惹かれるかを考えます。コンテンツそのものは変わらなくても、それを伝える言葉やタイミング、伝えかたなどが変わってくるはずです。こうした過程を経て企画の質が高まるのです。

 n=1の対象は、家族でもいいし、友達でもかまいません。企画の対象となるnを何人かキープしておくと、継続的にリサーチができて、とても有効です。慣れてくると「自分がもしnだったら」というシミュレーションもできるようになります。ユーザーのニーズ、視点がつねに自分のなかにあれば、それはもう強力な武器になるでしょう。

 n=1のリサーチでコンテンツをブラッシュアップしていくと、再提出するときの企画は「カレーの美味しい店特集」ではなく「朝のライスカレーは遅筋に効く」(事実かどうかは知りません)などという一歩踏み込んだタイトルに変わってきます。資料もカレーの薬効成分と筋肉の関係を示すデータや、カレーの名店リストではなく「朝からカレーを食べられる店」をピックアップすることになるでしょう。これがコンテンツのつくりかたです。

 企画を上司に再提出するときも「ユーザーの抱えるこの課題を解決するために、こうしました。ここにニーズが眠っています」と主張するのが最大の決め文句になります。なぜなら、これはn=1のリサーチをした人だけが言える内容だからです。上司も具体的な課題を提示されれば「あ、なるほど」と自分事に企画を捉えるようになります。実は徹底的にユーザーに向き合うことは、上司に向き合うことでもあるのです。

 コンテンツをつくる、コンテンツ化するというのは、

① 誰に
② 何を
③ どう魅力的に見せるか
 を明確にしてはじめて成り立ちます。

 筋トレ雑誌のカレー企画でいえば、最初の「カレーの美味しい店特集」はコンテンツではありません。レストランガイドなど、この企画がコンテンツになる場面もありますが、筋トレ雑誌で出すべきコンテンツにはなっていないのです。

 その点、「朝のライスカレーは遅筋に効く」というコンテンツは、

① 誰に→速筋より遅筋を鍛えたいと思っている読者に

② 何を→カレーの成分○○の効用を
③ どう魅力的にみせるか→○○で遅筋が増えるデータと○○の効果を上げる食べかたを見せる
 と、明確です。

 コンテンツに立ち返ることをせず「常連の僕が言えば普段は取材に応じないレストランが出てくれるのに、その価値を上司は全然わかってくれない」と愚痴りながら、上司が好きだと言っていた店の資料を増やしたり、名店リストの写真を撮り直したりする。そんな企画の練り直しは時間の無駄です。

 多かれ少なかれ、企画が通らない人にはこういう傾向があります。

 「朝のライスカレーは遅筋に効く」というコンテンツができて企画が通れば、それこそ「熱い思い」のままに、次はコンテンツをどう見せるか詰めていけばいいのです。筋金入りのカレー好きなら、どのアングルの写真がぐっと来るか、どの店をセレクトするか、腕の見せどころです。「熱い思い」があふれていれば、必ず読者に届きます。反響を呼び、読者からリクエストが寄せられ、(新たなn=1ですね)「筋肉に効くカレーを自分でつくろう」企画など、第二弾、第三弾がうまれるかもしれません。こうしてコンテンツは育っていきます。

■「熱い思い」がなければ大ヒットしない

 逆にいうと、「熱い思い」がないまま発信するコンテンツは決して大ヒットにはなりません。上から振られた受動的な企画や思いつきレベルで通ってしまった企画を、「熱い思い」がないまま進めてしまうと、ほぼ間違いなく失敗するか、せいぜい無難なものになるだけです。そういった企画も、必ずコンテンツそのものに立ち返るべきです。

 たとえ受動的な企画でも、コンテンツに向き合い、ユーザーに向き合い、がっつりコンテンツをつくるうちに、どこかで「熱い思い」を持てるようになります。そこまで、じっくり考えてみましょう。

 もちろんコンテンツについて徹底的に考えるのも、注意深くn=1のリサーチをするのも、かなり時間がかかります。経験のある人も多いと思うのですが、考え続けていたら、週末に子供と遊んでいたときにアイデアを思いついたり、プライベートで友達と話をしていて「あ、こんなニーズがあるんだ」と気づいたりして、公私の境があいまいになるでしょう。

 それでも、企画が通らないと愚痴を言い続けたり、上司の顔色を伺うストレスに疲れたり、通りそうな企画ばかりつくるようになったりして、ついにはモチベーションを失うよりは、ずっと健全ではないでしょうか。企画を立て、それが通り、実行していく楽しさは、他に変えがたいものがあるからです。

 「企画が通らない」と腐ることがあったとしても、何度でも「何が問題なんだ」「どんなニーズがある?」「こんなアイデアは」とめげずに繰り返してみてください。誰よりも厳しいユーザーの視点で自ら企画を検証すれば、企画の質は跳ね上がります。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/13(木) 19:01

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