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多額の修繕費で売却も、「初心者は戸建て投資」は正解か《楽待新聞》

5/13 19:00 配信

不動産投資の楽待

金融機関の融資姿勢は、依然厳しい状況が続く。特にサラリーマン不動産投資家に対する融資は、一定以上の金融資産や年収が求められ、なかなか承認を得ることができないと嘆く人も少なくない。

そのような中で、少額で始めることができ、現金購入も可能な「戸建て投資」で不動産投資のスタートを切ろうとするケースが増えてきた。確かに初心者が始めやすく、メリットも多い戸建て投資だが、当然デメリットやリスクもある。思わぬ出費がかさんだり、入居が決まらず損切りを選択した投資家も。戸建て投資におけるリスクや注意点を取材した。

■人気が高い500万円以下、70~80平米の物件

実際のところ、投資家からの戸建て需要は本当に伸びているのか。この疑問に対して、「最近、確かに戸建ての問い合わせは非常に多い」と話すのは、戸建てや一棟アパートなどの収益物件を販売する不動産会社「すみだ不動産」(墨田区)の伊藤勝代表だ。

特に問い合わせが多いのは、500万円以下で、70~80平米の広さの物件。単身者と比べ、比較的長期入居が見込めるとされるファミリー層の需要が多いため、投資家からの人気が高いのだという。

戸建て物件投資の魅力は、一棟物件と比べて、販売価格や発生する諸費用が小さく始めやすいことだ。

デメリットとなるのは、価格が安く築年数が古い物件が多いため、金融機関が融資をしてくれないことだ。基本的には現金で買うことになる。

戸建て物件でスタートを切ろうとする投資家が多い現状に接し、前出の伊藤氏は「安易な購入はしないでほしい」と警鐘を鳴らす。

戸建てを購入した投資家から、売却の相談も受けることもあるという伊藤氏は「購入前の概算以上に、リフォーム費用が発生することがわかり、費用の工面に苦労する人や、長期間入居付けをしていてもなかなか入居者が見つからないと悩む人もいます」と指摘。

高い利回りで物件を運営するため、DIYをしようと意気込む投資家も少なくないそうだが、本業の傍らのDIY作業はそう簡単ではない。中途半端なリフォームをすれば、入居者に迷惑がかかってしまうこともあるため、注意が必要だと伊藤氏は話す。

「初めての不動産投資なら、オーナーチェンジの物件からスタートするのも1つの手です。取り組む物件の難易度が高いと、途中で力尽きてしまう方が多い。通帳に毎月家賃が振り込まれる体験をしながら、賃貸経営を学んでほしいと思います」

■「想定以上の出費と手間」

購入前には、費用や工数に対して楽観的なシミュレーションをしがちだ。だが、いざ購入してみると、「想定以上の出費と手間がかかった」と話す投資家は多い。東北地方在住の不動産投資家Aさんも、そうした経験を持つ1人。これまで一棟アパートを数棟所有してきたが、今年2月、初めての戸建て物件を購入した。

「魅力に感じたのは価格ですね。もともと300万円で売られていたのですが、築46年ということもあって修繕箇所が多く、交渉したところ145万円にしていただくことができました」

想定家賃は6万円。当初は、200万円あまりをかけて修繕し、1年弱で入居付けまで行うつもりだったと話す。ところが、なかなか想定通りに事は運ばなかった。業者に依頼しつつ、自分でできるところはDIYで修繕する予定だったAさん。だが、サラリーマンであるため、本格的に作業ができるのは土日のみ。物件を購入して2カ月少々経過したが、Aさんが思い描いていた「1年弱で200万円をかけて修繕」との当初の想定は「どちらも超えてしまいそう」だという。

「正直、ほとんど手がつけられていません。今、水回りをどこまで、どのくらいの費用で直すか、機会損失を計算しながら検討しています」

もともと大家としてのスキル向上を目的とした戸建て購入だといい、多少時間がかかっても良いと考えていたそうだが、「実際に始めてみると、想定以上に時間もお金もとられます。とりわけ、サラリーマンをやりながらだと、時間の制約は本当に厳しいです」とAさん。

「こうしたことをきちんと理解せずに、安易に戸建て投資をしてはいけないと感じます」と戸建て購入を検討している初心者に呼びかけた。

■調査不足で購入し「失敗」

埼玉県で約200万円の築古戸建てを購入したBさんも、「想定外の出費がかさんでいます」と明かす。Bさんの物件には浄化槽がついており、保守点検費や清掃費などはオーナー負担となっているため、年に2万~3万円を支払わなくてはいけないそうだ。

その上、排水のつまり除去やブロワーポンプ交換などに十数万円の出費もあったそうで、「点検費用などがオーナー負担であることは知りませんでした。月額家賃が4万5000円ということを考えると、地味に痛い金額となっています」。

Bさんが戸建て投資に参入したのは、セミナーで「築古戸建て投資は利回りが良い」と言われたのがきっかけ。確かに高利回りになりやすい戸建て投資だが、その後の維持・管理に費用がかかることは事前に念頭に置かなければならないと感じたというBさん。「長く住んでいただけるので、今後も200万円以下くらいの安い戸建ては買っていきたいと思いますが、汲み取り費用を賃借人負担にしたり、あるいは想定以上の修繕費用がかからない物件を見極めていったりしたいです」と話す。

一方、沖縄県で在日米軍従業員向けの戸建て物件投資を行っていたというCさん。物件の購入価格は2480万円で、オーナーチェンジだったため、月額家賃20万円がすぐに振り込まれた。表面利回りは約9.6%。「沖縄では、表面8%あれば良い方。それを考えれば、かなり良い投資だと感じました」。

ところが物件購入から1年半後、入居していた在日米軍従業員が退去。米軍基地から少し距離があったこともあり、1年間空室が続いてしまったという。その間、清掃や草刈りも続け、維持管理に手間も費やしたが「諸費用込みのオーバーローンで購入していたこともあり、このまま所有し続けるのは危険だと思い、結局売却しました」と話す。

「プラス10万円で売却することはできた」と話すものの、「始めの段階で、表面的なところに目を奪われてしまった」とCさん。「購入前にはヒアリングなどを十分に行い、需要を見極めなければいけないですね。調査不足のまま、『買いたい病』で焦って購入してはだめだと思います」と語った。

■1200万円で購入も、150万円で売却

約20年の不動産投資歴を持つDさんも、戸建て投資では苦い思いをしたことがある。

Dさんが購入したのは築40年、6DKの間取りの戸建て物件で、近くにある法人が20年近く寮として借りていたそうだ。家賃は月々6万円。だが、購入して少し経った後に法人が閉業することになり、賃貸借契約も解除に。以前は人気が高かったものの、現在は賃貸需要の薄れたエリアに物件が位置していることもあり、Dさんは悩んだ。

「この先、新たに貸すにしても相当の費用がかかる。それに金を掛けても賃貸付けは苦しい。築古、ぼろぼろでそれなりに修繕しないと危険だ…。そう考えて、売却をすることに決めたんです」

売却先を探していたところ、「現況有姿で譲ってほしい」という希望者が現れた。その申し出を受け、Dさんは相場よりも安く譲ることにしたと話す。

「1200万円で購入した物件でしたが、売却価格は150万円となりました。損切りの形です」

所有していた期間中も、台風で壊れた箇所の修繕や風呂釜の故障などで20万~30万円、庭木の手入れに数万円と、さまざまな出費があったというDさんの戸建て物件。

こうした経験から、Dさんは「金がないから安い戸建て、という選択をすることもあるでしょうが、さまざまな出費が都度かかることは念頭に置くべきだと思います。なけなしの金で戸建て投資に全力投球、というのは危険では」と疑問を呈する。

また、出口戦略についても「もし長期で持ってから売るのであれば、ルールが変わって物件が既存不適格になってしまったり、以前は人気があったエリアでも、売却を考えたころには寂れたエリアになってしまっていたりというリスクもあるでしょう」と指摘した。

実際に戸建て物件の購入で不動産投資をスタートさせた不動産投資家は、戸建て投資についてどのように考えているのだろうか。

「多少失敗したとしても、価格が安い戸建てであれば再起がしやすいのがメリットですね」。そう話すのは楽待の実践大家コラムニスト「私は大家」さんだ。

2020年6月に投資用の築古戸建てを310万円で購入し、不動産投資家になった「私は大家」さん。購入したのは、千葉県鎌ケ谷市にある築45年の物件だという。リフォームには約100万円がかかったが、家賃6万円で募集を開始したところ、1カ月が経たないうちに入居者が見つかった。

入居付けまでは順調だったが、「私は大家」さんもやはり突発的な出費には悩まされた。入居者から「道路に大量の水が流れる」という連絡があって現地で調査をしたところ、風呂場の配水管に不具合があり、生活用水が漏れていたそうだ。配管の交換には40万円かかったという。

「突発的な修繕の影響で、家賃の7カ月分が飛んでしまいました。購入費用は安く抑えられて、良い感じに不動産投資ができていると思っていましたが、そんなに甘くはなかったです(笑)」と振り返る「私は大家」さん。

その他にも入居者のクレームが多く、一時は売却を検討するほど思い悩んだそうだが、「戸建て投資は他の物件と比べて少額から始めることができるため、仮に失敗したとしても再起がしやすい点がメリットだと思います」と話した。

また、「戸建て物件を融資を引いて買う際には注意が必要と話す」のは現在区分マンションや戸建て、一棟物件など計115室を運営する大家で、実践大家コラムニストの「そらまめ父さん」。

「そらまめ父さん」さんが所有するのは、山口県岩国市にある築40年超、650万円の戸建て物件。「一棟物件と比べると、管理が非常に楽です。近隣トラブルも自身で解決してくれますし、保有してから約5年、退去も1度しか発生していないです」という。

ただ、購入には地方銀行から850万円のオーバーローンを引いているそうで、「家賃7万円に対して返済金額は5万3000円。キャッシュフローはほとんど回りません。それにリフォームにかけた金額に対して得られる家賃が少ないため、効率が悪いなと感じます」と話す。不動産投資のメリットの1つとして、レバレッジをかけて大きなリターンを得ることが挙げられるが、戸建て物件に対して融資を活用するか、現金で購入するかは、自身の投資戦略を考えた上で選択すべきだろう。



神奈川県で、収益用戸建てをメインに売買や賃貸仲介・管理を取り扱う不動産会社「ウスイホーム」の武山店店長・柴橋巧季氏は、戸建て投資は「コロナ以後、人気が加速している」と指摘する。

賃貸市場における競争力は今なお高く、供給数が増えたとしても「駅から離れていたり、階段を上った先にあったりと、多少立地が悪くても、アパートよりも空室が埋まりやすい」(柴橋氏)という戸建て物件。

だが、賃貸需要があるのかどうか、想定している家賃で入居がつくかどうか、購入前に徹底したヒアリングを行うことが重要だ。柴橋氏も「市町村という広い単位だけではなく、地元の業者に番地まで指定した上で、需要があるかどうか聞くべきだと思います」と話す。

さらに、これまで見てきたように、突発的な事態に対しても対応できるよう、資金を手元に用意しておく必要もある。「利回りが高い」「手がかからない」などのメリットがうたわれ、ブームとなっている戸建て投資だが、その裏に潜むリスクには十分に注意したい。

不動産投資の楽待

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最終更新:5/13(木) 19:00

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