IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ホンダが「レジェンド」で実現した最先端の自動運転に2つのハードル

5/10 14:01 配信

東洋経済オンライン

 ピピッ、ピピッ、ピピッー。「目線を外し、中央のテレビを見ても大丈夫です」。

 システムの通知音ととも開発担当者の言うことに従い、おそるおそる前方から視線を外しインパネのスクリーンに目をやる。ハンドルが自動で動き、渋滞する高速道路を前方の車と車間距離を保って徐々に進んでいく。数秒だったが、自動運転レベル3を体験できた瞬間だった。

 ホンダは3月下旬、世界で初めてレベル3の自動運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載した改良型セダン「レジェンド」の試乗会を行った。5段階のうちレベル1や2が、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)や高速道路上での追い越しなど一部機能の自動化にとどまる一方、レベル3は特定の条件下ではあるもののシステムがアクセルやブレーキ、ハンドル操作を行う。ドライバーはシステム稼働中なら、走行中でも前方から目線を離すことも可能だ。

 トヨタ自動車の「アドバンスドドライブ」や日産自動車の「プロパイロット2.0」はレベル2に該当するが、ホンダは2020年11月に国土交通省の認可を受けて型式を取得し、世界に先駆けたレベル3の自動運転技術を投入した。

■1000万通りの走行条件で実証

 ホンダの自動運転機能は、高速道路上で渋滞に入り時速30キロ以下の状態になれば稼働し、同一車線で停止や発進、速度を調整しながら、車間距離を自動で保つ。ストレスがかかりやすい渋滞時の運転で、ドライバーへの負担を軽減することが大きな狙いだ。

 今回の発売に至るまで、約1000万通りに及ぶ走行条件のシミュレーションと、国内の高速道路で約130万キロメートルの実証走行を行った。本田技術研究所で自動運転システムの開発責任者を務める杉本洋一エグゼクティブチーフエンジニアは「安全性や信頼性を重視して手厚くするように作り込んだ」と自信を見せる。100台限定でリース販売(3年間)の予定で、約60台を受注している(5月初旬時点)。

 事故の低減や過疎地域での新たな交通手段など多くの可能性を秘める自動運転車だが、ホンダのレジェンドだけを見ても乗り越えなければいけないハードルがある。

 1つは、自動運転機能そのものへの社会の理解促進だ。国土交通省によると、レベル1に当たる自動ブレーキが作動すると過信して起きたと疑われる事故は年間70~100件程度起きている。

 2018年4月には、神奈川県綾瀬市の東名高速で、オートバイと自動車の事故現場にアメリカ・テスラのSUV「モデルX」が突っ込む事故が発生。男性1人が死亡し、2人がけがを負った。テスラ車の運転手は事故当時、レベル2に当たる運転支援システム「クルーズコントロール機能」を稼働したまま居眠りしていた。

 レベル2はドライバーによる監視を主体とした自動運転機能であり、機械任せにせずに前方の注視が欠かせない。こうした痛ましい事故を防ぐためにも、自動運転レベルによる条件の違いや、ドライバーとシステムの役割を正しく理解することが必要だ。

 今回試乗したレジェンドでは、レベル3の自動運転機能が稼働している際、横からの急な車の割り込みがあったり、カーブが連続する地点にさしかかったりしたときに、システムが運転をドライバーに代わるよう要求するケースが多々あった。前方から視線を離していいとはいえ、やはり常に周囲の状況に気を配ることは欠かせないように感じた。

■スマホの利用は推奨しない

 ホンダもこの点については十分に理解している。新型レジェンドの購入を希望する顧客には、動画を使って自動運転機能を説明し、システム稼働時も運転をすぐに交代できる態勢でいるなど運転時の状態について注意喚起する。法律上許されているが、自動運転時のスマートフォン使用は推奨していない。また、納車前も改めて同様の説明を行う。

 レジェンドの車両開発責任者である青木仁シニアチーフエンジニアは、「(レベル3の自動運転機能を)正しく操作できるよう、誤解が生じないよう、お客様1人ひとりに丁寧に説明することが重要だ」と話す。限定100台でリース販売するのはそうした要素の1つで、購入後もユーザーのフォローをしっかりと行いシステムへの理解を深めてもらう考えだ。

 最先端機能に対する十分な理解に加えて、コスト低減も大きな壁だ。レジェンドの価格はメンテナンス料なども合わせて税込み1100万円と、高級車のイメージが強い輸入車の乗用車の価格をも上回る(3年間で1100万円を分割で支払い、リース期間が終ればホンダに車を返却する)。

 ここまで高価になったのは、最先端の自動運転を実現するため、道路環境など周囲の情報を収集するLiDAR(ライダー)やミリ波レーダー、カメラなどの高性能なセンサー類を複数搭載していることが大きな要因だ。杉本氏は「エアバッグや衝突被害軽減ブレーキも車両への標準搭載や普及には時間がかかった。すぐに普及させることは難しいが、今回の開発で得た知見や技術を生かしコスト低減につなげていきたい」と話す。

 高性能部品の価格を下げるにはスケールメリットを出すのが王道だが、現時点でどのモデルにレベル3の自動運転機能を搭載するかは未定という。100台の販売を経て、今後、どれだけ搭載車種を増やせるかが課題になる。

 「レベル3の自動運転がどう受け入れられるのか。決めるのはわれわれではなく、社会であり、お客様だ」。自動運転車の普及する可能性について杉本氏はそう強調する。

 自動運転技術の開発は国内外で活発化しているが、運転の主体がシステムに移るレベル3の市場投入はホンダが初めてだ。各社ともユーザーのニーズを見極めてどの車種に展開するかについては手探りの状態が続いている。このほかにも法整備や保険のあり方など、国際的な議論を必要とするテーマも多い。

 先陣を切って自動運転社会の新たな一歩を踏み出したホンダ。先進技術の普及とコストという2つのハードルを越えていくには、ホンダに続くほかのメーカーの動きも重要になる。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/10(月) 14:01

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング