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男女間の「誘惑」重視していたフランスの変化

5/9 13:01 配信

東洋経済オンライン

 私はこんな質問をせずに育ったとても恵まれた世代の1人です。「女の子だから、これをしなければならない。女性だから、あれはできない……」。フランスでは男子も女子も同じように勉強をしますし、強制的な経済的自立は必須でないにせよ、仕事を得ます。結婚したり、子どもを持ったりするプレッシャーもなく、先入観にとらわれた人生の型もありません。

 すべてにおいて自分が男なのか女なのかを考える必要はありません。しかし、『ママより女』の本を執筆し始めて、今のフランスの状況があるのは過去に非常に大きな運動があったからであると知りました。

■フランスにおける数々の「革命」

 実際、フランスは1970年代初頭まで保守的な国でした。女性が自分の銀行口座を持つことも、人工中絶することも、働くことも許されなかったのです。

 フランス革命の時代、オランプ・ド・グージュは、フェミニストの先駆者であると考えられており、1791年に彼女は『女性および女性市民の権利宣言』を執筆しました。ですが、不運にも、当時は革命的でありすぎたため、グージュは結局、ギロチンで処刑されてしまうのです。

 それからかなりの時を経て、1970年代初頭に再び「革命」が起こりました。「MLF」つまり、「女性解放運動」です。ここで知ってほしい人物が3人います。『第二の性』という有名な書籍を執筆したシモーヌ・ド・ボーヴォワール。1975年に中絶合法化の法律を可決したシモーヌ・ヴェイユ。そして、今年50周年を迎えて話題の「343人の宣言」に署名し、こうした運動に支援することをためらわない作家のフランソワーズ・サガンや、女優のカトリーヌ・ドヌーヴです。

 その後、多くの場で男女平等が進み、例えば経済界に目を向けると、フランスの企業では約40%の経営幹部が女性です。また、弁護士や医師、ジャーナリスト、裁判官などは男性より女性が多いと言われる分野です。2011年以前は、大企業における女性の取締役比率は6%と非常に少ないものでしたが、2011年にEU加盟国で先陣を切って女性役員登用のクオータ制(2011年法)が導入されてから、現在では45%を占めるまでになりました。

 この法律が短期間でこれだけ成果を上げたことが示すのは、時として状況を本当に変えたければ、人為的でありますが、クオータ制などを義務化することでしょう。政治分野では、2000年6月に選挙の候補者を男女同数にする「パリテ法」が導入されたこともあり、女性大臣が増えました。

 一方、日本はどうでしょうか。私は長く日本に住んでいますが、今でも驚くことがあります。例えば、一部の男性政治家の女性に対する(または女性に関する)話し方は、時として衝撃的です。少し前に日本でも大きな話題となった森喜朗氏による発言は受け入れられませんでした。

 7月に東京オリンピックを開催予定の日本は、今や全世界の注目の的だというのに、#MeTooの時代に、性差別的な、男性優位の女性蔑視発言は許されるものではありません。残念ながら、森氏以前にも、日本の政治家やビジネスマンは女性や社会における女性の役割に対して数多くの不適切な発言をしてきました。

 女性が置かれている労働環境も十分とは言えないと思います。出産後の女性が職場を去らざるをえない状況は少しずつ改善されていると言われますが、それでも女性にかかる家事・育児の負担は小さくありません。

 女性がキャリアを積みにくい状況が長らく続いた結果、日本の企業や政府に女性幹部が少ないことは言わずもがなでしょう。上場企業における女性役員の数は2012年から8年で約4倍に増えましたが、その比率は6.2%と他国と比べると低水準です。

 男女共同参画局によると、OECD24カ国(1人当たりGDP1万ドル以上)を対象とした調査では、1970年時点では、女性の労働力率の高い国ほど出生率が低いという傾向にあったのに対し、2000年時点では、女性の労働力率が高い国ほど出生率が高くなったことがわかりました。誰もが働きやすい環境を整備することは、女性の労働参加だけでなく、出生率の向上にもつながるということです。

■フランスに起きている変化

 男女平等においては日本の先を行くと言えるフランスでも、近年さらなる変革が進んでいます。

「ほかの分野でも同じですが、スポーツは男性だけのものになっています。私たちは、最前線に立って話を伝え、コメントし、分析し、導きたいと思っています。私たちは女性がもっと保護され、評価されながら、スポーツメディアによりよい形で出て欲しいと思っています。もし各編集部にもっと女性のスポーツジャーナリストがいれば、スポーツ界における女性差別もなくなることでしょう」

 これは、フランスで3月放送されたあるドキュメンタリーでのある女性スポーツジャーナリストによるコメントです。このドキュメンタリーでは、スポーツ界における女性を悩ませる差別、特に男性の同僚からのセクハラや性差別発言を扱っていました。

 ある男性は、こうしたスポーツのような従来男性が多かった職場におけるセクハラを排除するには時間を要すると指摘しています。別の男性たちも「昔はセクハラや失礼と思われずに、女性と接近することができた」「そういう態度をとった時に、女性がショックを示すことはなく、これが男女における戯れの一種だと思っていた」と口を揃えます。

 こうした中、サッカー解説者のピエール・メネスが「#MeToo以降、何も言えないし、何もできなくなった」とコメントしたことに対して、別の女性ジャーナリストから非難の声が上がったりもしています。

 ちなみに、フランスはアメリカのように早い段階から職場での女性に対する言動に対して厳しい見方や取り締まりをする風潮はありませんでした。フランスでは多くの面において男女平等が進んでいた一方で、男女間における「誘惑」がフランスにおいては非常に文化的にも重要な一面があったからだと思います。

 ただ、それも近年少しずつ変わりつつあるのでしょう。1970年代のウーマンリブが教育や仕事などにおける機会均等や平等を求めるなど、男性と女性が「同じ」であることを求める動きだったのに対して、最近のトレンドは男性と女性の違いをしっかりと認識した上で、女性がそれぞれを男性や社会目線ではなく表現できることを求めている、と感じます。

■フランスでは15歳から性的同意が必要に

 最近では女性ジャーナリストやライターが過去に受けたセクハラや性暴力をインタビューや自身の著書などで告白し、著名男性が役職の辞任などに追い込まれるケースが出てきています(それがかなり過去のものであったとしても、です)。

 #MeToo運動によって、それまで沈黙を守っていた女性たちが言葉によって、スピーチによって自分のトラウマを話すことを躊躇(ためら)わなくなったのです。司法システムもこれに呼応するかのように、特にレイプに対しての罪がより問われるようになっています(それが著名人男性であっても)。

 最近もっとも話題になっているのは、「性的合意」です。当たり前ですが、女性がスキンシップや性行為に対して「ノー」という時は、本当に「ノー」であり、「イエス」を隠しているわけではありません。女性の中には驚いた時にリアクションできずに「固まってしまう」人がいますが、彼女が黙っていることはけっして「イエス」という意味ではないのです。

 フランスでは4月15日に、性的同意の年齢を15歳とする法律が成立しました。欧州連合(EU)の中でもっとも低い13歳にする案もありましたが、15歳で落ち着きました。これは、もともと性に寛容であるフランスでは非常に画期的なこととされています。

 もちろん、フランスでは誘惑やお世辞が日常生活の一部であるため、この問題は男性にとって難しいものですし、男性が「面倒臭い」と感じる場面があるかもしれません。しかし、新しい時代が始まろうとしている中、男性は新しい形のコミュニケーションをも模索しなければならないのです。キスはもういりません! 

東洋経済オンライン

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最終更新:5/9(日) 13:01

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