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ドイツ最古の銀行幹部が語る国際M&Aのゆくえ

4/20 4:31 配信

東洋経済オンライン

ドイツ最古の銀行、現在では投資アドバイザリー業務に軸足を置く金融機関メッツラーグループの創業は347年前の1674年。日本では江戸幕府四代将軍・徳川家綱の時代だった。
同社株は創業家であるメッツラー一族が100%を保有し、高い独立性が生命保険会社や年金基金などの機関投資家、個人投資家の信頼を集めてきた。投資顧問ビジネスの運用資産規模は全世界で約10兆円にのぼる(日本ビジネス単体では非公開)。
そのメッツラーグループの日本法人メッツラー・アセット・マネジメントの新社長に、32歳の弘貴・ヴィースホイ氏が4月1日付で就任した。ヴィースホイ氏は日本語やドイツ語、英語に堪能で、コメルツ銀行やロスチャイルド社時代に企業のIPOやM&Aコンサルティング分野で実績を積んできた。

メッツラー・アセット・マネジメントの基本業務は投資顧問だが、同氏は「日本とドイツのクロスボーダーM&Aに力を入れたい」と語る。日本の中小企業は生産性の低さやグローバル展開の遅れが指摘されており、クロスボーダーM&Aを通じてそうした課題の解決につながる可能性がある。
リフィニティブによると、世界のM&A金額は2021年1~3月に1兆3000億ドル(約143兆円)を超え、前年同期比で倍増と活発化している。今後のクロスボーダーM&Aはどう展開するのか。日独の金融市場に詳しいヴィースホイ氏に聞いた。

■日本とドイツの課題は似ている

 ――32歳という若さで社長に就任しました。

 顧客やメッツラー家、従業員に対する責任の重さを噛みしめている。

 メッツラーグループはかつて融資事業もしていたが、現在は投資顧問、プライベートバンキング、コーポレートファイナンス(M&Aアドバイザリー)、キャピタルマーケット(機関投資家向け株式、外国為替、債券、債券のセールストレーディング)の4つを事業の柱にしている。

 (アセットマネジメント事業の)投資先は欧州が中心だ。欧州のどの株式や債券に投資するか、ドイツ本社にいる運用のスペシャリストが投資戦略を立てている。東京にいるわれわれの仕事は、本社が練った投資戦略を日本の機関投資家に紹介すること。もう1つは、機関投資家のニーズを把握して投資戦略を練り上げることだ。

 日本の機関投資家が直面している課題はドイツと似ている。低金利が20年以上続き、機関投資家はより高い利回りを求めて海外に目を向けざるをえなくなっている。新型コロナを経て、これまで以上にESG投資に焦点が当たっている点も同じだ。

 ――メッツラーグループは創業以来、メッツラー一族が100%の株を保有しています。そのことは投資戦略にどのような影響を及ぼしていますか。

 長年堅持してきた独立性こそがメッツラーグループの強みだと考えている。何よりも大切にしているのは長期的な視野に基づいた運用戦略だ。個々の顧客ニーズに寄り添った形での中長期的な分散投資をすること。

 株式市場は上下に変動する。大事なのは、ダウンサイドリスクを最小限に抑えるための方策を織り込んでおくことだ。間違っても「一発勝負で大きな賭けに出よう」という判断はしない。

 メッツラーグループは、顧客に対して明らかにリスクのある投資は勧めてこなかった。リーマンショックが起きる前から、ABS(資産担保証券)のようなリスクのある資産を顧客に販売してこなかった。

 短期的な利益を求める資本市場の圧力にさらされずに、こうした価値重視の経営ができるのはファミリー企業だからだ。

 もちろん長期的には利益を出さなければならないが、リスクが大きいとわかっている商品を販売してまで利益を出すことはわれわれのポリシーに反する。アメリカで流行している不透明でリスクの高いSPAC(特別買収目的会社)のような短期的なトレンドには乗らない。

■教会の資産運用を通じてノウハウを蓄積

 ――コロナを経て、ESG投資の機運がますます過熱しています。メッツラーグループは以前から社会や環境を重視する投資をしてきました。

 メッツラーは50~60年ほど前から教会の資産運用を担っている。教会は以前から、環境や社会に重きを置く投資を求めていた。人の健康を害する恐れのあるたばこ業界や、児童労働等で利益を上げる業界には投資しない。そうした教会のニーズに応えるために、メッツラーは早い段階で「投資先がESGを重視しているか否か」を見極めるノウハウを積み重ねてきた。

 投資プロセスにESGという考え方を反映させることで、長期的なパフォーマンス向上のみならず、投資の下値に対する備えにもなる。ESG戦略が対象とするのは、強く健全なバランスシートを持ち、風評被害や規制リスクにも耐えられる企業だからだ。

 ただ、昨今のように急速にESG投資が拡がると、別の観点から懸念を抱いている。

 ――どういうことですか? 

 コロナを経て、日本でも多くの投資家がESG重視に舵を切った。「投資はすべてESG基準にする」と宣言する企業も生まれている。それはそれで歓迎すべきことだが、みんなが一斉に同じ方向を向く時は、資産運用の観点で言うとリスクだ。

 同じ指標、同じデータを参考にする結果、同じようなポートフォリオができあがっていく。ポートフォリオは分散できないと、真のリスク管理とは言えない。

 ESGスコアだけを基準に投資すると投資先の地域が偏ったり、地政学的なリスクを見落とすことにもなりかねない。

■日本に眠る「隠れたチャンピオン」企業

 ――日本とドイツには創業100年以上の老舗企業が多いという共通点があります。日本の中小企業の多くは大手企業の下請けにとどまり、生産性が低いまま放置されています。グローバル展開も遅れています。

 日本もドイツも、長い歴史を持つ中小企業が多い。独自の技術を磨き上げ、グローバルニッチ市場で存在感を発揮している企業もある。こうした企業を私は「隠れたチャンピオン」と呼んでいる。

 ただ、日本とドイツの中小企業には1つだけ違いがある。ドイツの中小企業の多くは自前でグローバル化を成し遂げてきた。1871年のドイツ統一まで複数の国・地域に分かれていたので、中小企業は域外に販路を広げざるをえなかった。そうしたグローバル展開のDNAが現在のドイツの中小企業にも色濃く残っている。

 これに対し、日本の中小企業はこれまで大手企業の下請けに甘んじてきた。とても優れた製造技術があるのに、自前で海外展開ができていない。

 メッツラーは、日本の中小企業のグローバル化をお手伝いしたい。日本支店にM&Aアドバイザリーの部署はないが、欧州に展開したい中小企業があればドイツ本社のM&Aアドバイザリーチームにつなぐことができる。

 2020年にはメッツラーグループとして、ドイツの再生可能エネルギー企業や部品メーカーを買収した日本企業のアドバイザリーをやった。こうした日独クロスボーダーのM&Aは増えている。私も日本企業のグローバル化に全力を尽くしたい。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/20(火) 4:31

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