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リコー、「360度カメラ」に見いだす大転換への道

4/18 5:41 配信

東洋経済オンライン

 長引くコロナ禍でデジタルカメラの市場が縮小する中、事務機器大手リコーが作る360度カメラ「THETA (シータ)」が快進撃を続けている。

 2020年のデジカメ総出荷台数は前年比42%減と、コロナの大打撃を受けた。一方、シータの販売台数は2020年4~12月の累計で前年比約20~30%増加している。好調の背景には、法人向け需要の取り込みがある。

■バーチャルツアーで室内丸見え

 シータは世界初の一般消費者向け360度カメラとして2013年に発売された。コンパクトで細かい設定が必要なく、手軽に360度画像の撮影を楽しめると話題になった。

 ニコンやアメリカのGoPRO、中国のInsta360など他社がこの分野に参入したのは、VR(バーチャルリアリティー=仮想現実)元年といわれた2016年以降のこと。その後も新規参入が相次ぐ。

 2020年10月にはリコー発のスタートアップ企業、ベクノスがシータよりもさらに小型でよりカジュアルに楽しめる360度カメラ「IQUI(イクイ)」を発売した。ベクノスのCEOはシータの開発責任者を務めた生方秀直氏だ。同社はリコーと資本関係があるものの、開発や販売の体制は別。シータにとっては新たなライバルの出現となった。

 戦国時代を迎えつつある360度カメラ市場だが、今のところシータは国内での認知度や販売数で群を抜いている。ほかの製品と一線を画すのが、ビジネス用途を深掘りできている点だ。

 最近では、シータで撮影された部屋や店内を自由な視点で見せられるバーチャルツアーが人気を集めている。顕著なのが不動産だ。コロナ禍で直接出向くことが難しくなった部屋の内見向けによく使われている。ウェブサイトに掲載する物件の写真や動画だけでは伝えきれない室内の設備や間取りの位置関係を、より具体的に示せるといったメリットがある。

 こうした用途でシータを使ってもらうため、リコーは2014年にバーチャルツアーの制作・公開を容易にするクラウドサービス「THETA 360.biz」を開始。直近でもコロナによる需要増を受け、建設現場の状況共有を効率化する「RICOH360 Project」(2020年11月開始)などのクラウドサービスを矢継ぎ早に投入した。

 「THETA 360.biz」では、シータ本体を含む利用プランを公開コンテンツ数に合わせ月1万円から提供している。2020年の新規契約数は前年比で5割増加した。不動産以外の業種でも導入が進んでおり、アパレルやカーディーラーなどの営業現場で活用されている。

 今年1月には、AI(人工知能)が360度画像の部屋にCGの家具を自動で配置するサービスを試験展開。体験した不動産業者からは「サイトの来訪者数が伸びた」「家具を置いた部屋のイメージを直感的に伝えられる」と好評だ。

 リコーは複合機の営業を通じて顧客の業務上の悩みを把握し、不動産・建設・介護など幅広い業種に合ったデジタルサービスを提供している。シータの用途開発が進展したのにも、こうした背景があった。

■「後乗せ機能」の開発を外部に開放

 かつては消費者向けを主軸に展開していた360度カメラだが、そもそもどう使うのか、どう楽しめばいいのかといった使い方の課題があり、2017年ごろには市場の伸び悩みが見られたという。一方で2018年になると、360度カメラを自社で使いたいという法人のニーズが目立つようになった。

 シータを手がけるSmart Vision事業センター副所長の藤木仁氏によれば、「このころからシータの機能拡充を一気に加速させた」。ハードの面だけでなく、従来のカメラにはない使い方をリコー内外で模索、用途・目的に基づいた販売戦略を練った。

 グーグルなどの外部サービスとの連携も進めた。シータの一部機種にはアンドロイドOSを搭載し、自動で人物の顔にぼかしをかけられるなどの新たな機能を後乗せすることもできる。こうしたプラグイン(機能)はリコーによる開発だけでなく、リコー以外の企業や個人も開発でき、リコーのサイト上で共有することができる。

 次の焦点は、こうした新領域の育成で売り上げ規模がケタ違いに大きい複合機領域の落ち込みを補えるかだ。

 リコーは目下、経営目標に「複合機の会社」から「デジタルサービスの会社」への転換を掲げる。世の中のペーパレス化の流れに合わせ、印刷量に応じ課金する従来ビジネスから、業務のIT化・効率化を支援するデジタルビジネスへと軸足を移すことを企図しているのだ。

 テレワークの拡大により、事務機市場は大きな痛手を被っている。リコーもご多分に漏れず、複合機販売を含むオフィスプリンティング事業は2020年4~12月期の営業利益が前年同期比9割減に落ち込んだ。

 一方、電子署名サービスなどの業務ソリューションを提供するオフィスサービス事業は同期間の営業利益が前年同期比4%減と、軽微なマイナスで済んだ。10~12月の3カ月だけを見れば、同事業の営業利益は前年同期比46%増と絶好調の水準に戻っている。

■端末で蓄積した業務データも活用

 業務効率化への要求はコロナ後も健在で、リコーにとっては転換を推し進めるビックチャンスといえる。

 今年3月に発表された中期経営計画では、オフィスプリンティング事業内で複合機以外のエッジデバイス(顧客接点となる端末)とサービスの提供を新たに始めると発表した。テレワーク関連や、店頭での非接触・非対面セルフサービス端末などを想定する。

 2025年度のオフィスプリンティング事業の売上高目標は7700億円。そのうちの500億円をこの新ビジネスで稼ぐことを目指す。年間売上高が2兆円近くあるリコーにとって規模は大きくないが、複合機以外の領域で着実に新ビジネス創出を狙う。

 山下良則社長は2021年4月の東洋経済の取材に、この中計への手応えと今後の展望を語っている。「リコーの複合機を利用していない顧客にもシータを通じてサービスを提供し、顧客の幅を広げられている。加えて、独自のエッジデバイスを開発すれば、オフィスだけでなくさまざまな場で顧客の業務データを蓄積できる。それらを分析し、新たな価値として顧客に還元していくことがデジタルサービスの会社として重要だ」。

 リコーは中長期の目標として、2025年度までに営業利益1500億円の達成も掲げる(2021年3月期は490億円の営業赤字予想)。複合機本体の販売数や印刷量が減少していく中で収益性を高めるには、独自のエッジデバイスの開発・活用が欠かせない。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/18(日) 10:44

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