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橋下徹「教育格差は自己責任で片付けられない」

4/14 17:31 配信

東洋経済オンライン

橋下徹氏と堀江貴文氏の共著『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』では、働き方・お金・学び・教育・都会生活などについて、2人の持論が展開されています。

本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。

■挑戦には「セーフティーネット」が必要

 これからは個人の能力が問われる時代になる。だから誰もが自分の適性を自覚し、能力を最大限に高められる方向へ進むのが理想だと僕は考えている。

 激しい自由競争のなかで切磋琢磨することで、人間の能力は鍛えられる。そのような人間集団が社会も活性化させる。流動性は社会全体を活性化させるのだ。

 ただし人が激しい競争のなかで挑戦するためにはセーフティーネットが絶対に必要だ。サーカスの芸人が空中ブランコで大技を繰り出せるのも、安全のためのネットや命綱があるからだ。

 セーフティーネットがなかったら、恐怖心の欠如した一部の人間しかチャレンジなどしないだろう。

 さらに、僕は子どもたちが教育を受けることのできる環境は平等にしなければならないと思う。

 日本の教育内容にいろいろ批判もあるし、とくに日本の大学の質は非常に低い。しかし、一部の天才肌の者を除いては、自分で学ぶ能力が身に付くまではある程度教育を受けることが必要だ。

 教育とは知識を得るものではなく、自分で学ぶ能力という一種の事務処理能力を得る機会だ。

 飛行機も飛び立っていくには滑走が必要だ。自転車を1人で乗れるようになるにも、後ろで支えながら走ってくれるパパやママが必要だ。

 この滑走やパパやママにあたるものが、教育だと思う。

 だからもうすでに1人で飛び立てる者、1人で自転車に乗れる者は、教育に頼らずに自分の力でどんどん学んで進んでいけばいい。個人の学ぶ力を伸ばすものが教育だというなら、1300万人ほどの子どもたちを、4月一斉入学、3月一斉卒業、4月進級という同一のカリキュラムで教育する必要はない。

 教育のIT化が実現できる時代になったのだから、個人の能力に合わせた教育カリキュラムに抜本的に変更していくべきだ。

 大量生産、大量消費時代において、集団で同じ行動をとることのできる人材を養成する必要のあった昭和時代と、個人の力が重視されるこれからの時代はまったく違うのだ。

 このような意味で、僕はすべての子どもたちに、家庭の経済状況にかかわらず自分の能力を最大限に伸ばすことのできる環境が与えられなければならないと考えるし、子どもたちが家庭の経済状況によって進学を諦めることがあってはならないと強く思う。

 ところが日本の場合、教育に関して家庭の自己責任論が幅を利かせている。

 OECD(経済協力開発機構)発表の『Education at a Glance(図表でみる教育)』(2020年版)によれば、初等教育から高等教育に対する公的支出総額の対GDP(国内総生産)比率はOECD平均で10.8%。だが日本は7.8%と、先進国のなかでは最低レベルにある。

 つまり、各家庭が公的な教育支出の少なさを、家計費でカバーしているわけで、親の所得によって教育費は大きく異なってくるということだ。

 そして、朝日新聞とベネッセ教育総合研究所が2018年に行った「学校教育に対する保護者の意識調査」では、教育格差について「当然だ」「やむをえない」と答えた人が62%、「問題だ」は34%。2008年は「問題だ」が53%だったことを見ると、教育格差を大勢の人が容認するようになっているように思える。

 親の所得によって教育費に大きな差が出ると、子どもたちのあいだで、教育を受ける環境に不平等が生じる。親の所得が低い子どもは、自分の行きたい進路を選べなくなってしまう。

 そしてこのような不平等を社会が容認、というよりも諦めてしまうというのは、極めて危機的な状態ではないだろうか。

■府知事時代にやったこと

 そこで僕は大阪府知事時代に、低・中所得世帯の私立高校や専修学校の授業料を無償化することに乗り出した。そして松井一郎前府知事、吉村洋文現府知事もそれを承継してくれている。大阪市長時代には塾に通う費用の補助制度も作った。

 お金がないから、公立高校にしか行けないというのは不公平だろう。

 お金があろうがなかろうが行きたいところに行ける、公立でも私立でも自由に選べるようにする。そうなると、当然人気のない高校は入学希望者が減る。

 だからこれも僕が大阪府知事のとき、3年間定員割れが続いた公立高校は統廃合の対象となるというルールも作った。これまで黙っていても生徒が集まっていた公立高校や、定員割れをしても存続していた公立高校が、自分たちで努力して生徒を集めなければならなくなった。学校関係者のなかには猛反対する者もいたが、改革を断行した。

 お金のあるなしに関係なく子どもたちは学校を選べる。これまで私立に行けなかった子どもが私立に行けるようになった。

 公立と私立のあいだだけでなく、公立と公立のあいだにおいても、どの高校も特色を打ち出そうと知恵を絞るようになってきた。

 これが流動化ということだ。

 吉村知事は、大阪府立大学と大阪市立大学が統合した新しい大阪の公立大学の学費も、低・中所得の大阪府民世帯については無償化にすると表明した。

■学ぶ機会の均等は社会の義務

 いまの日本の教育システムがおかしいと思っている子どもたちは、自分の思っているやり方でやればいい。年齢を基準とするいまの画一的なカリキュラムに縛られる必要はない。

 しかし、いまの日本の教育システムであっても、それを学びたいという子どもがいるのであれば、家庭の経済状況にかかわらず、学ぶこと、選択ができることの「機会」を提供してあげることは社会としてマストだと思う。

 社会は人によって成り立っている。その社会を支える人の能力次第で、社会の豊かさが決まる。

 ゆえに社会が、子どもが学び、その能力を伸ばす機会を子どもたちに平等に与えることは義務である。

 国や自治体の教育への公費投入はまだまだ不十分だ。

 僕は子どもが生まれてから大学を卒業するまで、そして社会人になってからの学び直しも含めて、経済状況の差によって格差が生まれてはならないと思っている。低・中所得世帯は無償にすべきだ。これが子どもを産むことを経済的理由でためらっている若い夫婦への後押しにもなると思っている。

 さらに無償化は、学校側に無尽蔵に運営交付金を投入するのではなく、子どもや学生側に授業料バウチャー(クーポン)を与えることによって、経済状況を気にせずに自由に学校を選べるようにする。

 そうすると子どもや学生が集まらない学校は統廃合の対象になるので、学校間における切磋琢磨が激しくなり、学校の質も高まる。まさに流動性を高めることの活性化だ。

 「教育格差は仕方がない」と家庭の自己責任論に取り込まれて、諦めてほしくはない。教育格差の是正は政治の第一の使命だ。

ポイント
社会の豊かさを支えるのは教育。
教育を守るのは社会全体の使命だ。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/14(水) 17:31

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