IDでもっと便利に新規取得

ログイン

なぜ今「1on1ミーティング」が注目されているのか

4/12 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

● 職場の中に 忌憚なく話ができる機会はあるか

 職場におけるコミュニケーション施策として、1on1ミーティングはすっかりおなじみのものになりました。

 ダイヤモンド社が2020年11月に刊行した『1on1ミーティング』は、2017年の『ヤフーの1on1』に続く第2弾。前著で示された「目的」「効果」をさらに深掘りするだけでなく、組織開発、経験学習、カウンセリング、コーチングという背景にある考え方について、それぞれの専門家との対話によって客観的に解説するなど、その価値をくわしく解説しています。

 なぜ、1on1に関心が集まるのか。『1on1ミーティング』から著者たちが語る言葉を引用してみましょう。

 * * * * *

 本間 日本企業では、人の好き嫌いなど言わないで成果を上げろよ、というのが、この20年間の振り子の方向感だったと思います。それで昔なら当たり前だった「飲みニケーション」を否定し、「社員旅行」を否定し、部下のプライベートについて聞くことなどを全部「ハラスメント」だ、ということになった。それは決しておかしい方向ではないけれど、振り子は戻って来るべきだと思っていて、そこで信頼関係とか、業務以外のことでも相談できるという安心感が重視されるようになった。

 部下にとっては業務とそれ以外の私的なことなど、これは言っていいことなのかどうか、なんて判断できないと思う。上司にしてみれば「それ、早く言ってよ」と思うこともあります。「最近の社員って考えないよね」とよく言われますが、考えていないんじゃなくて、忌憚なく話ができる場がそもそもない。1on1の、なんでも話せる安心感は重要です。

 吉澤 加えて1on1は、仕事のスピード感にも効果を発揮します。資料づくりなどの身近な例をとっても、本人としてしっかり仕上げて持っていったつもりが、実は上司が求めていたものとは違ってやり直しなんてことがよくあります。途中経過でマメに認識合わせができていれば、不要な手戻りは減るわけで、結果として生産性を上げることになります。

 本間 対話の価値は多方面に効きます。風土改革を課題とする企業は多いと思いますが、1on1を通じて上司と部下との信頼関係を築くことによって、よき組織風土を作ろうという企業は、まだ少ないでしょう。私は、対話の質を上げることで、風土改革だけでなく、顧客との信頼関係も強くなる、と考えています。

 由井 本間さんがよく言われる「言葉の解像度」を上げる、ということですね。上司と部下でいうなら、「いいからやれ!」で話が終わりがちですが、そうじゃなくて、「どうしたいんだ?」という問いかけができるかどうか。目的を確認したり、意思を問う、ということがあるだけで、事態はかなり変わるでしょう。

 1on1の研修でしばしば聞かれるのは、自分が上司と1on1をやる時には、上司がこういうことを言ったら喜ぶだろうな、ということを探してしまう、という部下の言葉です。そして次に、自分が聞き手になったときに、相手がこう言ってくれたらいいな、と考えてしまうというのです。上下関係のカルチャーが、それだけ強く染み付いているということです。

(本間浩輔:Zホールディングス常務執行役員、吉澤幸太:ヤフー ピープル・デベロップメント統括本部、由井俊哉:組織・人材開発コンサルタント。ODソリューションズ代表)
 * * * * *

 1on1は、いわゆる「業務面談」とは違い、部下が日頃考えていることについて自由に語る場。いわば「部下のための時間」です。上司は基本的には傾聴します。もちろん部下の求めに応じて意見を述べたり、アドバイスをするのはかまいませんが、基本は「聞く場」ということになります。

 みなさんの職場の中で、そのような時間、そのような場は、確保されているでしょうか。

 管理職の方は、進捗報告ではなく、部下が考えていることを聞く機会はありますか?

 一般社員の方は、上司と忌憚なく話ができる場はあるでしょうか。もし、自分が考えていることを遠慮なく話す場があるとしたら、そのことは、日常の業務に、どのような変化をもたらすでしょうか。

● フィア(恐れ)・アプローチでは うまくいかない

 著者らの対話を、さらに続けます。

 * * * * *

 由井 どんな管理職の下に行くかで、モチベーションが変わる。それは、広い意味での評価があるからだと思います。ということは、上司がマネジメントをちゃんとやる、となったら、みんなモチベーションが上がる可能性があるということだと思います。

 吉澤 結局、「こういうことを言うと評価が下がる」とか、「怒られる」とか、「バカにされる」とか、そんな心配がなくなるだけで、ガラッと変わるんじゃないかと思いますね。

本間 ジョン・コッター (注1)
の「変革の8ステップモデル」の話を私は好んでするのですが、その最初のステップは「危機感を高める」です。でも、私は「危機感」に違和感を覚える。というのは、多くの企業で経営トップが「今の若手には危機意識が足らん」と言う。それは事実なのかもしれないけれど、実はみんなもう「危機意識の醸成疲れ」をしていて、「またですか?」という反応なのではないかと思う。 由井 私は、そもそも危機感で人は動かないと思っています。その点で、何かないのでしょうか、危機感ではなくドライブさせるものが。

 吉澤 本書でケーススタディとして取り上げた企業は、いずれもある種の危機感はあるはずですが、それを前面に出して煽り立ててやっているケースは一つもありません。工夫を凝らして楽しめる研修をするとか、仕掛けがもっと知的なアプローチですし。

 本間 そう、フィア・アプローチじゃない。企業が育成に関する制度を広めようとする、「仕事なくなるぞ!」みたいなフィア・アプローチが多いし、それでみんなが前向きになり成長する、という話は聞いたことがありません。

 吉澤 どんな会社にもピンチはあります。そのときに危機感でドライブするという場面も、ある。ただ、その反対側の安心感や、あるいは高揚感、そういうものを場面場面で選びながら進めている会社がうまくいっているように感じます。

(注1)John P.Kotter(1947- )。ハーバード・ビジネス・スクールの松下幸之助記念講座名誉教授。企業におけるリーダーシップ論の権威として知られる。
 * * * * *

 1on1について、それが「部下のための時間」である、と説明すると、「そんなに部下に気を使う必要があるのか?」と否定的なコメントをする経営者やマネジャーがいます。おそらくそれは、上意下達のコミュニケーションを良しとする発想による反応のような気がします。

 もちろん、上意下達で望む目標を達成しているのであれば、それを続ければいいかもしれません。しかし、本当に思い描くような成果を上げられているでしょうか?

 もし、思うような成果が上げられていないとすれば、それは組織の何が原因なのでしょう。

 1on1の目的は、部下に気を使うことではありません。対話によって風通しのいい職場をつくり、心理的安全性を確保する。そして、良質なフィードバックによって、部下が成長することが大きな目的です。

 とはいえ、肝心なことは、さらにその先にあります。

 * * * * *

 由井 「やっぱり人の成長は大事だよねー」というところだけしか見ていない担当者だと1on1もうまくいかない、ということを、すごく感じます。最も肝心なのは、その施策がビジネスにちゃんとつながるか、にあります。つまり、目的をどこに置いているか、によって成否が分かれると思います。

 本間 それは、この1、2年、私がずっと考えている課題に対して、一番近いコメントですね。

  阿吽の呼吸が通用しなくなった今、言葉を重ね合わせて、意味をしっかり理解し合うということが、組織には欠かせません。人の成長と、組織の成長が一致することが1on1が目指すゴールです。

 * * * * *

 1on1は、職場のコミュニケーションを活性化させるだけでなく、メンバーの成長を促す手法です。書籍『1on1ミーティング』では、導入した企業の事例も紹介しています。

 「どんなステップで導入したのか」、「どんな試行錯誤があったのか」、「どんな成果が上がったのか」。そこにはそれぞれの考えが反映された、さまざまな取り組みが見て取れます。

 ぜひ、本書をご一読いただければと思います。

ダイヤモンド・オンライン

関連ニュース

最終更新:4/12(月) 6:01

ダイヤモンド・オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング