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入居者が死亡! 残置物を円滑に処理する契約とは?《楽待新聞》

4/10 19:00 配信

不動産投資の楽待

貸している物件の中で入居者が亡くなった時、その入居者の残置物をどのように処理するか、ということは大家にとっての悩みの1つです。こうした問題を受けて、先日国土交通省が、「残置物の処理等に関するモデル契約条項案」を発表しました。

これは、特に高齢単身者を念頭に、入居者が死亡した際、賃貸借契約の解除や残置物処理を円滑に進めるための契約を普及させることで、オーナーの不安を払しょくすることが狙いとなっています。

今回は、このモデル契約条項案について、概要を解説したいと思います。オーナー側もこうした動きを知っておくことは、非常に重要です。残置物処理といっても、入居者死亡時の賃貸借契約解除などにも話が及んでいますので、ご参考ください。

■モデル契約条項案とは? どうして作るの?

例えば不動産オーナーの中には、単身高齢者への賃貸物件の賃貸に躊躇したり、断ったりした経験がある人もいるでしょう。

単身高齢者との賃貸借契約の場合、ほかの入居者に比べて、もし賃貸物件の中で孤独死してしまったらどうしようという不安がよぎりやすいと思います。入居者が孤独死した場合に備えて、いわゆる孤独死保険という保険商品も販売されているものの、孤独死保険の対象は基本的に原状回復費用(特殊清掃費用、消毒費用など)です。

それに対し、入居者の死後は、その残置物は入居者の相続人の財産となるため、賃貸人である不動産オーナーが勝手に処分するわけにはいきません。

もし相続人がいなくても、相続財産管理人と呼ばれる人が裁判所によって選任され、その管理人が残置物を管理します。入居者が天涯孤独の身の上であるような場合でも、法律上は、オーナーが勝手に残置物を処分することはできないのです。

そこで、残置物に関する契約をどうするかが問題となります。

こうした中で、国交省は、入居者の死亡時に残置物を円滑に処理することや、賃貸借契約の解除をスムーズに行うために、あらかじめこうした内容を実行する契約を結ぶという検討を進めてきました。それが、今回のモデル契約条項案というわけです。

■賃貸借契約を円滑に解除するために

まずは、モデル契約条項案における賃貸借契約の解除方法についてご説明しましょう。

賃貸借契約において、入居者が死亡した場合、賃借権は相続の対象となります。つまり、賃借権自体は、財産的価値があるものと評価されているわけです。そうなると、誰かが勝手に賃貸借契約を解除するというわけにはいきません。

こうした中で、モデル契約条項案では、賃借人の推定相続人(被相続人が亡くなった際に相続人になる人のことです)が受任者となって、賃貸借契約の解約などを入居者本人に代わって行う契約を結ぶことが望ましいとされています。

ここでいう受任者とは、委任契約などの依頼を受ける側のことです。依頼をする側は委任者、と呼ばれます。

さて、賃貸借契約において、オーナーは賃借人との間で利害が対立します(オーナーは、入居していた人の意思に反してでも賃貸借契約を解除したいと考えるかもしれません)。

そのため、条項案では、もしオーナーが受任者となる契約を結んだとしても、民法第90条(公序良俗に反する事項を無効とする条文)や消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害するような場合にその合意を無効とするという条文)に違反し、その契約が無効となる可能性があると指摘されています。

つまりオーナーも、こうした契約を避けるべきだと示唆していると言えるでしょう。

当職も、過去、賃貸借契約書上、オーナーが解除の意思表示をできる旨の条項や残置物を処理できるなどの条項を見たことがあります。契約書のチェックの際に、この条項は、民法90条などによって無効となる可能性がある旨指摘しました。

■受任者ができること

もし、受任者となる推定相続人がいない場合には、居住支援法人、社会福祉法人、民生委員といった人を受任者とするのが良いかと思います。

なお、仲介業者や管理業者が受任者となることも考えられますが、同業者が純粋に入居者のことを考えて行動できるかは分かりません(普段は、オーナーの意向に従って動いていることも多いでしょう)。

仮に、仲介業者や管理業者が受任者となった場合には、オーナーの意向に沿うことなく、あくまで入居者の意向に沿って行動することが必要です。

では、上記の受任者は、どのように代理を務められるのでしょうか? モデル契約条項案では、入居者が死亡した場合、賃貸借契約の合意解除をすることができる権限と、オーナーからの賃貸借契約の解除の意思表示を受ける権限を定めています。

なお、受任者はいずれかのタイミングでその義務を終える必要があります。条項案では、賃貸借契約の終了、または受任者が死亡を知った時から6カ月が経過した場合に終了することとしています。

さて、次に入居者死亡の際、円滑に残置物処理を行うための方法についてです。

モデル契約条項案では、入居者の死亡後の財産を、廃棄する「廃棄残置物」、廃棄しない「非廃棄残置物」「金銭」に分けています。

どれがどのカテゴリーになるかというのは、客観的に決まるのではなく、入居者がその主観で定めることになります。

モデル契約条項案では、非廃棄残置物目録といった物を設け、そこに指定した物を非廃棄残置物として扱うということを想定しています。

入居者は、事前に自身の死亡時における残置物処理を委任するという契約を締結するわけですが、その際に、非廃棄残置物とその送付先を指定。死亡後は、原則として契約で依頼を受けた受任者がそれらを送付します。廃棄残置物は、死亡した後に、原則として受任者は、入居者が事前に指定した「死亡時通知先」に通知をした後に廃棄をします。

金銭は、入居者の死亡後に発見したら受任者が賃借人の相続人に引き渡します。

ただし、残置物の中に高額な物がある場合には、廃棄残置物であってもお金に換えるなど、例外的な処理もありうるため、受任者はさまざまな事態を前提に、状況に応じた対応が求められています。

■オーナーが知っておくべきポイントは

こうしたモデル契約条項案が示されている中で、今後賃貸オーナーは、状況を見極めて、賢く動く必要があると思います。

入居者が、相続人や第三者との間で、賃貸借契約の解除や残置物の処理に関する契約をしている場合にどう動くかを決めておき、トラブルに巻き込まれないようにしておく必要があります。

例えば、入居者が死亡したと仮定し、それぞれ以下のようなことが考えられます。

1.相続人が賃借権を相続する場合

死亡した入居者の親族が相続人となり、その物件に自分が住みたい、と言うケースもあるでしょう。こうした場合には、賃貸借契約の継続をすることは問題ないと思います。契約の解除、残置物処理も行わずにすみます。ただし、もちろん相続人の審査はするべきです。

2.相続人が賃借権を相続しない場合

賃貸借契約の解除、残置物の処理を行うことが望ましいでしょう。相続人が賃借権を相続しない場合、まず賃貸借契約の解除をしておく必要があります。解除しておかなければ、相続人との間で賃貸借契約が継続してしまい、相続人が賃貸物件を占有することができる状態になり、無駄に賃料請求権が発生します。

まずは、何より、オーナーとして、特に高齢単身者の入居をめぐり、現在こうした状況にある、ということを知っておいていただければと思います。

■有用性は認められるが、まだまだ懸念点も…

省略した部分もありますが、大まかにモデル契約条項案の概要を解説しました。

モデル契約条項案、そして、今後のパブリックコメントの手続を経て完成するであろうモデル契約条項は、単身高齢者の孤独死および残置物の処理について、利害調整を図ることに一定の効果があり、有用性があるといえます。

ただ、モデル契約条項案においても、受任者と相続人を始めとする利害関係人との間での利害調整が完全に図られているとはいえず、例えば、契約条項と遺言との矛盾など、紛争の種が残る可能性はあります。

そういった状況において、どれだけこれらが世に浸透していくか、受任者がどれだけいるのかは分かりません。

また、報酬や費用について、単身高齢者が十分に支払うことのできる料金設定になるかといった点も懸念点です。

さらに、モデル契約条項案は、長期に亘る契約関係の維持を前提としている(単身高齢者が亡くなるまでの間なので、結果として、10年、20年といった長期に亘る契約もあるでしょう)のですが、その間、受任者がどのような経済状態となるのか、そして、その場合において、前払いした報酬や費用はきちんと戻ってくるのかといった懸念もあります。



少し話は変わりますが、土地を賃貸して、建物は賃借人の所有といった土地の賃貸借契約関係においても、ぜひともモデル契約条項案を作ってほしいと思っています。土地の賃借権は、貸室の賃借権よりも経済的価値が高く、利害調整はさらに難しくなるものです。こうした時に、賃借人が亡くなった場合、土地上の建物および同建物内の残置物は、土地のオーナーにとって大きな問題になります。

懸念点ばかりを述べてしまいましたが、今後の少子高齢化、人口減少の日本においては、不動産オーナーにとって、単身高齢者への賃貸は避けて通れないものとなっていくと思います。モデル契約条項案が実務に浸透し、さらに、実務的にブラッシュアップされて、より良いものになることを祈ります。

不動産投資の楽待

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最終更新:4/10(土) 19:00

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