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就活生が感じた「学歴フィルター」の不条理

4/8 12:01 配信

東洋経済オンライン

 就活に関する学生アンケートを読むと、大人に対する不信感に気付く。例えば、面接官の横柄な態度、無遠慮な質問は嫌われる。そして、明らかな選考差別としてあげられるのが学歴フィルターだ。

 すんなりとインターンシップ、会社説明会、面接という選考プロセスに進める学生もいれば、進めない学生もいる。その原因は大学ブランド。学歴によって選別されていることから、「学歴フィルター」という名称が使われている。

■半数の学生が「ある」と感じる

 学歴フィルターに関する証言を検証してみよう。使用するのは、HR総研が昨年6月に楽天グループ「みん就」と共同で行ったアンケート調査だ。2021年卒業予定の就活生に「企業の学歴フィルターを感じたことがあるか」を聞いたところ、約半数(文系51%、理系43%)があると回答している。理系では4割強にとどまっている。

学歴フィルターについては過去にも取り上げたことがある。2017年9月7日付記事「『学歴フィルター』で振るい落とす採用事情」では、2018年卒学生を対象にした調査を紹介しており、このときは全体の55%が、学歴フィルターを感じたことが「ある」と回答している。今回は2021年卒学生を対象にしており、「ある」という回答は微減しているが、本当に減っているかどうかははっきりしない。コロナ禍の影響があったからだ。

 オンライン選考が主流になったので、企業と学生の双方が不慣れなオンライン対応に意識が集中してほかのことに気付く余裕がなかったかもしれない。

 どんな情報で学歴フィルターの存在に気付くのだろうか。まずは記載されている採用実績校だ。自大学の名前がないことに不安を覚えるし、応募しても落とされる。

 「過去の採用されている大学名に名前がない」(金沢工業大学・理系)

 「そもそも自分の出身大学の人を採用した事例がなく、応募したらES(エントリーシート)で落とされたから」(愛知大学・文系) 

 学歴フィルターと対になる言葉に「ターゲット校」がある。これは「採用したい(ターゲット)」大学という採用戦略だ。実績校に記載されている大学名はターゲット校と考えていい。

 「採用校が国立早慶レベルまでしか書いてない」(青山学院大学・文系)

 「採用校の名前が優秀なところばかり」(高崎健康福祉大学・理系)

 就活のスタートは、多くが大学3年生6月のインターンシップ募集からだ。学生は申し込みをするが、事前選考での合否は人さまざま。さまざまな理由の1つは学歴にあることが以下の証言からわかる。インターンシップを通過した高学歴学生だけが「厚遇」されていることに気付くようだ。

 「参加した人気企業のインターンは高学歴しかおらず、学歴で足切りをしていると感じた」(上智大学・文系)

 「インターンシップの参加者が国立大の院生ばかりだった」(近畿大学・理系)

 「インターンシップ参加者が自分を含めて高学歴者ばかりだった。普通の学歴の友人のESが全く通らないのに自分は通りがよかった」(早稲田大学・文系)

■”女子大差別”が目立つ

 エントリーシート(ES)通過も就活の関門だ。旧帝大・早慶クラスはフリーパスであることが多そうだ。

 「出したESが全て通過した」(名古屋大学・文系)

 「めちゃくちゃひどいESが通ったので、あるのかなと思った」(慶應義塾大学・文系)

 「ESが他大学の友達に比べて、ばんばん通ったため」(大阪大学・理系)

 個人的に「よく書けた」と自信のあるESが落ちることもあり、それを学歴フィルターと感じる学生がいるが、同志社大学や千葉大学の学生なので、単なる勘違いではないかと思う。

 「よく書けていると言われたESが通らなかったときに感じた」(同志社大学・文系)

 「自信のあるESが落選した」(千葉大学大学院・理系)

 学歴フィルターの言及に女子大生のコメントがかなりある。内容を見ると明らかな差別が存在するように見える。

 「WebテストとESを出した翌日にお祈りがきた。大企業だったし、1日でESを読めるはずがないと思った」(学習院女子大学・文系)

 「あるベンチャーに基礎情報を入力し、送信した途端落選した」(津田塾大学・文系

 「とくに大手で、ESも適性検査も出来はよいと思ったが、落とされてしまった」(京都女子大学・文系)

 説明会応募でも学歴フィルターがある。企業はすべての学生を平等に扱うと表明しているが、企業へのアクセスに膨大な時間をかけざるをえない学生が気の毒に思える。

 「説明会に応募できない」(名城大学・文系)

 「説明会に参加しようとしたら満席と表示されている」(龍谷大学・文系)

 「説明会のお知らせが来てすぐに開けたのにすべて満席になっていた。東京の同じくらいの偏差値の友達が受かっていて、関西の大学である自分が落ちた(知名度の低さ)」(甲南大学・文系)

■”就活エリート”の証言も

 以下の証言は上位校の学生ばかりで、いわゆる就活エリートだ。かれらにしか開かれていない選考プロセスが存在することがよくわかる。

 「選考の中で会う就活生がMARCH以上しかいなかった」(中央大学・文系)

 「選考でしくじったと思ったが何事もないように次に進んだ」(九州大学大学院・理系)

 「他の選考に参加している就活生が大体旧帝大、早慶上理」(東京理科大学大学院・理系)

 「インターンの参加者が旧帝大、早慶のみだった。また、学歴のみ登録している就職サイト経由で優先選考の案内が来た」(東北大学・理系)

 ここで学歴について少し考えてみたい。学生が感じる学歴フィルターとは選考プロセスでの有利不利を指し、同時に採用の合否を意味している。そして、旧帝大や早慶上理などの大学間(ヨコ)のランキングによってフィルターがかけられる。しかし、元々の学歴は、最終学歴(タテ)を意味し、小中高にはじまり、大卒という序列があった。その学歴によって就職、昇進が決定されることを指している。

 当たり前だが、江戸時代に学歴はない。士農工商という身分制度があり、生まれたときから身分・階級は固定されていたからだ。

 明治になって封建的な身分制度は廃止される。そして福沢諭吉は『学問のすすめ』を書き、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名なことばを冒頭に置いた。続けて、「人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」と書いている。

 つまり、貴賎貧富は学問のあるなしによって決まる、だから学問に励むべし、と福澤諭吉は主張した。明治時代の大学進学者の多くは没落した士族の子弟だったが、失った身分を学問によって取り戻そうと努力したのだろう。

 明治から戦前の日本では大学数も学生数も少なく卒業生は希少であり、学士様として尊敬、尊重された。福沢が予見したとおり、学問によって立身出世が可能だったのだ。

 学歴主義による人材供給は戦後も続き、戦後復興と高度経済成長を支えた(1953年に戦前の水準を上回り、1955~1973年の18年間の年平均経済成長率は10%以上)。ただし、学士の希少性は薄れていく。進学率が上がって学士が増え続けたからだ。

 高等教育の進学率について有名な研究がある。アメリカの教育社会学者・高等教育研究者マーチン・トロウは、進学率15%未満を「エリート段階」、50%未満を「マス段階」、50%以上を「ユニバーサル段階」と呼び、高等教育の量的拡大が質的転換につながることを指摘した。

 日本では、大学・短大の18歳人口を基準とした高等教育進学率は、1960年代前半に15%を超え、1975年度に38.4%に達して、高等教育のマス化が急速に進行した。進学率はその後一時的に安定したが、平成に入ってから再び上昇して1999年度には約49%とユニバーサル段階に入った。大学進学率に限ると2009年に50%に達している。

 先にも書いたが、戦前の日本では大学数も学生数も少なかった。ところが、戦後の日本では大学数も学生数も多くなり、大学卒業生の価値は劇的に低下していった。しかし、希少な大学(代表格は旧帝大・早慶など)への評価は下がらなかったので、1960年代から70年代にかけての日本で激烈な受験戦争が起こったのだろう。

 確かに有力大学と産業界の絆は強く、就職は有利だった。理系の推薦制度は一種の縁故採用と言えるだろうし、文系のゼミでも似たような関係はあった。また、アスリート系に関してもサッカー部員や野球部員の採用枠を設けている企業は1980年代まで珍しくなかった。

 このような癒着構造に対する批判は強かった。また、受験戦争に必須の詰め込み教育に対する反省から、1990年代に入ってゆとり教育が始まっていく。そして、企業の採用活動でも透明性を標榜する企業が現れた。ソニーの「学歴不問採用」だ。

■エントリーシート登場から30年

 新卒採用の歴史にはいくつかの転機があるが、1991年のエントリーシートの登場もそのひとつだ。それまでの新卒採用には「指定校制度」があり、大企業のなかには指定校の学生しか応募できないこともあった。大学だけでなく、一般職の短大でもそうだった。

 そんな状況を一変させたのがソニーだ。1991年にソニーは学歴不問採用を表明し、学歴を問わない代わりにエントリーシートの提出を求め、志望動機や実績などを問うたのだ。以来30年が経過し、エントリーシートは新卒採用の定番課題になった。誰もが情報を見られるインターネットの普及がそれを後押ししたともいえる。どの企業でも学歴不問採用が表面的には当たり前になった。

 ただし、実態は曖昧模糊としている。学生の証言にあるように、学歴によってかなり選考での待遇が異なることは確かである。

 一方で、今回の調査で「学歴フィルターがある」と回答した学生は半数にとどまっている。半数は感じていない。学歴フィルターがあったとしても学生が気付かないほど希薄だとも言える。また、国内の学歴がグローバルビジネスで有効かと言えば、あまり役に立たないだろう。ローカルな学歴フィルターは、もはや時代遅れだと気づくべきではないだろうか。

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最終更新:4/8(木) 17:51

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